1996年12月11日「しんぶん赤旗」

志位書記局長の衆院予算委質問(大要)

その1/厚生省汚職と利権


日本共産党の志位和夫書記局長が12月9日の衆院予算委員会でおこなった質疑(大要)のうち、厚生省汚職と利権、消費税にかんする部分は次のとおりです。

医療関係業界からの献金に反省はないのか

志位和夫書記局長 私は、日本共産党を代表して、橋本総理ならびに関係閣僚に質問いたします。

 まず厚生行政にかかわる汚職と利権の問題についてであります。特別養護老人ホームの建設をめぐって、「彩(あや)福祉グループ」を名のる業者と、一部官僚が結託してひきおこした汚職事件にたいして、いま国民の怒りが沸騰しております。国民が何よりもこの事件に怒っているのは、「この分野での汚職だけはあってはならない」と考えていた福祉を食いものにした汚職であり、官僚にたいする賄賂(わいろ)の財源となったのが、補助金、すなわち国民の税金であった――この点にあります。

 総理は「公務員の綱紀粛正」ということをくりかえしのべておられますが、私はこの問題というのは、ただたんに業者が悪い、官僚が悪い――もちろん彼らの罪は大罪でありますが――これにとどまってはならない。それを正すべき政治、政党、政治家の側の姿勢が問われていると考えます。この点にかんしていくつかうかがいたい。

橋本首相にも2つの団体から700万円。政治的道義的責任がきびしく問われている

寝具協会、給食協会の政治連盟から4億2千万円もの献金が政界に

 志位 小山容疑者が実質的オーナーである「ジェイ・ダブリュー・エム社」で、この9月まで取締役をつとめ、大株主である村田士郎氏という人物がおります。この人物は岡光容疑者が会長をつとめ、小山容疑者が実質的に主宰していた「医療福祉研究会」の有力メンバーの1人でもありますし、村田氏が小山容疑者と「深い関係」にあったということは先週の質疑でも総理もお認めになったことです。

 この村田氏が理事長をつとめる「日本病院寝具協会」の政治連盟、副会長をつとめていた「日本メディカル給食協会」の政治連盟から巨額の政治献金が厚生大臣経験者や厚生官僚OBなどに渡っていたということが問題とされております。

 私が政治資金報告書を調べてみましたら、2つの政治連盟から政界に流れた献金は、政治連盟が設立されてからの累計で約4億2000万円、90年以降だけでも約9500万円にのぼります。橋本総理にたいしても90年以降700万円の献金が渡っていたということが明らかになっておりますが、総理、あなたにたいする献金の事実関係、間違いありませんね。

 橋本首相 先般もご答弁申しあげましたが、90年以降、日本病院寝具政治連盟から合計500万円、メディカル給食政治連盟からは合計200万円の寄付金がございます。政治資金規正法上の届け出につきましては、先般も申しあげたとおり、きちんと届け出をいたしております。

 志位 それでは総理にお聞きしたいのは、献金を出した政治連盟の母体となった日本病院寝具協会および日本メディカル給食協会について、総理がどう認識されているかという問題であります。マスコミの報道では、総理が献金について問われて、「正式に政治資金として届け出をしてある」としたうえで、「2つの団体に問題があるのならともかく、僕はどうしてそういうふうに聞かれるのか分からない」とのべたと伝えられました。先週の質疑のなかでは、このコメントは事情をよく知らない段階でのものだったという趣旨の答弁もされました。そこであらためてお聞きしたいんですが、総理はいまでもこの2つの業界団体には何の問題もなかったというご認識ですか。

 首相 二点について申しあげます。第一点は、小山という人物が病院寝具協会に関連をもつ、あるいはメディカル給食協会に関係をもつ団体の責任者という立場にあったこと自体を私は存じませんでした。(志位「村田でしょう」)失礼しました。村田氏が関係をもっていること自体を存じませんでした。私は村田という方のお父さまはたしかによく存じあげておりました。「ワタキュー」の社長さんとして存じあげていた方であります。ご子息がいま団体でどういう立場におられるかということまでは存じあげていた状況ではなかったわけです。それだけに番の記者の方からとっさに聞かれましたとき、その数字を調べて正確にお答えをすると同時に、「その団体に何かあるのか」ということはたしかに私はそのとき問いかけました。これがまず第一点であります。

 そしてその後、むしろさまざまな報道等によりまして、そのかかわりを持っているという意味で質問をされたという事情を理解した。そして問題があった人物が深い交流を持っていたという意味で村田氏との関係を問われたということを理解をいたしました。

公正取引委員会から摘発うけた業界団体――「法的に適正」ではすまされない

 志位 問題があった人物であったという認識ですね。村田氏について、(首相「問題があった方と交際があった」)交際があったという認識ですね。その団体についての認識についておのべにならなかったんですが、日本病院寝具協会は新規参入業者の営業活動を不当に制限する市場独占をおこなっていたとして、94年6月に公正取引委員会から警告処分をうけております。

 日本メディカル給食協会にかかわっては、その最大手の会員企業で、村田士郎氏が社長をつとめる「日清医療食品」が、「日本医療食協会」と共謀して医療食市場を独占し、法外な利益をあげたことで、96年4月に公正取引委員会から排除勧告をうけております。両方とも公取の摘発をうけている公益法人なんですよ。

 それが片方は政治連盟をつくり、片方はその政治連盟の有力な構成部分をなして、そういうところから、政治献金を受けとっている。これは手続きが法にのっとっていたということではすまない。政治道義上の責任が私はあると考えますが(「そうだ」の声)、総理いかがですか。

 委員ものべられましたように、それぞれ公正取引委員会から排除勧告あるいは警告をうけました時期以前に、たしかに私は受けておりました。この点は事実関係としても93年6月が最終段階であります。その当時公正取引委員会から、指摘をうけているといった状況ではございませんでした。また団体のその内容まで個別に存じていたわけではありません。

 志位 公正取引委員会に摘発された以前の献金であって、それ以後は受けていないということですが、公取の摘発をうけたら政治連盟が解散するわけですから、これは当然なんですよ。それで95年にもあなたは、この寝具協会の最大手の企業である「ワタキューセイモア」会社から献金をうけているではありませんか。50万円の献金が届けられています。ですから公取が摘発した以降も献金をもらいつづけているわけですよ。この政治的・道義的責任をおのべにならないんですがね、いかがですか。

 首相 いま団体について問われましたので、私はその後において公正取引委員会から排除勧告あるいは警告等を発せられるという予想をしていたわけではございません。ただ連盟からのものをお問いになりましたから、私は連盟から受けておりましたのは93年7月6日というものが最後でございます、ということを申しあげました。個別企業のワタキューさんというのは、前から会員企業として継続して会員になっていただいている会社の一つです。

厚生省が与えた特権悪用、行政をゆがめた団体からの献金

 志位 私は、あなたが公取の摘発をうける以前ということを強調されたので、あえてこのことをいったのであります。あなたが公取の摘発以前だといったから、あえてつけくわえたしだいであります。私は、なぜ政治的・道義的責任が問題なのかということを、二つの角度からのべてみたいと思うんですね。

 第一は、寝具にしろ医療食にせよ、問題になっている業界団体というのは、厚生省からあたえられた特別の権限を悪用して厚生行政をゆがめていたんですよ。そして独禁法に違反する、そういう悪徳商法をおこなって、不当利益をえている。

 たとえば寝具協会についていえば、かれらが悪用していたのは、業務代行保証制度というものです。これは厚生省の通達にもとづく措置でありますが、寝具リース業者が病院と契約する場合に、その業者が天災や事故で一時的に寝具が供給できなくなったさいに、その業者に代わって業務を代行する契約をあらかじめ寝具協会と結ぶということを義務づけるという通達であります。寝具協会の業務代行保証がなければ、健康保険の診療報酬の支払いの対象にはならないというしかけになっていて、これを悪用して寝具協会は、市場の独占をはかっていったのです。

 もう一つの医療食協会についていえば、かれらが悪用していたのは、これも厚生省が設置した医療食の検定制度です。これは医療用食品の栄養成分の検査をおこなうというものですが、医療食協会は、厚生省から検定業務をおこなえる唯一の検査機関との指定をうけて、販売会社から仕入れ値の5%、総額で年間8億円という法外な検定料をとっていた。この検定を受けなければ、健康保険の診療報酬の支払いの対象にならないしくみになっておりました。医療食協会と日清医療食品は、共謀して、これをてこに市場独占をはかっていったのであります。

 総理、いま問題になっているのは、たんなる一般の民間企業からの献金問題ではありません(「そうだ」の声)。厚生省からの特別の権限をあたえられた公益法人が、それをてこに厚生行政をゆがめていた。そういう業界団体からの献金をもらって、政治的道義にてらしてなんの問題もないのかということを聞いている(「そうだ」の声)。はっきりお答えください。

 首相 誤解のないようにしていただきたいのは、私が政治資金を受けましたのは日本メディカル給食政治連盟であります。日本メディカル給食協会と日本医療食協会というものとは別のものだということを、よくご承知のうえで、そこを混線してお話になっておられます。(志位「ちがいます」の声)病院寝具政治連盟についてたしかに私は受けているということを申しあげております。また日本メディカル給食協会から政治資金をうけたということも申しあげております。日本医療食協会から私は政治資金を受けているのではありません。そこはどうぞきちんと整とんしてお話しいただきたい。いずれにいたしましても93年の6月以降、政治資金をこの協会から受けていない。個別の企業としてワタキューの政治献金があることを私は隠しておりません。

政治献金が利権の温存につながったのではないか

 志位 私は、きちんと仕分けをして、さっきも聞いたんですよ。日本寝具協会について政治連盟から出ている。メディカル給食協会は政治連盟から出ている。そのメディカル給食協会の最大手の会員企業である日清医療食品が公取から摘発されているといったんです。そして、この日清医療食品はメディカル協会のなかの市場のだいたい3割くらいを占めているわけですから、そういう有力企業からの金がまわったといえるわけですよ。これは、きちんと仕分けして聞いているわけですから、ちゃんと答えていただきたい。

 あなたは、この問題について、ほんとうに責任がないという態度をおとりになるけれども、利権の構造が長期にわたって温存されたという問題があると思うんですよ。厚生省が、そういう特別の権限を公益法人にゆだねたならば、その権限を公正・厳正に使われているかどうかをきびしく監督する責任が厚生省にはあるんですよ。

 ところが、そういうチェック機能が働かなかったわけです。公正取引委員会という外部の組織が摘発に入るまで、厚生省の自浄能力はまったく機能しなかった。なぜ、自浄能力、チェック機能が働かなかったのか。業者と行政がゆ着している、さらに業界と政治がゆ着しているからではないのか。厚生行政に大きな影響力をもつ政治家への政治献金が、厚生省お墨付きのいわば利権の特権――業務代行保証にしても、医療食の検定にしても、利権のうまい汁を吸える特権の温存につながったということじゃないですか。つながってないとどうしていえますか。これが問われているんですよ。(拍手)

 首相 いずれにしても、私は先ほどから事実をもってお答えしておりますように、93年7月6日という、その時点以降、2つの政治連盟から政治資金を受けいれておりません。そして、それからしばらくたって公正取引委員会から、排除勧告なり、警告なりがおこなわれております。そして、その時点において、いま議員がご指摘になりましたような状況を存じていたわけではございません。

「批判は甘受しなければならない」「知っていればちゅうちょすべきものだった」(首相)

健康保険会計を“財源”とする献金をうけて胸が痛まないのか

 志位 94年以降献金を受けていないのはあたりまえなんです。その政治連盟(寝具政治連盟)が解散してるんですから、受けようにも受けられないんですよ。

 私は、もう一つの角度からこの問題ただしてみたいんですが、独禁法に違反するような悪徳商法のしわよせをうけていたのは何かという問題であります。2つの業界団体が財政的基盤にしていたのは、国民の財産である健康保険会計からの支出です。

 寝具についていえば、市場独占によって市場価格がつりあげられていたわけでありますが、それをかぶっていたのは、健康保険(会計)です。寝具を使用する病院へは、健康保険からの加算金が出ておりましたが、93年当時で1日1人につき17点、170円が支出されておりました。私が推計してみますと、年額800億をこえる公金が出されているわけであります。

 医療食についていえば、この業界を独占していた日清医療食品は、市販の冷凍食品類と質は変わらないのに、検定を受けていたというだけで、市価の1・5倍もの高値をつけ、価格のつりあげによる不当利益だけでも年間90億にのぼる暴利をむさぼっていた。このしわよせをうけたのも、国民の財産である健康保険ですよ。この医療食を買った病院には、1日1人18点、180円の診療報酬が出ていたわけで、総額、94年でみて175億円、累計すれば、制度が発足してから加算金の総額は1200億円をこえた。この制度をなくしたわけですから、これ自体、むだ金だったということがあきらかになったわけです。

 悪徳商法によって、穴があけられていたのは、国民の財産である健康保険なんですよ。そういう業界から、献金をもらうということは、あなたがそのときに公取に摘発されるような事態を知っていたか知らないかは別にして、結果としては、財源は健康保険からの財源ということになる(「そうだ」の声)。首相は、行政をあずかる責任者として、これに胸の痛みを感じないのか。いま、健康保険財政というのは赤字が問題になっております。こういう事態のときに、その赤字の一端をつくった、そういうところから献金をもらっておいて、政治的・道義的責任はないのか、ということを聞いているんです。はっきりとお答えください。

 首相 いま議員のおっしゃるお話のなかで、一点訂正をさせていただきます。94年に両方とも政治団体がなくなったといわれましたが、メディカル給食政治連盟は96年11月の解散であります。(志位「寝具についてです」の声)なお、さきほど引用されました、日本医療食協会の関連の方では、97年の3月に現在の食品等分析調査研究所というのが解散予定となっております。病院寝具協会政治連盟はたしかに94年1月の解散であります。

 そして、健康保険から、われわれは、その企業の方がたが、あるいは個人の方がたが政治連盟をおつくりになって、その政治連盟のお集めになった資金から、政治資金の提供を受けていたと認識をいたしております。問題があるといわれますならば、私は、その批判は甘受しなければならないと思いますけれども、政治連盟からわれわれが政治資金を受けたという事実も明らかに申しあげておきたいと思います。

 志位 政治連盟から受けたというんですけれども、政治連盟と寝具協会というのは一体なんですよ。事務所も同じ場所にある。役員もいっしょです。前理事長が政治連盟の代表をつとめているようなのが最後の実態です。まったくいっしょなんですよ。業界団体がつくっているんですから。そういう政治連盟から受けているということで、問題は解決しないんです。

 私は、先ほどから、理をつくして問題点を指摘しているつもりです。厚生省から特別の権限をあたえられた公益法人の、公取から摘発されるような悪徳のやり方をやっていた業界団体の政治連盟であっても、そういうところからお金をもらうのはいいのか、健康保険を食いものにしたような業界からのお金はいいのかという、私のこの質問についにお答えにならないですね。お答えにならないで、事実の関係だけはおのべになりますけれども、これはあなたの政治姿勢として非常に問題だと思いますよ。

 いま、福祉を食いものにした官僚と行政の癒着が問題となっている。それをただすべき立場にあるのがあなたでしょう(「そうだ」の声)。一点のくもりもあってはいけないんですよ(「そうだ」の声)。政治的・道義的責任を認めなさい。はっきり。

 首相 現在知っております事実をすべてその当時に知っていて、それでなおかつ政治資金を受け入れたかとお問い合わせがあれば、私は当然ながら首をかしげるものであると思います。しかし、当時まったく知らない状況のなかで受け入れていましたものでありますから、その通りの説明を申しあげてまいりました。

 現在すでにここでみなさんからご指摘を受ける以前、マスコミの報道等で知っておりましたような状況をすべて知っておりましたなら、当然のことながら、私自身が考えるところもあったものであろうと思います。ですから、そうした思いはあるのかということであります。現時点において与えられておりますだけの知識を持っていて、この政治資金を受け入れたかといわれれば、私はおそらくそれはちゅうちょすべきものであったと思います。

 しかし、まったく存じなかった時点においての報道でありますから、私は事実関係をその通りに申しあげております。

 志位 知らなかったということでも、そういう出所、性格をもった資金でなかったといい切れないわけですね。この業界団体が、まさにその利権のしかけを温存してほしいというための献金でなかったといい切れない。そういう、国民が疑念をもってしかたないような性格のものであるから、私はあなたにあえて反省をもとめた。

小泉厚相は寝具協会の会長(当時)。ゆがみただす権限も責任もあった

 「公金を受けている団体・企業からはきびしい制限をもうけるべき」「それ(会長職にあった事実)は認めます」(厚相)

 志位 厚生大臣にこの問題をお聞きしたい。厚生大臣にも寝具政治連盟からの献金が渡っております。本会議の答弁で「適正に処理しているから、そういう政治献金が不正のようにいわれるのははなはだ迷惑」とおっしゃいました。しかし、いま問題にしているのは、これまでの質疑を聞いておわかりだと思うんですが、資金の処理の手続きが法的に正当だったかどうかを聞いているんじゃないんです。その資金の出所・性格が厚生行政をあずかる政治家の政治的道義にてらして問題がないのかどうか、それをお聞きしているわけであります。その点であなたのご意見はどうですか。

 小泉厚相 いま、お話の点で、やはり公金を受けている団体や企業からはきびしい制限を設けてしかるべきだと私は思います。そして、私は、厚生大臣在任中、厚生省関係の団体等からは政治献金を自粛しております。

寝具協会会長をつとめた厚相への献金は「知らなかった」ではすまされない

 志位 厚生大臣の在任中に自粛しなければならないものだったら、それ以外でも自粛すべきなんですよ(「そうだ」の声)。だいたい、献金するのは、厚生行政に有力な影響力を持つ政治家が後でいろいろやってくれるということを期待するから献金するのですよ。献金する側は。厚生大臣でなくても。

 じっさい、あなたは竹下内閣、宇野内閣のときの厚生大臣でしょう。その後で少し間があきますが、いままた厚生大臣をやってらっしゃる。そういう時期に献金を受けているわけですから、やはりこれは反省があってしかるべきであります。

 これは、小泉大臣は知らなかったではすまされない問題があると思うんですよ。それは、あなたが92年5月から93年12月、95年5月から96年11月の時期には寝具協会の会長をつとめておられた。会長として、そういう行政にゆがみがあったら、公取に摘発されるような問題点があったら、ゆがみをただすべき立場にありながら、ゆがみをただすどころか、献金をもらっていた。これは反省が必要ではないですか(「そうだ」の声)。

 厚相 名誉会長はしておりましたけれども、実際の運営業務は私はどういうものかさだかには承知しておりません。

会長をつとめていたのは事実――どうして「名誉会長」と偽るのか

 志位 名誉会長ではなく会長であります。私たちは、その点はっきり当事者にあたって寝具協会の関係者から証言をえております。寝具協会が公刊した出版物がありますが、そこにも会長職としてあなたの名前が記載されております。92年5月の総会で選出されております。これが事実ですよ。名誉会長じゃありません。名誉会長なんて職は寝具協会にないんです。(笑い)

 (実物をしめしながら)『病院寝具』というパンフレットがあります。この『病院寝具』の役員等名簿の一番上の会長という欄に「小泉純一郎」と書いてあります。しかも、この総会(96年5月)をやったときの懇親会にあなたが出て、「あいさつ 小泉会長」と写真まで出てますよ。会長なんです。なんで会長やっていたのに、名誉会長だっていつわるんですか。

 会長がどういう権限をもっているか。定款があります。(実物をしめしながら)寝具協会の定款によれば、「会長は、重要事項について意見を述べ、必要に応じ指示又は理事会の求めによりこれを処理することができる」。書いてあるじゃないですか。名誉職じゃないんですよ。ゆがみがあったら、指示をする権限もあるし責任もある(「そうだ」の声)。どうですか。

 厚相 私は、その協会なり政治連盟の会合で議事とかそういう問題にいっさい関与しておりません。私は、名誉的な会長をおおせつかったというふうに自覚しております。

 志位 それはごまかさないでいただきたい。あなたが理事長だとか理事をやったといってるんじゃないんです。会長職にあったという事実を指摘しているんです(厚相「それは認めます」)。それは認めますね。じゃあ、名誉会長じゃないですね(厚相うなずく)。

(寝具協会の)定款にはちゃんと、十七条に会長の権限が書いてあるんです。

福祉をくいものにした汚職をただすべき首相と厚相が、医療をくいものにした業界から献金

――これでまっとうな政治ができるか

 志位 いいですか、あなたは、寝具協会で独禁法にふれるような悪徳商法をやっていたらただすべき立場にあったんですよ。それをたださないで、会長にあったじゃないかといわれれば、名誉会長だと言い訳する。証拠を突きつけられれば、しぶしぶ認める。こんな反省のない態度で厚生大臣はつとまりますか。ほんとうにあなた、感覚まひにおちいっていると思うんですよ。あなたがた。

 特別養護老人ホームをめぐる汚職と、病院寝具と医療食をめぐる悪徳商法というのは、程度の違いはもちろんあります。片方は汚職で、片方は政治献金の問題ですが、私は、共通の利権の構造があると思います。それは、厚生省のつくった制度、すなわち、補助金や許認可、あるいは業務代行保証や検定制度などが悪用されているということ、これが第一。第二に、それをてこに国民の公金が食いものにされているということであります。かたや福祉にかかわる補助金、税金が食いものにされ、かたや健康保険会計が食いものにされている。福祉を食いものにした官僚と業者の悪行をただすべき橋本さんや小泉さんが、医療を食いものにした業界団体から献金を受け取って、その献金の財源は国民の保険料だ。それに胸の痛みを感じないようでどうしてまっとうな行政ができるか。ましてや、行政改革を語る資格はないといわなければなりません。(「そうだ」の声、拍手)

厚生行政にかかわる企業献金をきっぱりやめよ

 志位 私はこのさい、この問題にとどまらず、献金の問題というのは、製薬業界からの巨額献金、これも薬害エイズの問題とのかかわりで指摘された問題であります。総理にぜひこのさい検討していただきたいのは、これだけ厚生省にかかわる汚職が噴き出し、厚生省の信頼が失墜している、こういう現状があります。そして厚生行政というのは、その多くが、国民の税金、補助金あるいは、健康保険、医療保険、そういうものを財政的基盤にして成り立っている分野であります。ですから、私ども日本共産党は企業献金の全面禁止こそ政官業ゆ着の打破のかなめだと考えておりますが、その第一歩として、厚生省にかかわる業界からの献金はきっぱりやめる、こういう立場に立つべきだと思いますが、総理いかがでしょう。

 首相 まず、現在、厚生前事務次官にかかわります事件については、今後、当然のことながら、司法当局により厳正な捜査がおこなわれると思われます。その他の一連の不祥事についても、厚生省自身、その事実関係を確認したうえで、厳正な処分をおこなうと同時に、綱紀の粛正等、いっそうの努力をすると思います。また、今回、その社会福祉施設整備費などのしくみが悪用されたという点については、事実関係を究明したうえで、再発防止策に早急にとりくむことになっております。

 政治資金について、先ほどからのご意見をいただきました。現在、政治資金規正法においては、政治活動にかんする寄付について量的な規制のほかに、たとえば、国などから補助金を受けている団体は寄付をしてはならないという質的制限も設けられています。しかし、特定の分野をさだめて、それを対象とした規制はおこなわれていないところであります。私は、その当否は収支を公開することなどを通じて、国民の判断に待つべきものだと思います。

 志位 なかなか前向きの答弁が出てこないんですがね。「綱紀粛正」ということをいわれましたが、それをいうなら、まず「隗(かい)より始めよ」ということを強く主張します。

 

その2/消費税

自民党の“公約”の実態見れば、増税実施の資格なし

自民党が党全体として「5%増税」を堂々と公約して総選挙をやったなどという実態にあったか

「自由民主党という名のとおりに、それぞれが主張をした」(首相)


  志位 つぎの問題にうつります。消費税の問題であります。まずお聞きしたいのは、総選挙での自民党の公約とのかかわりについてであります。わが党の不破委員長が衆院本会議で、「消費税増税は国民の信任を得たと認識しているのか」とただしたのにたいし、首相は、「私は、…消費税率の引き上げの必要性を真剣に訴えてきた」と答弁されました。「私は」ということで、一人称で。たしかに首相は「訴えた」かもしれない。しかし、自民党が党全体として「5%増税」を堂々と公約して選挙をやったという実態にありましたか。総理はこれ、どう認識されておりますか。

 首相 党として、消費税の税率の引き上げは、国民にたいして、訴えておりました。そして、党を代表する立場での私も、同じように、ぎりぎり回れたのは、自分の選挙区を除けば106選挙区でありますが、その大半の場所において、消費税の引き上げを私は、お願いを申しあげております。

公認候補の半数以上が「条件付き」「延期」「据え置き」――黙認したではないか

 志位 「党として」は訴えられたというのがご答弁だったと思うんですが、読売新聞が選挙中におこなったアンケート調査があります。選択式のアンケートになっているものですが、自民党の公認候補者のなかで、「政府の方針どおり来年4月に5%にすべきだ」と答えたのは、20・9%、わずか5人に1人であります。「5%にする前に行政改革を徹底すべきだ」が41・8%。「景気が回復するまで延期すべきだ」が15・1%。「税率引き上げは中止すべきだ」が1・2%。「その他」が20・9%。半数以上の候補者が、「延期」「据え置き」「条件付き」などを掲げていたことは動かせない事実であります。

 問題は「党として」とおっしゃったが、そういう候補者にたいして、党としてどう対応したかであります。私、大変印象深いのは、自民党の政調会長が、ある民放番組のなかで、この問題について問われて、「さまざまな党内調整をやって選挙にのぞんだが、意見をのべることについては黙認することにしています」とこうはっきりのべております。たまたま、党の方針と違う候補者が言ったというんではないんです。そういう意見を言うのを党として黙認していたんじゃないですか。どうでしょう。

 首相 税制というものは、国民の信頼と理解が必要なものであることはいうまでもありませんし、選挙中の発言については、国会での論議、あるいは「行革」の実行などをつうじて、税にたいする国民の理解と信頼を高めていくことが重要と、こうした視点の趣旨と理解をしております。そして、私どもは、まさに自由民主党という名前のとおりに、これで決めたのだから、何も他のことをいっさいしゃべってはならんなどというやり方をいたしておりません。それぞれが信ずることを議論し、それを党としてとりまとめたうえで、国政のなかにおける、われわれの公約として位置づけております。

党本部の「了解と指導」で「据え置き」を公約にする「自由新報」

 志位 一般的に理解と信頼をえるための討論じゃないんですよ。有権者にたいしてそういう公約をしたことについて、党として黙認していたということが実態だったら、それは問題だといっているわけです。

 ここに、自民党本部が発行している「自由新報」の号外がございます。これは、北海道2区の候補者の名前入りのものでありますが、「消費税は現行のまま据えおきに」と書いてあります。でかでかと見出しにでています。これの発行元は、自民党本部なんですね。

 自民党という政党は勝手にいろいろとこういう号外を出せるものかと思って、調べてみました。『総選挙実戦の手引』というものをあなたがたが出していて、そこに「『自由新報』の号外も発行できます。『号外』は随時発行できますので、大いに活用したいと思います。党本部と連絡をとってその了解と指導のもとに『号外』づくりをやって下さい」と書いてあります。つまり、あなたがたの「了解と指導」のもとにつくったということになるんじゃありませんか。どうですか。(大臣席で亀井建設相が大きな身ぶりで「私に質問しろ」「私に答えさせろ」などと再三叫ぶ)総理に聞いてる。あなたに聞いているんじゃない。(笑い)

 首相 私たちは、個々人の議員が自分の意見を主張することを禁止している政党ではございません。そしてそれぞれの良心にしたがって議論をして、その主張をもって党のなかでも論議をたたかわす。そのうえで消費税率の引き上げを、いま、私どもは決めております。

比例東京ブロックの選挙公報――「行革なしには税率アップはありえません」

 志位 党として統一的な公約をしっかりのべるというのは、近代的な政党としてあたりまえのことなんですよ。

 では比例代表選挙ではどうだったか。比例の東京ブロックを見た場合にですね、こういう選挙公報が出ているんですよ。(選挙公報の現物をしめしながら)あなた(橋本首相)の大きな顔写真が入った、これが選挙公報です。この選挙公報に出ている。これは比例の公報ですよ。つまり個人の問題じゃありません。(首相「どこのブロックですか」の声)東京ブロックです。(深谷隆司予算委員長を指さして)あなたのところですね(笑い)。あなたが名簿のトップで凍結派の旗頭だった。あなたが名簿のトップだった東京ブロックです。

 「一日も早い景気回復をめざす追加補正予算の成立と国民が求める『小さな政府』への行政改革なくして 消費税率アップはありえません」。比例の公報が出ている。行革を実行することが――あなたがたのいう「行革」と私たちのいう行革は違いますが――行革の実施が消費税率アップの前提だと比例代表の公報で書いてあるじゃありませんか。そうすると、行革なしの税率アップはやらないというのが政党としてのあなたがたの公約ということになるじゃありませんか。どうですか。

 首相 行政改革はこれまでもこつこつと積み重ねてきました。これからも進めてまいります。くりかえして申しあげているところであります。

 志位 行政改革の一般的な決意とか、努力をやるということをいっているんじゃないんです。(選挙公報には)この行政改革ということが出ていて、具体的に省庁の数を半分に減らすとか、いろいろ書いてあります。これを読んだ有権者の方は、そういう行革が実行されるまでは少なくともアップはありえませんとみんな思いますよ。やっぱりこれがあなたがたの政党としての公約なんですよ。これはきちんと守ってもらわなくては困る。

 しかも内閣の顔ぶれを見ますとね。(亀井建設相が再び「おれに答えさせろ」などと叫ぶ)個々には聞きません。時間がありませんから。まだ大事な問題があるんです。

 個々には聞くひまありませんけどね、内閣の閣僚のなかでさまざまな意見をのべられた人がいる。はっきり「5%増税」と明記された方は7人しかおられません。8人の方は「延期」といってみたり、「税率見直しをやります」といってみたり、さまざまな「条件付き」のことをいっている。内閣不統一なんですよ。ですから「決まったこと」としないで、内閣として税率引き上げの是非について、再検討をお願いしたい。いかがでしょうか。

 首相 非常に大事な点の指摘でありますから、個々の閣僚の意見もお聞きいただきたい。内閣不統一のつもりはありません。

「税率再検討」を公約した建設相――内閣で問題を提起すべきではないか

 志位 それでは1人だけ聞きましょう。亀井大臣。(亀井大臣が答弁席に立ってくる)まだ私は、質問していない。質問をよく聞いてから(場内から大きな笑い)。あなたは選挙公報で「税率を再検討することをお約束します」とおっしゃっていますね。ですから、あなたに聞きたいのは、一点なんですよ。内閣のなかで税率引き上げの是非を再検討すべきだという提起を、あなたは当然やるべきです。やるかやらないか。この一点だけ。長々、答弁しちゃだめですよ。時間ないんですから。

 亀井建設相 委員のご質問にお答え申しあげます。まず、(志位「簡単に」)簡単にというわけにはいかない。選挙で自由民主党が公約しておりましたことは、ただ一点。選挙後、国会に特別委員会を設置をして消費税等について議論をするということが正式な公約でございます。私は、組織広報本部長をやっておりました。選挙戦において個々の候補者等が、消費税をふくむ税制について国民の方がたと議論をたたかわし、また、自分の意見をいうのは当然であります。総理は、閣議決定をされたご自身でありますから、そういう立場から、国民にたいして理解を訴えつづけられたことは当然でありまして、別に党規違反じゃございません。また、自由な論議をするということをいった者も、党規違反でもございません。要は、特別委員会における議論の結果、これが決まりますと、これは議会制民主主義でありますから、総理も特別委員会の結論にしたがうということはあたりまえの話だと思います。そういうことでありますから、私は「再検討」ということをいったことも当然の話でございます。(志位「閣議で提起しますか」)閣議で提起するということよりも…(志位「提起するかどうか」)公約しましたのは、特別委員会において国会の議論を新しい国民の…(志位「あなたの公報に書いてある」)あなた、立って質問してください。特別委員会において新たな国民の代表の方がたが自由な立場から、消費税についても議論をして結論を出される。私はいま、閣内におりますから、現在においては閣議決定が取り消されておりませんから、私はその立場におるというだけの話です。

 志位 閣内にいるということで有権者への公約をほごにすることはできないんですよ。これは、あなたが有権者に税率の…(ここで亀井大臣が勝手に答弁席に立とうとする)(委員長から)指されていないんだから。私は、もう一つ大事な質問があるんで、あなたといつまでもやってるわけにいかないんですよ(場内に大きな笑い)。閣内にいるということで、あなたが有権者に(公約した)“税率見直しをかならずやります”“引き上げの是非についての見直しやります”と、この公約をほごにすることはできないんです。ですから、違うことをいっているのは当然だ、それは党規違反じゃないんだ、党として認めてやったんだということだったら、もう増税はやれないでしょう。増税を実施する資格はないんですよ(「そうだ」の声)。公約に忠実なら、増税はできません(「そうだ」の声)。そのことをはっきりいっておきます。

企業に新たな税負担もとめず、国民におしつければ、21世紀初頭には税率2けた台に

「試算をいちがいに否定するつもりはない」(首相)

「消費税=高齢社会に適した税制」論の危険な落とし穴

 志位 もう一つ大事な問題があるんで、お聞きしたいと思います。将来の税制像とのかかわりで消費税問題についてお聞きしたいと思うんです。総理は本会議の答弁で、「消費税というものは高齢社会の財源としてすぐれており、高齢社会にとって不可欠な税制」とのべられました。しかし私は、この議論は消費税導入後に実際におこなわれた政治の実態にあわないだけでなく、大変危険な落とし穴があると考えます。

 まず、聞きたいのは、総理は将来に向けて企業の税金、法人税をどうしていくおつもりなのかということであります。自民党の総選挙公約をみますと、「法人課税引き下げ」を公約しております。自民党の政調会長も「総選挙で法人税率の実質軽減を公約している」と明言されました。将来的には、この法人税の実質減税をおこなっていくというのが、自民党の公約ですか。総理にうかがいたいと思います。

 首相 いま、企業が立地する国を選ぶ時代といわれていることは、議員もご承知のとおりであります。そして、いかにしてそれぞれの国は、投資を呼び込むかについてさまざまな意味での苦労も検討もいたしております。そうしたなかにおいて、わが国が投資先としての新たな企業を立地するうえでの、非常に不利な要件の一つ、これは高コスト構造というものに起因する部分、同時に法人税をふくみました企業負担というものが他国に比べて重いという意見があることも事実であります。ですから、法人税の負担というものをある程度軽減していくことによって、日本に投資をする意欲を増大させるという必要性があることは間違いない。

 志位 日本の法人税が高すぎるという議論ですが、先日出された政府税調の法人課税小委員会の報告をみても、課税ベースが日本の場合、非常に狭いですから、そういうことも勘案してみますと、単純な比較はできない。この小委員会委員の一人である東大の神野教授によると、フランス、ドイツ、アメリカなどと比べると、社会保険料負担をふくめると、日本(の企業負担)は7割から8割の直接税負担になっているという試算もあります(自動車産業)。

 この問題については、あなたと私は見解を異にするわけですが、あなたのお答えは、ともかく将来的には、法人税については軽減を検討しうるということだったと思う。

 もう一点うかがいたい。総理は、国民負担率、すなわち、国民所得に占める租税負担と社会保障負担の合計がどうなると考えているのか。「橋本行革ビジョン」を拝見しましたが、人口の高齢化がピークになったさい、「その上限は極力50%をこえることのないよう、45%程度にとどまることをめざすべきである」とのべています。この考えで間違いありませんね。

 首相 それは私が従来からそう夢見てきた、そしてみなさまにも語りかけてきた、そのとおりのことです。ただし、同時に、産構審、経済審等の意見からいま出てくるものは、かりに現在の制度、しくみをまったく変えず、そのままの延長で歳出、歳入の構造を変えずにつづけていった場合、その数字の中におさまるという状況ではございません。そして、財政構造改革も社会保障構造改革もおこなわなければ、とうていその範囲におさまらないという試算が出ていることを申し添えます。

首相の考えにそってすすめば、消費税大増税は必至

 志位 総理のおっしゃる「改革」をした場合の上限が、45%から最大50%というご答弁だったと思うんですが、そうしますと、将来の税制についての総理の考え方を要約すると、一方で国民負担率は、そういうあなたのおっしゃる「改革」の努力をしたとしても現在の36%から45%ないし50%に引き上げざるをえない。他方でしかし、企業、法人にたいしては新たな税負担はもとめない。むしろ、実質減税を将来は検討しなくてはならない。そして、消費税は「高齢社会に適した税制」だと。この三つの命題が出てくるわけですよ。

 この三つの命題にそくして、今後、企業に新たな税負担をもとめないと仮定した場合――企業減税を考慮に入れていません――、新たな税負担をもとめない、企業の税負担を据え置いた場合に、国民負担率が増大することにともなって、新たな税負担の増加を消費税でまかなった場合、その消費税率の変化を試算してみました。

 経済成長率や国民負担率の推移については、総理自身の諮問機関である経済審議会の財政・社会保障問題ワーキング・グループが10月22日に発表した「国民負担率の意味とその将来展望」のなかのシミュレーション結果の数字を使用しました。これが、そのパネルです。

(パネルをしめしながら)見ていただきたいんですが、こちらの方の濃い青い字で書いてあるのが、国民負担率の数字です。棒グラフが、国民負担率です。こちらの赤い折れ線グラフになっているのが、消費税率の推移です。2000年になりますと、だいたい国民負担率40%、消費税率で六%にあたります。2010年に国民負担率45%になった場合に、消費税率10%、2025年にだいたい50%になった場合には、税率17%になりますよ。

 これは、かなり控えめな計算です。たとえば、所得税の減税などは考慮していません。当然、経済成長にともなって、減税が必要になってきますが、そういうことを考慮していませんから、かなり控えめですが、こういう数値が出てまいります。これは理の当然でして、一方で企業には新たな税負担をもとめないわけでしょう。企業の負担を減らすことは考えても、(首相には)増やすという選択肢はないわけですよ。その一方で、国民負担率は「行革」をしても上がらざるをえない、この二つの条件を所与の条件にして、「高齢社会に適した税制」が消費税だということになれば、こうなってしまう。細かい計算は、あとであなたにお届けしたいと思いますが、あなたの直属の諮問機関である経済審議会の数値を全部使ったうえでの計算ですから、たしかなものです。やはり、あなたの考え方でいきますと、21世紀の初頭には、消費税率2ケタの時代に必ずなってしまうんです。いかがでしょう。

 首相 私は、議員が苦労して試算されたものをいちがいに否定するつもりはありませんけれども、そこに採用された要因をあとでくださるということですから、頂戴(ちょうだい)いたしたい。

 同時に、その場合に社会保険の改革とか、その他の要素をどの程度に見込んでいるのか、私はいまそれを拝見しただけで、その図表が、おそらく特定の前提を置いた試算としては、それは正しいものだろうと思いますけれども、その結論ににわかにしたがうつもりはございません。そして同時に、私たちは日本が21世紀になっても活力のある社会でありつづけるためには、日本に新たな産業がおこってもらわなければならない。また、日本に積極的な投資がおこなわれる状況、しかも生産に結びつく投資がおこなわれる状況をつくらなければならないと考えております。そして、そうした場合、他の国ぐにとのいわば、新たな産業の誘致の大きなわれわれにとってハンディになっていますのは、一つは高コスト構造であり、あるいは規制の問題であり、企業負担の問題であり、といくつもの要素があります。規制緩和は一方ですすめつつありますし、それにともなう高コスト構造の是正というものもある程度、これからすすんでいくでありましょう。要は、新たな産業を立ち上げることができるか。そして、その企業が国際的競争力を持ちうるか、こうした視点を私は捨てることはできません。

消費税は大企業が負担ゼロの税金――企業に負担増をもとめない考えがまちがっている

 志位 試算の細かい数字は、いまお渡ししたいんですが、よろしいでしょうか(「後でちょうだいいたします」と首相)、それじゃ後でお渡しいたします。総理は、社会保障制度などの「改革」をやった場合のケースはどうかということもいわれました。私どもは、あなた方の「改革」は、(国民にとって)「改悪」だと思っておりますが、その「改革」をやった場合のケースも試算しております。もう一つのケースとして。その「改革」をやったとしても、消費税率はやはり、14%ぐらいまでひきあがります。やっぱりそういう試算がでてまいりますから、私どもの試算をよく検討していただきたい。

 あなたの考えで、新しい社会に向けて企業に税負担をもとめない。新たな税負担をもとめないという考え方になれば、全部庶民に税がかぶさってくるということになるんです。私はその考えがまちがっていると思う。あなたは活力というんですけどね、日本経済の活力というのは、GNPの6割を占める個人消費、国民生活を豊かにしてこそ、日本経済の活力がでてくるんですよ。99%を占める中小業者、零細業者、この方がたの雇用と営業を安定させてこそ、日本経済の活力がでてくる。消費税という税金は、大企業には実質税負担がゼロなんですね。すべて転嫁できるんですから。この消費税を払っているのは、転嫁できない中小業者の方がた、零細業者の方がた、消費者の方がたなんです。やはり、そこに21世紀の負担を背負わせていく形は、私は絶対に認めるわけには、いかない。

 首相 あなたがいま聞かれた零細、中小の方がたがいまどういう状況か。親企業は海外に転出したために、その仕事を失いつつある。それにたいして、新しい産業をわれわれは立ち上がらせないといけないと考えています。そういう点を考えていただいたうえで、十分なご議論をいただきたい。

「高すぎる法人税が空洞化の原因」――財界のつくった根拠ないつくりごと

 志位 海外に出ていくという問題をいまいわれましたけど、私はたとえば税制のしくみ一つとっても、外国税額控除というのがあって、ソニーのような会社でも、法人税、住民税を(95年度に)ただの一円も払っていませんよ。全部控除になっているんです。海外に出ていったら、いくほど税金をまけてやっているしくみをつくっているじゃありませんか。空洞化をすすめているじゃありませんか。

 私は高すぎる法人税が空洞化の原因だなどというのは、財界がつくったつくりごとだと思います。国際比較をみても、こんどの政府税調の法人課税小委員会の報告をみても、“一概にそういうことはいえない”、“アメリカ、ドイツ、フランスでは法人税率をむしろ引き上げる方向にあることも留意すべきである”。ここまでいっているんですから、やはりこのことはしっかり、検討する必要がある。あなたのレールに乗せられたら、将来2ケタ税率になるという点でも、私たちは消費税の増税には絶対に反対をつらぬくということを、最後に申しあげまして、私の質問を終わります。(拍手)

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国民負担率の変化に伴う企業と国民の負担割合および消費税率の変化について

 今後、企業にたいして新たな増税をおこなわないとした場合に、(1)国民負担率が増大することにともなう企業と国民(個人)の負担割合の変化、(2)新たな税負担の増加を消費税でまかなうとした場合の消費税率の変化―を推計した。

(前提条件)

1、経済成長率や国民負担率の推移については、経済審議会の財政・社会保障問題ワーキンググループが10月22日に発表した「国民負担率の意味とその将来展望」の中のシミュレーション結果の数字を使用した。

2、租税のうち企業負担となるものは、法人税、利子源泉所得税のうちの法人分、地価税(以上国税)、法人住民税、法人事業税、固定資産税のうちの法人分(以上地方税)などである。

3、所得税(個人分)と個人住民税については税収弾性値を1.1とし、法人3税と所得税の法人分については弾性値1.0の場合、1.1の場合の両方について試算した。他の税金については弾性値1.0とした。

(注)(1)所得税の減税は考慮していない。(減税する場合は、その分だけ消費税が増税されることになる)

(2)社会保険料の増加分の企業損金への算入や個人の社会保険料控除の増加による税収減については、考慮していない。(考慮した場合は法人税、所得税等が減少するため、消費税が増税されることになる)

4、97年度から消費税率が5%とされ、特別減税が廃止された場合を仮定した。

5、社会保障負担についての雇主と雇用者の負担割合は、94年の比率が変化せず推移るものと仮定した。



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