2001年2月28日(水)「しんぶん赤旗」

CS放送 朝日ニュースター

志位委員長、大いに語る

森自公保政権への対応、予算案審議、KSD疑惑原潜事故などについて


 日本共産党の志位和夫委員長は二十七日放映のCS放送朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、森自公保政権への対応、予算案審議、KSD疑惑、原潜事故などについて語りました。聞き手は小林暉昌朝日新聞政治部編集委員。(収録は二十六日)


 小林 森喜朗首相がいつ退陣表明するのか、関心が集まる中で、国会は予算案の衆院通過をめぐって与野党の攻防が一段と激しくなっています。きょうは、共産党の志位和夫委員長に、野党攻勢のポイント、またKSD(ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団)疑惑などについてもお聞きします。志位さん、きょうはよろしくお願いします。

 志位 よろしくお願いします。

 

自公保を国民的に包囲し追いつめていくことが中心点

 小林 森喜朗首相の退陣が必至であると、こういう政治状況をまずどう見てらっしゃいますか。

 志位 森内閣は、国民的には、もう“死に体”の状況に陥っていると思います。国民的にはもう“結論”が出てしまっている内閣だろうと思うんです。だいたいどの世論調査の支持率を見ましても、数%台ですから。発足以来の「神の国」発言をはじめ暴言、失言の数々。三人の大臣のスキャンダルでの辞職。そして今度の原潜問題での対応。もうこの人には日本の国は預けられない。これが国民の圧倒的多数の共通の気持ちだと思うんですね。

 ただ、それを支えている自公保全体ということになりますと、まだこの人を担いで、居直ってやっていこう、当分はこれで予算も通してしまえ、そしてこの内閣のもとでスキャンダルの幕引きもしてしまえという姿勢をつづけている。

 いま大事なことは、森首相の即時退陣は当然求めていくわけですが、それを支えている自公保全体を、徹底的に追い詰め、国民的に包囲していく――ここにあると思っています。

 小林 いま予算案の衆院通過をめぐってだいぶ激しい駆け引きがおこなわれていますけれども、野党側が与党を追いこむにあたって内閣不信任案をいつ出すんだろうかという関心が集まっていますが、どう対応されるんですか。

内閣不信任案は一番効果的な時期をみきわめて

 志位 これは一番効果的な時期をよく見極めて、対応していこうということが、四野党の確認なんです。

 小林 なかなかその時期をいえないということなんでしょうけど、ただ常識的には予算案が衆院を通過してから出したんではあまり効果がないのではないかなと、一般的にはこう見られますけど。

 志位 予算の(衆院通過の)前とか後とかという問題よりも、一番大事なことは、国民との関係です。

 いまいったように、森政権を支えている自公保が、まだ居直りを続けているという状況があるわけですね。不信任案をかりに野党が出しても、「否決します」と三党そろっていっているわけです。まだまだ居直って、この首相を担いで当分やっていこう、少なくとも予算の関連法案まではやっていくんだという居直った姿勢があるわけですから、私はそういう居直りが許されないところまで自公保全体を追い込んでいく。その国民的な包囲網を徹底的に狭めていくということが一番大事だと思うんです。

 いま国民が怒っているどの問題でも、森首相個人の責任にとどまらないものです。たとえばKSDの問題をとっても、これは自民党丸ごと汚染されているという問題です。機密費の問題をとってみても、これは戦後の自民党政治がずっとやってきた税金の党略的流用という問題です。それから原潜事故の対応を見ても、アメリカにちゃんとものをいえない日本というところが問題になっているわけです。すべて自民党政治そのものが、自公保全体が、いま問題になっているわけですから、その自公保を国民的に包囲し、追い詰めていくというのが、いまの努力の中心点だと思っています。

 小林 すると内閣不信任案の提出というのは、場合によっては出さないでいくということもあるんですか。

 志位 国民の中で自公保を孤立させていくというなかで、そして一番いい行使のやり方を相談しながら進めるということにつきます。

 小林 野党側としたら、予算の審議のなかでいまの実態をどんどん明らかにしていくということと同時に、予算案の組み替え主張を通していこうということなんでしょうけど、今後の予算案、与党側は週末にもというような話をしていますが、どう対応していきますか。

景気に冷や水を浴びせる政府予算案――抜本的くみかえを

 志位 私たちは、野党四党の共同組み替え案、これは(一致する)最小限のものをまとめて出しました。それからわが党独自の組み替え要求を出しました。

 今度の予算(案)についていいますと、「予算を通せば景気がよくなる」というのが与党側のいい分なんですけど、私はこの予算を通したら逆に景気に冷や水を浴びせる、景気を悪くする予算だと思います。

 いま景気のどこが一番問題かといいますと、個人消費がずっと冷え込んでいる。総務省の調査でも、八年連続、家計消費がマイナスです。かつてない事態になっている。ですからここに本気で直接のテコ入れを政治がどういうふうにやるかというのが、景気対策の焦点ですよ。

 ところが今度の予算を見ますと、たとえば社会保障でも、介護と年金と医療の三つの分野で、二兆円もの負担増・給付カットを押しつけるものになっています。中小企業のみなさんへの予算は最低水準のままにしたうえで、融資の「特別保証」も中止してしまう。血も涙もないような国民いじめの予算になっている。これを通すことが「景気対策」というのは到底いえません。私たちは、抜本的な組み替えをいま要求しています。

 小林 すると審議はまだ不十分な、週内の通過というのは…。

 志位 とんでもないということです。今度の国会の論戦としては、まずKSD、機密費、あるいは原潜問題――これは予算の執行者の資質・資格にかかわる問題でもあるし、機密費などは予算そのものですから――こういう問題がまず問題になりましたし、その問題の追及にかなりの時間を使ったわけですけど、予算の本体自体についても、大いに追及して、問題点を明らかにして、ほんとうに景気に役立つものに抜本的に組み替えていくという論戦を、本格的にやらなければならないという段階です。

 小林 共産党の場合は証人喚問をKSDだけじゃなしに、機密費の方でも要求を出していますけど、与党側はなるべく出さないという姿勢で凝り固まっているような感じですが。

機密費問題――内閣官房文書の衝撃と波紋が広がる

 志位 そうですね。機密費の問題は、ともかく「使い道についてはいえません」と、知らぬ存ぜぬの一点張りで、証人喚問もいっさい応じないという姿勢です。

 とくにこの機密費の問題では、私の予算委員会の質問の中で、これは一九八九年の内閣官房の文書なんですけど、外務省分から内閣官房分へのいわゆる「上納」ということが毎年おこなわれていたという事実。それから消費税の導入が問題になった国会だったんですが、それに向けて八八年、八九年と五億円ずつ、消費税(導入)の国会対策として党略的に流用されたという事実。こういう問題を明らかにしました。

 この問題はその後ずっと広がりまして、テレビ朝日がさらに追及の特集をやりまして(小林「はい」)、そして実際にその文書を書いた人は…。

 小林 その書面の筆跡鑑定をしていましたね。

 志位 当時の内閣首席参事官の古川貞二郎氏がこの文書を書いたと、筆跡鑑定までやってほぼ断定的に報じました。そこで私たちは、国会に古川さんに出てきてもらって、ちゃんと真実を話してほしいということで国会への出席を要求したんですけど、「出ない」ということでがんばっている。いま証人喚問として本人に出てきてもらう要求をしていますが、この問題は大問題ですよ。国民の大事な税金を、国民をいま一番痛めつけている消費税の導入のために党略的に使ったということが生々しく出てる文書ですから。ですから、こういう問題の究明にも全部ふたをしたまま、予算を通してしまうというのはとんでもないことです。この問題は、今後も徹底的にやっていくつもりです。

 

都議選と参院選で自民党とその補完勢力に厳しい審判を

 小林 政局の方に戻りたいんですが、いま自民党の方で盛んに後継者選びが水面下で進んでいます。小泉純一郎さんとか、野中広務さん、また橋本龍太郎さんとか。こういう名前がいろいろ浮上していますが、国民の目から見ると「またか」という感じもしないではないですが、どうも政権たらい回し式の進展になるんじゃないかと。これに野党側はどう対応されますか。

汚れた政治をきれいにしていくうえでの日本共産党の役割を大いに訴えて

 志位 やはり、都議選と参院選挙で自公保に厳しい審判をくだすということが一番大事だと思います。国民の審判の機会があるわけですから、ここで国民の厳しい審判の声をあげるということです。そういう結果を出したいと思います。

 そのさい、私たちは、いまの汚れた政治をほんとうにきれいにする、きれいな政治をつくっていく、そのうえで日本共産党が果たすべき役割は非常に大きいということを訴えて、ぜひ日本共産党が伸びる形で、自公保に審判を下していくという結果を出していきたいと思います。これが一番の対応ですよ。

 小林 野党のなか、とくにこの番組でも先日、民主党の菅さんにインタビューしたときにですね、菅さんの感じは、解散・総選挙に追いこみ、場合によってはダブル選挙もという構えで、解散・総選挙に追い込む戦術も大きいんだというニュアンスにとれたんですが、その辺の動きはどうなんですか。

 志位 いま私たちが森政権に要求しているのは、即時退陣ですから、このときに解散要求をあわせて出しますと、おかしなことになると思うんですよ。

 退陣をしなさいといいながら、解散を要求するということになると、解散権を森首相に行使してくれという話になるわけで、もう“死に体”になった首相を、いわば生き返らせるような形になってしまう。即時退陣ということで、野党はいま共同して相手を攻めているわけですから、そこがいま大事な点だと思います。

 それで、審判はやはり、まず都議選、参院選挙でくだすということじゃないでしょうか。

 小林 政治状況は森さんはもう交代するんだろうということですけれども、野党側の希望としてはむしろ森さんで参院選までやってくれた方がやりやすいぞと、こういう期待感もあるんですか。

 志位 いや、それはないですね。そういう思惑で政局に対したら、国民のいまの怒りにこたえたことになりません。国民のいま圧倒的多数、八割、九割という方が即時退陣を望んでいるわけですから、その声にこたえて、この内閣を一刻も早くやめさせるというところに力をそそぐということが、野党のとるべき立場だと思っています。

 小林 内閣不信任案にからんで、たとえば自民党の良識派ないしは、与党のある一部が、内閣不信任案に同調するというような状況は期待できないんですか。

 志位 これは、さきほどいった自公保全体が国民的に追い詰められ、孤立するという状況をつくるなかでの、展開いかんだと思っています。なんともいえません。

 小林 加藤さんたちの「乱」がですね、鎮圧されてしまって、いま公明党の動きはどうなるのかなと。たとえば、公明党首脳の発言は、非常に期待感を持たせるというか、内閣不信任案に反対ばかりじゃないとかですね、予算の修正要求もするような発言があったり、結局なんか肝心なところにくると、後ろに下がってしまっているんですけれども(志位「ええ、そうですね」)、その公明党の動き自身はどう見てらっしゃるんですか。

公明党の実態――疑惑隠し、自民延命の一番の支え手

 志位 表と裏の使い分けがはなはだしいという感じがします。たとえば証人喚問でも、「どんどんやるべきだ」といいますね。しかし、現場では証人喚問をすべて抑える側にまわる。政倫審の問題でも、最初は「公開で」といってみる。しかし、現場では公開を抑える側にまわる。それから内閣不信任案も、「はじめから否決とはかぎらない」という。しかし実際は否決するという立場です。

 最初の発言は、わりと新聞に大きく出るんですよ。(見出しが)五段ぐらいで。ところが二回目の発言は小さくしか出ませんから、世間のみなさんに、なにか最初の発言だけをみると、公明党は自民党の悪いところをえらくチェックする役割を果たしているかのような誤解が生じるような出し方をしながら、しかし実際は疑惑隠し、自民党延命の一番の支え手として働いているというのが実態だと思います。

 小林 公明党が良識を発揮して、政権を離脱すると、恐らく自民党にとってはそれが一番痛いというか、薬になるような感じがするんですが、そんな状況はまずない。

 志位 想定しづらいことですね。これは。

 小林 いまだとむしろ公明党の力を強めているというか、影響力が強まっているから、一番ハッピーになりつつあるのかなという気もしますが。

 志位 不信任案に賛成するということになれば、閣僚引き揚げ、連立離脱ということですが、そういうことは毛頭、あの党の念頭にはないと思います。

 

KSD汚職ーー一番太い資金のルートは党費肩代わり

 小林 政局の話から個別の問題に移りたいんですが、KSD問題の今後の展開はどう見てらっしゃいますか。

 志位 これは、「ものつくり大学」にかかわって、ヤミ献金をもらって、「ものつくり大学」の応援をやったという受託収賄という問題などには、捜査のメスも入るだろうし、事実関係もかなり明らかになって、断罪の方向までいくと思うんですよ。ここは。

 問題は、そこにとどまらないで、もっと大きな一番太い資金のルートというのは、党費肩代わりなんですよ(小林「はい」)。だいたい十八億円ぐらいの党費肩代わりというのが、政治資金収支報告書からの私たちの推定なんですけれども、それぐらいのお金が、党費の肩代わりで流れている。これが一番太いルートなんですね。

 ここは、もちろん政治的・道義的な重大な責任が生ずる。それにとどまらず、政治資金規正法(違反)の問題も生まれてくる。有印私文書偽造という問題も生まれてくる。法律違反という問題もあるんですね。

 ここに、どこまで政治的・道義的責任の追及のメス、そして法的な追及のメスが入るかというのが、非常に大きなポイントだと思います。ここまでやらないと。

 「ものつくり大学」や「アイムジャパン」などで、行政をゆがめたということは、大きな問題なんだけれども、一番の“本丸”といえる問題は、十八億円もの党費の肩代わりをやっていたことにある。この肩代わりされた党費は自民党に入っているわけです。村上さんや小山さんは自分のポケットに入れたんじゃないんです。自民党に入っているお金です。このお金の問題点に、きちんとメスが入るかどうかが一番大きなところだと思います。

 私たちも独自の調査でずいぶんつきとめましたけれども、この受け皿になっている東京と埼玉と千葉と神奈川の四つの「自民党豊明支部」というのは、実体のない幽霊支部というのが明らかになりました。きょうの報道によりますと、たとえば「徳川家康」とか、「石川五右衛門」とかいいかげんな名前を書いて、名簿をつくっていたということも、ずいぶん明らかになっています。このやり方――党費の名目で巨額のヤミ献金を流し、これで丸ごと自民党を買収していたわけですから、ここにメスが入るかどうかは、非常に大きいと思いますね。ぜひメスを入れていきたいと思います。

 小林 共産党は当初から、いろいろ調査をして、架空党員のつくりかたなんていうのは個別にいろいろ聞かれて、支部長にもあたったりして(志位「はい」)、これはそんなにひどいもんなんですか。

架空支部、架空党員問題――いよいよ実態が明らかになってきた

 志位 ひどいもんですね。私たちが驚いたのは、四つの(自民党)豊明支部で、とくに東京と千葉と神奈川の支部の「代表者」として届け出されている人に、「しんぶん赤旗」の追及チームが会ってお話をうかがったら、「私は代表者になったおぼえはありません」とおっしゃるんですね。千葉と神奈川の方は、「私は自民党員でもありません」とおっしゃるんですよ。それから千葉では、県議会で追及したんです。そうしましたら、自民党の県連の政調会長が、「自民党千葉県豊明支部というのは架空支部でございます」ということを(笑い)、こたえているんです。

 ですから、支部自体がまったく架空なんですよ。もちろん党員も架空なんですね。こういう実態を明らかにして、私たち国会に出しましたら、首相は「調査する」ということをいいましたけれども、調査している気配は全然ないですね。すべてこの問題にふたをしたまま、ヤミに葬ってしまおうというのが向こうの姿勢です。ここまでちゃんとメスをいれなかったら、この問題は、底を突いた解明にならないと思っています。

 小林 何か立て替えて払ったようなお金を戻すみたいなことをいいだしましたね。

 志位 いいだしましたね。逆にいえば、かなり(党費の)立て替えや肩代わりがあるということを自認しているからこそ、そういうお金があったら返すといい出したのでしょう。だいぶ追い詰めてきたと思いますが、さらに徹底的にやっていきたい。

 小林 政党支部そのものはあれなんですか、届け出も解散もそうすると…。

 志位 架空でやっているんです。

 小林 架空になっちゃう。すると法律違反も…。

 志位 その通りです。私たちが確かめたところ、解散届を出しているんですよ、四つの支部が。解散届には、当然署名、捺印(なついん)がいるんです。ところが支部の「代表者」のみなさんに会ってみたら、「私は署名した覚えはない」「捺印した覚えもない」というんです。つまり、偽造された「解散届」が出ていた。これが明りょうになりました。明らかにこれだけでも、有印私文書偽造という立派な犯罪になります。

 こういうことを平気でやっているわけですから、ほんとうに許されないことです。しかも十八億円の肩代わりした党費の原資はなにかといえば、中小企業のみなさんの共済掛け金ですからね。中小企業のみなさんが、けがのために働けなくなったときに備えて、月に二千円出しているお金が、自民党にまさに違法・脱法の形で吸い上げられていたというのが、今度の事柄の本質ですから、これはほんとうに許されないことです。

 小林 村上正邦・前自民党参院議員会長は、強制捜査を受けるんではないかという見方が強いんですけれども、強制捜査が広がると、自民党の方はこれは司法に任せようという話に、またガードが強くなるんじゃないでしょうか。

国会は法的責任の追及とあわせて政治的・道義的責任の追及を

 志位 司法がやるべき捜査は、法的責任の追及です。これは当然、ちゃんとやる必要があります。国会でやるべきは、法的責任の追及にあわせて、政治的・道義的責任の追及と両方をやる必要があるのです。たとえ、法律違反でなくても、脱法行為とか、法の精神にそむいてデタラメをやっているということは、政治的・道義的責任が問われるわけですから、その全体を追及する必要があるわけです。司法が強制捜査に入ったとしても、われわれは必要な人の証人喚問を続ける。出張尋問ということもできるわけですから、続けて全容を明らかにしていく必要があると思います。

 

米原潜衝突事故ーー原因究明と責任追及を、筋の通った形でアメリカに求めることが重要

 小林 (話題を)移りたいんですが、漁業実習船の「えひめ丸」とアメリカの原子力潜水艦の衝突事故なんですけども、アメリカからようやく特使がくるという話もありますけども、この事故自体をどう見ていらっしゃいますか。

 志位 この事故は、米軍のきわめて傍若無人で、横暴な、操艦の事実が明らかになったという点で、ほんとうに許されない事故だという思いを強くします。

 とくに民間人を十六人も乗せていて、その人たちがコントロール・ルームに全員密集していた。そのため、ソナーで二度にわたって発見していながら、ちゃんと情報も伝わっていない。そういう事態が明らかになり、しかも操舵(そうだ)までさせていた。ほんとうに米軍自体が、芯(しん)から腐敗している事態が明らかになりました。これは、日本政府として、責任と原因の究明を、きちんと筋の通った形で、アメリカ側に求めていく必要があります。

 小林 日本側のイシュー(問題)としてはどうなんでしょう。現地にいった政務官や副大臣がいろいろ対応していますけども、この辺の評価はいかがですか。

現地の日本政府代表と日本共産党調査団――はたした役割は対照的だった

 志位 私たちは、現地にいった日本代表はだらしがないと、強い批判をもっています。桜田外務政務官が現地入りしたわけですけれども、やったことというのは、はっきりいって、米軍のスポークスマンみたいな役割です。

 まず問題になったのは、(「えひめ丸」の)大西船長さんが記者会見で、衝突沈没後、「原潜は救助してくれなかった」と、非常な怒りをもっていったわけですよ。なぜ救助しなかったのかが大問題になった。ところが、アメリカ軍との会見のなかで、「救助できなかったんです」とちょっといわれたら、桜田政務官は、「米軍に落ち度はありませんでした」ということを発表してしまったのです。

 私たちは、いち早く緒方靖夫参院議員を団長とする調査団をハワイに送り、緒方さんが沿岸警備隊とも会う、現地のマスコミとも会う、それから国家運輸安全委員会にも会う、そういうなかでずっと実情を調べてみますと、やはり米軍の救助活動一つとっても、「落ち度がなかった」などとは到底いえないということが明らかになってきた。ホノルルでは、なぜ救助しなかったのかというのが、大問題になってきた。

 私は、ちょうど緒方さんから連絡をもらって、現地では、原潜が救助をしなかったことが大問題になっている、そして桜田氏が「落ち度はなかった」といったことも大問題になっているという話を聞いて、党首討論でも追及したんですけれども、ほんとうに米軍のいいなりに、口移しで、結構、結構と認めてしまったという態度は情けなかった。

 これは、さすがに政府もたださざるをえなくなりましたけれども、政府の姿勢と対照的に、わが党は独自の調査団を送って、この問題での日本国民の怒りをしっかり受けて、本当の意味での原因究明、責任追及をやっていくうえでの大事な仕事ができた。今後につながる仕事ができたと思っています。そういうこの間の切り開いてきた到達点のうえにたって、今後は真相究明の舞台がワシントンに移ると思うんですが、継続的にやっていくことも考えていきたいと思っています。

 小林 アメリカの原子力潜水艦に、民間人が多数乗っていたというのも、われわれにとって、ずいぶん意外だなという感じがするんですが、日常的にそういう活動をやっているんですか。

民間人の搭乗は日常の出来事――世界の海でも、日本の海でもやめさせよう

 志位 これはやっているというのが、むこうの答えなんですよ。米太平洋軍の広報部長とわが党の調査団が会って、相手にただしてみると、民間人を乗せているというんですよ。それで、日本ではどうなのか、横須賀(に入港している米原潜)ではどうなのかと聞きましたら、横須賀でも「統計がある」というんですよ。

 日本には、横須賀と佐世保と沖縄のホワイトビーチと、三つの港に、去年一年間だけでも、五十一回米原潜が寄港しているわけですが、そこでそういうことがやられている可能性がある。

 これはケネス・キノネスさんという駐日アメリカ大使館につとめていた方の書いた本なんですけれども、そこに(キノネス氏が)米原潜にのって操舵した話が出ているんですね。操舵桿(かん)を動かしたら、右に左に、上に下に、ものすごいパワーで突き進む、これはすごいということが、実体験で出ているんです。このときに、海上自衛隊の将官も、いっしょに乗っていたということも出ていますね(小林「ほお」)。ですから、かなり日本でも同じようなことがやられているという問題がある。民間人を乗せて、ショーまがいのことをやるということは、許されないことですけれども、これは一刻も早く、全世界の海でも、日本の海でも、やめさせるということが大事になっていると思います。

 小林 機密費の問題ももう少し聞きたかったんですが、どうも時間になってしまいました。いよいよ予算の衆院通過となると、いろんなことがおこなわれていると思いますが、またその緊迫した時点で、いろいろお話を聞きたいと思います。どうもありがとうございました。