2000年11月21日(火)「しんぶん赤旗」

党大会への中央委員会報告

志位書記局長


 中央委員会報告にたった志位書記局長は最初に、大会が「政治情勢の緊迫、激動と同時並行でひらかれることになった」ことを指摘し、大会議案発表いらい約二カ月の間に、きわめて活発で積極的な討論がおこなわれ、「大きな共感と歓迎の声がよせられた」ことを紹介。「全党討論をふまえて重点的に解明が必要な問題、情勢の進展にそくして補強すべき問題を中心」に、決議案にそって報告したいとのべ、討論で出された意見にもとづいて修正・補強した決議案は討論を終えたのちに、提案することを明らかにしました。

「資本主義の体制から離脱した国々」とは

 二十世紀論を展開した決議案第一章に関連して志位氏は、「大企業への民主的規制」という方針が「世界史的裏づけ」をもっていることと、社会主義という角度から二十世紀をどう総括するかという問題について解明しました。

 そのうち、「資本主義の体制から離脱した国々」と決議案がのべているのは、「綱領の位置づけでいえば『社会主義をめざす国』」だと指摘。「『社会主義をめざす国』とは、その国の人民、指導部が目標としてかかげているという事実をあらわす規定で、現実にその過渡期にあるかどうかは個別の研究と分析で明らかにすべきだ」とのべた志位氏は、「社会主義と市場経済を結びつけて国づくりをはかることを公式の方針としている」中国やベトナムなどに言及し、「『社会主義をめざす国々』の前途は、その国の人民の決めること」だが、「どういう道筋をたどり、どういう発展をとげるかは、二十一世紀の世界を展望したときに、重要な意義をもつ」とのべました。

党員数は38万6千人、読者数は199万人こす

 決議案第二章にかかわって、志位氏は、「森政権と自民党政治が“断末魔”的な様相を呈して」おり、「政治情勢の流動化のもとで、解散・総選挙が早晩ありうる情勢となっている」ことを解明しました。

 また「『どうして党勢がこんなに後退したのか』という疑問が数多くだされた」ことについては、「戦後第二の反動攻勢、東欧・ソ連の崩壊という世界的激動のもとでの逆風」という客観的条件とともに、主体的とりくみの問題として、「八〇年代半ばから約十年間の党員拡大の自覚的なとりくみの弱まり」をあげ、「この弱さを生んだ一つの要因には、方針上の不正確さもあった」と指摘しました。

 同時に「克服にむけた第一歩がはじまっている」として、「大運動」で一万一千数百人の新しい同志を党に迎え入れて党員数は三十八万六千五百十七人となり、機関紙拡大でも十月度は全都道府県、全地区委員会が機関紙の増勢をかちとり、読者数は百九十九万人を超えたことを報告しました。

 「日本改革の提案」を集大成し、発展させた決議案第三章にかんして志位氏は、日朝関係の事態打開のために、日本政府の「侵略戦争と植民地支配の過去の清算」が重要であり、「北朝鮮との国交正常化にたいし、植民地支配を違法行為としてきっぱりと謝罪し、それにたいする補償をおこなうという立場にたつべきだ」とのべました。

 さらに米国が「アジアにたいする軍事的介入・干渉の戦略を維持し、日本にたいして日米軍事同盟の強化の要求をエスカレートさせようとしていることを重大視すべきだ」として、重要性をます安保条約廃棄の課題についてくわしく解明しました。

 日本経済の問題では、自民党政治が二十一世紀初頭にすすめようとしている「社会保障の連続改悪」を「国民の暮らしと健康を根本から脅かす、きわめて重大なもの」と位置づけ、「社会保障を連続改悪から守り、その充実をはかる国民的大運動」をよびかけるとともに、「消費税増税を許さないたたかいを国民とともにすすめることは緊急重大な課題だ」とのべました。

 さらに学校教育の民主的改革については、「全党討論のなかで突っ込んだ解明の要望が強かった」と紹介。「子どものなかに『学力の危機』ともいうべき深刻な事態が広がっている」ことを指摘し、「すべての子どもに基礎的な学力を保障することは、国民の根本的な教育要求であり、憲法と教育基本法が要請している学校教育の基本任務だ」として、「子どもと教育をめぐる危機を打開し、学校教育を立て直すための広い国民的討論と運動」を呼びかけました。

憲法九条と自衛隊問題――決議案の基本的立場は

 「決議案の討論のなかでもっとも活発に討論され、多くの意見が出された」のが、憲法九条と自衛隊との矛盾を段階的に解決していく方針についてです。

 志位氏は、出されている異論が「憲法九条を大切にしたいという熱意からのものであることはよく理解できる」が、「憲法九条を全面実施するためには、国民とともにそこに接近していく過渡的段階がさけられないということを正面からとらえてほしい」と提起。

 「決議案の基本的立場」は、「憲法九条の完全実施を国民合意で段階的にすすめること」と「国民の安全にたいして、政治の責任をはたすこと」の「両者に統一的な答えをだした」ものであると強調しました。

 そして、憲法九条を将来にわたって守り抜く日本共産党の確固とした立場を明確にしつつ、自衛隊の段階的解消こそが憲法九条の完全実施を可能にする道であることを具体的に明らかにしました。

 「憲法違反の自衛隊の活用は矛盾している」という議論があることについて、志位氏は、「自衛隊の存在そのものが憲法との矛盾であり、その活用だけでなく、予算の支出など自衛隊にかかわるありとあらゆることがらが憲法違反だ。自衛隊の段階的解消という方針をとる以上、一定期間、憲法との矛盾が続くことはさけられない。この矛盾は、われわれに責任があるのではなく、先行する政権から引き継ぐさけがたい矛盾である。その矛盾を引き継ぎながら、それを憲法九条の完全実施の方向で解消することをめざすのが、民主連合政府に参加するわが党の立場だ」とのべました。

 「急迫不正の主権侵害」のさいにどうすべきかについては、「現実にはほとんどありえない」が、「国民から疑問が提起される」からには、「国民の安全に責任を負う党ならば、理論的想定への回答であっても、国民の疑問に答える責任がある」と指摘しました。

 そのうえで、「決議案で自衛隊の活用としているのは、自衛隊解消を追求する過程で、かりに『万が一』の事態がおこったら、その時点において存在し、使用しうる手段を、使用できる範囲で生かすというものだ」とのべ、「有事立法をはじめ、自衛隊の役割と行動を拡大するためのいかなる新規立法にもわが党が反対であることはいうまでもない」と強調しました。

 また「自衛隊の本質は米軍に従属した軍隊であり、国民の安全のために活用するなどということは、この本質をみていないのではないか」という意見には、「その本質をリアルに直視しているからこそ、(自衛隊解消の)第一段階で自衛隊の海外派兵を許さず、軍縮に転じ、第二段階で米軍との従属的な関係の解消を主張している」と指摘。「かつての社会党のようにならないか」という心配には、「一九八〇年の社公合意を転機とした社会党の右転落は、安保条約容認に転換したところに中心的問題があった。それが九四年の村山内閣で、自衛隊合憲という立場にゆきついた」と指摘し、「日米安保廃棄を一貫して追求しながら、国民合意で自衛隊解消を目指す決議案の方針にいかなる共通点もない」と強調しました。

 世界の平和と進歩の課題を中心とした国際問題をとりあげた決議案第四章に関連しては、米大統領選の特徴や注目点にふれつつ、「対米従属の関係から対等・平等の真の友好関係への転換をめざす」などの立場から、「アメリカの新政権がどのような対外政策をとっていくか注視していきたい」とのべました。

得票目標についての方針の発展を提案

 第五章(国政選挙と地方選挙)では、「総選挙と参議院選挙で、日本共産党の前進をかちとることは、当面する全党の活動の中心課題」だと強調し、得票目標をどうするか、「非拘束名簿式」の導入への対応という「二つの新しい問題」を解明しました。

 志位氏は、「すべての党派選挙の目標を、有権者目標で統一し、それに接近・実現する」としてきた方針を改め、「その選挙で必ず責任をもって達成すべき目標を、それぞれの選挙の性格や、それまでの到達点をふまえて決定する」こと、選挙制度が改悪された参院比例区も、従来の制度の選挙区も「『政党選択を土台に』という方針を堅持してたたかうことが、基本である」ことを強調。「九人の比例代表候補(第一次分)については、全国を地域割りして全員の勝利をめざしてとりくむ」とのべました。

「大運動」の立場で引き続き取り組む

 強大な日本共産党をつくることの意義と方針を打ち出した決議案第六章について志位氏は、党員拡大を党建設の「根幹」、機関紙活動を党活動の「中心」と明確な位置づけをしたことが全党討論のなかで歓迎されたとのべ、「党勢拡大の重点課題を党員拡大にする」という「大運動」のとりくみの立場を引き続き堅持してとりくむこと、それが機関紙活動の意義をいささかも軽視するものではないことを強調。「民主的政権をになう強大な党づくりを必ずやりとげよう」と訴えました。

 若い世代の問題とそのなかでの活動(第七章)について志位氏は、青年の深刻な雇用問題を打開するため「党として政策、運動の両面でのとりくみの抜本的な強化をはかる」ことを表明。若い世代を党に迎えるとりくみについて、「たしかな前進の一歩」をふみだしつつある青年支部、学生支部の活動を発展させるとともに、それまかせではなく、「党の総力をあげて」とりくむことが重要だとのべました。

 最後に、第八章にかかわって志位氏は、日本共産党の社会主義論が「世界史の発展法則にかなった道理ある道筋をしめしたもの」だとのべ、「日本共産党というわが党の名前は、七十八年の不屈の歴史を刻んだ名前であるとともに、人類史を資本主義の枠内にとじ込めず、人間が社会の主人公になる理想社会の建設をめざす雄大な人類史的ロマンあふれる名前である」と強調。「この名を高く掲げ、二十一世紀を、二十世紀をさらにこえる、人類にとっての歴史的進歩の世紀にするために、ともに奮闘しようではないか」とよびかけ、報告を結びました。




著作権:日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7