2001年6月21日(木)「しんぶん赤旗」

CS放送朝日ニュースター 志位委員長語る

東京都議選の争点、小泉「改革」の中身をどうみるか


都議選 三つの争点がはっきりした

第1――小泉「改革」にどういう立場をとるか

 日本共産党の志位和夫委員長は二十日放映のCSテレビ「朝日ニュースター」の番組「各党はいま」に出演し、朝日新聞政治部の清原政忠記者の質問に答え、東京都議選の争点、小泉首相のいう「改革」の中身とは何か、参院選に向けて何を訴えていくかなどについて語りました。(十八日収録)

 志位氏は、番組の冒頭、二十四日に投票が迫り、大激戦となっている東京都議選の争点について聞かれ、次のようにのべました。

 志位 私たちは、三つの争点が、たいへん明りょうになってきたと考えています。

小泉「改革」は失業と倒産、社会保障切り捨て、消費税増税押しつけ

 第一は、小泉「改革」に対してどういう立場をとるのか、という問題です。

 これは、与党はもとより、他の野党もだいたい、小泉「改革」の応援団になっているというのが、いまの実態なんですけれども、小泉さんがいまやろうとしているのは、「改革」の名で、国民に痛みを押しつける(ということです)。

 まず、失業と倒産をひどくする。「不良債権の処理」ということは、生きている企業をつぶすということですから、たいへんな失業と倒産をまねく。

 二つ目に、社会保障については、切り捨て政治がどんどんつづく。医療費の値上げ、あるいは年金の切り下げ、こういうメニューがずっと並んでいます。

 三つ目に、消費税の問題について、財務大臣や経済財政大臣が増税発言をしていますけれども、この増税の痛み(がある)。

 この三つの「痛み」が家計にかぶさってきたら、いま経済のどこが一番たいへんかといいましたら、個人消費が冷え込んでいるところなんですが、これをもっと冷え込ませて、暮らしもだめにするし、経済もだめにすることになってしまう。

 私たちは、そういう道ではなくて、国民の暮らしを応援して、消費税の減税、社会保障の負担増の凍結、将来に安心の持てる(社会保障の)体系(づくり)、あるいは雇用の拡大をやり、財政再建については巨大開発に本格的にメスを入れて財源をつくるという方向を対置していますが、そういう大きな対決の姿勢をはっきりさせてのぞんでいます。これはなかなか手ごたえがあります。

第2――石原都政にどういう態度をとるか

 第二に、都政の問題では、石原都政に対してどういう態度を取るかということが大事な問題なのですが、私たちは、石原さんはタカ派の政治家だけれども、石原さんがやることだったら、はなから全部反対という態度を取らないで、「いいものはいい、悪いものは悪い」という態度でやってきました。

 清原 是々非々ですか。

都民の立場で、「いいものはいい、悪いものは悪い」と筋通すのは共産党だけ

 志位 そういうことなんです。ですから、たとえば、ディーゼル(車)の規制とか、大銀行の課税とか、これは賛成です。ただ、「悪いものは悪い」という点でがんばりぬいた党というのは、じつは日本共産党だけで、たとえばシルバーパスの有料化とか、あるいはマル福(老人医療費の助成制度)の撤廃とか、こういう福祉切り下げについては断固反対を貫いた。切り下げは強行されましたけれども、復活を求めてがんばっている。

 そういう点では、ほんとうの意味で都民の立場でしっかり都政に対してきたのは、日本共産党だけになっているという値打ちが、たいへん光っていると思うんですよ。

 いまになって他の党から「うちも是々非々だ」という党もあるんですけれども、率直にいって他の党は悪い政治について「是」で、たとえば、私たちが提案した難病の医療費を無料に戻すべきだという条例案に対しては「非」ですから、私たちは「是は是」「非は非」なんだけれども、自民、公明、民主などは「是は非」「非は是」の逆だったというふうに思いますね。

 ですから、ここでも筋を貫いてきた党の値打ちというのが非常に分かりやすくなっていると思います。

第3――切り捨てられた福祉をもとに戻すのかどうか

 第三に、都政の政策論でいいますと、私たちは、この間、シルバーパスの有料化、マル福の段階的撤廃、介護の特養ホームに対する補助金の段階的廃止、こういう切り捨てられた福祉を、日本共産党をもっと伸ばして元に戻そうじゃないかということを中心に訴えていますけれども、これは非常に大きな反応があります。

「なんとか助けて」と、切実で深い反応がある

 前回の四年前(の都議選で)は、そういう計画が計画段階だったんですけれども、今度は実施が始まって痛みが都民に襲っているという、そのさなかでの選挙ですから、前回の反応は「共産党、がんばってくれ」という反応だったんだけれども、今回は対話してみると「共産党、何とか助けてくれ」というような非常に切実な、深い反応が返ってくるというのが特徴です。

 清原 非常に深刻になっているんですね。

 志位 たいへん深刻です。

 たとえば、マル福は、お年寄りにとっては命の綱だったわけです。医療が六十五歳になったら助成されるということを楽しみにして、眼内レンズの手術を心待ちにしていたのができなくなってしまって、ほんとうに悲しい思いをしているとか、こういう例がたくさんあるわけです。

 この問題はほんとうに切実です。いまいった三つの点で非常に争点がクリアに分かりやすくなってきたので、あとはどれだけがんばれるかというところです。最後までがんばりぬきたいと思っています。

小泉「改革」――やるべきことは総論どまり、やってはならないことは具体化

 つづいて、小泉「改革」の中身の問題に話題が移りました。

 清原 小泉さんの「改革」はいまだに総論どまりのところが非常に多いでしょ。個別論をもう少しきちんと出してもらわないと、野党の方もどういうふうに論戦をしかけていいのかというところがあると思うんですが…。

「不良債権の最終処理」――「公的圧力」で20、30万社を倒産に

 志位 私は、ほんとうにやるべき改革は、総論どまりだと思うんですよ。たとえば、公共事業の改革。これは総論しか出てない。「見直し」としか出てない。道路特定財源も「見直し」としかいわない。ご本人はいろんなことをいいますけれども、政府の方針としては、一般財源化するとはいっていない。ですから、ほんとうにメスを入れるべき改革については総論どまり。

 そして、やってはならないものについては、じつは、非常に具体的な方針が出ていると思います。たとえば、「不良債権の最終処理」という問題です。これは(小泉首相が)「構造改革」の第一の課題として位置付けているので、私も党首討論でとりあげたのですけれども、非常に具体的ですよ。「破たん懸念先」以下は全部処分する。ですから、大手十六行でいいますと、十二・七兆円は全部処理の対象になる。私たちが計算しましたら、全国で政府の方針どおりやりますと、二十万社から三十万社の中小企業がつぶれちゃう。こういう問題があるんですね。これは非常に具体的です。

 私は、この前の党首討論で、「これをもしやったらたいへんな倒産が起こる。やむを得ないと考えているのですか」と(首相に)聞きましたら、「生き残れない企業が出てくるのは仕方ない」とお認めになりましたよ。

 私は、「非効率というけれども、非効率で不良債権になっているわけじゃなくて、景気が悪くて不良債権にさせられてしまっているわけで、自民党の経済失政の被害者であって、罪なき人々の頭をおさえつけて水のなかに沈めちゃうということはやってはならない政治だ」といいましたら、小泉さんはだいぶ興奮しまして、「水のなかに沈めるといった覚えはない」というのですけれども、政府の方針に「パブリックプレッシャー」のもとで「オフバランス化」をやる、つまり公的な圧力のもとで銀行の帳簿から不良債権を落としちゃうというのが出ているわけです。私は「パブリックプレッシャー」という言葉を聞いて、水のなかに沈めちゃうというふうに連想したのですけれども。まさに、そういうことをやろうとしている。

 これをやったら、いまこれだけの不景気のなかでもっと景気が悪くなり、もっと不良債権が増える悪循環になりますよ。私は、そうじゃなくて、ほんとうに経済の需要を増やす、家計を応援して需要を増やす、そして、そのことによって中小企業の経営が成り立つようにしていくのが政治の責任だと思いますね。

 清原 前からおっしゃっている家計をあたためる政策ですね。

日本の銀行のお金を投機的分野で使わせたいのがアメリカの狙い

 志位 不良債権の問題で非常に重大だと思うのは、こんど日米首脳会談がおこなわれますが、どうもアメリカ側の最重要の要求が「不良債権の処理」だということになりそうですね。

 なぜアメリカがそういうふうにいってくるのかというのが重大な点で、結局、アメリカ側にしてみれば、日本の銀行が中小企業のような小さなところに融資しているのはもうやめて、ふりおとして、お金をひきあげて、そのお金をもっと投機的な分野に使えるようにしてほしいと(いうことです)。ひらたくいえば、もっとアメリカの株を買ってくださいと、アメリカの国債を買ってくださいという、そういう銀行になってくれと(いうことです)。そして、「身ぎれい」になった銀行があれば、少しおいしいところはアメリカの金融機関が買収してしまおうというところからきているわけです。

 アメリカからそういう圧力がかかってきて、それにこたえて日本の中小企業をつぶすというのはほんとうにまちがった政治だと思いますね。

 「不良債権の処理」というのは「非効率の分野から人と物と資本を効率的な分野に移して、新しい産業をおこすためだ」ということを(政府は)よくいいますが、「新しい産業」というのはどこにもみえてこない。おこすつもりもないと思うんですよ。

 そうではなくて、中小企業をつぶして、ひきあげたお金は投機的なところにまわす。こういう金融のあり方、私にいわせれば大きな堕落ですけれども、その道をいまやろうとしている。アメリカの要求にこたえてやろうとしている。これが本質ですから、一つひとつみてみると、国民の暮らしを犠牲にし、日本の経済をだめにし、日本の経済主権を放棄するような、とんでもないことだと思うのですよ。そういう一つひとつの事実にもとづいて明らかにしていったら、事柄の本質が分かっていくと思うんですね。

 このあと、清原氏は、小泉人気と小泉「改革」に伴う「痛み」との「落差」をどうとらえるのか、小泉人気は都議選にどうあらわれてくるのかと質問しました。

 志位氏は、小泉首相に対する人気は、「いまの政治を変えてほしい」という、ある意味で「一般的な期待」だが、中小企業の倒産や社会保障の負担増など個々の問題で考えていけば、小泉「改革」はいまの政治をいっそう悪い方向にしてしまう流れだということが分かり、有権者の考えもどんどん変化していくと指摘。

 国政で正面から小泉政権と対決していくと同時に、都議選の一番の争点は都政問題であり、同政権に対する評価はさまざまでも、東京の福祉を取り戻そうというのは多くの都民の共通の願いであって、これを託せるのは日本共産党だということを訴えているとのべました。

 最後に、清原氏は、参議院選挙を見通して、終盤国会にどう臨むかと質問しました。

21世紀の進路をめぐり二つの道の対決を各分野で骨太に訴えたい

 志位氏は「日本の二十一世紀の進路をめぐって大きな二つの道の対決ということを、それぞれの分野で骨太に訴えていきたい」と強調。自民党政治の継続か、それとも、それに代わる新しい政治をおこすのかが問われていることを、経済の問題、安保の問題、憲法の問題、教育、環境、エネルギー、農業など日本社会の未来の問題、「きれいな政治」という五つの分野にわたって具体的にのべました。

 同時に、他の野党は「反自民」をいうが、自民党政治に代わる政策の足場をつくれないできた弱点が小泉政権の発足でますます噴き出していることを指摘し、いまの自民党政治と対抗できる党が日本共産党だということを訴えていきたいと強調しました。