1999年3月28日「しんぶん赤旗」

衆院ガイドライン特別委員会

志位書記局長の総括質疑(大要)

1.『後方地域支援』は、米軍の軍事活動に、効果的に貢献する活動か
2. 『後方地域支援』は、国際法で文民・民用物として保護される対象か、軍事目標とされる対象か、どちらか
3. 兵たん活動が、戦争行為であることは、世界の常識、軍事の常識だ
4.わが党が入手した統合幕僚会議の部内資料では、3次にわたる対日軍事要求がおこなわれ、対処方針が検討されていることをしめしている
5. 民間空港・港湾の2―4―b化は、事実上の米軍の『基地化』ということになる。こんな検討までしているのか
6. 94〜95年にアメリカが日本に要求した項目が、そのまま今度の法案になっている。まさにアメリカの要求で作られたものではないか


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志位氏「『後方地域支援』は、米軍の軍事活動に、効果的に貢献する活動か」

外相
「日本の役に立つ活動をしている米軍のために役立つ」

 志位和夫書記局長 私は、日本共産党を代表して小渕総理ならびに関連閣僚に質問いたします。
 まず、ガイドライン法案と、憲法九条とのかかわりについてであります。
 憲法九条の第一項では、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という戦争放棄の条項がございます。この憲法九条とガイドライン法案が両立しうるのかという問題について、まず究明したいと思います。

武器・弾薬輸送、燃料補給など「後方地域支援」は、軍事の世界では兵たんとよばれている活動

 志位 法案には、「周辺事態への対応」として米軍が軍事活動をおこした際に、それへの「後方地域支援」をおこなうことが書かれています。その活動の内容は、たとえば武器・弾薬・兵員の輸送、燃料などの補給、壊れた戦車の修理、傷病兵の医療、通信情報での支援などの活動で、軍事の世界では兵たんとよばれている活動であります。
 そこでまず、基本的認識として総理におうかがいしますが、この、米軍のおこなう軍事活動と、これらの自衛隊などのおこなう「後方地域支援」との関係についてです。法案でいう、「後方地域支援」と呼ばれるものは、米軍の軍事活動の遂行に効果的に貢献するということを主眼にした活動だと思いますが、念のため確認しておきたいと思います。

 小渕恵三首相 ガイドライン法をめぐっての「後方地域支援」は、あくまでもわが国の平和と安全に効果的成果を得るためのことでございますので、憲法違反にかかわることではまったくない、わが国の当然のなすべき手段だと考えております。
 志位 「日本の平和と安全のため」とあなた方はおっしゃる、私たちはそうではないと考えておりますが、私がうかがったのは、その問題ではないんです。米軍の軍事行動と、自衛隊の行動との関係を聞いたんですよ。
 この問題は、ガイドラインの本文をみれば明りょうです。九七年九月に結ばれたこのガイドラインを読みますと、「後方地域支援」についてこう書いてあります。「後方地域支援は米軍が施設の使用及び種々の活動を効果的に行うことを可能とすることを主眼とするものである」。米軍の活動を効果的にできるように助けると、これを主眼とするものだと、こういうのを軍事活動に効果的に貢献する活動というんじゃないんですか。米軍の活動と自衛隊の活動の関係を聞いているんです。総理お答えください。

 首相 米軍が安保条約の目的とするわが国の安全と、極東の範囲における安全のためにこれを効果的に行動することにつきまして、わが国としてアメリカ軍の行為について、これを協力するということは安保条約にございます。今度のガイドラインの法案は、そのなかにおけるわが国の安全についておこなう周辺事態にたいする対応でございまして、いま、アメリカ軍の行為と、ひとことでいわれましても、これがどこの範囲で、何を示しているのかということを聞きませんと、具体的に答えるということは、はなはだ困難でございます。

 志位 ガイドラインで前提にしている米軍の行動はいろいろあるでしょう。しかし、米軍の武力行使もこれは当然想定している活動なわけですよ。この武力行使もふくめた米軍の軍事活動にたいして、自衛隊のやる武器・弾薬とか兵員の輸送、公海上に出ていってやる活動です。この活動が、米軍の活動をまさに支援する、「後方地域支援」といっているんですから支援する活動でしょう、この支援する活動が、その支援の結果として米軍の軍事活動に貢献することになる活動でしょうということを聞いているんです。なんで答えないんですか。米軍の活動と自衛隊の活動の関係を聞いているんです。(場内騒然、志位「静かにしてください」)

 首相 再度申し上げますけれども、その米軍の行動というものを軍事行動だといわれますが、それは何のためにおこなうのだということを十分説明をされませんと、それにたいしての答弁はしかとできかねるものであります。

「支援」というからには、米軍に貢献する活動。なぜこんな簡単なことに答えられないのか

志位 それはかりに、「日本の平和と安全のため」にやられる活動であったとしてもですよ――私たちはそう考えておりませんが――あったとしても、米軍が軍事行動をやるわけですよ。この軍事行動と、自衛隊の「後方地域支援」という活動との関係を聞いているんです。「支援」というからには、米軍の軍事活動に役に立つ活動をやるんでしょう。役に立たない、足をひっぱる活動をやるわけではないでしょう。役に立つ活動なのか、役に立たない活動なのか、かみくだいていえばそういうことなんですから、きちんとお答えください。なんでこんなこと答えられないのか。
(答弁に立とうとしない首相にたいし)総理、総理。総理。

 首相 (「周辺事態法案」)第三条におきまして、後方支援につきましては「周辺事態に際して日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の目的の達成に寄与する活動を行っているアメリカ合衆国の軍隊に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置」によって、後方支援において「我が国が実施するもの」であるということでございますので、支援措置であります。

 志位 ですから、その支援措置が米軍の軍事活動に貢献するかしないかを聞いているんです。

 野呂田芳成防衛庁長官 先ほど委員がふれられたガイドラインのなかにもありますが、「後方地域支援は米軍が施設の使用および種々の活動を効果的に行うことを可能とすることを主眼とするものである」ということになっていますが、私どもはこの法案にもとづいて実施することを想定している米軍にたいする「後方地域支援」は、それ自体は武力の行使に該当しない、また、米軍の武力行使との一体化の問題を生じさせることを想定していない、こういうふうに考えます。後方支援の活動は、わが国の平和および安全の確保のためにおこなわれるものでありまして、他国の武力紛争に加担するというものではないと考えております。

 志位 全然答えになっていないですね。
 私は、簡単なことを聞いているんですよ。武力行使と一体かどうかということを聞いているんじゃないんです。よろしいですか。私が聞いているのは、米軍の軍事活動と自衛隊の「後方地域支援」がどういう関係にあるか。支援というからには、米軍の活動に貢献する活動ではないですかと。貢献とは、かみくだいていえば、役に立つ活動ではないですかと。役に立つか、役に立たないか、なんでこんな簡単なことが答えられないんですか。総理、これ答えなかったら話が進みません。(場内騒然)役に立つか、立たないか、なんです。(答弁に立とうとしない首相。志位氏は「ちゃんと答えさせてください、ちゃんと」と委員長に求める)

 首相 さきほど、ていねいにご答弁したつもりですが、あくまでも支援でございまして、米軍の効果を発揮するとか、そういう問題ではありません。
 少なくともいまお話をされようとしていることは、自主的なこの法案の意味するところでありまして、あくまでもわが国の平和を脅かす事態の拡大を抑止し、平和を確保するためのものであり、そのために米国は国連憲章、国際法上にもとづいて平和の確保のための活動をおこない、それもまず武力行使をおこなうというわけではなくて、わが国がこれに協力するということでございまして、従来の共産党のご意見をずっと聞いてますと、これが「戦争法案」という感じがいたしておりまして、むしろ「平和確保法案」というのがこの法案であることをはっきりと国民の前に申し上げたい。

 志位 私の質問に答えていただかなくては本当に困ります。いま、支援するとおっしゃった。その支援の結果が米軍の活動に役に立つか役に立たないかということを聞いているんです(「そうだ」の声)。役に立つ支援をやるんでしょう。役に立たない支援をやるんですか、あなた方は。米軍の足を引っ張ることをやるんですか。そうじゃないでしょう。米軍が活動しやすいようにする。ガイドラインに書いてあるじゃないですか。米軍の活動が効果的にできるようにする、そのためにやる活動、それが眼目なんだと書いてあるじゃないですか。きちんと答えてください。

 高村正彦外相 総理が明快に答えていますように、日本の平和と安全に役に立つ活動をおこなっている米軍のために役に立つと、こういうことでございます。
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志位氏「『後方地域支援』は、国際法で文民・民用物として保護される対象か、軍事目標とされる対象か、どちらか」

条約局長「条文を精査したうえでお答え申し上げたい」(質問の最後に)「自衛隊の艦船、航空機は軍事目標になる」

「ジュネーブ条約の追加議定書」国際的武力紛争のさいの犠牲者保護の国際条約において、自衛隊の活動はどう扱われるか

 志位 やっと、役に立つということを認めました。「日本の平和と安全のために役に立つ活動をやっている米軍の活動に役に立つ」といいましたね。ですから貢献ということです。これは、寄与ということです。そのことをお認めになりました。
 そこで私は、つぎに進みたいと思います。そういう活動が、国際法的にどう扱われるかがつぎに問題になります。
 戦後、国連憲章のもとで、戦争と武力行使は一般的に禁止されました。しかし、そのもとでも国際的な武力紛争は繰り返されました。そこで、国際的な武力紛争が起こった際に、戦争の犠牲者を保護する、文民や民用物を保護するということが必要とされました。こうしてつくられたのが、一九四九年のいわゆるジュネーブ四条約「戦争犠牲者の保護に関する条約」と、一九七七年の「国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(第一議定書)」です。「追加議定書」は、百五十四の国が批准し、国際的に確立したルールです。この「追加議定書」には、この問題についてなんと書かれているか。(パネルAを示す)
 第五二条に「民用物の一般的保護」という条文があります。第一項、「民用物は、攻撃又は復仇(ふっきゅう)の対象としてはならない。民用物とは、2に定める軍事目標以外のすべての物をいう」。第二項、「攻撃は、厳格に軍事目標に限定する。軍事目標は、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に貢献する物で、その全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況の下において明確な軍事的利益をもたらすものに限る」。こういう条文です。
 そこで、総理にうかがいたい。自衛隊などがおこなう「後方地域支援」――軍事活動をおこなっている米軍にたいする武器・弾薬の輸送などの諸活動でありますが、それは、このジュネーブ条約の「追加議定書」の五二条で、第一項の文民、民用物として保護の対象になるものか、それとも、第二項の、保護の対象にならず、軍事目標にされるものか。どっちに仕分けされるんですか。総理、どうぞ。(山崎拓特別委員長が外務省の東郷和彦条約局長を指名したのにたいし、志位氏「総理が手を挙げているでしょう」)

 首相 あらかじめ今日の委員会にたいしての答弁につきまして、志位委員からご質問の要旨をちょうだいしておりません。したがいまして、私としまして、いまのジュネーブの議定書の五二条を十分掌握しておりません。したがいまして、この問題については事務当局から答弁させます。(志位「国際法規でどう扱われるかについては質問通告しました」)

 東郷和彦外務省条約局長 ジュネーブ条約五二条の位置づけについてまず申し上げます。いわゆる戦時国際法、これは戦争が政策遂行の一つの手段として認められていた時代に、戦争の仕方を規律するものとして発達してきたものです。現在の国連憲章のもとでは、自衛権行使や安保理の決定にもとづく軍事行動を別とすれば、武力行使が禁止されており、この結果、伝統的な意味での戦争というものは認められなくなったわけでございます。そこで、国際法におけるこのような戦争観の変化の結果、戦時国際法のうち戦争開始の手続き、中立国の義務等、戦争が違法でないことを前提とした国際法規がそのまま適用される余地はなくなったわけです。
 他方において、従来の戦時国際法中の外的手段の制限、戦争犠牲者の保護等にかかわる国際法規、これは国連憲章のもとにおいても、武力紛争が生じた場合には適用されるものと解されています。以上の次第は、これまで国会において、累次説明しています。
 そこで、ご質問のジュネーブ条約追加議定書五二条二項、これは委員ご紹介の通りですし、たとえばこの内容は、別途サンレモ規約のなかにもそのまま紹介されているところです。それは、ただいま申し上げた国際法規、国連憲章のもとにおいても、武力紛争が生じた場合に適用されるものとして生きているものの一つかと思います。
 他方におきまして、総理、外務大臣から申し上げているように、現在、国連憲章のもとでは戦争状態に入ったときの国家間の権利義務を律する戦時国際法は、そのまま適用されるわけではないわけでありまして、周辺事態においてわが国がおこなう「後方地域支援」、これは違法な武力行使をおこなっている国にたいして、国連憲章および日米安保条約にしたがって行動している米軍にたいしておこなうものであり、国際法上なんら問題のない行為です。こうした後方地域支援にたいして、第三国が攻撃をおこなうこと、これは違法な武力行使の拡大に過ぎず、国際法上、正当化されるものではございません。

ジュネーブ条約の「追加議定書」前文
 締約国は、
 人民の間に平和がゆきわたることを熱烈に希望することを宣明し、
 国際連合憲章に基づき、各国が、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の主権、領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎む義務を負っていることを想起し、
 それにもかかわらず、武力紛争の犠牲者を保護する規定を再確認し、発展させ、かつ、その規定の運用を強化するための措置を補完することが必要であると確信し、
 この議定書又は千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約のいかなる規定も、いかなる侵略行為又は国際連合憲章と両立しない他のいかなる武力の行使も正当化し又は許容するものと解することができないとの信念を表明し、
 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約及びこの議定書が、これらの文書によって保護されているすべての人民に対し、武力紛争の性質若しくは起源又は紛争当事国が擁護し若しくは紛争当事国に帰せられる理由に基づくいかなる不利な差別もすることなく、すべての場合において完全に適用されなければならないことを再確認して、
 次のとおり協定した。

文民の保護という点では、侵略国だろうが、その犠牲国だろうが、この条約はひとしく適用される

 志位 いまの答弁で長ながいわれましたけれど、まずこのジュネーブ条約の「追加議定書」というのは、現在の国連憲章のもとでも適用されるということをお認めになりました。戦時国際法のうち、適用されないものも出てきたけれども、適用される人道法などのうちに入る、ということをまず一つお認めになりました。
 そのうえで、いまの答えの中で、相手が不法な武力行使をおこなっている国だから、その武力行使を国際法上正当化する余地はないんだ、ということをお答えになりました。
 しかし、あなたはこれをどっちに仕分けされるかということを、お答えにならなかった。これは非常に大事な問題なんです。
 私たちは、米軍の活動がつねに正義だなどという議論は、いっさい、事実と反していると考えております。これは、一月にこの場でおこなわれました予算委員会の総括質疑でも、私は、八〇年代の米軍によるグレナダ、リビア、パナマなどへの侵略行為には国連総会でも非難決議があがった、あるいは、昨年十二月のイラクにたいする空爆、これは国連安保理でなんら根拠のないものだというものを示して、米軍がつねに正義だなどという議論は通用しないということを申しました。
 しかし、私は、きょうその問題を繰り返そうとは思いません。私がここで聞いているのは、このジュネーブ条約の「追加議定書」の五二条のどちらに入るかという問題なんです。
 このジュネーブ条約(「追加議定書」)というのは、その前文(6ページ別項)で、武力紛争の性格にかかわりなく適用される、ということが明記されておりますね。すなわち、侵略国かあるいはその犠牲国かにかかわりなく、この「議定書」は適用されると。つまり、どうやって始まった戦争にせよ、いったん戦争が始まったら、共通のルールとして適用されるものが、ジュネーブ条約であり、その「追加議定書」であります。
 そのことは、けっして侵略国の権利を保護したり、侵略行為を正当化するという規定ではございません。どんな国であっても、その国の文民、すなわち戦争に関係ない人びとは、これは保護されなければならない。文民保護の規定なんです。文民を保護しなければ、戦争が終了しても憎しみが残り、次の戦争の火種になる。ですから、すべての戦争に適用されるというのは、そのための規定であります。
 そこで、条約局長にうかがいますけれども、文民を保護するという点では、正義の側だろうと不法の側だろうと、双方が拘束される。これは、侵略国であろうとその犠牲国であるかにかかわりなく、この法規が適用される。これは事実の問題として間違いありませんね。

 条約局長 委員ご指摘の問題は、いわゆる軍事目標主義にかかわる問題かと思いますが、これは敵対行為に際しましては、戦闘員と文民、軍事目標と民生物をそれぞれ峻別(しゅんべつ)し、軍事行動はその対象を戦闘員と軍事目標に限定するべきものという考えでございます。すなわち文民を保護しなければいけない、という観点から発する、一つのルールでございます。
 しかしながら、国連憲章のもとにおきまして、不法に、違法に武力を行使するものが、この軍事目標主義にのっとったルールを守ったからといって、その行為が正当化されるということは、現下の国連憲章においてはありえない。これは総理、外務大臣から累次ご説明している通りでございます。
 今回、周辺事態の問題にかんして検討されている事態は、わが国の平和と安全に重要な影響がある事態が起きているところで行動する米軍、これは安保条約と国連憲章にしたがって行動する米軍です。その米軍が対応しているのは、違法に武力を行使している相手方です。したがって、その相手方が、いわゆる軍事目標主義にしたがってルールを守ったからといって、その行動が正当化されるということはありえない、というのが現下の国際法の状況です。
 政府としては、そのように考えて日米安保条約および日米ガイドライン、今回の周辺事態法というものを、(志位「委員長、委員長」)提案しているわけです。
 志位 米軍が正義だという見解にはくみしませんが、ジュネーブ条約の「追加議定書」が、国際法上不法な武力行使をおこなっている国の権利を保護したり、正当化するものではありえない、これはあたりまえのことです。前文の第四パラグラフにもそのことは明記されております。
 しかし、文民を保護しなければならない。戦争が始まったときに、たとえ正義の戦争をやっている国でも、文民を攻撃してはなりません。ましてや、不法な戦争をやっている側は、文民の攻撃など許されるものではありません。双方に共通するルールとして、適用されるんじゃないですかということを、聞いているんですよ。
 侵略国だろうとその犠牲国だろうと、これが平等に適用されるかどうか、はっきりお答えください。これは前文の第五パラグラフに書いてあるでしょう。「武力紛争の性質」および「起源」にかかわりなく、これは「すべての場合に」適用される。書いてあるじゃないですか。その点に限ってお答えください。
 条約局長 国連憲章下におきまして、伝統的ないわゆる交戦法規、これは変質を遂げつつあります。変質を遂げつつある過程の中で、一部の交戦法規、これは委員ご指摘のように有効に生きていると、私ども考えております。
 しかしながら、その変質を遂げている状況におきまして、合法的に武力を行使する勢力と、違法に武力を行使する勢力ということに、世界は基本的に分かれつつあります。違法に武力を行使する勢力が、交戦が始まった場合に守られるべきそのルールを守ったからといって、その行為が正当化されることはあり得ない、ということを申し上げたわけでございます。(志位「委員長、ちゃんと答えなきゃだめですよ。ちゃんと答えなきゃだめですよ。それは四〈前文の第四パラグラフ〉に書いてある」)現下の国際法におきましても、交戦を始めた後に適用されるべき一定のルールが残っている。その中に、いわゆる軍事目標主義、つまり文民を保護せねばならない、そういう観点で交戦をおこなわなければならない、という部分が残っているということは、はっきり申し上げた所存でございます。

 志位 委員長、きちんと答弁してもらわなければ困ります。(「そうだ」の声)
 私が聞いたのは、不法な武力(行使)をおこなっている国を合法化するものじゃないというのはあたりまえだと、しかし、文民を保護するためには、侵略国だろうとその犠牲国だろうと、双方が共通のルールとして守らなきゃならないものでしょうということを聞いたんです。
 この問題は議論の余地のない問題です。「追加議定書」の前文の第五パラグラフには、このように書いてあります。「千九百四十九年八月十二日のジュネーブ諸条約及びこの議定書が、これらの文書によって保護されているすべての人民に対し、武力紛争の性質若しくは起源又は紛争当事国が擁護し若しくは紛争当事国に帰せられる理由に基づくいかなる不利な差別もすることなく、すべての場合において完全に適用されなければならないことを再確認(する)」。
 この第五パラグラフを認めないんですか。「武力行使の性質」や「起源」にかかわりなく、適用されるかどうかってことなんです。書いてあるじゃないですか。認めるか、認めないか。それを答えてください。ちゃんと答えなきゃだめですよ、繰り返しじゃだめですよ。認めるか、認めないか。第五パラグラフ。

 条約局長 すでに委員のご質問に最初にお答えしましたように、従来の戦時国際法中の外的手段の制限、戦争犠牲者の保護等にかかわる国際法規、これは国連憲章下のもとにおいても、武力紛争が生じた場合には適用されるものと(志位「適用されるんでしょう」)はい。最初からそのように申し上げている所存でございます。(志位「適用されて、第五パラグラフは認めるんですか」)ジュネーブの第二条約の詳細については、(志位「第一条約です。第一議定書」)失礼しました。ジュネーブの第一条約の詳細については、さらに検討をいたしたいと思いますが、基本的には双方に適用されるルールとして、適用されているというふうに考えております。

「追加議定書」は世界の154の国が批准し、文民・民用物保護の規定については日本も異論を表明していない

 志位 やっと認めました。双方に適用されるんですよ。これは文民の保護なんですから。侵略国であろうと犠牲国であろうと、双方に適用されるんです。双方に適用されるんでしたら、これ、もう一回戻りたいと思うんですが、どっちに仕分けされるんですか(もう一度パネルAを示す)。日本の自衛隊などがおこなう「後方地域支援」というのは、ジュネーブ条約の「追加議定書」の第五二条の第一項の文民、民用物として保護される方に仕分けされるのか、それとも、第二項の保護の対象とならないものとして仕分けされるのか、どっちに仕分けされるのか、はっきりお答えください。(高村外相が条約局長の方を指さす)

 条約局長 ただいま申し上げましたように、ジュネーブ条約の個々の条文の解釈にかんしては、ひきつづき検討のうえ、申し上げたいと思います。

 志位 そんなでたらめな答弁がありますか。一九七七年にこのジュネーブ条約の「追加議定書」を作成する外交会議が開かれました。この外交会議で日本の代表団は、この五二条に異論を唱えていますか。コンセンサスで、賛成しているでしょう。逐条ごとに全部、ジュネーブ条約の「追加議定書」は採決されたんです。そのときに賛成しているでしょう、日本は。異論があるんですか、この五二条に。五二条のこの仕分けに、日本政府は異論があるんですか。

 条約局長 ジュネーブ条約の締結の会議におきまして、日本の代表団がどのような発言をしたか、これは調査のうえ、また申し上げたいと思います(志位「冗談じゃない」)。他方におきまして、わが国はまだ批准はしておりませんが、ジュネーブ条約の大筋にかんしては、わが国も、異論はないと承知しております。

 志位 調査をするといわれましたけれど、私は事前に外務省にうかがいました。外務省にうかがったところ、「日本は、たしかにいま未批准だが、追加議定書について最終的な審議をおこなった外交会議で、追加議定書が逐条的に採択されたさいに、五二条については異論を表明していない」ということを、はっきり担当者の方はいっておりました。派遣したのは日本政府の公式代表団ですから、会議で日本代表団がとった態度は、政府として公式のものです。「大筋異論がない」とおっしゃったでしょう。では五二条も異論がないですね。五二条についても。

 条約局長 繰り返し申し上げますが、わが国はこの条約にはまだ批准をしておりませんが、条約の大筋においては異論はないと考えております。またご質問の条項にかんしましては、ただいま私、資料を持っておりませんので、調査のうえお答えすると申し上げました。

 志位 大筋において異論はないといったんですけれども、五二条について異論を表明していないのは、明りょうな事実です。では、いまのあなたの態度を聞きますよ。あなたが答えられないんだったら、外務大臣でもいい。総理大臣でもいい。これ(五二条)を認めませんか。いま、これに異論がありますか。私は、国際法上にどういう意味あいを持つか、「後方支援」がどういう意味あいを持つかということを聞くということを、昨日、(事前)レクチャーで申しました。きちんとお答えください。異論がありますか、現時点で。異論がありますか。五二条に。

 外相 質問通告もありませんし、条文もみないでどうということはいえませんが、条約局長の方できっちり調べて答弁するといっておりますから、その通りさせます。

 志位 それでは、すぐに調べて、途中でもいいですから、あなたがたの態度を答えてください。これは、異論を表明していないのが事実なんです。日本はたしかに、批准はしておりませんけれども、批准国は百五十四カ国。主要国でも、英、独、中、ロは批准しておりますし、アメリカも、海軍省が作成した『海戦法規』などをみますと、軍事目標について五二条とまったく同じ定義を与えており、アメリカも同じ考えであることは明りょうです。ですからこれは、明りょうなんです。
 「大筋異論がない」といわれましたので、もう一度聞きます。そうでしたら、この五二条の第一項になるんですか、第二項になるんですか。どちらに仕分けされるのか。これは、外務大臣どうぞ。
 (外相が答弁に立てず、一分二十秒ほど審議中断。「答えられないじゃないか」などの声で場内騒然)

 山崎委員長 お静かに願います。お静かに願います。
(場内が騒然とするなか、委員長が「質問通告しないのは、おたくがルール違反」と不規則発言。志位「速記止めてくださいよ」。「答えられない方がおかしいよ」の声も)

 委員長 お静かに願います。静かにしてください。質問通告がありませんので、かならず質問中に答弁を得たいと思えば、事前に通告すべきでございました。しかしながら本件にかんしまして、せっかくのご質問でございますから、答弁を留保するかどうかについて、答弁させます。

 条約局長 ジュネーブ条約五二条の第一項に該当するか、第二項に該当するかというご質問かと心得ますが、これについては先ほど申し上げましたように、条文を精査したうえでお答え申し上げたいというつもりでございます。

 志位 質問通告がないといわれましたが、私はきのうの通告で、国際法上「後方地域支援」という活動がどのように扱われるかということについてお聞きしたいということをのべました(場内騒然)。「国際法上」といったら、この国際法を律するのは国連憲章とジュネーブ条約しかないんですから、そんなことも調べておかないで、通告がないから答えられないなんていうことは許せるものではありません。(場内騒然)
 この問題、きちんと質問中に答えてください、質問中に。

軍事目標になるということは、戦争行為の一部と国際社会でみなされているから。憲法違反は明らかだ

 志位 私は、つぎに進みたいと思います。

 委員長 質問時間中に答弁はできかねると思います。質問をつづけてください。

 志位 事実の関係は明りょうです。ジュネーブ条約の「追加議定書」を協議するさいに、日本が五二条に異論を唱えなかったのも明りょうですし、いま異論をいわれなかった、検討するといったけれど、異論をいわれなかったのも明りょうです。ですからこれは国際社会からみたら、最初に軍事活動に効果的に貢献するということはみなさんお認めになったんですから、第二項に入るんですよ。(さらにパネルAを示す。「そうだ」の声)
 自衛隊のやる活動は、軍事目標とされるんですよ、国際社会では。軍事目標とされるということは、それが武力行使と不可分の活動だと国際社会でみなされるからじゃないですか。つまり戦争行為の一部だとみなされるからじゃないんですか。これは憲法違反じゃないですか。どうでしょうか。

 条約局長 ジュネーブ条約に書かれ、あるいは体現されております軍事目標主義、これは軍事目標を攻撃していいという規定ではございません。軍事目標に該当しない民間のものを攻撃してはいけないという規定です。そこで、そのようなルールにのっとって交戦したとしても、先ほどらい申し上げておりますように、違法な武力を行使する者の武力行使が正当化されるわけではない、これが現下の国連憲章のもとにおける状況であります。
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志位氏「兵たん活動が、戦争行為であることは、世界の常識、軍事の常識だ」

法制局長官
「武力行使と一体にならないものをやろうとしている」

第三国が公海上の武器輸送をおこなえば、武力行使の対象になることは、政府見解でものべていたこと

 志位 文民を守るためには、軍事目標を厳格に限定するほかないということで、こういうことがもうけられたわけで、私は、どっちに仕分けされるか聞いたんです。それからそのことによって、軍事活動を、不法な武力行使が正当化されるものではないということについての反論は、先ほど申したとおりです。
 私は、もう一つ角度を変えて質問したいんですが、政府の見解で、かつてこういう見解があるんです。”武力攻撃をおこなっている国にたいして、第三国の船舶が武器の輸送という支援活動をおこなえば、それは、武力攻撃と不可分の活動になり、攻撃を受けている国からすれば、武力の行使の対象になる”。このことは政府も認めていることです。
 一九八一年の国会で、政府は、かりに日本が武力攻撃をうけたさいに、日本を武力攻撃している国の軍隊の武器を、第三国の船が輸送しているさいに、それにたいして、自衛権を行使できるかという質問に、次のように答えています。
 「わが国は、自衛権の行使に当たってはわが国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することは当然に認められている」(三月十一日、参院予算委員会)、「仮に、わが国に武力攻撃を加えている国の軍隊の武器を第三国の船が輸送をしている、それを臨検することができるかという点でございますが、……ある国がわが国に対して現に武力攻撃を加えているわけでございますから、その国のために働いているその船舶に対して臨検等の必要な措置をとることは、自衛権の行使として認められる限度内のものであれば、それはできる」「自衛のための必要最小限度の範囲内、どうしてもぎりぎりのところそれが必要であるということであれば、理論的可能性としては拿捕(だほ)もできる」(四月二十日、衆院安保特別委員会)とはっきり答えています。
 日本にたいして武力攻撃をおこなっている軍隊の武器を、第三国の船舶が輸送している場合には、自衛権の発動、すなわち武力の行使の対象となるというのが、政府の見解であります。それは、公海上の武器・弾薬の輸送という行為そのものが、武力行使あるいは武力攻撃と不可分な活動だからではありませんか。そうとしか説明がつかない。どうでしょうか、総理。(首相は答弁に立たず)

 条約局長 自衛権の行使の三要件というのは、累次、政府よりご説明しているとおりです。国際法上の自衛権と憲法の範囲内で、わが国が行使しうる行動としての、委員ご指摘のような説明が過去に国会にあったのではないかと思います。
 
 志位 ですから、第三国の船舶にたいして自衛権の行使ができる根拠をきいているんです。A国が日本を武力攻撃している。それにたいしてB国は、公海上、船舶で武器の輸送をやっている。このB国は直接は、日本を武力攻撃していない。しかし、このB国にたいしても自衛権を発動できるというわけでしょう。なぜ自衛権を発動できるのかの根拠を聞いているんです。それは武力行使と一体だからではありませんか。武器の輸送という行為が。

 条約局長 累次お答えしておりますように、自衛権の行使というのは三つの要件、すなわち、国家または国民にたいする外部からの急迫不正の侵害にたいし、これを排除するのに他に適当な手段がない場合、当該国家が、必要最小限度の実力を行使する権利である、ということであります。ただいまご指摘の例にかんして自衛権を行使することが可能であるとすれば、それはご指摘の例が、外部からの急迫不正の侵害に該当すると解釈しうることになると思います。

 志位 外部からの急迫不正の侵害、つまり主権侵害、あるいは武力攻撃、武力行使、これに相当する活動だということですね。第三国の武器・弾薬の輸送という行為は。そういうことですね。

 条約局長 個々の例については具体的な事象をもって判断すべきと思いますが、外部からの急迫不正の侵害に該当するとすれば、自衛権を行使しうるということです。

 志位 自衛権の行使をしうるという、その根拠を聞いているんです。急迫不正の侵害になるとすればというのではないんです。自衛権の行使がやれるといっているんですから、その根拠を聞いているんです。その根拠は、公海上の武器・弾薬の輸送という行為が、武力の行使とまさに密接不可分だからでしょう。それ以外に説明がつかないじゃありませんか。その根拠を聞いている。

 条約局長 委員ご指摘の事例の背景には、相手国の不法な武力行使というものがあったやにうかがいましたが、もし相手国の不法な武力行使というものがあったとすれば、それがわが国にたいする急迫不正の侵害を構成する主要な要件であると考えます。

 志位 不法な武力行使をやっているのはA国なんですよ。A国にたいして公海上で武器の輸送をやっているのはべつの国、第三国なんです。この第三国にたいしても武力の行使、あるいは自衛権の発動ができるという根拠を聞いているんです。答えていないじゃないですか。ちゃんと根拠をお答えください。根拠です。根拠を答えていない。

 条約局長 具体的に起きる事例にかんしては、その事例を総合的に判断する必要があると思います。累次申し上げていますように、外部からの急迫不正の侵害というものはいかなる要件で構成するか。これは個々に判断されるべきですが、ただいまご指摘の例にかんしましては、わが国にたいする不法な武力の行使があったというふうにうかがいました。(志位「第三国にたいする」)もしそうであるとすれば、その要因を中核としてわが国にたいする急迫不正の侵害はなにかを判断するということになると思います。

 志位 委員長、ちゃんと答えさせてください。私は、第三国にたいして自衛権の行使ができる根拠を聞いているんです。第三国は、武力行使を直接やっている国じゃないでしょう。そういう国にたいしても、なぜ臨検、拿捕できるのか。このことを聞いているんですよ(「そうだ」の声)。きちんと答えてください。

 条約局長 繰り返しになって恐縮でございますが、自衛権の行使というものは、国際法上、国家または国民にたいする外部からの急迫不正の侵害がある、ということが根本でございます。どのような場合にその急迫不正の侵害があるかということにかんしましては、さきほどらい、申し上げているように、個々のケースによって最終的に判断されるということでございます。そこで、先生ご指摘の例にかんしましては、わが国にたいする不法な武力行使があったということが、まず根っこでございますので、その不法な武力行使との関連において、どのような国が何をしたのか、ということが判断されるということになると思います。

 志位 だからその関連を聞いているのです。

 条約局長
 それ以上に、特定の行動についてこういうケースがあるならば急迫不正の侵害になるということを具体的に申し上げるのは困難ではないかと…。
武力行使の対象になるということは、公海上の武器輸送という行為そのものが武力攻撃と不可分の活動であるからではないのか

 志位 だから第三国にたいして、なぜ自衛権の行使ができるか聞いているんですよ。それは、公海上の武器の輸送という行為がまさに武力行使と一体だからでしょう(場内に「そうだ」の声)。そう政府が解釈しているからこそ、そうなるわけでしょう。(特別委員長が大森政輔内閣法制局長官を指名する)外務大臣、外務大臣が出したんだから、外務大臣ですよ。

 大森政輔内閣法制局長官 もう一度、事案を整理いたしますと、A国がわが国にたいして武力攻撃をしている。B国がA国にたいして武器の輸送等をしている。それにたいしてわが国がそのB国の武器を輸送している船舶にたいして自衛権の行使ができるか、と。その理由は何か、ということですね。

 志位 そのとおりです。だから早く答えてください。

 法制局長官 いまの問題につきましては私も、先般の委員会におきまして、他の委員にたいして、ご答弁したことに関連しようかと思いますが、要するにそのときには、わが国を防衛するために必要であり、かつ最小限度のものであるならば、そのB国にたいしても自衛行動ができます、ということを答えた記憶がございます。結局それは、委員がたぶん求められているであろう言葉を使いますと、B国の行為がA国のわが国にたいする武力行使と一体化している、と。したがってB国の行為もわが国にたいする武力行使にあたる、と。そういう場合であるならば、わが国は自衛権が行使できます、と。あくまで、わが国にたいする武力行使、自衛権発動の要件を満たすという状態に達しているならば、わが国は自衛権の行使ができます、ということを答えたものでございます。
 そこで若干、敷衍(ふえん)して申し上げますと、本件「周辺事態法案」におきますわが国の「後方地域支援」につきましては、あくまで憲法九条との関係から論をおこさなければなりません。その場合には、わが国は武力の行使はしてはいけないというのが原則である、と。この場合に「後方地域支援」として法案が予定してます行為というのは、それ自体武力の行使行為であるということではない(志位「そんなことは聞いてない」)ということは当然、お認めなさるだろうと思います。
 つぎに、それ自体は武力の行使にあたらなくとも他国、米国の武力の行使と一体化する行為は、これはわが国もすることはできない。しかしながら、この法案で予定してますものにつきましては、米軍の武力行使と一体化することがないということが制度的に保障されているものであります。したがって、ご心配なきように。こういうことでございます。

 志位 そうすると、先ほどの話にもどりますが、B国の公海上の武器輸送がA国の武力攻撃と一体化していないものだったら自衛権の発動にならない、というんですか。ということですね。簡単に、それ一点だけでいいです。

 法制局長官 B国の行為がA国の武力攻撃と一体化していないと評価できるものにつきましては、わが国はB国自体にたいする自衛権の行使はできないということになろうかと思います。

 志位 これはまったく、成り立たない答弁なんですよ。八一年の際に、あなたがたが答弁したときに、武力行使と一体のものについてのみ自衛権の発動の対象になるなんて、そんな条件はつけてないんです。公海上の武器の輸送をやっているものは自衛権の発動の対象になる、こういうことをいってきたわけですよ。それが戦争行為だからなんです。あなたがいまになってあと知恵で仕分けをやったって、当時そんな条件をつけてないんですから。これはまさに公海上の武器の輸送というのは、武力行使と一体になるんです。すべて不可分なんです。
軍事の常識にてらしてみれば(1)――米海兵隊教本では、「兵たんは戦争の不可欠の分離できない一部」

 志位
 私は、この問題であなたがたは武力行使と一体じゃないから憲法違反じゃないというんですが、軍事の常識に照らしてみますと、そんなこと成り立たないですよ。
 たとえば米軍の『海兵隊教本』というのがあります(教本を示す)。「兵たん」――「ロジスティックス」という部分でこれだけの厚さがありますけれども、これをみますと「兵たんは戦争の不可欠な分離できない一部」と明記しております。
 「兵たんは、軍事作戦を実行する攻撃の一部であり、一領域である。…兵たんなしに、計画的で組織的な行動としての戦争は、不可能である。兵たんなしに、軍事部隊が部隊を立ち上げたり武装することもできない。兵たんなしには、部隊は、戦場にたどりつけない。兵たんがなければ、兵器は弾薬なしになることであり、車両は燃料なしということであり、装備は故障し、使用されないままとなり、病人や傷病兵は治療のないままであり、前線部隊は、食糧や避難所や衣料なしで過ごさなければならない」「兵たんは戦争の不可欠な分離できない一部である」。大変明りょうであります。
 日本がどう解釈しようと、日本がともに戦争をたたかうアメリカの側は、「兵たんとは戦争の不可欠で不可分の構成部分」だといっているじゃありませんか。武力行使と一体のものは構成部分になるけれど、武力行使と一体じゃないものは構成部分にならない、なんてことはどこにも書いてない。これはアメリカの見解じゃありませんか。兵たんというのはまさに戦争の構成部分である。これは、明りょうじゃありませんか。(場内騒然)

 法制局長官 委員は兵たんということばを使って、いまご質問なされたわけでございますが、私どもはこの「周辺事態法」におきましては「後方地域支援」ということばを使っているわけで(場内笑い)ございます。そこで委員の指摘される兵たんということばによって意味するもののうち、本法によって支援しようとしているものはその一部にすぎないのであろうかな、と思いながら聞いたわけでございます。この「周辺事態法案」によってなそうとしている米軍にたいする「後方地域支援」というものは、兵たんのうちでも武力行使と一体とならない範囲内のものをやろうとしているわけでございます。(場内騒然)

 志位 兵たんのなかでも一部だと(委員長「お静かに願います」)。後方の方でやる、撃たれそうもないところでやる兵たんだから、兵たんのなかでも一部だといいましたけれども、この海兵隊の教本は、兵たんの全体がまさに戦争の不可欠の構成部分だといっているわけであります。
軍事の常識にてらしてみれば(2)――「兵たんは戦う現場までいかないと作戦としてなりたたない。それ自体が一大軍事作戦となる」

 志位
 いま一つ、軍事の常識にかんすることをここでのべたいと思うんですが、私は、先日、自衛隊の元高級幹部とお会いしてお話をうかがいました。「共産党とは安全保障についての考え方が違う部分が当然多くある」という方ですが、その方が、こういっておりました。「政府は『武力行使と一体ではない』とか、『一線を画すから問題ない』とかいっているが、軍人からみればこうした議論はお笑い草だ」。(「そうだ」の声)
 「第一に、兵たんとは、たたかう集団にたいして、物や人の支援をおこなうという作戦だから、たたかう現場までいかないと、より正確にいえばたたかう現場に入り込まないと作戦としてなりたちません。政府は公海上の輸送について、『安全なところにかぎってやる』というが、途中までもっていって、命がけで戦闘をやっている最中の米軍に『ここから先は危ないからひとつとりにきてください』とでもいうのか(場内笑い)。そんな作戦など絶対にありえない。とりにいくぐらいだったら米軍が自分で運ぶ(場内笑い)。そっちの方がよほど効率的で安全性も高いからだ。結局、たたかう現場に物をとどけることになる。こんなことは軍事の常識です」といっておられました。
 第二に、「兵たんをやる部隊というのは、単独で、丸腰で物を運ぶなどということはありえないということだ。ただ輸送するだけでなくて、公海上の武器、弾薬、兵員の輸送というのは、安全を確保しながら輸送する。そのためには戦闘を覚悟し、船舶を守らなくてはならない。それをやるのは自衛隊だ。だから兵たんというのは単なる支援ではない。作戦そのものが軍事作戦だ。輸送船団を守るためにはどうするか。海上輸送の場合、一番怖いのは相手方のセン水艦だ。そうなると『セン水艦狩り』をしなくてはいけない。対セン哨戒機P3Cをつかってセン水艦探しをすることになる。制空権を確保するための戦闘機を飛ばすことになる。輸送艦を守るための護衛艦もいっしょにいく。自衛隊のセン水艦も出動する。まさに一大軍事作戦が展開されることになるというのが輸送作戦です」ということをいっておられました。
 そして、「護衛艦はもちろん、輸送艦も、すべて武器を積み、その武器を使えるようにしていく」というのです。つまり、「フル装備で臨戦態勢でいく。兵たんを担うのは戦闘部隊そのものだ」ということでした。「この点でも、武力行使と一体ではないなどというのは、まったく軍人の常識では考えられないことだ」ということをいっておりました。
 私は、軍事の現場からみたら、当然の常識的な考え方をおのべになったというふうにうかがいました。
公海上の武器輸送をやる艦船はフル武装でいく――現代戦に前方も後方もない
 志位 防衛庁長官に一つうかがいますが、公海上の輸送作戦を担う海上自衛隊の艦隊は、武装していくでしょう。たとえば輸送艦は、三インチ砲がついてますよね。輸送艦でも大砲がついてます。これ武装していくことになるわけですね。それとも、輸送を始めるときは、大砲をとり外していきますか。大砲つけたままいくわけでしょう。武装をしたままいくわけですね。これ防衛庁長官、これお答えください。(委員長は防衛庁防衛局長をいったん指名するが、野呂田防衛庁長官が答弁に立つ)
 防衛庁長官 いまの具体的な問題はちょっと防衛局長からお答えさせます。その先に法制局の長官もご答弁したところでありますが、委員が質問されている兵たんというのは、ガイドライン法と、あるいはこのガイドライン等でいっているのはあくまでも「後方支援」、”ロジスティック・サポート”の訳語でありまして、これはとくに活動の地域を限定した概念ではありません。だから、これは兵たんと訳しておりますが、これにくわえましてこのガイドライン法案では「後方地域支援」、ガイドラインでは”リア・エリア・サポート”ということになっておりまして(場内笑い)、これは後方地域でおこなわれると。
 後方地域は、法律で「我が国の領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる(志位「質問に答えてください」)、我が国周辺の公海及びその上空(の範囲)をいう」ということです。ガイドライン法案で私どもが米国と相談して、そういう区域を特定してその中でおこなわれる支援を「後方地域支援」といったんでありまして、アメリカがいっておる兵たんとか後方地域という概念とはまったく違うもんだ。だから、アメリカの方でそういうことをいってるからといって、わが方はこの法律によってそういう後方地域を設けて、その後方地域の中で支援をおこなっておるわけですから、そこを混同しないでいただきたいというのが、法制局長官もいいましたし、私もそのことを強調しておきたいと思います。あとの質問は一つ、防衛局長からさせます。(場内失笑。「答弁、答弁」の声)
 志位 私の質問に答えないで、長なが、そんな答弁やったって話にならないですよ。時間つぶしのために。それで、後方でやる活動だといいました。しかし活動の内容――輸送とか、あるいは通信とか、補給とか――活動の内容は、どこでやろうと兵たんそのものなんですよ。だいたい、前方も後方もいまの現代戦なんかにないんです。(「そうだ」の声)
 これきちんと答えてください。私が聞いたのは、公海上の武器輸送をやる船舶は武装していくのか、それとも武器をとり外していくのか、この一点なんですよ。
 佐藤謙防衛庁防衛局長 (志位「一点、簡単にいってくださいよ」)はい。艦艇というのは装備品を積んで、つねにそれでも行動してるわけでございます。武装というのがどういうことをさしておるのかわかりませんが、つねに装備品を積んだ形でもって行動していると。一つの例をいえば、たとえば遠洋航海にいくときも同じようにその装備品を積んだまま遠洋航海にいくということでございます。
政府の議論は世界の非常識、軍事の非常識――ごまかしを重ねて憲法9条をふみやぶることは許されない
 志位 あたりまえのことですが、装備品、つまり武器は積んだままいくわけですね。それでこれは、先ほど後方っていいましたけれども、私が、その自衛隊の元関係者に会ったときに、先方がいっていたのは、「日本周辺で武力紛争がおこって、日本がその武力紛争に参加したら、危なくない場所なんかない」。こうおっしゃってましたよ(「そうだ」の声)。「武器の技術というのはもう格段に進歩していて、日露戦争のときみたいに、艦隊がお互いに見あって大砲を撃つという時代じゃない。水平線の向こうからミサイルが飛んでくる。そういう時代に前方も後方もない。そんな議論をしてたらお笑い草だ」ということをおっしゃっておりました。
 私はるる議論してまいりましたけれども、憲法九条というのは戦争を禁止しているんです。あなた方、いろんな奇弁をろうしますけれども、自衛隊のやる「後方地域支援」なるものが、先ほどのジュネーブ条約の「追加議定書」で軍事目標とされる、すなわち武力活動と不可分の活動だということは、これは国際法では常識であります。(「そうだ」の声)
 それから軍事の世界ではどうか。軍事の世界では、アメリカの海兵隊の教本もいっているし、そして軍事の専門家がいっているように、戦争の一体不可分の、まさに構成部分が、兵たん活動であります。
 ですから私は、政府がやっている議論というのは、世界の非常識、軍事の非常識。これを”武力行使と一体じゃない”なんて奇弁をろうしてごまかしているというやり方だと思うんですね。こういうやり方で憲法九条をふみ破るということは絶対に私たちは許すわけにはいきません。
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志位氏「わが党が入手した統合幕僚会議の部内資料では、3次にわたる対日軍事要求がおこなわれ、対処方針が検討されていることをしめしている」

防衛庁長官
「米当局の担当者クラスが書いて、わが方の担当者と議論したのかどうか、この程度のものだと思う」

米側から民間空港、港湾の優先使用要求、新規提供要求があったという報道は事実か

 志位和夫書記局長 次に、しかも、戦争に参加するのは自衛隊だけではない。自治体も民間も動員されるという問題であります。
 二月二十三日付と三月二十二日付の朝日新聞が、日米の関係者の話で明らかになったこととして、大変重大な報道をおこないました。九四年に北朝鮮の核開発をめぐる危機がおこったさいに、「朝鮮有事」を想定して米軍が日本政府に求めた支援要求の内容と、防衛庁が検討した支援項目についての報道であります。米側の要求は日本を米軍の戦闘活動への兵たん支援の拠点とし、輸送や施設使用などの支援を求める内容とされています。支援要求の項目は千五十九項目に及んでいると伝えられました。
 そこでは、日本国内の八つの民間空港、六つの民間港湾の使用要求がなされたとしております。民間空港や港湾を期限を区切って米軍に新規に施設として提供することも検討されたという報道があります。名指しされた自治体では大変な不安がいま広がっております。
 そこで総理に伺いますが、米軍からこうした要求を受け取った事実はございますか。それにたいして防衛庁などで対処方針を検討したという事実はありますか。

 小渕恵三首相
 おたずねの答えは、その経過につきまして、防衛庁長官からご答弁させます。それから、さきほどらい長きにわたりまして元自衛隊の経験者という方のお話をお取り上げいただきました。私も自衛隊の最高指揮官といたしまして、自衛隊の名誉と自衛隊としての規律から考えまして、そのような方が実存されると私思いますが、あるいはそうであるかないかも含めまして(場内笑い)、やはりこの際、その点につきましても明らかにしていただきませんと、国民の前でその方の名においてそのような長い引用をされますと、それが自衛隊の考え方だととられましたらはなはだ遺憾とするところであります。できればその点につきましても明らかにしていただければ、ありがたいと思います。

 野呂田芳成防衛庁長官 いま総理からもご答弁されたとおりでありますが、もし委員があげたような元自衛隊員がいるならば、私たちもぜひ顔をみて相談したいと思いますから(場内笑い)、ぜひわれわれにも教えていただきたい、と思います。自衛隊の名誉にかかわる問題ですから厳重に申し上げておきたいと思います。
 後の方の問題につきましては、私どもは、日米安保体制のもと平素からいろいろなレベルで安全保障上の情報交換や意見交換をおこなってきているわけであります。そういうものにつきましては、平成八年九月に見直しの進ちょく状況の発表をしましたし、それから平成九年の六月には「中間取りまとめ」という形で対外的に公表し、ご議論いただいたところであります。またその検討成果は、平成九年九月にガイドラインとして最終的に取りまとめられ、対外的に公表されたほか、同年十二月に国会にも報告したところであります。
 ある報道が書いてあるように、千五百におよぶ飛行場や空港、港湾につきまして、私どもに協力依頼があった、また防衛庁がそれにたいして合意したなんて事実はまったくありません。そういう固まったものはないのであります。さきほども、ある委員の質問がありまして、運輸省はそういう協力要請を受けた空港や港湾があったか、ということにたいして、運輸大臣はまったくなかったといっております。それは決まってないんだから私どもは運輸省に要求してないんでありまして、そういう事実はまったくないということを重ねて申し上げておきたいと思います。

統合幕僚会議の部内資料では、11の民間空港、11の民間港湾の使用要求が明記されている

 志位 私さきほど(自衛隊の)元関係者の話をいたしましたが、これは一つの軍事の常識を私どもに語ってくれたものとして紹介したわけであります。
 私は、一つ資料配布をお願いしたいと思います。私ここに持っておりますが(資料を示す)、この文書は、わが党が独自に入手した、統合幕僚会議が一九九六年四月、「日米安保共同宣言」に先立って、外務省および内閣安全保障室と共同で作成した、橋本内閣への内部報告書です。資料には驚くべきことが記載されております。いまその大要をみなさんに配布いたしました。
 (文書は)四部構成となっておりますが、第一部で米軍からの対日支援要求が三回にわたってあったことがのべられております。
 まず一回目、「平成6年4月15日、在日米軍司令部第4部は、K半島の情勢緊迫によりNK事態に際し、日本政府に支援を要請する予定の事項として、統幕4室にたいして『対日支援要求(第1次案)』を提出。項目数は996」。
 二回目は、「平成6年10月14日、統幕4室は在日米軍司令部から外務省に提出された『対日支援要求(第2次案)』を受領。項目数は1900に増加」。
 三回目は、「平成7年12月1日、統幕4室は、在日米軍司令部第4部から『対日支援要求(第3次案)』の幕僚資料を非公式に入手。項目数は1059」。この項目数は報道のものとぴったり一致しております。
 そして、その後に膨大な「対日支援要求の概要」がつづき、「要求内容及び措置にあたっての問題点等」が検討され、最後に日本としての「対応措置に関する検討」がのべられております。
 「まとまったものを受領」しているじゃないですか。この文書では、「対応をとりまとめ、総理、官房長官に報告」ということが書かれております。総理に伺いますが、総理はこうした文書の存在をご存じでしょうか。

米軍の対日支援要求とガイドライン・戦争法案作成の経過

94年 4月15日 第1次要求996項目
94年10月14日 第2次要求1900項目
95年12月 1日 第3次要求1059項目
96年 4月17日 日米安保共同宣言
97年 9月23日 ガイドライン合意
98年 4月28日 戦争法案の国会提出

 首相 承知いたしておりません。

 志位 総理は知らないということですが、総理が知らないところで、統幕がこういう計画をずっとやっていたとしたら、しかもアメリカ軍と軍同士でこういう計画がずっと進められていたとしたら、これはこれで大変な問題です(「そうだ」の声)。知らないということですから、一つひとつ内容について伺いたい。
 まずこの文書の第四部、日本としての「対応措置に関する検討」のところを見ますと、「在日米軍司令部の対日支援要求に対しては、我が国政府の対応方針及び立法措置等の状況に基づき、米軍と関係省庁間の調整を経て逐次具体化されるものであるが、今後の調整・準備のため統幕4室で検討した『在日米軍に対する支援項目及び主管省庁等(案)』は次のとおり」として、対米支援項目とその主管省庁を列記しております。支援項目は次の分野に及んでおります。「全般調整」、「輸送支援」、「施設支援」、「補給支援」、「整備支援」、「衛生支援」、「宿泊支援」、「給食支援」、「NEO(避難民支援)」、「労務支援」、「通信支援」、「警備支援」、「運用支援」、「情報提供」、これだけの項目がありますが、これにはいろんな問題が含まれていると思います。
 このなかの「輸送支援」の中では、「米軍の艦船・航空機(民間調達を含む)の国内港湾・空港の優先使用等」ということが、明記されております。対象となるのは、十一の民間空港、そして十一の港湾。両方とも民間の空港と港湾です。
 私はこの文書から、位置が特定できるものを図にしてみました(パネルBを示す)。赤いのが民間空港、青いのが民間港湾であります。空港では、新千歳、成田、関西、福岡、長崎、宮崎、鹿児島、那覇です。民間港湾では、苫小牧、八戸、名古屋、大阪、神戸、水島、松山、福岡、金武湾、天願、那覇、この十一港湾であります。これがこの文書から特定することができます。米軍による民間港湾・空港の優先使用、これは検討しているんでしょうか。検討している空港と港湾はどこでしょうか。これを明らかにしていただきたい。

 佐藤謙防衛庁防衛局長 いま配布された資料の性格については、私もどういうものか、はっきりここで申し上げられませんけれども、まずいえることは、このガイドラインにもとづきます今回の「周辺事態安全確保法案」にもとづきます支援内容についての検討ということと、少なくともここに書いてあることは、およそ関係ない別の話であろうと思います。
 それから、一九九三年あるいは一九九四年当時に、いろいろと米軍と意見交換があり、そういう場で、情報の交換がおこなわれたことはあろうかと思いますけれども、さきほどから申しましたように、この米側として、最終的に正式にこういうものであると、そういうものが示され、わが方として正式にこれにたいしてこういう対応だということをやったことはございません。
 繰り返しますけれども、このお話、この資料そのものがどういう性格のものかわかりませんが、われわれがいま議論しておりますガイドライン関連法案にもとづく支援内容については別の話と、こういうふうに考えております。

 志位 優先使用を検討したことはありますか。

 防衛庁長官 私も今、このペーパーを初めて見ますが、総理も同じだと思います。こういうものが、まとまった形で防衛庁にきたという事実は承知しておりません。勉強の過程で、アメリカ当局のだれか担当者クラスの連中がこういうものを書いて、わが方の担当者と議論したのかどうかはわかりませんが、この程度のものだと思います。したがって、空港や港湾について、そこに書いておるようなことで、空港や港湾についていちいち確かめたり、要請を受けてわれわれが承知したという事実はまったくありません。

 志位 まとまったものじゃない、固まったものじゃないと。経過的なものかもわかりません、これは。しかし、三次にわたってまとまった要求がきたことは事実ですし、それにたいしてかなり詳細な検討がおこなわれているのは事実なんですね。
 ガイドラインと関係ないといいますけれども、九六年四月の日米安保共同宣言の前に、総理に提出されている文書ですから、それを受けてガイドラインを作ったんですから。まさに、その経過そのものが、ガイドラインと深いかかわりをもっているということを示していると思います。
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志位氏「民間空港・港湾の2―4―b化は、事実上の米軍の『基地化』ということになる。こんな検討までしているのか」

北米局長「一般論として2―4―b化も含めて総合的に判断する」

統幕文書では民間空港・港湾を「米軍の管理下」におくこと「2―4―b化」を明記している

 志位 もう一つ聞きましょう。民間港湾・空港の優先使用にかかわって、この文書では、「米軍が管理権を行使する形での施設・区域の新規提供(2―4―b化)」ということが明記されています。「成田・那覇等の11民間空港及びMSCFE(軍事海上輸送軍極東管区司令部)が要求する11港湾、在日米海軍司令部が要求する7港湾等への事務所、倉庫の設置」、こういう項目もあります。
 この「2―4―b化」とは、日米地位協定二条四項(b)、すなわち「合衆国軍隊が(ある施設や区域を)一定の期間を限って使用」するという規定にもとづく使用ということになります。事実上の米軍の常時使用になります。これまで米軍が日本の民間空港とか港湾を使用していたのは、おもに地位協定五条にもとづく一時使用ということでした。しかしこれが「2―4―b」に切りかわりますと、一定の期間を区切った常時使用、事実上の米軍の管理下に置かれた使用になる。民間の船や飛行機は、これでは排除され、事実上の軍事専用に切りかえられる。まさに民間港湾と空港の「基地化」そのものであります。
 防衛庁長官、この文書については特定できないということですが、「2―4―b化」の検討はやっているんですか。

 防衛局長 この資料にもとづいてのおたずねですけれども、私ども防衛庁として、正式にこの検討をし、その結果をまとめたものではございませんので、コメントは申し上げられないと思います。

 志位 検討したことはあるんですか。「2―4―b」はありうるんですか。
 
 防衛局長 防衛庁として、正式に検討したものではございません。
 
 志位
 それじゃ「2―4―b」はやらないと。この「2―4―b」は絶対に今後、あなた方の「周辺事態法」との関係で発動しないということをいえますか。

 竹内行夫外務省北米局長 私どもも、いまご提示いただいた文書についてコメントすべき立場ではございませんが、「2―4―b化」の問題ということにつきましては、地位協定の二条四項(b)、すなわち一定の期間を限って米軍に使用を認めるということでございますが、そう簡単に「2―4―b」で使用の手続きができるというわけではございません。やはり「2―4―b」で提供するためには国としてその施設にかんしまして、権限が必要でございます。それを取得いたしまして、さらに合同委員会の手続きということが必要なわけでございます。
 いずれにしましても先生のご質問に一般論としてお答えさせていただきますが、日米地位協定は共同使用、「2―4―b」の場合を含めまして、施設・区域の提供の要否につきまして安保条約の目的の達成、それから財政上の問題、それから地域や社会的な影響というようなことを総合的に判断いたしまして、提供するか否かを判断してまいるということでございます。

民間空港・港湾が閉鎖されれば、国民生活に重大な影響、職員は事実上の徴用となる――まさに戦時体制だ

 志位 一般論としては、ありうるという答弁だったと思います。もちろん法的な権限ということ、法律が必要でしょう。日米合同委員会の手続き必要でしょうが、場合によってはありうることを否定されなかった。
 私が、この問題を大変リアルな問題として痛感しましたのは、九四年六月十六日付米(太平洋)軍の準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」の記述でありますが、こういうのがあるんですね。「朝鮮有事の際には、在日米軍基地と太平洋の他の場所の間に巨大な空の橋を一夜にして築かなければならないであろう」「日本の領空を無条件で使用することが必要になろう」「戦争勃発から数日以内にワシントンは日本にたいし、アメリカから数百機の部隊輸送機や数千トンの死活的に重要な補給物資を着陸させるため、札幌(防衛が可能であるから)、新潟(そこが日本海に面しているから)、東京の成田(アメリカの民間パイロットが熟知しているから)のような主要民間空港の定期旅客便の発着を停止させるよう、日本に要請しなければならないかもしれない」。こういう記述がありました。これが裏づけていると思います。
 私たちが、成田空港の管制官に話を伺いますと、こういうことをおっしゃっておられた。「有事提供となったら、戦闘機の場合は、二十四時間、いつ、どの高度で飛行するかわからないので、安全を確保するため国際線を含めて広大な空域を閉鎖して米軍戦闘機を保護する必要が生じる」「米軍に有事使用されると、民間機はすべて締め出され、アジアのハブ空港として国際線の利用ができず、米軍がアジア全体の空を占領することになります」「空港などの施設だけでなく、管制官や一般職員が有事で徴用されることが一番心配です」。こういう訴えです。
 主要な民間空港や港湾が閉鎖されれば、国民生活に重大な影響が及びます。成田空港にしても関西空港にしても、日本と海外を結ぶ大動脈ですよ。これが断ち切られれば、人の動きでも物の動きでも、国民生活に深刻な影響を与える。政府は「周辺事態法」は、国民の権利義務に直接関係ない、こういうふうにいいますけれども、まさに有事体制、戦時体制そのものじゃないか(「そうだ」の声)。このように私は考えるものであります。

米軍展開日から「10日以内」に支援開始という要求があったのか

 志位 もう一つ、これに関連して聞きたいことがある。この文書によりますとこういう項目がございます。「支援準備期間に関する調整」というところであります。「要求事項の多くが米軍の展開開始日(C00)から10日以内に日本政府による支援の開始を要求しているが、支援開始にあたっては、物品・役務の調達手続き、施設の建設、関係省庁及び地方自治体等に対する協力依頼など各種の準備が必要となるため、余裕のある準備期間が設定できるよう日米間の情報交換及び関係省庁間の調整等を継続的に実施しておく必要がある」
 米軍が展開したら、つまり軍事行動を始めた瞬間ですね、そうしましたら十日以内に日本の後方支援は開始されなければならないという要求です。そのために戦争シナリオが普段から準備され、根回しもされて、いざというときには一気に具体化、実行に移す。これがこの文書に書かれていることです。米軍展開日(C00)から十日以内に支援開始という要求はありましたか。具体的に伺いたい。十日以内という要求。

 防衛庁長官 私たちはその文書がうそかほんとかもわからないわけですから、それに答える義務はないと思います。それからわれわれが港湾や空港について求めるのはあくまでも協力を求めることでありまして、地方公共団体に強制するものではまったくありません。ですから空港や港湾にはそれぞれ管理者がおって、港湾の場合であれば、港湾の適正管理ということをやっておりますので、そちらの管理権が優先するものでありますから、委員がおっしゃるようにみんな軍港になったりしてしまうというのはちょっとオーバーな表現だと思います。

 志位 この文書についてあなた方は否定も肯定もされないわけだけれども、十日以内に展開開始という要求があったかということを聞いているんです。

 防衛庁長官 まったくありませんでした。

米軍が展開したら一挙にことはすすむ。国民はいやおうなく戦争に動員される。まさに自動参戦体制だ

 志位 私はこれは真実だと思います。あなたは、それを知らないかもしれない、知っていていわないかもしれないけれども、これは明りょうだと思います。ガイドラインを読みますと、「共通の準備段階」という言葉が出てきます。つまり、「周辺事態」が予想される場合には、日米両国が「共通の準備段階」に入っていく。防衛準備体制といわれるものだと私は聞いています。デフコンとよくいわれますが、いったん「共通の準備段階」に入っていきますと、アメリカといっしょに戦争準備への階段を上ることになる。いっしょに戦争準備に入ったら途中で日本だけ「下りた」ということには、これはなりません。
 いざアメリカが「周辺事態」だと判断して部隊を展開したら、これはいっきょに事が進む。十日というのは、たとえばアメリカがサンディエゴなどの空母の軍港から、アジア太平洋に空母がやってくるのは、だいたい一週間でしょう。展開開始から一週間くらいで空母がやってくる。日本がそれにたいする支援をおこなう。これがシナリオですよ。ある日テレビで内閣総理大臣が「周辺事態」を宣言したときには、極秘のうちで用意された「相互協力計画」と呼ばれる戦争計画がばたばたと組み合わされて、その中の骨子の部分が「基本計画」として決められて、国民はいやおうなく戦争協力に動員される、まさに自動参戦体制ですよ。
 この問題で、自治体の活動は協力であって強制ではないといいました。しかし、「2―4―b」となったらですね、日米合同委員会が勝手に決めてしまったら、全部めしあげることになるんですよ。空港だって、港湾だって自治体から取り上げる。そこで働いている人はどうなるのか。港湾労働者も航空労働者でも、あるいは船員さんでも、あるいは陸上運輸にたずさわっているトラックの運転手さんも、みんな事実上の徴用になりますよ(「そうだ」の声)。これは拒否したら首になりますもの。これ、社長さんがOKとなれば事実上の強制として働くんです。(「当然じゃないか」のやじ)
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志位氏「94〜95年にアメリカが日本に要求した項目が、そのまま今度の法案になっている。まさにアメリカの要求で作られたものではないか」

首相「日本の平和と安全のため」をくりかえす

アメリカの対日要求と、ガイドラインの項目はぴったり一致する。内容上も、経過的にも明瞭だ

 志位 最後にもう一問お伺いいたします。九四年以来の、さきほどみなさんにお示しした米軍の要求項目が、ストレートにガイドライン法案になっているということです。
 私は、対照表を作ってきました(パネルCを示す)。左側は、この文書で記載されている米軍による対日支援要求の項目です。「輸送」、「施設」、「補給」、「整備」、「衛生・宿泊」、「避難民」、「通信」、「警備」、「運用」、「情報」。これだけの項目があります。それで右の方は、ガイドラインの項目ですよ。これはピッタリ符合するではありませんか(「よく整理できた」の声)。「輸送」、「施設の使用」、「補給」、「整備」、「衛生」「施設の使用」、「避難民への対応」、「通信」、「警備」、「運用面での協力」、「警戒監視」。まさに、九四年から九五年にかけてアメリカが日本に要求した項目がそのままガイドラインに盛り込まれている。それがそのまま、今度のガイドライン法案になっている。これが今度の法案の、私はまさに正体だと思う。
 私は、これらのことに照らしてみますと、今度の法案というのは内容的にも経過的にもアメリカの要求にそくして作られたということは明りょうだと思います。
 経過的にもそうですよ。九四年の北朝鮮問題を契機にして米軍から対日支援要求が三次にわたって寄せられ、それを受けて日本としての対応方針が検討され、九六年四月の「日米安保共同宣言」に向けてその検討内容が報告され、そして「共同宣言」で新ガイドラインを作ることが合意され、九七年九月に新ガイドラインが日米両国政府で取り交わされた。その結果出てきたのが、この法律じゃありませんか(「そうだ」の声)。まさにアメリカの要求で作られた法律じゃないですか。どうですか。

 首相 長時間にわたりまして(場内笑い)、日本の現在存在しておる自衛隊につきましても、御党は防衛庁設置法、自衛隊(法)を廃止し、違憲の自衛隊をすべて解散させるとこう書いております。こういう立場で、かつまた、日米安保条約をお認めにならない共産党を代表してのおたずねにつきましては、緊張してお聞きをしてまいりました(場内笑い)。そういった観点でおたずねがございまして、本日私ども提案しておりますこの法案につきまして、自動参戦法案ではないかとのご指摘であります。国民のみなさまにもぜひ、この法案は周辺事態というわが国の平和と安全に重要な影響を与える事態がおこって初めて発動されるものであり、あくまでわが国自身の平和のためであるということは、法案では周辺事態においてわが国が個々の協力をおこなうか否か、わが国が自主的に決定するものであること、わが国がその意思に反して米国に協力を強制されるとの指摘はまったく当たらないことは、法案の条文から明らかでありまして、この事実につきましてはぜひ国民のみなさんにもご理解いただきたい。

 志位 「日本の平和と安全」と申されましたけれども、この法案というのは、日本にたいする武力攻撃がある場合を前提にしておりません。そういう攻撃がないもとで、「平和と安全に重大な影響をおよぼす」ということで、米軍がさまざまな活動をやった、これには一方的な軍事力行使だってある。先制攻撃だってある。アメリカはさんざんやってきたわけですから。そういう場合にも日本をそういう戦争に動員することになります。
 私は、(この法案は)アメリカの要求でつくられたと申しましたが、一つの証言を紹介したい。キャンベル米国防副次官補が当時、九七年九月十九日、こういっています。「湾岸戦争の最中にも朝鮮半島の核危機の最中にも、アメリカは何が期待できるか、日本はどう対応できるか、……日本がどのようにアメリカを支援できるかという点について、重大な疑念があった。だからガイドラインがなすところの九〇%は、アメリカと日本の政治指導者たちに、後方地域支援で何が期待できるかをきわめて明確にすることである」
 まさにアメリカの要求なんです。委員長、ぜひこの委員会として政府にたいしてアメリカからどのような支援要求が日本にたいしてあったのか、政府の部内でどのような検討がやられたのか、この資料提出を求めたいと思います。理事会で検討していただきたい。

 山崎拓特別委員長 ただいまの志位君のご提案でございますが、さきほどご質問の中で出てまいりました人物の特定の問題も含めまして、対日支援要求、両件につきまして理事会で検討いたします。(東郷条約局長が答弁を求める)この答弁で終わりにいたします。

 志位
 私も最後に一言いいます。

米軍への支援活動は「国際法上の軍事目標」と政府もみとめる――憲法違反の戦争法案は廃案にせよ


 東郷和彦外務省条約局長 委員よりさきほどジュネーブ条約第一議定書の解釈について質問がありましたので、検討いたしましたので、お答え申し上げます。ジュネーブ条約第一議定書の署名のさい、わが国代表団は、ご質問の(議定書)第五二条の問題につきましては特段の異議をとなえ修正を求めるというようなことはしなかったというのが現在、記録をチェックしたところで理解しているところでございます。
 他方、委員ご案内のようにある国が国際条約に拘束されるか否か、これはウィーン条約にございますように、その国が批准等の行為をおこなうか否かにかかっておるわけでございまして、外交会議において黙っていたということをもってただちに拘束されるということにはならないというのは、委員ご案内のとおりでごさいます。以上を前提といたしまして、一般論として申し上げれば、ジュネーブ条約第一議定書にいうところの軍事目標主義、その考え方は現在広く国際社会において認められている考え方であるというふうに私も考えます。(志位「はい」)
 そこで、ご質問の第五二条、これはどういう趣旨かと申しますと、これは民用物への攻撃の禁止をその趣旨とするものでございまして、自衛隊の艦船、航空機等は一般的に申し上げれば、国際法上民用物には考えられないところでございまして、むしろそういう意味では委員ご指摘の第二項のほうに該当するというのはむしろ当然のことではないかと思われます。しかしながら、問題は自衛隊の艦船、航空機が軍事目標であるからといってさきほど申し上げたように、これを攻撃することは国連憲章上、まったく不法な行為であるということでございます。

 志位 いま明りょうな答弁がいわれました(場内騒然)。この法案の廃案を求めて質問を終わります。(大きな拍手)

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