2001年6月14日(木)「しんぶん赤旗」

党首討論 志位委員長

「不良債権」問題の核心つく


 「『構造改革』のためだったら、たとえ二十万、三十万という中小企業がつぶれても仕方がないと考えるのか」――十三日におこなわれた党首討論で、日本共産党の志位和夫委員長は「不良債権」処理で中小企業に“痛み”を押し付けようとする小泉純一郎首相の姿勢を追及しました。論戦の大要を紹介します。

志位氏

20万、30万社の中小企業がつぶれても仕方がないというのか

小泉首相

生き残れない企業がでてくる可能性は否定いたしません

 志位委員長 総理は「構造改革なくして景気回復なし」といい、その「構造改革」の第一の課題として、「不良債権の最終処理」をあげておられます。

 しかし、いま「不良債権」といわれているものの実体は、まじめに働いている中小企業が大部分ですよ。そして、「最終処理」というのは、融資を打ち切り、担保を回収し、生きて働いている企業をつぶしてしまう。こういうことになります。これが大量の倒産を招く不安は、各方面から指摘されています。

 わが党議員が先日、衆院の予算委員会で提出した資料では、試算を政府にもうお出ししておりますが、大手十六行が政府の方針通りに不良債権処理をやったとしたら、二十万社から三十万社の中小企業が処理対象とされ、倒産に追い込まれる。この問題については、金融担当大臣も否定できませんでした。

 いま、不景気のなかで年間の倒産件数は一万九千件。大変ですよ。しかし、もし二十万件ということになりましたら、十年分の倒産が一気に起こるということになります。三十万件ということになりましたら、十六年分の倒産が一気に起こることになる。

 総理にうかがいますが、総理は、「構造改革」のためだったら、たとえ二十万、三十万という中小企業がつぶれてもこれは仕方がない、耐えるべき痛みだというふうにお考えでしょうか。

 小泉首相 何かこういうことをいうと、また大々的に一部だけ取り出されて、誤解されてはいけませんので、少し時間をいただきたいと思うんですが、私は、不良債権の処理の過程で当然、市場に生き残れない企業が出てくる場合の可能性は否定はいたしません。

 その際に、職を離れた方々が、新しい職場に立ち向かうことができるような対策を講じなければいけない。だからこそ、産業再生雇用対策本部を設置いたしまして、もしもそういう痛みが出てきた場合に対する対策はどうあるべきかということを考え、そして同時に、新しい時代に成長していけるような産業の育成も考えなきゃいかん。

 この市場の流動性というものを、新しい社会に対応できるような構造というものを構築していかなければ、日本の経済は発展しない。そういうことでそれぞれいま、対策を練っているわけでございます。

 いま、決して痛みを伴うことがないとは言えませんが、痛みを伴った場合には、それはどのぐらい出るかといま言えといっているんですけど、それはどのぐらい出るということはいまこの時点で言えません。

 しかし、出た場合には、その痛みを和らげるような、また痛みにくじけないような、新しい仕事に立ち向かっていけるような措置をしていかなきゃならないということで、われわれ努力しているということもご理解をいただきたいと思います。

志位氏

一番苦しいときに、頭を押さえつけて水の中に沈めてしまうのはやってはならない政策だ

 志位 政府は雇用対策として、五百万の雇用を創出するという計画を立てているようですが、この四年間、四回計画を立てて、合計二百五万が目標だったのに、六十九万人の失業者が増えているではありませんか。

 私はこういうやり方は絵にかいた餅(もち)だと(思います)。そして私は五百万という計画を立てざるをえないということに、大変な失業が起こる、大変な倒産が起こるということを前提にした数字だと思います。

 ここで考える必要は、「非効率」のために不良債権になっているのではないのです。不況のために、まじめに働いても売り上げが伸ばせないで、赤字になることを余儀なくされて、不良債権とされている。長年の自民党の経済失政の被害者なんですよ。

 (政府は)「非効率」、「非効率」とよくいいますが、バブル後の十年間、これだけの長い期間不況にたえ、日本の雇用の七割を支えてきた中小企業というのは、私はみんな立派な企業だと思います。それをいま一番苦しくなっている時に、頭を押さえつけて水の中に沈めてしまおうと、これはやってはならない政策だ。これをもしやったら、一時の痛みではすみませんよ。景気を悪くして、ますます不良債権を膨らませることになる。

 中小企業をつぶす政策ではなくて、中小企業を支援する政策が必要です。

 そのために何が必要か。「中小企業白書」では、「中小企業が直面する経営上の問題点は何か」という設問に対して、製造業も卸売業もサービス業も建設業も、業者のみなさんみんな答えているのは、「需要の停滞」が一番の問題だと。つまり需要をなんとかしてほしい。

志位氏

家計を応援し、需要を増やすことが問題解決のための政治の役目

 それからもう一つ、大阪信用金庫が三月に調査した。需要を伸ばすにはどうしたらいいのか、やっぱり消費税の減税、これが第一位のトップですよ。四七・五%。

 需要を増やし、家計を応援する、こうやってこそ(中小企業の)経営が成り立つようになるし、不良債権問題も解決する。これをやるのが政治の役目ではありませんか。

 首相 いったいどこの発言をとって、まじめに働いている者の頭を押さえつけて沈めさせてしまう。どういう、推理というか思いこみというか、それも私の発言のどこをとらえてそんなことをいうのか理解に苦しみますね。

 志位 あなた方が出した「緊急経済対策」にはこう書いてあります。「中小企業であってもオフバランス化に取り組むことを要請する」。これが方針だと書いてあるということを最後に指摘して終わりにいたします。


不良債権処理の対象となる中小企業の試算

 日本共産党の佐々木憲昭議員が、五月二十八日の衆院予算委員会で示した大手十六行の不良債権処理の対象となる企業数の試算方法は、次のとおりです。

 金融庁の資料によると、大手十六行の貸出総額(二百七十八・一兆円)のうち、処理対象となる不良債権(十二・七兆円)の割合は四・六%を占めます。一方、帝国データバンクの資料によると、同十六行の総貸出先数は八百六十七万件。総貸出先数の四・六%が不良債権処理の対象と仮定すると、約四十万件が処理対象企業になります。

 同十六行の貸出先数に占める中小企業の割合は九九・五%(金融庁発表)で、統計上、中小企業の中には「個人向け貸出し」も含まれることから、その分を除くと少なくとも二十万社から三十万社の中小企業が不良債権の処理対象となります。