1996年2月2日(月)「しんぶん赤旗」

志位書記局長の総括質問

誰が借金をふみたおしたか


志位委員

 私は、日本共産党を代表して、橋本総理並びに関係閣僚に質問いたします。

 大変制約された時間ですので、住専問題に絞って質問をいたします。

 政府が決めた処理策というのは、いわゆる一次損失の穴埋めだけで税金から六千八百五十億円、さらに、いわゆる二次損失、これを合わせますと一兆三千億円もの血税、さらにそれが膨らむのではないかということも懸念されております。

 一口で一兆三千億円と申しますが、これはどんな莫大な額か。今不況で苦しむ中小企業の皆さんに対する対策費の何と七年分であります。それから、今被災地に伺いますと、被災者の方々は、九万人以上の方々が仮設住宅で苦しい思いをしていらっしゃる。この方々への個人補償に充てれば、一世帯当たり五百万円から六百万円のそういう手当てにもできるような額であります。こんな金があるならなぜ被災者に回さないのか、これは被災地の声であり、国民の声であります。

 我が党の基本的立場は、この六千八百五十億円は予算案から削除すべきであるということ、そして真相解明と責任追及の上に立って、住専設立の母体銀行の責任で、基本責任で問題を処理すべきである、これが私どもの立場であります。

 そういう立場から、私は三つの問題点を究明したいと思います。

暴力団資金”育成”のツケを国民に払わせるつもりか 

第一は、これは一体だれが借金を踏み倒したのかという問題であります。この問題は、住専の大口貸出先のリストがいまだに公開されていないために、実名リストがないためにやみの中にあります。住専の不良債権を出したのはだれか、借金を

踏み倒したのはだれか、これを明らかにしないままで国民に税金だけ出せと言っても、これは絶対に納得は得られない。これは明瞭であります。

 私特に重大だと思うのは、住専の不良債権の中に暴力団やそれに関連した企業が踏み倒した分が含まれているのではないかという問題です。これは国際的にも問題になっておりまして、私ここにニューズウイークの最近のを持ってまいりましたが、こういうほおに傷がついたやくざの絵入りで、「東京の汚い秘密 銀行と暴力団」という題で、それこそ銀行が暴力団を使って地上げ屋などいろいろな利用をやっている。これは告発していますよ。国際的にも問題になっている。

 もう一つ挙げますと、元警察庁捜査第二課長として暴力団対策に取り組んだ宮脇磊介さんという方がこう言っておられる。「住専の貸出先のリストを見ると、関西の人なら一目で暴力団関係とだれでも知っているような企業が並んでいる。控え目に見積もっても日本の不良債権の一〇%は明確にやくざと関係しており、さらに三〇%はその疑いがある。」これは専門家の指摘です。相当部分が暴力団の食い物になっている可能性があるんですね。

 私総理に伺いたいんですが、総理は本会議の御答弁の中で、この住専と暴力団との関係を問われて、さまざまあるというふうなことをおっしゃいました。これはぜひはっきりこの場でお答え願いたい。国民の税金の一部を充てるとしている損失分六兆四千百億円、この中に、暴力団やそれに関連する企業が踏み倒した分がないと言えますか。どうですか。

橋本内閣総理大臣

私はその実態を詳細に知る立場ではありません。しかし、御質問に対しまして、さまざまなケースはあり得ると、報道されておりますことを踏まえて御答弁を申し上げてきました。そしてこれから先も、この住専に関する問題につきましては国会の御協力もいただきながら最大限の努力をしていきたい、情報開示についても申し上げてきておるところであります。

志位委員

 そうすると、否定されない、そういうことですね。あり得るということですね。(橋本内閣総理大臣「わかりません」と呼ぶ)わからないじゃやはり済まないね、この問題は。

 これは私たち、ここに暴力団のいわゆるフロント企業のリストと言われるものを持っています。それから、住専の大口貸出先の実名リストを持っています。これを突き合わせますと、これは明確にフロント企業が出てきますよ。それから、疑いがあるものも出てきますよ。これを公式に出してもらいませんとこれはやはりきちんとした追及になりませんから、明瞭なこれだけの疑惑があるんですから、総理、暴力団に関係する資料、細大漏らさず、いいですか、細大漏らさず国会に提出することをお約束していただきたい。どうですか。

久保国務大臣 

昨日来申し上げておりますように、国会で御審議をいただきますに必要な資料は、情報は開示するという原則の上に立って、国会の皆様方と十分協議をした上、法的に支障を残さないようにして開示いたしたいと考えております。

志位委員

 必ずこれは開示を求めたいと思うんですよ。さっき総理はわからないとおっしゃったけれども、わからないというのは、逆に言えば否定はできないということですよね。暴力団の関与を否定できない。否定できない、つまり疑惑のあるところに、その六兆四千百億円の中に国民の税金を投入するということになれば、これは国民が暴力団の育成の資金のツケを払わされるということになるじゃありませんか。絶対これは国民は納得しませんよ。

 ですから、この問題は、これはきちっと細大漏らさず資料の提出を求めたい。これが第一点であります。

 第二の問題なのですが、これは政府、大蔵省の責任について伺いたいと思います。

 やはりこの大きな焦点の一つは、不動産融資へのいわゆる総量規制を決めた九〇年三月の大蔵省通達で住専を対象にしなかった、同時期に農林系金融機関に出された通達で住専への報告を義務づけなかった。これが何をもたらしたか、その結果は今では明瞭であります。農林系から住専、住専から不動産という資金の流れがつくられて、住専の暴走が加速した、これはもう結果は明らかです。

 それで、どうしてそれではこの住専を対象にしなかったのか、これは単なる過失だったのか、それとも特定の政策意図を持ったものだったのか、これが最大の焦点だと思うのですね。当時の大蔵大臣は橋本総理ですから、率直な御意見をいろいろとこれから伺いたいと思うのですが、三つの角度から聞かせていただきたい。

 まず第一点、大蔵省はこの当時、もう住専の経営内容を熟知していたはずだということです。住専から不動産など事業向けの融資を見ますと、一九八〇年度末には四%だったのが、八五年度末には三三%、九〇年三月末には七六%になっております。つまり、総量規制を出した段階で、もうこの時点で、住専というのは、本来の個人の住宅ローン向けの会社という、そういう性格を完全に逸脱して、不動産投機の会社に変質していたわけですよね。ですから、まずこの実態を御存じだったかどうかですよ。大蔵大臣として、住専がこういう経営実態だということを知っておられたのかどうか、これをまずお伺いしたい。

橋本内閣総理大臣

 正確を期しますために、多少前後を申し上げたいと存じます。

 平成元年に私どもが海部内閣の閣僚として就任をいたしました時点で、地価の高騰というものが極めて大きな問題になり、その地価を抑えるということが当時大きな課題になっておったことは委員も御承知のとおりであります。そして平成元年の十月、そして二年の一月、これは住専というとらえ方ではございません、住専を含むノンバンク全体に対しまして、大蔵省として、たしか局長の名前で要請を繰り返しております。(志位委員「知っていたか、知っていないかだけ」と呼ぶ)いや、ですから、きちんと申し上げないと誤解を生みますから申し上げさせてください。そして、その限りにおいて、住専を含むノンバンクの融資というものが不動産に集中しつつある状況を懸念したからこそ、これを抑制したいという要請をお願いをいたしました。

 そして、その後土地基本法が成立をし、それを受けまして、平成二年の三月の時点におきまして土地対策の関係閣僚会議があり、その席上、総理から、ノンバンクについてやっているけれどもさらに踏み込んだ金融についての対応を御指示がありました。そして、総量規制という措置をこの時点でとりました。しかし、これはまさに金融機関に対してとった措置でありまして、ノンバンクに対して直接の当時法的権限を持たなかった大蔵省からノンバンクに対してこれを発出はいたしておりません。

 そして、その総量規制というものは、総貸出高の中で不動産に対する融資を、その伸び以下に抑えろということでありますから、非常に厳しい措置として、むしろこれは法律でやるべきだというような御議論もありましたが、あえてこれは銀行局長の通達という形で緊急に対応をいたしました。そして、直接の権限のないノンバンク、繰り返しますが、その中には、住宅金融協議会という形でまとまっておった住専もその対象でありますけれども、ノンバンク、不動産、建設に対する融資の状況を報告を求めました。

 同じ通達は……(志位委員「もういいです、もうわかった」と呼ぶ)いやいや、きちんとしないと、申しわけありませんけれども、誤解を生みますから。

 そこで、農林系統に対しても、銀行局長と経済局長が出しました総量規制の通達は、その三業種に対しての報告をそこでは求めておりません。それは既にこの報告をとっているということであったからであります。

志位委員

 今の答弁はもう全部本会議で聞いた答弁なんで、私たちはよく理解してその上に立っ

てやっているんですから、時間が短いですから、簡単に、聞かれたことを答えてください。

 要するに、住専の経営が不動産投機に流れていたということを知っていた、これは認識されていたということをさっきおっしゃいました。知っていたから、八九年の十月のそういう自粛の要請を出したんだというふうにおっしゃいました。

 しかし、八九年の自粛の要請というのは、私これを持っていますけれども、これは何の効力もないんですよ、よく読んでみると。なぜかというと、「投機的土地取引等に対する融資の自粛について、」住宅金融協議会による自主ルールが作成されており、「着実にその趣旨が浸透してきているものと認識している。」と、ちゃんとあなた方よくやっています、だから引き続き万全を期すよう、こう言っているだけなんですよ。こんなものは何の価値がありますか。

 このとき既にもう、八九年十月といったら、住専が、おっしゃるように不動産投機にのめり込んでいた。そのときに、自主ルールを作成して着実に趣旨浸透していますと、逆にお墨つきを与えているだけの通達じゃありませんか、これは。何の意味もない。

 それから、知っていたはずだとおっしゃった。これは非常に大事な点です。知っていたならなぜ手を打たなかったのか。それに対して、そのお答えも今されました。住専というのは免許業種じゃない、権限が及ばないと。また同じ答弁であります。

 しかし、住専というのは関連会社ですよ、銀行の。七五年に関連会社としてきちんと認定されている。関連会社というのは、これはもうよく御存じだと思うけれども、関連会社にすることによって、母体行からの役員派遣を含め、経営の支配権を認めているわけですよ。そのかわり、関連会社である住専の業務内容については当局の指導に従うということになっているのですね。

 私ここに、七五年に出した関連会社通達を持っていますが、ここには「当該関連会社の態様、業務の内容については、具体的なケースごとに、当局の指導に従うものとする。」つまり、大蔵省は住専に対する指導権限を持っているのですよ。

 あなたは不動産投機へののめり込みを知っていた。知っていたから手を打ったというのは八九年だ。しかし、八九年の通達というのは逆のお墨つきを与えるものだ。権限がないと言うけれども、権限はあるんですよ、関連会社なんですから。そうでしょう。住専に母体行から役員がもう全部行っているわけでしょう。常勤役員の八八%は母体行からの出向じゃありませんか。こういう住専をどうして指導できないか。おかしいじゃありませんか。

橋本内閣総理大臣

 私は住専と申し上げておりません、当時ノンバンクが問題でありましたと申し上げております。どうぞ誤解のないように。そして、そのノンバンクという中に住専も入っておりましたと申し上げております。その上で、貸金業規制法の権限で、当時私はそれ以上の力は持っておらなかった、そう理解をしておりますが、必要がありますなら事務的に補足をお許しをいただきたいと思います。

志位委員

 結構です。

 それで、もう一点ちょっと聞きたいんですが、もっと不可解なことがもう一つある。三つ目の問題なんですが、総量規制を出した後のあなたの対応についてなんです。

 総量規制を出した後、あなたは一年半にわたって大蔵大臣に在任されているわけですね。九一年十月まで在任されているわけです。その間、総量規制を金融機関全般にかけたわけですね。住専にかけなかった。だから、住専の不動産投機が、これは暴走するのは当たり前です。これを一年間見てみますと、住専からの不動産など事業向け貸し出しは、九〇年三月末が七・七兆円、九一年三月末は九・七兆円、一年間で二兆円ふやしているのですよ。この推移については、これは住専から四半期報告というのをあなた方はとっているのだから、リアルタイムで、住専の不動産投機が暴走していたという実態をあなた方は知っていたはずだ。

 それで、私、当時の大蔵大臣だった橋本さんの答弁を見てみましたら、総量規制をかけた後、もしその総量規制でノンバンクにしても住専にしてもしり抜けがあればちゃんと手を打つ、土地神話は何としてもつぶさなきゃならないとあなたは何度もおっしゃっている。そうでしょう。そのあなたが、住専が総量規制の後どんどん不動産投機にのめり込むその実態を知りながら、なぜ手を打たなかったのですか。一年半にわたってなぜ手を打たなかった。

橋本内閣総理大臣

 大変申しわけありませんが、私は、先ほど来ノンバンクと繰り返し申し上げております。そして、私自身の答弁をお調べいただきましたようでありますが、その当時、住専という問題のとらえ方で御論議はございませんでした。私は、ノンバンクの問題については何回か答弁で触れてきておったと思いますし、そのたびに権限が及ばないということを申し上げたこともございます。そして、たしか、局長の私的な諮問機関をつくって貸金業規制法の改正を考えていくプロセスの中で、しかしそれは金融制度調査会の議論を得なければいけないのではないかというような御指摘を、本院でありましたか参議院でありましたか、受けたこともございます。

 そうした中で、貸金業規制法の改正にまでこぎつけてまいりましたが、その間、ノンバンクといいますよりも金融全体の状況はそれぞれいろいろな報告がございますけれども、今のように住専という問題が特定されて論議をされませんでした当時において、私のところにそうした報告は参っておりませんでした。

志位委員

 住専というのは特定して議論されなかったから報告が来なかったと言うけれども、それは、あなた方が情報を握っているんですから、あなた方が問題出さなかったらわかりませんよ。それで、報告がなかったと言うけれども、四半期報告というのは、さっき言ったように、とっているわけですね、住専から。それを知らなかったと言うのは、報告がなかったと言うのも、これは私は無責任と言わざるを得ません。

 それで、ノンバンクには手を打った、こう言いました。確かに九一年に貸金業法、あなたの蔵相時代ですか、これは改正している。ノンバンクの不動産向け投機というのは、これ、四〇%ですよ、大体。住専はもっとけた違いに不動産にのめり込んでいたわけでしょう。このときの状況を見ますと、銀行の不動産投機の伸び率というのは大体年間一四%ですよ。住専は五四%伸ばしているんですよ。だから、不動産投機の中でも一番突出していたのが住専なんですよ、あの時期から。大体、投機額全体の中だって一割を占めていた。これを知らなかったと言うのは、私は論として通らないと思います。

 私は、この総量規制の問題、余りにこの住専外しは異常だと言わざるを得ません。住専の暴走の実態を知っていた、やろうと思えば関連会社で指導する権限もあった。そして、それがあったのに、これはやらなかった。これはなぜなのか。これはやはり、このときに住専に規制をかけてしまったら住専はつぶれただろう。つぶしてよかったんですよ、もう必要ない会社だったんだから。つぶれたらどうなったかといえば、住専に貸し込んでいた銀行の莫大な貸し付けが焦げついた。それから、大蔵省からの天下り、このときは最高の八人ですよ、会長、社長で。この人たちが責任を問われた。私は、銀行救済、天下り救済のためにこの総量規制からの住専外しを意図的にやったと言わざるを得ないのであります。

 これは、あなたに何度聞いても意図的じゃないとおっしゃるかもしれないけれども、責任感じませんか、責任。この経過の中で大蔵大臣としての責任、一切ないですか。

橋本内閣総理大臣

 私は何回か、こうした状況、今になって御質問を受ければ私が全く責任がないなどとは申し上げませんということは申し上げた上で、当時の状況を御説明申し上げておりま

す。

 そして、その上で私が申し上げたいのは、ノンバンクというとらえ方の中に住専はその当時含まれておりました。これは我々共通の理解であったと思います。現在そう申し上げますと、皆さんは、そんなことはない、住専はとおっしゃいますけれども、まさにその要請、元年十月の要請にいたしましても、ノンバンクとして、それぞれの、ノンバンクの協議会に対し、組織に対し、要請をいたしておるわけで、権限のない中で要請をしてきたという事実、それは問題意識を持っていたということであります。

 もう一つ申し上げたいことは、私自身、その意味では今不勉強であるとおしかりを受ければこれは返す言葉がありませんけれども、その総量規制の後で、金融機関の貸し出しが落ちておるということを御報告しておる国会答弁がございます。そして、それは確かに金融機関について総量規制の効果は一定程度出ておりました。しかし確かに、それを今振り返ってみますと、農林系の金融の状況まで把握をして御答弁を申し上げておりませんでした。その辺は私が不勉強であったと思います。

志位委員

 これはまた八九年の要請はやってきたということを繰り返しますが、その要請は意味がないということはさっき言ったとおりで、これは全体本当に、この住専外しは意図的な一つの政策的意図があったというのは私どもは本当に断ぜざるを得ないし、今の質疑を聞いていれば国民の多くの方々はそう思ったと私は思います。

 次の問題、第三の問題に入りたいのですが、第三の問題として伺いたいのは、この住専の設立母体となったいわゆる大銀行、母体行に対する責任であります。

 私は、今度の問題で、農林系金融機関の責任もあったと考えております。住専のああいう実態のもとで無批判に貸し込んだ、これはやはり農林系の責任も問われなければなりません。しかし、この母体行である銀行の責任というのは、農林系とは全く質的に異なる、非常に重い重罪だと私は言わざるを得ないんですね。

 私は、三つの大罪を母体行は犯していると考えます。

 一つは、バブルの時期に住専を別働隊として利用し、自分ではやれないような危ない不動産投機をやらして、たっぷり甘い汁を吸った。自分では危なくてできないような暴力団絡みの地上げ屋など、リスクの高い不動産投機、これをまさに別働隊としてやらした。これはバブルの時期の母体行の行状ですよ。

 それから二つ目に、バブルが破綻すると今度は、自分が持っている不良債権を住専に押しつけて肩がわりさせる。つまり、住専を不良債権のごみ箱として利用したわけです。

 私は最近、住総、これは住専の一つですが、その現職幹部がある雑誌で次のように証言しているのを印象深く読みました。

 バブルが弾けた頃、不動産融資の総量規制があった。それで、各信託銀行は融資額が決められてしまった。するとどこかを外さなくてはならない。で、当然のごとく、マズい先から外すことになる。それらを全部、住総に肩代わりさせていったんですよ。それだけで、千五百億円から二千億円はあると思います。しかも、バブルが崩壊した後から、盛んに肩代わりをさせた。そのために、住総は信託銀行の?ゴミ箱?と言われているんです。

 結局、マズい先、つまり暴力団からみとか、政治家がらみとか、表に出てはマズいものをみんな肩代わりさせた

 バブルの時は信託銀行の別働隊だった住総が、弾けたらゴミ箱になっちゃって、農協のカネがどんどんゴミ捨て場にいっちゃった

これ、なかなかリアルであります。こういうやり方で、最初は別働隊、次はごみ箱として住専を母体行は利用していったわけですがね。その手口として紹介融資というやり方をとったことは広く指摘されているとおりであります。私、ここにもその当時の紹介融資の実態の内部資料を持ってまいりましたが、住総の大口の不良債権、十五社で合計三百八十三億円のうち、母体である信託銀行の紹介分は七社、二百五億円、つまり五四%は母体行による紹介融資であります。

 総理に伺いたいのですが、一体住専の不良債権のうち母体行による紹介融資による分はどれだけを占めるのか、これがはっきり明らかにされていない。この実態を具体的に明らかにすることなしに、母体行責任、これは出てきませんからね、はっきりとは。そう思いませんか、総理。どうですか。

上原委員長

 西村銀行局長。(志位委員「総理の認識を聞いているのです。総理の認識を聞いているのです」と呼ぶ)

西村政府委員

 母体とおっしゃいますのは、住専、現在の場合七社の問題について申し上げたいと存じますけれども、平成七年三月末時点で三兆五千八百五十九億円でございます。

志位委員

 これは詳細な資料が必要ですね、当然。これは、大口貸出先別に、住専別に、母体行別にそれぞれの案件でどういう紹介融資がやられたのか、それがわかりませんと、グロスで額を出すだけでは出ませんから、これは国会でも資料要求しておりますが、委員会で、この紹介融資の実態はきちっと早急に出すように協議していただきたい。委員長、いいですね。

上原委員長

 後刻理事会で協議をさせていただきます。

志位委員

 私、二つの大罪ということまで言ったのですが、三つ目なんですよ、問題は。バブルが崩壊して、住専の破綻がいよいよ明らかになってきます。そのときに母体行は何をやったのかという問題です。

 私、これを経過を調べてみますと、これは御承知のように、大蔵省と一体になって、九一年、九二年に第一次再建計画、九三年には第二次再建計画、本来この段階で、遅くとも住専を整理して当然だった。ところが母体行は、住専の再建には母体行は責任を負う、農林系にはこれ以上負担をかけません、こう言って農林系資金の引き揚げを抑えた。それを政府に保証させるために、九三年二月には大蔵、農水の例の覚書まで結んだわけであります。

 私がここで重視したいのは、政府提出資料で第一次再建計画を見てみますと、母体行の責任として、住専に対する融資残高を維持するという約束をこの時点でやっています。第一次再建計画の時点で約束をしています。この約束は一体果たされたのかという問題なんです。

 この住専七社の母体行からの借入金の推移について、これは銀行局、九一年度末と現時点について報告してくれますか。

西村政府委員

 住専七社の母体行からの借入金の残高は、九一年度末で約三兆二千億円、九四年度末で三兆五千億円でございます。

志位委員

 これは、とんでもないでたらめな数字を言ってもらっては困るのですよ。

 私、ここに銀行局金融年報、毎年あなた方が出しているものを持っていますよ。これが九二年版ですね。これを見ますと、今問題になっている九一年度末の住専八社、これは八社ですね、八社の母体からの借入金は五兆一千億円と出ていますよ。八社で五兆一千億。あなた、七社で三兆二千億と言ったでしょう、言いましたね。そうすると、差し引き一兆九千億になるのですよ。残るは何かといえば、農協系の協住ローンでしょう。協住ローンに一兆九千億もの資金を貸し込んでいたのですか、農協が。これ、協住ローンについては、同じページで、このときの貸付残高七千七百億しかないですよ。七千七百億しか出してない、そういう会社に一兆九千億もの金を貸し込むわけないじゃないですか。でたらめな数字を言ってもらっては困る。

西村政府委員

 御指摘の点につきましては、九二年と九三年の間で母体の定義を変更しております。九二年までは、出資自体をしておるものを母

体ということで計数を掲げてございました。その後、設立母体、現在議論の対象となっておりますような、皆さん方が母体という意味で言っておられるような定義の母体という範囲で数字を掲げておる、こういうことで、詳細な数字まで御説明することは十分可能でございます。

志位委員

 母体の定義を途中で変えた、とんでもない話ですよ。これ、九二年と九三年で母体の定義を変えたと言うけれども、九二年に、いいですか、九二年に母体行分の借り入れとしたのは五兆一千億、八社で五兆一千億なのは確かです。それで、それから協住ローンの分を引いて、私、計算してみました。これ、パネルをつくってきました。これを見ていただきたいのですが、この母体の定義を変えようと変えまいと、九一年、九二年のときの母体行が住専七社に貸し込んでいた借入金の残高は、九一年は四兆五千億、九二年は四兆四千億ですよ、これは母体の定義を変える前かどうか知らないけれども。今は三兆五千億ですよ。一兆円引き揚げているんですよ。

 定義が変わっていると言うけれども、いいですか、第一次再建計画のときに、その融資残高を維持すると母体行は約束したのですよ。約束したはなから定義を変えたというのは、言葉をかえれば逃げ出したということじゃないですか、母体行が。そうやって一兆円も引き揚げている、次の年には。残高を維持すると言っておきながら、一兆円次の年には引き揚げた。見てください、この数字。

 それで、この赤い棒が母体行で緑の棒が農林系ですから、農林系は、もう忠実に五兆六千億円ずっと融資残高を維持しているわけですよ。まじめに維持している。銀行はさっと引き揚げている。母体の定義を変えたかどうか知らないけれども。これは背信的だと思いませんか、総理。これはもう総理に聞きたい。背信的なやり方だと――総理です、だめです、総理に聞きたい。だめ、だめ、総理に聞きたい。

橋本内閣総理大臣

 定義を変えた云々の話がございますので、事務当局から答弁をさせます。

上原委員長

 西村銀行局長。簡潔にしてください。

西村政府委員

 現在議論をされております意味における母体の七社の借入残高は、同じレベルでとりますと、九一年三月末が三兆二千七百二十二億円、九二年三月末が三兆二千八百八十五億円……(志位委員「そんなこと聞いてない。あなたに聞いたってしょうがない。背信的かどうか聞いているのです。委員長」と呼ぶ)さらに、現段階に至りまして三兆五千八百五十九億円ということでございまして、継続性のある数字としてとらえれば、おっしゃる点は十分御説明をすることが可能でございます。

志位委員

 母体行の定義を変えたということは、最初母体行だったものが母体行から外れた、つまり逃げ出したということじゃないですか。これ、総理、一兆円の引き揚げ、大きいですよ。一兆円引き揚げた。あなた方は母体行は責任は果たしたと言われるけれども、三兆五千億の債権放棄では済まない。私は、少なくとも四兆五千億まで払ったっていいじゃないか、足らない分があったら国民の血税に頼るのではなくて銀行に払わせたらいい。これが国民の声ですよ。これはもう政策判断の問題です。どうですか。足らない分があったら、銀行に払わせたらいいじゃないか。こうやって資金を引き揚げているんですから。どうですか。

橋本内閣総理大臣

 私は、このフレームをつくりますために、関係当事者の間でそれぞれの責任を含めた、慎重な上にも慎重な論議の上で決定した負担割合であると思っております。

 また、九一年一二月末、九二年三月末の数字、そしてその母体行の定義を変えたということから、今のルールでいきますと金額は変動いたしますということを局長は申し上げておりました。

志位委員

 銀行に対して定義を変えたというのは、さっき言ったように、最初母体行とカウントしていたものをカウントを外したということですから、その母体行の責任を免除したということですよ。定義を変えたというのがこちらの意見だったら、母体行が住専に負っている責任を放棄することを認めてやった、母体行が逃げ出すのを認めてやったというのは定義を変えたということなんだから、そんなことを言ったって、これは銀行の罪を軽くすることになりませんよ。

 私、銀行に対しては、事実上の公的資金が既に莫大な額が注がれているという事実を指摘したい。この間、公定歩合は六%から〇・五%まで下がった。これ、泣いているのは、これはもう本当に預金を頼りに暮らされているお年寄りですよ。この四年間でどれだけ家計から銀行に所得が移転したか。私ども試算してみたら十六兆円ですよ。それから、共国債権買取機構、銀行の不良債権を買い取って特別の減税をしてやるという仕掛けをつくった。それで、減税額、私たち計算してみたら三兆円ですよ。合わせて二十兆円近い事実上の公的資金が既に注がれているんですよ。この上、どうして国民の血税で銀行救済してやる必要があるのか。私は、絶対これは国民は納得しない、絶対納得しない。

 私、これは総理として、私たちは問題を先送りにしろと言っているんじゃないんですよ。なぜ足らない分があったら銀行に払わせないのか。母体行の三つの大罪と言いました。別働隊として使い、ごみ箱として使い、ごみ箱を農協に押しつけた。これだけの大罪を持っている銀行にどうして払わせないのか。もう一度御答弁願います。

橋本内閣総理大臣

 私は、このスキーム、関係者が真剣に論議をした上で決定されたものと考えております。ただ、先ほどから、銀行をなぜかばうのかとか罪は軽くならないというそういう言い回しをされましたけれども、何も銀行をかばって私は申し上げているのではございません。

志位委員

 銀行をかばってないと言うけれども、かばわざるを得ないような関係をあなた方は銀行との間でおつくりになっている。それは政治献金の問題です。

 銀行からの政治献金を、これは九四年度で見ますとこうなります。いいですか。自民党、企業献金の三七%、十五億六千三百万円は金融関連業界からのものですよ。そのうち住専の母体行からのものが七億二千万円ですよ。新進党、これは出てきていない。新進党出てきていませんが、企業献金の五四%、四億七千三百九十万円、これは金融関連業界からのものですよ。そのうち住専の母体行からのものは二億六千万円。さきがけ、ここに座っていますけれども、大蔵大臣としてこれを決めたさきがけは、企業献金の八六%、一億一千七百十三万円は金融関連業界からのものですよ。そのうち住専の母体行からのものは五千六百万円。

 これでどうしてまともな対策できますか。来年はやめるというんだったらまだ話はわかる。しかし、ことしも続けようという話ではありませんか。少しは心に痛みは感じるのか、二割削減するという、しかし八割はもらいましょう、こういうことが報道されております。銀行から政治献金をもらい、その見返りに銀行を救済する、その金は庶民の金だという、こんなばかげた政治ありますか。こういう重大な問題が起こり、母体行責任ということがこれだけ問題になっているんですからね、私は少なくとも、いいですか、自民党は銀行からの企業献金は返上すべきじゃないか。少なくとも、少なくとも住専の母体行からのこれは返上すると、ここではっきり明言してください。どうですか。

橋本内閣総理大臣

 政党として許された範囲における政治資金をきちんと政治資金規正法に基づき届け出を行って受領していることと、それと同時に今回のこの問題における対応と同一の線上で御論議をいただくことは甚だ私は不本意であります。そして、母体行というものの責任を除外したことを申し上げていることは私はないはずであります。

 当然のことながら、母体行には責任はあります。ただ、法的に言うならば、住専というものと

母体行と人格が違うという部分がございます。そして、昨日もたまたま報道を見ておりますと、その点を立論として母体行の御関係の方が自分たちに責任なしという御発言をしておられました。私は大変不本意な思いでこれを見ておりましたけれども、形式論としてはそういう議論もあるのかという感じを持った次第です。

志位委員

 今度の処理策と銀行からの献金は別問題だ、同一の線上じゃないと言いますけれども、出している側の大企業の代表、経団連の代表などは、財界が金を出すのはその見返りを期待するからだと言っていますよ。国民はだれも同一線上の問題ではないと思わない。まさに同一平面上で起こっている問題だと、みんなそう思いますよ。

 これまで護送船団方式ということが随分批判されてきた。どんなに銀行が不始末をしてかしても、大蔵省が守ってやる、政府が守ってやる、この護送船団方式ということが批判されてきましたけれども、やはりその根っこには企業献金がある。それをこれだけ私が言っても、これはもう法律に認められているんだからこれからもやりますと平然と言って恥じないというところを聞きますと、私は、あなた方は本当、まるで銀行の護衛隊だ、そう言わざるを得ない。

 私は、首相が本当に、被災地の問題との対比でも、それこそ大震災の被災者の方々には、個人補償を要求しても、自助努力ということをあなたはおっしゃいました、本会議で。私も本当に残念に聞きましたよ。これを一方で言いながら、銀行の問題になると、お金はもらい続けます、こういう処理スキームは捨てません。これでは、やはり私は、国民は絶対この事態に納得しない、このように思います。

 もう時間になりましたから終わりにしますけれども、やはりこういう政治は根本から間違っている。大企業、大銀行優先のそういう政治ですね。これから本当に庶民の生活を大事にする政治に政治の流れを切りかえるために、日本共産党は全力を尽くすということを最後に表明いたしまして、私の質問を終わります。答弁結構です。(拍手)



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