2001年1月 6日(土)「しんぶん赤旗」

CS放送、朝日ニュースター 志位委員長、明快に語る

新年の抱負、国会、参院選などについて


 日本共産党の志位和夫委員長は五日、CS放送朝日ニュースターの「各党はいま」に出演し、一月開会の国会や参議院選挙に向けてどうとりくむか、日米関係、集団的自衛権の問題をどう見るか、また、野党間の関係についてなど、早野透朝日新聞編集委員の質問に答えました。


 早野 二十一世紀の日本の政治をどの政党が担っていくのか、それぞれの意気込みをうかがっております。今日は、日本共産党の志位和夫委員長に、新年の抱負をうかがいます。よろしくお願いします。

 志位 あけましておめでとうございます。

 早野 おめでとうございます。志位さん、昨年十一月の党大会で委員長に就任されて一カ月。二カ月にはまだなりませんね。

 志位 そうですね。一カ月半というところですね。

 早野 もうお仕事はなじんできた感じですか。

重責だが1日1日新しい気持ちで

 志位 やはり、今までの仕事と今度の仕事は、中身がだいぶ違うことがありまして、肩にずっしり重いものがかかってきたなという感じで、まだ、しっくりくるというところまできていませんね(笑い)(早野「そうですか」)。一日一日、新しい気持ちでがんばっているというところです。

 早野 十年間、書記局長をやっておられて、そういう意味の党務は精通していらっしゃるわけだけれど、委員長というとやっぱり感じが違うものですか。

 志位 今まで書記局長という立場というのは、どんどん突っ込んでいけるという感じで、後ろに不破さんが(委員長として)どーんといてくれましたからね。わりと自由に飛び回れるという感じがあったんですけれども、今度の立場はやはり、全体のかじ取りの仕事もやらなければならないので、ずっしり重くなった感じがしますね。

 早野 そうですか。コンビをくまれた市田書記局長ですね、私は、直接は存じあげないんだけれども、これまでの不破さんも志位さんもいってみれば論客タイプでですね、どこに出してもこわくないという感じですが、市田さんはこれ、あたっているかどうかは知らないけれど、苦労人タイプでわりといい感じかなと思いますが、このコンビはどんなものですか。

 志位 ええ、いい方が書記局長になったと思いますよ。市田さんは、京都というなかなか難しい場所で、わが党の力も強いけれども、相手も野中(広務・前自民党幹事長)さんみたいな反共の大将もいるしね、なかなか激しいたたかいがもっとも熾烈(しれつ)にやられるような場所で、地区委員長を十年、府委員長を十年やってきた。そういう意味では本当に地方で活動しているみなさんの気持ちがよくわかる、そういう指導者でもあるし、それから論戦でも、もうテレビ討論も何回もやっていますけれども、そういう良さがテレビの画面からも出るということでたいへん評判がいいんです。

 早野 そうですか。そういうのがにじみでてくるとまた、志位さんの魅力と違った魅力で、楽しみではありますけれども。

 志位 力を合わせてやっていきたいと思っています。

自民党──自分を改革する能力がなくなっている

 早野 なんといってもこのお正月ですけれども、森総理大臣、私たちは去年ぐらいにはもう終わっているかなと思ってたんですが、まあどっこい生き残って(志位「つづいてますね」)、これはなんでつづいているように思いますか。このつづいている日本政治というものをかいつまんでいえばどういうふうにとらえていらっしゃる…。

 志位 一つは、自民党という党が、自分を自分で改革する能力がなくなってしまったということですね。

 早野 その証(あかし)ですか。

ゆきづまった自民党政治――新世紀が始まっても“世紀末”がつづいている

 志位 ええ。つまり、国民がどんなに批判しようと、どんなに支持率が下がろうと、もうそんなことにはかまってられない。その余裕もなければ、その気もないというところまで衰退してしまっているという問題がありますね。だからあれだけ不人気な首相を平気でかかえて、まだやっていこうとしている。

 しかも、加藤さんの「反乱」がああいう腰砕けで終わったんだけれども、ともかく不信任案を力ずくで否決した以上、信任したことになるので、降ろすわけにもいかないという形になって(早野「野中さんは、信任したわけではないなんていったけど、そうはいきませんな」)、それは信任したということなんですよ。だから、降ろすという大義名分もない。

 ただ、こういうことがおこる根底には、たんに森さんの首相としての資質の問題や、不適格性という問題だけでなく、自民党政治全体がゆきづまっているという問題があると思いますね。

 いまの経済情勢を見ましても、たいへんな不景気がずっとつづく、とくに家計の消費が落ち込んでいるという状況があるのに、ここに手だてをしないで、相変わらずの(公共事業の)ばらまきをやってますでしょう。どの分野を見ても、ゆきづまっているという状況が根底にある。ほんとうに自民党政治全体が、新世紀が始まっても“世紀末”がつづいているという(笑い)ような政治ですね。だからこれは国民の審判で切りかえるという方向を開いていくしかありませんね。

 早野 まあ、世紀末が一日たって急に新世紀になっても変わるわけじゃないと…(笑い)。

 志位 “世紀末”がつづいているという感じですね(笑い)、自民党だけは。

 早野 なんといっても、そんな森さんを生かしつづけているというのはわれわれ一般国民から見ると、野党もしっかりしてよという話になると思うんですが、どうしてもこの間、そこは突破できませんでしたか。

 志位 野党は、前回の国会では、与党の横暴に対して結束してがんばるという点では、なかなかよくやったと思っているんです。

 早野 よくやったと。

 志位 ええ、最初、「非拘束式」というでたらめなやり方で選挙制度の改悪をやろうとしたことに対しても、一致して反対し、かなり国民にアピールしたし、問題の焦点もわかったと思うんですね。そういう成果もあげた。それから、(中川秀直)官房長官(当時)の問題でも一致して追及して、辞めさせました。そして、内閣不信任案を提出して、土壇場まで追い込んだ。自民党という党はあんな党だということを天下に知らしめるところまで追い込んだわけですから、これはやはり一つの成果なんですよ。だから、このとりくみは次の国会でも大事に発展させていきたいと思っています。

「学力の危機」──教育現場を荒れさせた大本に競争主義

 早野 次の国会、参議院選挙とことしは、天下分け目という感じがしますけれども、まず通常国会、一月末に始まる。ここでのテーマですが、これもきっとたいへんな国会だと思いますが、森さんはそういうなかでなお教育改革という、国民の関心も非常に高いし、しかし、かじのとりようによっては、非常にやばいぞというような感じのテーマにとりくもうとしています。これに対してはどのように思ってらっしゃいますか。

 志位 教育の問題では、いろんな問題がありまして、一つを解決すれば万事うまくいくという単純な問題ではないんですけれども、私たちが、いまそのなかで重視しているのは「学力の危機」という問題なんですよ。つまり、日本の子どもたちが小学校、中学校、いろんな調査を見ても、「学校の勉強がわからない」という子どもが増えている。そして、この前、国際比較の調査が出ましたけれども、「学校の勉強が嫌いだ」という子どもが多いんですね。国際比較でも一番多いほうの国なんですよ。こういう状態というのは非常に深刻です。たとえば算数、数学でも、一番初歩的なこともずっと理解しないまま、上の方にあがってきてしまうと、いちだん踏み外すとずっとわからないわけですから、子どもにすごくつらい思いをさせて、教育現場を荒れさせている一つの大もとになっている。

 なぜそういう事態が生まれたかというと、やはり長年やってきた競争主義、管理主義で、子どもを競争、競争で追いたて、管理でしばりつけていくやり方、そして、ふるいわけをしていくというやり方での「学力」論というのがゆきづまってしまった。ゆきづまって、「新しい学力観」というのを出したことがあるんですよ。八〇年代の終わりに(早野「ああそうですか」)。そのときには、「できないのも個性だ」というような居直りまでやって、どんどんふるいおとししていくというやり方をとった。

 早野 あれはふるいおとしですか。

 志位 ふるいおとしです。

 早野 むしろこの、ガリ勉主義をゆるめて少し自由にというようなことかなと、思っておったんですけど。

 志位 いや、そうじゃないんですね。

 早野 そんなことしているうちに、ほんとうに勉強できなくなってね。もうちょっと勉強しろといいたくなりますよね。

 志位 そういう話ではないんですね。むしろ、たとえば小学校で教える漢字というのは千六字と決まっているんですよ。それはこんど改定される新学習指導要領でも千六字なんです。漢字の数は変わらない。ところが授業時間が減るんですよ。変わらないところに授業時間が減るわけですから、これは子どもにとっては大変なことになるんです。それからたとえば九九ってあるでしょう。九九も昔はかなり時間かけて半年ぐらいかけて教えていたんですよ。ところが九九は二カ月で教えなさいと決まっているわけですよ。

 早野 なるほど。

 志位 これでは覚えられないという子がでてくるわけですね。

 早野 子どもが労働強化になっているわけですかね。

 志位 そうなんです。過密労働になっているわけで、これで耐えられないと(早野「うーん」)。そういう管理主義、競争主義の教育の問題がゆきづまってしまった。ここにメスを入れる。学校教育のいちばんの仕事というのは、すべての子どもに基礎、基本の学力をわかるまで教えるということにあるわけですから、その仕事がちゃんとできるように教育内容を国民の討論で厳選して、そして適切な配置をする。でたらめに並べてはだめですから、適切な配置をして、そしてみんながわかる教育にするという大運動がいま必要だと思いますね。

 早野 そこは根本なんですけれども、政治記者として気になるのは、やはり奉仕の活動とか、教育基本法の見直しですけれども、簡単にいうとどういうふうにみてますか。

思いつきをならべ、教育を「強制」ととらえる「教育改革国民会議」の答申

 志位 「教育改革国民会議」(の答申)を読んで、思いつきを並べているというのが、第一点目の感想ですね。二つ目は、要するに教育という問題を強制だととらえている。つまり、子どもを強制でしばりつける。先生も勝手な評価をやって強制でしばりつける。とにかく上からしばりつければいまの問題が解決する。だから奉仕だって強制するんだという話でしょう。しかし、自発的、内発的にやるのがボランティアなのであって、強制したらボランティアじゃなくなる。一事が万事、上からのしばりつけで事態を何とかやっていこうという。それは、ほんとうにまずいことです。問題の解決どころかいっそうひどくするだけだと思いますね。

日米支配層の「特別報告」──日米安保体制への危機感が

 早野 このあたりは国民注視のなかで、ほんとうに大事なことを考えていただきたい部分なんですが。ちょっと、また話をすすめて、ブッシュ政権がようやくできて、その間に日本との関係はあまり論じられていない気がするけれど、一部に集団的自衛権を認めろという話もでてきてですね、ここから先の日米、そのあたりの問題ですね。共産党も自衛隊を活用しようなんていう若干のスタンスの変更というのかわかりませんが、どう思っていますか、このあたり。

 志位 日米関係についていいますと、ブッシュ政権でどういう対日政策が展開されるかというのは、これからよく相手の動きを注視してみていきたいんですけれども、ただはっきりいまの段階で言えることは、アメリカの国防大学の国家戦略研究所の特別報告というのが出ているんですよ。これには民主党、共和党の両党から軍事・外交の最高レベルのブレーンが超党派で集まって、対日政策の提言を出したんです(早野「そうですね」)。このレポートをみますと、結論は、「日本は集団的自衛権を採用せよ」ということなんですが、私が、読んでみて大変印象深かったのは、アメリカなりに日米安保体制がいまのままでは持たないという危機感を持っているんですね。

 早野 ああ、なるほど。

米軍と自衛隊が海外で戦争――集団的自衛権にまで踏み込む

 志位 つまり、どういうふうな叙述で始まるかといいますと、ソ連崩壊後の十年間、「日米同盟は漂流した」と。目的を失って漂流してしまったと。そして、九六年に日米安保共同宣言(早野「そうでしたね」)、そのあと新ガイドラインがつくられていくんですけれども、しかし、やはり「無目的」のままいまも推移していると。これに明確な目的を与えなければならないんだと。その目的が何かといえば集団的自衛権なんだというんですね。

 私はこれを読んで、ひとつの危機感の表明だと思いましたね。いままでは「ソ連の脅威から日本を守る」というのが、(日米安保条約の)いちばんの大義名分だったんですよ。架空のものであっても、大義名分だった。しかし、ソ連が壊れてしまった。そのあと、「北朝鮮の脅威から守る」という話も出たんだけれど、南北が和解してしまった。そうなるといったいなんのための日米同盟かということになる。アメリカ側のブレーンもこのままでは日米同盟が持たないという危機感がある。その危機感のなかで、これをもう一歩、ギアチェンジして、集団的自衛権まで踏み出していけということになる。集団的自衛権というのは結局、アメリカ軍と日本の自衛隊が海外に出ていって、いっしょに戦争をやることですよね。そこまで同盟の性格をギアチェンジしていかなかったら、存在意義が逆になくなってしまう。そういう表明ですね。

 ですから、私は、安保をめぐって、そういう方向にいくのか、それとも、安保をなくして本当に中立・独立の日本にいくのか、こういう選択がいやおうなく迫られてくる事態だなというふうに読みました。

 早野 そのへんをめぐる国内状況も、簡単にいえば、右の攻勢といったらありきたりの言葉でありますけれど、志位さん、がんばっていけるかしら。なんとなくきな臭い雰囲気も…。

日本での右の流れはアジアのなかでは孤立した逆流

 志位 たしかにきな臭い流れもあるんですよ。ただ、アジアの流れ全体を見ますと、逆の方向、つまり日本で起こっている方向とはまったく逆の前向きの流れが起こっているわけです。この間、私たち、独自の野党外交を中国との関係でも、東南アジアとの関係でも、あるいは朝鮮半島との関係でも進めてきたわけですが、そのなかでアジアのなかで起こっている流れが圧倒的に軍事同盟ではない非同盟、それから核兵器の廃絶ということ、それから紛争の話し合い解決という方向、この流れがうんと広がっている。ASEAN(東南アジア諸国連合)も、域内のすべての十カ国全部が入って、地域の平和のための対話の機構としてずいぶん発展していますよね。これがアジアの流れですから、日本だけ見ますと、きな臭さがいきおいを増しているように見えるけれども、アジアのなかではまったく孤立した逆流なんですよ。ですから私は、この流れが決して二十一世紀全体に未来を持つ流れではないということを、よく見る必要があると思いますね。

 早野 安心していいというわけではないと…。

 志位 もちろんそうではありません(早野「取り越し苦労だからいろいろ…」)。もう一方では、さっきいったように、アメリカのほうは集団的自衛権ということで、安保をもういちだん危ない方向にギアチェンジしようとしている。集団的自衛権という言葉は、「自衛」というのが入るから、なにかちょっと防衛的な要素があるように思うんですけど、アメリカがやっているのはユーゴへの空爆を見ればわかるように、“集団的干渉”をやっているわけですよ。別にユーゴがどこかを攻めているわけじゃないのに空爆をやるわけですからね。ですから、日米同盟がそういうやり方まで踏み出していくということは本当にアジアに脅威をもたらすことになるわけで、この危険はよく見る必要があります。

参院選について──真価問われるが、前進は可能

 早野 このあたりも憲法改正なんかの動きにつながるいろいろな問題なので、このへんもいろいろうかがえばきりがなくなっちゃうので、また経済問題も正月からの株価も相変わらず下がっちゃって、いろいろありますが、そういういろんな流れを総括する形での参議院選挙というのがやっぱり政治決戦としてありますね。共産党はどんなとりくみをするのか、八百二十万票というのが前回の得票ですね。去年の総選挙はぼくは、共産党はぐっと伸びるのかと思ったら、ちょっと頭うちというか下がっちゃって、いったいどうなっているのかなと思うんですけれど、参議院選挙に向けて、これは勝てそうですか。あるいは勝てるというのはどういうことなのか。どういう目標なのか。

 志位 目標は、得票では、これまでとった国政選挙の最高の票が九八年の八百二十万票ですから、これを超えることをめざしたいというのが目標なんですね。それから、議席では改選議席は八なんです。この改選議席を確実に確保して、三年前にとった十五を上回ろうというのが議席の目標です。今度のたたかいというのは、なかなか相手の側も構えてきたなというのがこの間の総選挙ですから、簡単ではないたたかいで、本当にわが党の真価が問われると思いますが、力をつくせば前進が可能だということでがんばりたいと思います。

 早野 野党共闘というか、野党選挙協力というのが共産党以外の野党ではうごめいているし、ぼくらもある種、期待を持っているんですけれども、この関係はどうしても共産党は加われないのですか。

 志位 この問題は機が熟してないと、私たちはいってきました。野党の関係では、さきほどいった国会での共闘を発展させるということは大いにやっていく条件はあると思うので、これはやっていきたいと思うんですけれどもね。

 早野 主義、その他基本的なスタンスが違うこともわかりますが、自民党を倒すという一点でなんとか折り合いをつけるというわけにはいきませんか。

野党共闘――自公保政権を許さない立場で、選挙ではおおいに論争、競争を

 志位 選挙という場合、たとえば参議院選挙では、六年間任期があるわけですよ。私たちがどこかの他の野党の候補者をおすということになれば、その人に六年間の委任状を与えるわけですよ。六年間の間にはいろんな問題ありますよね(早野「きっとあるでしょうね」)。安保の問題も問われる、憲法の問題も問われる、消費税の問題も問われる、社会保障の問題も問われる、教育の問題も問われる。あらゆる問題が問われるわけですよ。ですから、やはり国政の基本の問題で、かりに(政策)合意がないまま結んだ場合ですね、私たちは私たちの支持者に説明がつかなくなる。相手も説明つかなくなると思うんですね。

 それは、機が熟してないわけだから、自公保政権の延命を許さないという点では野党は共通の基盤にたっているわけだから、選挙では、お互いに野党としても、どういう政治の転換をやるのかという政治の中身の論戦を大いにやって、そして、それぞれの立場で自公保政権の延命を許さないということでたたかう。それがいちばんすっきりしていいんですよ。まあ、東と西からはさみうちにするというたとえができるかもしれないけど(早野「自由党なんかもありますからね」)。まあいろんな(笑い)、北と南と東と西と、全体からやるという方法はあるんですよ。

 逆に、私たちの党とかりに他の野党が基本政策の合意がないまま結んだら、それはそれこそ、そこを弱点として相手の側から突かれて、「野合」という批判を向こうはしますよ。そのときに、お互いに手をしばられる。基本政策のきちんとした合意のない、共同の意思も十分ないときにやろうとしてもなかなかうまくいかないし、かえって野党全体の力も弱める。

 早野 たしかにおっしゃることよくわかるんですけれども、そうすると、おそらく志位さんが委員長の時代にまだお若いし、いずれ政権というところに共産党が関係してくる時期がいずれはくると思うんですけれども、どういうふうになったら、そういうふうにからんでいけましょうか。加藤紘一さんが離脱してくれればみんなでかついで政権をとっちゃおうかという議論も去年はあったりしましたが。

政権を考える場合、自民党政治のどこを変えるのかが大事

 志位 やっぱり、政権という問題を考える際に、自民党の政治の中身のどこをどう変えるのかということから、はっきりさせるということが大事だと思うのです。ただ政権の担い手を変えましょうという、政権交代さえあれば政治はなんとかよくなるということ(早野「ではない」)ではない。前回、細川内閣がありましたよね。しかし確かに政権の担い手は変わったが、中身は変わらなかった。それどころかちゃんと金権政治まで継承してしまって(笑い)、あえなくつぶれてしまったわけですからね。

 政権ということを考える場合に、自民党政治のどこをどう変えるか。私たちだったら、たとえば安保の問題でも、国民の合意でなくして、非同盟・中立の日本をつくる。経済政策でも、大企業中心主義はゆきづまったのだから、国民の暮らしを応援することを中心に置いた経済政策に転換する。教育の問題でもさきほどいった憲法と教育基本法を生かして、すべての子どもに基礎学力が身につくような学校をつくる。そういういろいろな問題について、自民党政治のどこをどう変えるのかという中身を、変える旗印をはっきり立てて、政権交代をやるというのが私たちの立場です。そういう点で、民主連合政権というのが私たちの基本的な政権構想なんです。これを、時間はかかっても追求していくというのが私たちの立場です。

自ら参加し行動する無党派の方々との連携を重視して

 早野 そうですか。国民のマグマというべきか、ふつふつと沸いていて、政党がそういう厳密なことをおっしゃっているあいだに、たとえば長野の田中康夫さんなんかボコッと出てきちゃったりして、結構いろいろやっています。「赤旗」をみてると、比較的田中康夫さんに好意的に報道しているようにみえるけれど、たとえばああいうような政治スタイルが出てきちゃいますよ。そのあたりはどんなふうにごらんになっています。評価は。

 志位 無党派の方々のいまの動きというのは、私は新しい特徴があると思うのです。無党派の方々の流れが広がったのは九四年、九五年ぐらいから、細川政権がつぶれたあたりから広がっていったわけですが、全体としてはいまの自民党政治を変えたいという流れだと思うのです。

 ただ最近の流れをみていますと、ただ変えたいというだけではなく、自らも参加して行動するという非常にアクティブな(早野「それは確かにありますね」)動きになってきているわけです。だからそれが長野(知事選)でも現れる。東京二十一区(衆院補選)でも現れる。あるいは吉野川可動堰(かどうぜき)の問題でも現れる。それから愛知万博の問題でも出てくる。今度は柏崎刈羽原発で住民投票をやろうとしていますね。村長さんが反対して、いろいろ複雑な状況になっているようですけれども。

 早野 あそこは田中角栄さんの牙城(がじょう)で…。

 志位 原発を見に行ったことがありますよ。すごい原発ですよ。あそこのプルサーマルに反対するという動きもある。無党派の方々が自ら参加して、行動しはじめている。この動きは非常に大事にしなければならないし、われわれとして、この流れこそ、連携する一番の大事な流れだと思っています。ですから無党派のそういう動き出しつつある流れと対話し、交流し、一致点があれば協力するということを全国的に、あらゆる課題ですすめていくということをやりたいですね。

 早野 なるほど。かつては共産党のフィーリング、そういうフィーリングはずいぶん違っていたんですけれども、このあいだの大会で「前衛」という言葉をはずしまして、やっぱりそこと手を結んでいこうというかなり意図的、意欲的な動き方なんでしょうか、ここは。雰囲気変わりましたか、「前衛」を外して。

 志位 「前衛」という言葉に込めていた精神は、「不屈に、先を見通してがんばる」ということなんですが、どうも、「共産党が国民を指導する」と誤解されかねないということがあって(言葉を)とったんですが、無党派の方々と協力していくさいも、お互いに学びあって、同じ目線に立って一致点で協力するということが大事ですから、そういう点では今度の規約改定も、多くの国民のみなさんに開かれた政党として発展していくうえで力を発揮すると思っています。

 早野 どうもありがとうございました。