2000年4月26日「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫書記局長が二十四日の衆院予算委員会でおこなった総括質疑の大要を紹介します。
志位和夫書記局長 私は、総理に、国民生活にかかわってたいへん切実で深刻な問題について、基本姿勢をうかがいたいと思います。
一千万人、二千万人という規模でまん延している社会的大問題
志位 まず第一は、雇用の問題です。大企業によるリストラの横行のもとで、完全失業率は四・九%と最悪になりました。その一方で職場に残された労働者は、これまで以上の長時間・過密労働を強いられているという現実があります。この事態をどう打開するかという点で、私はヨーロッパ諸国でやっているように、労働時間短縮に政府が本腰を入れて乗り出して、そのことによる雇用創出をはかるべきだと思います。
この点で、きょうはとくに「サービス残業」――ただ働き残業を一掃する問題にしぼってお聞きしたい。
総理は、本会議の答弁で「サービス残業の解消に努めてまいります」といわれました。しかし、これまでも、政府はそうした答弁を繰り返しやってきたわけですが、解消どころかますますまん延しているのが実態です。連合の最近のアンケート調査では、約半数の労働者が、程度はさまざまですが、「サービス残業をしている」と答えています。すなわちこの問題というのは、一千万人、二千万人という規模で労働者にまん延しているという社会的大問題なのです。
そこで総理にうかがいますが、これを一掃するためには、従来の対策の延長ではなくて、新しい特別の対策が必要だと私は思うのですが、総理にそういう認識はあるでしょうか。
森喜朗首相 解雇につきましては、いわゆる整理解雇の四条件、合理的な理由というものがあるわけですが、裁判例の考え方を踏まえて具体的な事情において労使間で十分話し合われていくべきものであると、このように考えております。
サービス残業というものを一様に会社が強制しておこなわれているケースも、私はかならずしも正しいとは思っておりません。それぞれのいろいろなお立場のなかで、それぞれ個人が仕事にたいしての、やっぱり熱意であるとか、そうした形で残されているケースもあるんだろうと思います。一律にやはり、「サービス残業はすべて悪」という考え方を私はとるということはやはり、企業の事情というものをやはり十分やっぱりしんしゃくしなければならないのではないかと思います。
志位 「サービス残業を一律に悪ではない」と、これは驚きましたよ。「サービス残業」というのは、残業しても残業代が払われない、ただ働きなんですよ。これは労働基準法違反です。しかもこれが故意でやられているわけですから、これは重大な犯罪ですよ。これを総理、「一律に悪ではない」という立場では、まず(議論する)前提が違いますから、これは撤回してください。
首相 ちょっと誤解があったと思いますが、それぞれの事情で働いていらっしゃる方々の、やはりある意味ではですね、この仕事は今日中にどうしてもかたづけたいとか、そういう思いでやってらっしゃるケースもありますから、私は批判をしてはいけないということを申し上げました。
しかし、しかし、しかし、聞いてください、いずれにしてもサービス残業というのは労働基準法の違反であるということだけは、これは事実でありますから、政府としては、その解消をはかるために、労働基準法の趣旨の徹底をはかるとともに、経済団体等にたいしまして適正な労働時間の管理をおこなうように指導をおこなっているものであります。
志位 適正な指導をやっているというんですけれども、それをやっていても(「サービス残業」が)なくならないから、これをどうするのかということを私は聞いていきたいと思うんですよ。
私は、この根絶のためには、二つの問題にメスを入れる必要があると思います。
一つは、いま多くの大企業でやられているやり方というのは、労働者に、実際より少ない残業時間を「自主申告」させるというやり方なんですよ。ある企業では、「今月の残業(の申告)は十時間まで」と、こういうふうに会社が強制する。そして二十時間、三十時間と残業をやろうが、十時間分しか申告は認めないと、こういうやり方がまかり通っているわけです。これが「サービス残業」の温床なんです。
このことを明らかにしたのが、三月二十四日に最高裁で下された「電通過労自殺訴訟」の判決です。私は、この判決を、たいへん重大なものだと読みました。電通で働いていた青年労働者が、連日深夜から早朝の残業に追われて、疲労困ぱいした末に過労自殺に追い込まれるという、たいへん痛ましい事件であります。
この事件について最高裁の判決では、「長時間にわたる残業が常態化していた」こと、「従業員が残業時間を実際より少なく申告することが常態化していた」こと、そして会社がそういう事実を知りながら放置していたこと、この責任は重大だということで断罪したわけです。
これはむりやりそういう状態におかれているわけです。多くの労働者に異常な長時間残業を強制しながら、「自主申告」という形で、実態にはあわない少ない「申告」をさせる。電通の場合は、労働時間の記録は正規にはどこにも残っていませんでした。どこで明らかになったかといいますと、委託されていた警備会社が深夜の巡回をやっていた。その巡回記録の中にかろうじて、この過労自殺された方の労働の記録が残されていて、これがたまたまあったから、裁判で決着がついたわけです。私は、労働時間がそういう形でしか残らないということは本当に異常なことだと思います。
私は、総理にこの問題で聞きたいのです。最高裁の判決について、総理は本会議の答弁で「政府としてその趣旨を尊重する」とおっしゃいました。そこで私は、提案したいのですけど、「サービス残業」の根絶のためには、労働者に実際より少ない「自主申告」を強制するというやり方をやめさせる必要がある。そして、企業がみずから責任をもって実際の労働時間を把握することを義務づける必要がある。その把握した記録は、労働者みんなに閲覧して、チェックする仕組みをつくる必要がある。私はそのための新規の立法が必要だと考えますが、総理の所見をうかがいます。総理の所見です。新規のものが必要かどうか、総理お答えください。総理、総理お答えください。
牧野隆守労相 ご指摘の電通事件につきましては、(志位「新規の立法が必要かどうか、簡単にやってください」)現在、行政府としましては、出勤、出社、退社、全部時間を調べておりまして、みずから、これだけ働いたということを明示できるようなシステムになっておりまして、必ず、いまご質問のとおり、できるものと思っております。
志位 電通では、出社時間も退社時間も、会社がつかんでいないわけですよ。賃金台帳にいちおう労働時間は記録してあるけれども、「自主申告」された過少の労働時間しか記録してなくて、だからどこにも正確な記録が残ってないわけですよ。これが事実なのです。ですから私は、いまの労働法の不備を、きちんとただす必要がある、このことを提案したのであります。
いま一つの角度から申し上げたい。これは総理に聞きますから。
もう一つの提案として、「サービス残業」が発覚したさい、いまの仕組みですと、企業は、通常の残業代を払えばすむようになっているわけです。通常の残業代というのは、二五%割増の賃金を払えばいい(ということです)。発覚した場合でも、これを払えばすんでしまうわけです。これが、いわば「サービス残業」の「やり得」を許していると思う。
「サービス残業」というのは明りょうな犯罪行為です。簡単にいいますと、賃金泥棒ですよ。賃金泥棒をやっている。しかも、故意にやっている。反復してやっている。重大な犯罪です。犯罪やっておきながら、摘発された場合に、通常の残業代を返せばいい。こういうことになりますと、たとえていいますと、泥棒がお金を盗んだと、その泥棒がつかまったと、そしてお金を返せば、無罪放免ということになるんですね。これがいまの仕組みなんですよ。
ですから私は、この根絶をはかろうと思ったら、発覚した場合には、企業は通常の残業代だけではなくて、きびしい制裁金、割増のきびしい制裁金を払うことを義務づける、これは当たり前だと思います。総理いかがですか。総理が立つといっているんですから。
労相 現在のどのようなルールになっているかということをまず、ご説明を…。
志位 わかっているんです、それは。残業代を払うだけではだめだといっているんですよ。
労相 残業した場合、代金を払わない場合は、明らかに労働基準法違反になるわけであります。したがって、当然のことながら何時間働いたということは賃金台帳等にきちんと明示すべきことは、おのずから、明らかなことでございまして、そういう台帳、帳簿等を労働基準監督署は常にチェックいたしておる次第であります。
志位 私の質問したことを全然理解されていないようですね。私は、かりに摘発されても通常の残業代を払えばすんでしまう、それでは「やり得」になってしまって、なんのペナルティーもないという事態はおかしい、不合理ではないかと聞いているんです。総理お答えください。
首相 あの、先程も申し上げましたように、職種だとか、職場、いろいろな質によって、私やはり違うんだと思うんですね。ただし、先程申し上げたように、いわゆるサービス残業そのものは労働基準法の違反だということは、これは事実でありますから、そうしたケースにならないように、いま経済団体等を通じて、そうした指導をいまきちんとしているわけであります。
また、今度のこの事件などを一つのいましめとして企業も、十分このことについての、いま労働大臣が申し上げたように、そうした労働時間等をきちっとした管理をするように、そうしたことを私はそれぞれの企業、それぞれの経済団体がそういう方向で指導を強めていってくれることを期待をしたいと思っております。
志位 そういう指導をずっとやってきたというんですけれども、なくならないので私は二つの提案をしたわけですね。つまり企業が責任をもって労働時間を把握する義務を明示すること、それから違反した場合はきびしいペナルティーを科すこと、このぐらいは当たり前のことなんですよ。
「経済再生」とか、「日本再生」というのだったら、まずまともに働いた分だけの賃金はちゃんと払う日本にしなければ、これは国際社会のなかで通用しない、このことを強く求めておきたいと思います。
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志位 第二に、私は介護保険の問題をうかがいたい。これは四月実施になりましたけれども、たいへんいま矛盾が噴き出しております。
志位 その一つに、利用料負担が重すぎるという問題があります。利用料の負担です。
費用の一割が自己負担という形になったわけですが、これが高すぎて払えず、介護サービスの後退を余儀なくされている方が、たくさん全国で生まれております。
日本共産党の国会議員団として、四月十六日から十九日にかけて全日本民主医療機関連合会(民医連)の協力もえて、全国のケアマネジャーさんに緊急の実態調査をおこないました。
私たちが設問した項目というのは、「ケアプランを作成した方のうち、利用料負担の重さなどの経済的理由で、これまでの介護サービスの水準を後退させることを余儀なくされた方はどれだけいらっしゃいますか」。こういう設問です。全国十九都道府県の百十一人のケアマネジャーさんから回答がありました。
集計してみますと、ケアプランを作成した方の総数四千三百二十五名のうち、やむなくサービスが低下せざるをえなくなった方が六百六十三名と、一五・三%にのぼりました。だいたいいま、全国で起こっていることを反映していると思います。
ここにそのときの調査で返ってきたアンケートがありますけれども、切々たる声がつづられております。
「負担が重くなり、これまでの訪問看護、デイケアを中止し、楽しみにしていた訪問入浴の回数も減らさざるをえなくなった」
「深夜、早朝のヘルパーをうちきらざるをえなくなり、おむつ交換も我慢してもらっている」
「せっかく笑顔も多くなり、体の機能もよくなっていたのに、逆戻りしないか、病状の悪化が心配だ」
「家族の介護負担が軽減どころか重くなり、家族関係が難しくなった」
これがいま寄せられている声であります。重すぎる利用料によって、介護のサービスというものが、介護の必要性からではなくて、負担能力によってきめられている。必要なサービスが後退しているというのが実態であります。「これでは何のための介護保険か」という声がたくさん寄せられていますが、こういう声が起こって当然だと思うんですね。
総理にうかがいますが、本会議の答弁のなかで総理は、「大きな混乱もなく制度をスタートさせることができた」というふうにのべられましたけれども、これが実態なんですよ。かなりの方が、サービスの後退を余儀なくされている。これに胸が痛みませんか。総理、どうでしょう。
首相 介護保険制度はまったく新しいシステムとして、この四月からスタートしたわけであります。志位議員のようにいろんな角度で調査されるのも、それもまた一つの調査だろうと思いますが、まず基本的にはこの新しい制度にまだ十分慣れていないという面もありますから、そういう意味ではいろんな事例がやはりあるだろうと思います。しかし基本的には、関係者のみなさんが本当に懸命な努力をいまされているわけでありまして、そういうなかで大きな混乱もなく制度としてスタートができたと、いま認識をいたしております。
そして、そうしたご指摘もいろいろあろうと思いますし、政府としても今後、現場のそうした声を十分耳を傾けながら、ひきつづき円満な実施ができますように努力していきたいと、こう考えています。
志位 いま、慣れていないために起こっている混乱だということをおっしゃいました。たしかに、慣れていないための混乱もあると思います。ただ、私がいま出した話というのは、慣れていないから起こったのではないんですよ。やはり、所得が少なくて、負担能力がないことが原因で起こっているわけですよ。その方は慣れたとしても、問題は解決しないんです。
私は、その点で提案をいくつかしたいと思うのですが、政府の責任で、やはり利用料負担の軽減の対策をとることが必要ではないか。
わが党は、在宅サービスの利用料については、「国の制度として住民税非課税の世帯・本人とも免除すること」、これを主張してきました。
同時に、いまとるべき最小限の緊急措置として、ホームヘルプだけを対象としている低所得者に対する三%の軽減措置がありますが、これを訪問看護、訪問入浴、デイサービスなど、つまり在宅介護サービス全体に、この軽減措置を広げるべきだと考えます。
どのくらい負担が重いのかということを紹介しますと、たとえば訪問看護は、これまで一時間以内で、二百五十円だったのが八百三十円です。訪問入浴は、自治体によって違いますが、だいたい五百円前後だったのが千二百五十円です。デイサービスは五百円前後だったのが千二百円から千五百円という額です。ですから、これはあまりに負担が重すぎる。その負担の重すぎるところから、さっきいった「やむなくサービスを減らさざるをえない」という事態が起こっているわけですから、私は、ホームヘルプサービスに適用している三%の軽減措置を、在宅サービスの全体に拡大するべきだと。少なくともそれをやらなければ、こういう人たちを救えない。こう思いますが総理いかがですか。
丹羽雄哉厚相 まず、介護保険の導入前と導入後では利用者の数が大幅に増えております。二三%ぐらい増えておるわけでございます。それから、まだ私ども共産党さんのような資料をもっておりませんけれども、ある町におきましては、いわゆる認定度の重い方ですね、いわゆるサービスの利用量というのは大変増えておりまして、どちらかといいますと、認定度の低い方はそれほどかわっていない。認定度の重い方のサービスというのは大変大幅に増えておる。こういうような結果がでているようなしだいでございます。
それから先ほどご質問がございました。いわゆる所得の問題の限度枠の問題でございますけれども、ご案内のように、これは一割の限度枠をもうけておるわけでございますけれども、委員ご案内の上限というのをもうけておりまして、一カ月三万七千二百円をもうけるようにいたしております。それから低所得者につきましては、この負担の上限を二段階にわたって低くしておりまして、一カ月二万四千六百円と一万五千円。非常にきめ細かくいたしておるしだいでございますし、それから特別養護老人ホームに入居している方につきましては、施行前のいわゆる費用徴収額を上回らない利用負担、こういうふうにいたしておるわけです。
(志位「在宅介護の全体に広げるという問題については」)それからあと、特に利用負担が困難な方にたいしましてはですね、社会福祉法人によります利用者負担の減免でありますとか、生活福祉資金の貸しつけ制度拡充など、こういうものを講じておるわけです。
(志位「質問に答えてください」)ちょっと、もう一点だけ。恐縮です。それからあと、ホームヘルプの話でご指摘がございました。(志位「ホームヘルプ以外にも広げろと」)それで、この問題はご案内のように激変緩和と、こういう観点にたちまして三年間にわたりまして三%に軽減すると、こういうような措置を講じておるわけでございます。新たにサービスを受ける方については一割の負担をお願いいたしているわけでございますので、バランスの上から考えまして、(志位「在宅介護全体に広げてくれといっているんですよ。三%の軽減措置を」)いやいや、まず聞いてください。(志位「この答弁だけ求めているんですよ」)私どもはこれを恒久的にするつもりはございませんし、在宅サービス全体に、これからたとえば、ホームヘルパーの需要は大変増えているわけでございまして、いわゆるゴールドプラン21のなかでは、これまでホームヘルパーが十七万人でございましたけれども、一気に三十五万人にまで増やすと、こういうふうに着々と手をうっているところでございますので、どうぞご理解をたまわりますようお願い申し上げます。
志位 いま、聞いたことはですね、知った上で質問しているんですよ。私が聞いたのは、ホームヘルパーに適用しているような三%の軽減を、在宅の全体のサービスに広げるべきだと。そうしなければ、サービス後退という事態は救えないじゃないですかと聞いたんですよ。その一点、イエスかノーか答えてください。時間、長々やっちゃ困りますよ。時間がないんですから。
厚相 これはもうホームヘルプサービスの場合は、ご案内のようにほとんど低所得者の方が多かったわけでございますので、このような激変(緩和)の措置をとったわけでございまして、そのほかに拡大することは適当でない。このように考えます。
志位 適当でないということは、このサービス後退はやむをえないということですか。あなた方がいっているように、ホームヘルパーについては一定の軽減措置をとらざるをえなくなった。それは私たちもよく知っていますよ。しかし、それだけでは救えないわけでしょう。そういうもとでも一五・三%の人が介護サービスの水準を後退せざるをえなくなっているわけでしょう。ですから、この問題について問題提起したわけですよ。
私は、介護保険をいったい何のために導入したかということになると思いますよ。保険を導入して、新たな負担を国民に求める以上、すべての人のサービスが拡充して当たり前なんです。(「そうだ」の声)
サービスが後退してもやむをえないなんていう考えは、私は許されないと思います。政治がとるべき立場ではないと思います。(「そうだ」の声)
志位 もう一点、うかがいたい。利用料の問題だけではありません。保険料も高すぎる。私は、これは(昨年)十二月のこの委員会でも、高すぎる保険料の問題について、問題提起しまして、住民税非課税のお年寄りからは、低所得のお年寄りからは、保険料を徴収すべきじゃないといいました。
問題点がこれだけ噴き出しているもとで、高齢者からの保険料を、まず半額とはいえ、予定どおり十月から徴収していいものかどうか。ここは検討すべきではないか。いま保険料をとっていないもとでも、これだけサービスの水準の低下がおこっているわけですから、このうえ保険料を取り始めたら、もっと深刻なことになる。このように思います。これは、いかがですか。
厚相 私どもは与党三党の政策責任者との間の協議におきまして、半年間の保険料の免除を決めたわけでございます。これにつきましても、さまざまなご意見があったことは、委員も十分にご案内のことと思います。私どもは十月からですね、二分の一スタートするということにおきまして、十分に、これはこれまでの間は私どもはあくまでも助走期間、こういうふうに位置付けまして、十月から本格的に実施すると、こういう意味におきまして、国民のみなさん方のご理解が得ますように努力していく決意でございます。
志位 私は、あなた方の内閣というのは、本当に国民の痛み、苦しみを、ぜんぜん理解していないと思いましたよ。私は、現実を示して、あなたがたに対案を、提案をお話ししたんです。一五・三%という方が、(サービス)水準の後退を余儀なくされている。そのもとで、利用料の問題、保険料の問題を考えるべきだということを提起したのにたいして、あなた方は、考えることを選択肢にも持たない。ほんとに冷たい政府だと思いますよ。(「そうだ」の声)
志位 最後に、一問、この図をちょっと見ていただきたい。
なぜ、介護保険で、高すぎる利用料や保険料という問題がでてくるのかといえば、国が国庫支出を削減したからです。保険への移行にともなって、これまでの(介護)給付費に占める割合、四五%が国の負担だったのが、三二%に減らした。額にすれば二千五百億円減らした。ここにいろいろな問題の根源があります。
社会保障への国庫支出を減らすというのは、世界の流れから(みると)、ほんとに異常なんですよ。
私が、厚生省の国立社会保障・人口問題研究所の資料からそのままパネルにしたものです。社会保障への国庫支出の対GDP(国内総生産)比の推移を、主要五カ国で比較して、そのままパネルにしたものです。
青い棒が一九八〇年、赤い棒が直近であります。二つの特徴が明りょうです。
第一の特徴は、日本がきわだって、社会保障への国庫支出がGDP比で低い国である。五カ国のなかで最低であるという点です。
第二の点は、このほかの国は、一九八〇年と直近と比べて、みんな伸ばしているわけですよ。アメリカは二・九(%)から四・八(%)、フランスは四・八(%)から六・一(%)、ドイツは七・〇(%)から七・四(%)、イギリスは七・五(%)から一二・四(%)、みんな伸ばしているのに、日本だけ四・一(%)から三・四(%)、一番左ですが、減らしているわけですね。
つまり、経済の規模の拡大以下に、社会保障にたいする国庫負担が抑えこまれている。これは、世界の流れから(みて)、異常な恥ずべきことだと思います。
これでも、社会保障を大事にしている国だと胸を張っていえますか。総理。どうですか。このパネル見て見解を。総理が、いま手を挙げたんですから、総理に最後くらい答えさせなさい。
厚相 わたくしはまず前座だけ。議員ご案内のように、年金、医療、介護などですね。社会保障費は年間六十九兆円に達しておるわけでございます。これらの費用は、ご案内のように保険料を中心にいたしまして、公費によってまかなっておるわけでございますが、今後、いわゆる社会保障に要する費用というものは、二〇二五年にはじつに二百三十兆円に達するわけでございます。そして今年度の歳出予算のなかで、一般歳出予算のなかで厚生省関係の予算は三五%をじつに超えておるわけでございまして、これをもってどういうふうにご議論をなさるかということは、また別のご議論でございますが、今後のいわゆる少子高齢化社会を考えますと、私は社会保障構造改革をすすめるとともに、いわゆる公的な範囲でどこまでめんどうをみるか、こういったような問題を真剣に国民のみなさんとご議論することが、まさにわが国の社会保障の充実をはかる道だと、このように確信をいたしております。
志位 さきほどのグラフで、この五カ国で、高齢化率はだいたいみんないっしょです。だいたい高齢人口一五%ぐらいです。そのなかで実際に、GDPに比してあまりにも少ない社会保障負担になっている。これは明りょうなんですね。これは、高齢化社会の財源のことをおっしゃいましたけど、なぜこうなるかといいますと、やはり公共事業に五十兆円もの税金を毎年使っているからですよ。(「そうだ」の声)
その重圧が、この社会保障の異常に低い水準への圧迫に現れているわけですから、私はここをあらためて、公共事業中心から、社会保障と暮らし主役の予算に切り替えるということが、本当に重要な仕事になっているということを最後に強調して、関連質問にゆずりたいと思います。(拍手)