2001年4月19日(木)「しんぶん赤旗」

CSテレビ「朝日ニュースター」志位委員長、明快に語る

自民党総裁選、野党の現状、反共攻撃への反撃などについて


 日本共産党の志位和夫委員長は十七日、CS放送「朝日ニュースター」の「各党はいま」に出演し、自民党総裁選やそのなかでも、議論になった消費税減税問題、公共事業のあり方について、また、野党間の関係や公明党の反共攻撃などについて、朝日新聞政治部の峰久和哲政治面編集長のインタビューにこたえました。


自民党総裁選──経済失政と金権腐敗に無反省な4人組

 峰久 きょうは日本共産党の志位和夫委員長にお願いします。志位さん、よろしくお願いします(志位「よろしくお願いします」)。やはりいま、政治の世界での大きな話題は、自民党の総裁選挙ということになっていますので、総裁選挙についていろいろお話をうかがいたいと思います。いまの自民党総裁選挙で議論されていることは、志位さんからごらんになると、こんな大きな点を見逃してなんで争っているのだろうということがいろいろあるのではないかと思いますけれども、自民党の総裁選挙が忘れていること、その辺からうかがいたいのですが。

総裁選の議論で忘れていること──二つの大問題がある

 志位 その点では二つの点をいいたいですね。まず、いまの四人の方は、すべて九七年の第二次橋本内閣の閣僚だったわけですよ。橋本さんは首相、小泉さんは厚生大臣、亀井さんは建設大臣、麻生さんは経済企画庁長官と、経済にかかわる有力閣僚です。この内閣で消費税の増税をやり、国民に九兆円の負担増をかぶせた。そして、このことが、いまの大不況につながったというのは、もう国民のみなさんはだれでも実感されていることなんですね。すなわちいまの大不況をつくりだした経済失政の共同責任を負っている四人なんですよ。

 ですから私は、ネーミングで「大不況四人組」と名づけたんですけれども、(総裁選の)議論を聞いていまして、そのことにたいする反省、あるいは総括は、ひとことも聞こえてきませんね。“あの時期の、不良債権についての認識は甘かった”というようなことは一部からありますけれども、国民に負担増をかぶせ、増税をやったのはまちがいだったと、この反省はだれもいいません。これが一つ大きな問題だと思うんですね。

 もう一つの問題は、KSD汚職、それから機密費の問題、これは森首相一人が代わったところで解決する問題ではないんですよ。KSDというのは、丸ごと自民党に、中小業者の共済掛け金が流れ込んでいたという問題。機密費というのは長年にわたって、国民の税金が党略的に食い物にされていたという問題。これは、自民・公明政治の全体が汚されていたという問題ですから、一人首相が代わって解決する問題ではないんですが、だれ一人この問題について、真相究明の弁もなければ、反省の弁もない。(四人が)全部だんまりを決めとおす。つまり、金権腐敗隠しという点でも、本当に失格だと思いますね。

 この二つの点をだれも触れようとしないというのが、今度の総裁選の大きな特徴ですね。

 峰久 経済問題で四人のなかで一人だけ特徴があるといえば、小泉さんが構造改革を前面に出しています。その辺は共感が持てる点があるんじゃないでしょうか。

「構造改革」というが──公共事業の無駄づかいをだれも問題にしない

 志位 小泉さんの「構造改革」というのは、なにを意味するかが、よくはっきりしないんですが、一つは、規制緩和、あるいはリストラをどんどんもっとやった方がいいという立場でしょう。しかし、このやり方が、たとえば労働のルールを壊す、商店街をまもるルールを壊す、あるいは金融のルールを壊す、これがいまの国民を痛めつけている元凶なんですよ。

 それからもう一つ、小泉さんのいう「構造改革」で(問題なのは)、これはほかの方もみんなそうなんですが、「財政構造改革」というふうに言うわけだけれども、公共事業に年間五十兆円という巨額にメスをいれて、巨大開発の無駄づかいをやめていこう、自然破壊のダムとか、巨大な港湾とか、こういう無駄づかいはやめていこうという、本当の意味での財政の中身の転換ということをおっしゃる方はだれもいないんですよ。公共事業にはみんな手をつけない。聖域にしている。ですから、本当の意味での財政の構造の民主的改革ということをとなえている方はだれもいらっしゃらないというのも特徴ですね。

 峰久 あるいはこの点については亀井さんと同じような考えかなと思われるのが、ちょっとトーンダウンしましたけれども、消費税の税率を下げるということを一時は前面にかかげそうになったことがありますが、この点についてはどうですか。

亀井氏の消費税減税論──日本共産党の提言は、財源の裏づけのある責任あるもの

 志位 この問題では、私たちは一貫して消費税の減税、廃止を求めてきました。これは、どの世論調査をとっても、たとえば日銀がやった調査でも、四三%の方が望んでいる。あるいは大阪信用金庫の調査では、これは中小業者のみなさんの調査ですが、四八%の方が望んでいる。圧倒的な声なんですね。ですから、これを私たちは要求してきたけれども、それを、自民党の総裁候補の一人も、言わざるを得なくなったというのは、私たちの主張の道理を示すものとして、そういう意味で注目しました。

 ただ、言って早々、トーンダウンしましたね。財務省から「亀井さんは共産党の委員長選挙に出るつもりか」なんていわれて(笑い)、だいぶトーンダウンしました。

 それからもう一つ、亀井さんの議論というのは、非常に矛盾だらけの議論で、消費税の減税をいうのですけれども、では財源はどうするんだということについて、公共事業のばらまきは一方でつづけるというわけでしょう。ですからこれはもう成り立たない、できない議論なんですね。

 私たちは、消費税の減税を主張していますけれども、財源問題についても、五十兆円の公共事業、あるいは五兆円の軍事費、あるいは七十兆円の大銀行の支援の枠組み、こういうところにメスを入れて、しっかり(財源を)つくる見通しを持ちながら、減税政策をやろうという責任ある提案をしているんですが、ここは違うわけです。

 峰久 公共事業についていえば、小泉さんも決してそれを引っ込めているわけではない。すべての候補がともかく、景気回復のためにはこれを起爆剤にしようということを、どなたも決して下げてはいないということなんですけれども、その点について日本共産党はどういうふうな議論をなさるんですか。

 志位 いまの公共事業のあり方が、巨大開発中心で、浪費型で、対費用効果もない、自然破壊のもの、これが中心になっている。つまり、ゼネコンをうるおすだけが目的のようなものが中心になっている。こういうものはやめるべきだという立場なんです。

 これはつづけていっても、雇用効果もあがりません。九〇年代を通して公共事業の額がうんと増えたんですが、雇用効果はうんと下がっていますから。ですからこういうものはやめて、中身を生活福祉型に転換する。そうすれば、地元の中小業者の建設業の方々にも仕事がちゃんとまわる。そういう中身の転換をやりながら、この改革をはかっていこうと。

 そういう形ですすめるならば、景気の回復という問題と矛盾しない形で公共事業の改革も可能になるというのが私たちの展望なんです。

 峰久 自民党の総裁選挙のありよう、結局若手からは候補者が出ない。経世会にいたっては結局新しい候補を出せずに総理大臣をなさった方が出ている。ということでいまの自民党のありようというものがこの総裁選でよく見えてきていると思うんですが、総裁選を通じていまの自民党はどうなっちゃっているんだろうとその辺について志位さんは……。

業界・団体しめつけの総裁選──KSD汚職と同じ構図がここにも

 志位 最初にいった二つの問題、経済失政と金権腐敗に無反省というのがいまの状況をあらわしていると思うんですが、総裁選自体についていいますと、結局、業界締め付け、団体締め付けをやっているわけですよ。これは橋本さんの得意技なんですが、ほかの候補がやってないかというとみんなやっていますよ。

 このやり方こそ、KSDでも問題になった一番の悪いやり方なわけですよ。いろいろな政官業の癒着の関係をつくって、そこを締め付けて票を出させる、お金も出させる。そのかわり利益供与をはかってやる。そういうやり方は総裁選挙でもまさにいま横行しているわけですから、やり方も本当に旧態依然たるやり方を出ていないと思いますね。こういうやり方では、これ自体未来がないことは明りょうだと思います。

 峰久 四人のなかで、どちらかといえばこの人がましだという人はいますか。

 志位 そういうふうな点をつけるわけにいきません。どなたにも。

新しい政治を模索する無党派の方々との対話、共同を

 峰久 はい。わかりました。それで日曜日に秋田県で知事選挙がありました。自民党は総務会長の息子さんが出られて、大きく負けちゃった。現職の寺田さんが七割近い票を獲得されたわけですけれども、その前は千葉県、さらにさかのぼると栃木県、長野県とこのところ自民党の負けがつづいているんですが、この傾向についてはどういうふうに見ておりますか。

もう二度と自民党を支持しないという劇的な事態が起こっている

 志位 やはりいまの自民・公明連合の政治にたいして、国民のみなさんの怒りの度合いというのは、本当に深いものがあると思います。これはある雑誌に特集が出ていましたが、八九年の消費税、リクルートのときの怒りとは違うというんですね。あのときはちょっとおきゅうをすえてやろうという怒りだったと。今度は本当に、もう二度と自民党は支持しないという自民党離れの事態が劇的にいま起こっていると。

 この自民党の支持基盤の崩れというのは、本当に歴史的な崩れだと思います。そのなかで、いま新しい無党派層がうまれ、そして新しい政治を模索している。これは、全体として私は大きな積極的な流れだと思います。私たち自身がもっと、こういう流れ(の人々)と協力する条件があるわけですから、さらに努力して、こういう方々との共同を強めていきたいと思っています。

 峰久 こういう方々との共同というのは、これは無党派層を味方にすると、そういうふうに理解してよろしいですか。

「反自民」という方向は共有──対話し、共同する努力をつよめたい

 志位 対話し、共同、協力していくという大きな相手としてとりくんでいきたいと思います。これは「反自民」というベクトルのむきは私たちといっしょなわけですから、どんな問題で接点をつくっていくか、切実な暮らしの問題、平和の問題、さまざまな問題で語り合って、共同の流れをつくっていきたいと思っています。

 峰久 それですぐ思い出すのは東京二十一区の衆議院の補欠選挙で、立候補を予定しておられた共産党の方を引っ込めて、無党派の川田さんを全面的に支援されると、それをイメージするんですけど、そういうことがこれからもいろんなところで出てくるであろうと、そういうふうに考えてよろしいでしょうか。

 志位 川田さんの場合は、薬害エイズのたたかいで、私どもが連帯してきたという経緯がありましたから、特別なケースとしてああいう対応をしました。いまそういう状況が、どこでもたくさんあるというところにまで、いっているわけではありません。ただ、今後も同じようなケースが出てきたら、同じような対応をするというのはこれはあり得ることになります。

 峰久 これはちょっと共産党にとっては気がかりなことかもしれません。千葉県の県知事選で共産党の推薦候補がかなり票を減らし、それと今度の秋田の共産党が推薦された候補者は全体で三%程度。県庁所在地の秋田でも五%程度しか票が取れない。単に共産党の数字が減っているというだけじゃなくて、とても面白いなと思うのは、共産党支持層の三割が、共産党推薦候補ではなくて寺田知事に投票している。これは各社の出口調査がほとんど同じような傾向が出ていますけれど、共産党支持層も最近はずいぶん戦略的な投票をするといいますか、自分のところの候補者一本でいくのではなくて、よりましな候補に、支持者、彼らにとってよりましな候補に投票する、そういう戦略性が出てきたんじゃないかというふうにわれわれちょっと勘ぐるんですけどね、その辺はどう思われますか。

 志位 そうですね。これは知事選挙で、一人の座を争うということになりますと、最後にどちらを選ぶかというなかで、どちらがより悪いかというような議論のなかで、批判票が流れていく。どうしても勝てる候補だろうと思われる候補に流れていく流れが起こるなかで、私たちも千葉の場合などではかなり奮戦して、だいたい得票では一四%ですから、わが党の(衆院)比例の得票はだいたい一二%ぐらいですから、同じぐらいの得票率を取っているんですが、しかし前回とは対決の構図が変わるなかで、票を思うようには伸ばせないという状況にはなりました。知事選という一人の座を争うなかでは、そういう流れが起こることはありますね。

 ただ、逆にいいますと、そういうふうにほかの候補の方をベターな候補として選んで投票した方も、共産党支持者であることに変わりないわけです。ですから、そういう方も共産党を支持してくれるところまでわれわれの支持層が広がったということも、逆にいえるという面もあると思います。

 峰久 なるほど。

 志位 ただ私たちとして、いま新しい政治を求め、模索している無党派の方々との共同の努力は、もっともっと強めていきたい。私たちが本当に、「この党にまかせれば政治が変わる」というような強いメッセージをあらゆる分野で発信して、その人たちの気持ちをつかめるようにさらに努力を重ねたいと思っています。

野党の現状と日本共産党の立場について

 峰久 知事選だからだということなんですけど、たった一人を選ぶ選挙だと。その意味では、衆議院三百の小選挙区もたった一人を選ぶ選挙ですし、今度の参議院も二十七の選挙区は一人区ですね。まあ衆議院というのは党派性を争う選挙だから、なかなか選挙協力というのは難しいと思いますけど、参議院の場合は野党間協力という意味では、民主党を軸にいろんな選挙協力がすでに話し合われています。その意味では、その中に共産党も加わって一種の「反自民連合」と、そんな形で話をしていくというのはまだ早いんでしょうか。

他の野党の現状の二つの側面──前向きの変化とともに、政策的足場は固められてない

 志位 これははっきりいいまして、その条件はないんです。

 いまの野党状況についていいますと、前向きな変化もあります。たとえば、わが党以外の野党もすべて「反自民」の立場を掲げていますし、それから共産党を排除するという悪い風習はやめましたね。これは以前、国会にはびこっていたんですけど、いまはこの共産党排除というのをやめて、共産党とも国会共闘をやるという立場になりました。この「反自民」という点、それから共産党との共闘をやるという立場は他の党もとっているわけですから、私たちも国会での共闘は大いに積極的にできる。これまでもやってきましたし、今後も誠実に発展させるという立場に変わりはありません。

 同時に、いまの他の野党についていいますと、率直にいいまして、自民党の中にいて、そして自民党を出て党をつくった場合もありますよね。民主党の一部とか、自由党とか。あるいは自民党と連立を組んでいて、それから抜けて野党になった。社民党とか、自由党もそうですけど。こういう党もあります。そういう流れの中でいま野党がつくられてきているというわけですから、「反自民」という旗は掲げているんですが、ではその自民党政治に代わってどういう新しい政治をおこすのか、その政策的足場がしっかりしているかというと、まだ固めてないわけですよ。

 たとえば、緊急の経済問題をとっても、私たちは消費税の減税をいうわけですけど、これは現状では他の野党で賛成するところはないのです。といいますのは、増税のさいに賛成したという経緯が民主党などにありますから、なかなかこれは賛成できない。むしろ増税容認というのが色濃いですよ。

 峰久 はい。

 志位 それから社会保障の問題でも、私たちは国民の負担増自体に反対するわけですけど、民主党などは「抜本改革」で、もっと負担を求めるのが当たり前だ、という議論もかなり強いですね。

 峰久 はい。

 志位 それからリストラでも、私たちはリストラを抑えて、ルールある経済社会が必要だというんだけど、むしろ規制緩和万能という流れが強い。

 それから金融の問題でも、七十兆円の税金投入の枠組みは私たちは反対してきたわけですが、これを進めた流れが他の野党の全体です。ですから、当面の経済問題をとっても、大きく立場が違うわけです。

「政策なき選挙協力」になれば、手足を縛られ、いうべきこともいえなくなる

 志位 ですから、ここで無理に選挙協力を結ぶということになったら、それこそ「政策なき連合」になってしまって、もし本当に一致点だけで政策協定を結んだとしたら、ほとんど一致するところはないわけですから、私たちもいうべきことをいえなくなってしまう。消費税の減税もいえなくなってしまう。社会保障の負担増反対も、リストラ反対もいえなくなってしまう。私たちの手足が縛られて自由な選挙ができないし、相手にも同じことがいえることになるんですね。

 ですから、それぞれが「反自民・公明」という旗印を掲げるなら、「自民党政治をどう変えるのか」という内実のある政策を、野党のそれぞれがきちんと示すべきじゃないか。そして、示したうえでそれぞれが(自民・公明連合への)審判をくわえようじゃないかと。そうすれば、その先のつぎの道も開けるんじゃないか。そういう努力をやるのが、こんどの選挙では大事だというのが、私たちの立場です。

 峰久 その参議院選挙に向けて、国民の負担をより少なくして、より経済を活性化させていこうという、共産党の主張を、多少、ダブるかもしれませんが、もう少しくわしくうかがいたいんですけれども。

大企業応援の政策が破たんした以上、家計を直接応援する政治にきりかえる

 志位 私たちは、この前の「緊急経済提言」のなかで、消費税の減税、社会保障の負担増の凍結と安心のもてる体系の確立、雇用の拡大と、この三つの柱で、要するに家計を直接あたためる対策をいまこそとるべきだという提案をいたしました。

 いまの経済の状況をみていて、どこが一番問題かといいますと、経済の六割を占める家計消費、個人消費がかつてない冷え込みを示しているというところに一番の問題がある。これを否定する方はいないと思うんですよ。

 では、どうやって家計をあたためるのか。これまでの政府の考え方というのは、“企業収益を応援すれば、いずれはそれは家計にまわる”という、そういう議論でやってきたわけですね。それが成り立たなくなった。財務大臣も成り立たないと認めました。それから、この前、党首討論で、森さんも最後に認めました。大企業をいくら応援しても家計にまわらない、むしろ、大企業を応援してもリストラで家計から吸い上げちゃって、いつまでたっても家計は冷え込んだままで、ますます冷え込むと。

 そうなると、企業の収益も長続きしないんです。この間、日銀の短観とか、一連の経済指標が出ましたけれども、企業の収益も一時、九九年、二〇〇〇年と上がりましたけれども、今年、来年にかけて先が暗くなっちゃって、企業の収益もへたっちゃう(状況です)。やはり家計が冷え込んでますと、企業収益も長続きしないで、ここでも悪循環が始まるんですね。

 ですから、こういう“企業を応援して”という経済政策が破たんした以上、家計を直接応援するという政策に切り替えなければ、日本経済が立ち直る道はないということで、私たちはこんどの提案をいたしました。これは、広く経済界の方々もふくめて賛同を得られるんではないかということで、対話を大いに各方面でやろうということで努力しているところです。

反共攻撃は、福祉と暮らし、民主主義破壊の道──
その打破は社会進歩にとって避けてとおれない

 峰久 参議院選挙に向けて、いままさに政策的にも、組織的にも、体制を整えているところなんですけれども、去年の総選挙のあと、共産党への攻撃ということが、しきりに共産党の方が、組織的な共産党攻撃がと(いっています)。そういう兆しというのは、いまお感じになっていますか。

悪政をごまかし、推進することが目的──ひとり日本共産党だけでなく国民全体の問題

 志位 かなり激しいものが始まっていますね。これは、自民党もやるんですけれども、自民党はいま、自分たちの基盤が崩れていますから、なかなか共産党攻撃をやるだけのゆとりがないという状況も一方であって、おもにこの主力部隊になっているのは、公明党・創価学会ですね。

 いま彼らがやっているのは、東京の都議会で、石原知事との問答のなかで、「共産党はハイエナだ」という発言を知事からひきだして、これを日本中でいいまわっているわけですよ。これはどういう問題かというと、石原知事が提案した大銀行の課税とか、ディーゼルの規制とか、これにわれわれが賛成した。かねてからのわれわれの主張だったわけですから、これは都議会の議事録に残っている主張ですから、賛成したわけですが、そのことをもって「手柄の横取りだ」みたいなことをいって「ハイエナだ」といいまわっている。さすがに、これは都議会でもあまりにひどい「議会の権威をじゅうりん」するやり方だというんで、自民、公明以外のすべての会派から批判があがるという、こういう状況があったんですが、非常に口汚い。

 この問題について、私たちは当然反論するんですが、なぜ、公明党がそういう共産党の攻撃をやるか。これが大事な点だと思うんです。いままでは、公明党は野党の立場で、反共をやってきたわけですけれども、(いまは)与党に入って、自民党の片棒を担いで、国民の暮らしをいためつける政治をやる、これを合理化しごまかすために、共産党の攻撃をやっているというのが事実なんですよ。

 いまいった都議会の問題でも、反共問答の最初にあったのは、シルバーパスといいまして、東京のお年寄りの無料パスを、自民、公明、そして民主、社民まで一緒になって有料化した。これを私たちが批判したら「共産党はウソつきだ」というでたらめな攻撃から始めているんですね。無料が千円にあるいは五千円になっているわけですから、有料化といわずしてなんというのかということになるんですが、そういうシルバーパスを有料化する、あるいはマル福といわれてきたお年寄りの医療費の助成制度を段階的に廃止する、こういう福祉切り捨てをどんどんやってきた。これが都民に説明がつかないものですから、共産党に攻撃を集中することで、自分たちの悪政をごまかすという作戦なのです。

 ですから、これは決して自民・公明の共産党攻撃にたいして、共産党が“空中戦”でやっているたたかいではない。反共攻撃というのは、福祉を破壊し、暮らしを破壊し、民主主義を破壊する道です。ひとり共産党の問題ではなくて、都民全体の問題、国民全体の問題として打ち破るということが、日本の社会進歩にとって非常に大事になっています。これを打ち破ることは、私たちの党の前進にとっても避けられないし、日本の政治のまともな発展や社会の進歩にとっても避けられない大きな問題として取り組んでいきたいと思っています。

 峰久 そういった反共攻撃、これは、これからもおそらくつづくんでしょうね。

崩れつつある自民党の政治を延命させないためにも打ち破っていきたい

 志位 それは、相手にとってみましたら、自民党の政治がいま崩れている。そして、その自民党の崩れている政治にたいして、正面から、安保の問題でも、外交の問題でも、経済の問題でも、本当に根本的な改革の道を示しているのは日本共産党ですから、この共産党をたたいておけば、ある意味では、自民党がいくら崩れようとこの体制を延命させる道が他にみつかるということで、相手もかなり大きく構えてやってきているわけですから、私たちも断固とした構えで、これはほんとうに国民的な意義をもつたたかいとして打ち破っていきたいと思っています。

 峰久 今回しかうかがえないことなので、ぜひ一点だけうかがいたいんですけれども、二十世紀から二十一世紀にかけてのちょうど橋渡しの時期、一年間、森さんが首相で、森内閣が終わるわけですけれども、森内閣っていったいなんだったのか、森内閣の総括をちょっとうかがいたいんですけれども。

森内閣の1年──自民政治のゆきづまりを一身に体現した首相担いだ勢力の共同責任は消えない

 志位 自民党政治のゆきづまりの姿を、経済政策でのゆきづまり、金権腐敗でのゆきづまり、政治家のモラルや資質、こういう点でのゆきづまり、これをすべて一身に体現したような内閣だったなと思いますね。

 ですから、こういう内閣を生み出し、そして延命させ、いまでもやめるときだって国民にたいして頭を下げていないわけですから、素知らぬ顔をして交代させる。この勢力はすべて共同の責任を負っているということを言いたいですね。

 峰久 いかがでしょう。その四人の候補。だれがとはいいませんが、だれがトップになったら、そういった森内閣のマイナスイメージ、マイナスの部分というのが多少は払しょくされる、その可能性はあるんでしょうか。

 志位 いまのみなさんの議論の状況を聞いていても、とうていそれはありえません。(今度の)自民党の総裁選挙は(首相の)任期途中でやるわけでしょ。任期途中でやるってことは、失政があって辞めるからやるわけでしょ。ところが、その問題についてだれもふれない。だって、みんな、四人の方の全部が、(森内閣の)閣内あるいは森派の会長として、森さんを支えてきたわけですから、その反省がないというのも大きな問題ですね。

 峰久 そうですね。もし志位さんが戦略的にこの人だったら、たたかいやすいという人はいるんですか。

 志位 私は、相手は選びません。

 峰久 どうもありがとうございました。