2001年7月12日(木)「しんぶん赤旗」

日本記者クラブ主催 7党首討論会での志位委員長の発言

痛みを押しつける「小泉流改革」か

国民を応援する政治への「日本改革」か


 十一日におこなわれた日本記者クラブ主催の「七党党首討論会」での志位和夫委員長の発言(大要)を紹介します。出席はほかに、自民・小泉純一郎総裁、民主・鳩山由紀夫代表、公明・神崎武法代表、社民・土井たか子党首、保守・扇千景党首、自由・小沢一郎党首。

第1部

有権者にもっとも訴えたいこと

家計応援の景気対策、公共事業のムダを省いた財政再建、憲法9条生かす外交への転換を

 党首討論の第一部では、まず「今度の参院選で有権者にもっとも訴えたいこと」について、各党首が二分間で発言しました。

 与党側から発言し、小泉氏は、「改革なくして成長なし。あらゆる構造改革に真剣にとりくんでいく」と表明。神崎氏も、「連立与党の中核として構造改革を強力にすすめていく」とのべ、扇氏も「不良債権という言葉を日本からなくしたい」と主張しました。

 これにたいして、野党側で最初に発言した鳩山氏は、「三年前から構造改革を訴えてきた。私たちこそ真の構造改革を実現する」と表明。志位氏は次のように主張しました。

 志位 私たちは、自民党政治の改革、転換ということを三つの点で訴えたいと思います。

 第一は景気対策です。九〇年代に自民党がやってきた景気対策というのは、ゼネコンにたいしては公共事業の積み増しの支援、大銀行にたいしては七十兆の税金を使っての応援、しかし、国民にたいしては消費税の増税と社会保障の負担増という政治で、これが今の消費大不況をつくっていると思います。

 ここを改めて、国民の家計を直接応援することで景気の回復をはかりたい。私たちは消費税の減税、そして雇用の問題では「サービス残業」をなくし、長時間労働を改めて、雇用を増やすというとりくみをしたいと考えています。

 第二は財政再建の問題です。この問題の一番のカギは、年間五十兆円の公共事業の中から巨大開発のムダ遣いを一掃することにあると思います。

 そして、公共事業は、老人ホームや公営住宅など本当に福祉と暮らしに必要なものに重点化して、五十兆の規模を段階的に半分に減らす。そのことで社会保障と減税の財源をつくり、借金を減らす道を開きたいと考えます。

 第三は憲法と外交です。この間、日米首脳会談がおこなわれましたけれども、京都議定書の問題、沖縄の米軍基地の問題で、アメリカいいなり外交が目立ったというように私は考えます。それから憲法の問題でも、集団的自衛権の研究など、九条を壊す動きがたいへんな心配を広げていると思います。

 私たち日本共産党は、二十一世紀の大きな進路として、日米安保条約をなくして基地のない日本をつくることを目標にしていますが、それ以前の課題としても、アメリカいいなりではない自主・自立の外交、そして憲法九条を守り生かす日本、これを目指したいと考えております。

不良債権処理と倒産

政府のやり方は、中小企業を国策としてつぶしてしまう――実体経済よくすることが政治の責任

 続いて、「改革の柱と優先順位」をテーマにおこなわれ、志位委員長と小泉首相との間で不良債権処理の問題が議論となりました。

 志位 「構造改革」の第一の課題として、「不良債権の最終処理」ということを挙げられていますが、これは中小企業の倒産ラッシュを招くのではないかという不安が非常に広がっております。

 私は先日の党首討論で、これが実行されたら大手十六行だけで二十万社から三十万社の中小企業が処理の対象になる。こういうことをただしたのにたいして、小泉さんは、「生き残れない企業が出てくる可能性がある」ということをお認めになりました。

 そこで私はうかがいたいのですが、今の政府の方針が実行された場合に、どのくらいの中小企業が倒産するという見通しを持っていらっしゃるのか。

 大手行だけで先ほどの数字が出てくるわけですが、地方の金融機関も(不良債権処理の)とりくみが求められています。それから、景気悪化で新規に発生する不良債権の分もあります。その全体をあわせて、一体どのくらいの倒産を見込んでいらっしゃるのか、具体的にお答えいただきたい。

 小泉 倒産の見通し、実際のところどうなるとかいう問題よりも、むしろ雇用をいかに創出していくのかということを申し上げた方がいいのではないか。当然、倒産は出てきます。そういう際には、倒産して心ならずも職を離れなければならない人に次の職場につけるチャンスをどうやって手当てしておこうか、そこが大事で、いま倒産がどのくらい出るか目標を立てよというのは、後ろ向きではないか。あえて倒産する企業がひとつもないなんていいません。出てくるであろうと。だからこそ、雇用創出に全力を尽くす。五百万の雇用を創出すること、新しい産業の立ち上げということは不可能ではない。市場に生き残れない企業をあえて全部救済するということは、政府に求めても無理だと、それが市場経済ですから。新しい時代に生き残れるような、自由な創意工夫を競い合うことが自由主義経済の発展につながるし、さらに活力が出て来るんだと思っております。

 志位 いま(小泉氏は)五百万人の新しい雇用を生み出すといったんですが、私は逆に、それだけの雇用を生み出さなければならないほどの、大量の倒産を予定しているのかと驚きを持って聞きました。

 それから、五百万人の雇用について、その根拠は一体どこにあるのかということを私たちは国会でたずねましたが、「一つの可能性にすぎない」ということで、担当の大臣も具体的根拠を示せませんでした。

 不良債権と呼ばれているのは、バブル型の企業が残っているわけではありません。まじめに働いても不況のもとで、なかなか売り上げが伸ばせないで、苦闘している中小企業がほとんどですよ。この方々を一番苦しいときに、国の国策として、つぶしてしまうのが今度の政策だと思います。「生き残れない企業が出てくる」というのではなくて、まさに国が圧力をかけてつぶしてしまうというのが、いわゆる「不良債権の最終処理を二、三年でやる」という方針です。

 私はそうではなくて、実体経済を良くし、景気を良くし、中小業者の皆さんの売り上げが伸びるように、中小企業の経営が立ち行くようにすることが、国の責任だと考えます。

財政再建をめっぐて

軍事費は「聖域」にするのか、削るのか選挙の前に責任をもって明示を

 続いて、「構造改革」をめぐり、「当面、何をやっていくのか」について、討論となりました。志位氏は、財政再建の問題をとりあげました。

 志位 財政再建の問題にかかわって、小泉さんにうかがいます。

 「聖域なき改革」ということをおっしゃっておられるのですが、(政府の)財政制度審議会が三月におこなった、たいへん興味深い世論調査を拝見しました。

 これによりますと、国の予算のうち、「役に立っていないものは何か」の第一位は、やはり、「公共事業費」ということになっているのですが、第二位に「防衛関係費」が入ってきています。そして、九割の方が、「これらの予算を減らしてほしい」と答えています。

 しかし、「骨太の方針」を拝見させていただいても、防衛費、軍事費については一言も出てきません。

 政府は、今年から五年間の計画で新中期防衛力整備計画というのを始めておりますが、二十五兆円の計画で、前中期防より一兆円の軍拡の計画です。この計画ですと、毎年五兆円の軍事費が組まれていくことになるわけですが、小泉さんは、新中期防の見直し、あるいは五兆円の軍事費、これは「聖域」に置くというお考えでしょうか。

 小泉 「骨太の方針」は、経済財政諮問会議なんです。小泉内閣の最優先課題は、経済をいかに再生させるか、そして、他の府省、役所にたいしても、当然、あらゆる歳出を見直して、削減の方向でいま見直しがすすんでおります。防衛費も例外ではございません。

 財政再建といいますと、公共事業削減という声ばかりがでてまいりますが、公共事業だけにとどまりません。すべて歳出を削減、見直しをしないと、増やすべき予算を増やすことができない。これが増税をしない、なおかつ国債発行を三十兆円以内におさえて予算を組もうとしますと、それぞれ、いままでの役所の予算というものは、徹底的に歳出の削減努力をしないと組めない。

 八月の概算要求基準、さらには十二月の予算編成に向けて、この具体化の議論と作業がすすんでいきますから、その辺をみて、またご判断いただきたいと思います。

 志位 いま、「例外にしない」というお答えだったのですけれども、私は政府の方針を読みましたら、防衛費、軍事費については、「削減効果があまりないので他の分野で」ということが書かれてあったので、これは、では修正されたのかと思いました。

 この問題は、九七年に橋本内閣が財政構造改革法をつくったときに、この防衛費、軍事費も抑制するという方針を決めて、前の中期防を一兆円削ったという経過があります。

 さきほど、軍事費(の見直し)はこれからなんだと言ったんだけれども、もう一度おたずねしたいのですけれども、新中期防ですね、二十五兆円、これも見直すとはっきりお答えできるでしょうか。

 小泉 すべて見直していくというのが、小泉内閣の方針であります。

 志位 削減するということですか。

 小泉 見直して、削減すべきところは削減する、増やすべきところは増やすというのが、小泉内閣の方針です。

 志位 どうも、それでははっきりしないわけでね。そこが問題だと思います。やはり選挙の前にきちんとした公約をしないと、これは有権者のみなさんにきちんとした審判をあおげないと思います。

温暖化防止と京都議定書

みずから署名した議定書を反古にする米国のやり方はルール違反

 司会が「日本の進路と将来ビジョンという点で質問をお願いしたい」とのべ、志位氏は京都議定書にふれ、小泉首相に質問しました。

 志位 小泉さんにおうかがいします。地球温暖化防止の京都議定書の問題についてです。

 小泉さんは、「アメリカとの交渉が大事だ」として、日本が率先して批准するという立場を示しておりません。

 九七年に決めた京都議定書というのは、アメリカの要求を大幅にのんで、そしてかなりの譲歩もしながら、アメリカも合意してまとめたものです。そして、アメリカ自身も政府がこれに署名をしております。

 それを、政権が代わったからといって、一方的にこれを反古(ほご)にするということが、国際ルール上許されるのか。私は、これは国際信義にもとるものだと考えます。

 アメリカは離脱の理由について、途上国が入っていないことを問題にしていますが、「まず先進国から始める」ということも含めて、京都議定書ではアメリカも合意しているわけです。

 私は、自分たちの国益に合わないといって、一方的にそういう国際ルールを覆すのは、これはまずい。これは国際ルール違反だと考えますが、小泉さんはどういう認識でしょうか。これは、この前のNHKの討論会でも議論になったんですが、はっきりしたお答えがなかったので、どういう認識なのか、アメリカのとっている行動についてお答え願いたい。

 小泉 私は、はっきりしているんです。

 なんとか、アメリカも京都議定書、協力できるような形はないものか、日本の立場としては、まだ結論を出す時期ではないと、そしてアメリカにたいして、糾弾すべき段階ではないと思います。むしろ今後の環境問題を考えて、協力を働きかけるということに関しては、ブレア首相からも理解と支持をいただきました。COP6の再開会合がもうじき始まりますから、その点にむけてぎりぎりまで、なんとか日本とEUとアメリカが、この問題で協力できるような策がないものか、それを粘り強く、探っていこうというのが、いまの私の、また日本政府の立場であります。

何度聞かれても首相は答えず

 志位 私の質問にお答えにならないのでもう一回、端的にお答え願いたい。要するに、アメリカのとっている態度について、国際ルール違反かどうかという認識をうかがったんです。

 小泉 国際ルール違反だとかそういって、違反だからけしからんというよりも、今われわれは、なんとか協力できる道はないかと、そういう働きかけをしているんですよ。

 志位 ここが私は、一つの大きな問題だと思います。フランスのシラク大統領も、ブッシュ大統領の離脱宣言にたいして「容認しがたい挑戦」と、はっきり批判をしています。

 交渉ということも非常に大事ですけれども、いったいどういう立場で交渉するのか。アメリカのやっていることはルール違反ですよということをしっかり、きちんと言ってですね、そして、みずから合意した議定書にもどりなさいという説得をするんだったらわかるんですが、その立場がないところで、ただずるずると日米の協議をつづけるのでは、これは私は“京都議定書壊しの日米同盟をつくった”といわれてもしかたがないことに、なっていくと思います。

 日本がやるべきは、きちんとまず率先して批准すること、アメリカとの関係では、アメリカのそういう国際信義にもとるやりかたについては、堂々とこれは、きちんと間違ってますよと言ってですね、そしてアメリカもこの枠のなかに入るように、しっかりとしたそういう立場に立った説得をすること、これがいま日本政府に求められていると思います。

 小泉 日米協議をしているということは、この多国間協議を遅らせるものではないです。そのへんを混同しないでいただきたい。

 志位 しかし、(日本政府の立場は)こんどのCOP6(気候変動枠組条約第六回締約国会議)を危うくすると思います。

憲法9条と安全保障

国民合意のもと、段階的に憲法9条の完全実施をめざす

 「日本の進路と将来ビジョン」の討論テーマで、小泉首相が「非武装中立なのか、自主憲法制定なのか、国の安全保障をどうやって図るかという点について、共産党の考え方を聞いてみる」と質問。志位委員長は次のように答え、やりとりになりました。

 志位 私たちは日米関係について、いまの日米安保条約を廃棄して日米関係を本当に対等平等の友好関係に変革をしたいというのが大目標です。

 これはアジアの流れを見ましても、二十三の国がありますが、北朝鮮との問題を抱えている韓国を別にしますと、軍事同盟を結んでいるのは日本だけです。私は、二十一世紀は軍事同盟から離脱した日本が必要になってくる。そしてそれこそアジアにいま起こっている平和の流れとも合致すると考えています。

 それから自衛隊の問題についていいますと、私たちはこれを段階的に問題を解決しようと考えています。

 いま必要なのは、さきほども話した二十五兆円の軍拡計画を続けるのではなくて、大幅な軍縮に転ずることです。これがいまの段階では必要だと思います。

 それから、安保をなくした段階では私たちはその時に自衛隊を一緒に解消するという立場ではありません。安保条約をなくしたいと考えている方でも、自衛隊の存在については意見が分かれてきます。安保をなくした段階で自衛隊の大幅な軍縮と民主的な改革をこの時点で行うけれども、まだこの時点では自衛隊が存続することになります。

 そしてこの安保をなくした日本が本当に中立・独立の国として、アジアの国々と平和外交の関係を結ぶ、アメリカとも平和友好条約を結ぶ、そうやってアジアの中で国民のみなさんがまわりを見渡して、“もう自衛隊なしでも安心だ”という合意が成立したところで九条の完全実施をはかっていく。一定時間がかかるでしょうけれども、そういう大きな展望を考えています。

 小泉すると、自衛隊は合憲ですか、違憲ですか。

 志位 違憲の軍隊だという認識です。

 小泉 すると、違憲を認めるわけですか。安保条約を解消して、憲法違反の存在を認めちゃうわけですか。

 志位 これは違憲の軍隊をつくったというのは、自民党の責任なんですよ。それでやはりその軍隊を一気になくしていくことはできない。国民のみなさんの合意でこれを一歩一歩なくしていく必要があるわけで、私たちが政権に参画する民主連合政府ができたとしても、自衛隊が一定期間残っていくと。これは、たしかに違憲の状態が残るわけですけれども、それは自民党がつくりだした違憲をわれわれが引き受けるわけで、違憲の状況を引き受けて、そして憲法九条に合うように現実を変えていくというのが、一番責任ある立場じゃないですか。

 小泉 憲法を守れというのが共産党の立場だったんじゃないですか。

 志位 だから守るために九条にそくして、一歩一歩現実を変えていこうということを私たちは申しています。

「構造改革」と「痛み」

この「痛み」は国民に耐えがたく、経済の将来を暗くする大銀行には甘い政治――きっぱりと対決

 第一部のしめくくりとして各党首が発言し、志位委員長は、次のようにのべました。

 志位 私は、この討論で「構造改革」ということが問題になったわけですが、「痛みを恐れず」ということがいわれて、この「痛み」ということが非常に重大だと思うんです。

 三つの点を最後に申し上げたいんですが、一つは、今押しつけられようとしている「痛み」というのは、国民にとっては耐えがたい「激痛」だということです。先ほど私が中小企業の倒産のことをうかがって、総理は具体的にお答えになりませんでしたが、つぶれる企業にとっては、それでおしまいであります。失業の問題、増税の問題、社会保障の負担増の問題、どれも耐えがたいものです。

 二つ目は、「痛みに耐えたら明日がある」かという問題ですが、今言った政治というのは、全部家計を直撃し、消費を冷え込ませ、景気悪化の悪循環をつくりだします。そういう点では、経済全体の未来をなくすものだというのが二つ目です。

 そして三つ目に、「痛みを等しく」ということを、よく(首相は)おっしゃるけれども、大銀行の方には七十兆円の税金投入での支援をやる。これはどう考えてもおかしい。先ほどの「不良債権(の最終処理)」にしても、「骨太の方針」を見ますと、結局は「銀行の収益性」のためなんだと。銀行がもっともうかるために、不良債権の処理をやるんだというねらいが書いてありますが、やはりこれは間違った政治で、私たちはこういう政治とは、きっぱり対決をしていきたいと思います。


第2部

小泉人気をどうみるか

“自民党政治を変えたい”という流れと結びついたもの――小泉政治は期待にこたえられない

 第二部では、各党首が会場からの質問にそれぞれ答えました。

 最初に、各党首にたいし「小泉内閣の支持率が八〇%を超える政治状況をどう考えるか」との質問がありました。志位氏は、次のようにこたえました。

 志位 いまの小泉さんへの人気というのは、「自民党政治を変えてほしい。いまの政治を変えてほしい」という切実な願いと結びついた流れだと思います。ですから、これは前向きに前途を模索しているまじめな流れだと思います。

 ただ、その期待に小泉さんの政治がこたえられるかというと、今日の討論を通じても、これは反対の方向を向いている政治ではないか。

 例えば、(首相は)「痛み」ということもいいました。倒産、失業、これを「いま痛みに耐えれば、明日がよくなる」とおっしゃるけれども、景気悪化の悪循環ということについても、答えはありません。

 それから、憲法の問題についても、集団的自衛権、ミサイル防衛など、さまざまなきな臭い動きがあり、これ(憲法九条)を取り払おうという動きがあり、アメリカとの関係は、従来型の追随外交が、京都議定書でも目立つ。

 こういうことになりますと、森さん(前首相)の時代と何が変わったのだろうか。実際は、いままでの政治と同じ政治が、もっとひどいやり方で進められようとしているのではないか。ここが共通の認識になれば、私は、新しい政治を生み出す激動が生まれると思います。

不良債権処理

まじめに借金を返している中小企業が不良債権扱いに――この実態を政府はつかめ

 つづいて不良債権の問題で査定を見直すのかどうかとの質問がありました。小泉首相は、「基準を示してやりなさい(と指導している)。民間それぞれやっていると思います」、民主党の鳩山代表は「厳しい査定を厳格におこなうべきだ」とのべたのにたいし、志位委員長は次のようにのべました。

 志位 ひとこと申し上げたいのですが、いま金融マニュアルという基準があるわけですよ。金融庁が示している基準がある。これに基づいて民間の金融機関が査定をするわけですね。

 しかし実態を聞いてみますと、健全な、ちゃんとお金を返している中小業者のみなさんも、RCC(整理回収機構)送りになったり、「破たん懸念先」に入れられたり、こういう事態というのは全国で起こってますよ。

 私は、その実態をよくつかまないといけないと思う。この前、京都にうかがった際に、京都では二つの信用金庫がつぶれた。その時に、RCC送りになった中小企業のみなさん、本当にもうちゃんとお金を返しているような人たちまでが、金融マニュアルを恣意(しい)的に活用されて、不良債権に入れられてしまって、つぶす対象になっている。こういう実態があるということを、私はきちんと政府はつかむべきだと思います。

日米地位協定

見直しは当然だが、基地がある限り起こる犯罪――基地の縮小・撤去は急務

 沖縄の米兵による女性暴行事件に関して、日米地位協定の改定がテーマになりました。志位氏は次のように主張しました。

 志位 日米地位協定の抜本的改定は当然です。特に犯罪条項、一七条五項C、つまりアメリカ側が身柄を拘束した場合、起訴までは引き渡さないという条項の廃棄はただちにやる必要がある。

 これは(九五年に日米政府間で)「運用改善」ということが決められましたけれども、アメリカ側の「好意的配慮」に頼るということで、今回も引き渡しが遅れたわけですから、これはすぐにやる必要がある。

 それから同時に、沖縄の問題は、基地があるかぎり、ああいう問題はなくならないというのが、県民のみなさんの共通の気持ちですよ。

 アメリカのあるマスコミが調べたんですけれども、ヨーロッパの米軍基地に比べて、日本の米軍基地は性犯罪の(発生)率が十倍から二十倍と非常に高いんです。アメリカの本土に比べても三倍から五倍と非常に高い。

 つまり、(米軍は)日本に、非常に占領者意識丸出しで対している。だから、ヘイルストンという(沖縄米軍の)司令官が、「バカな弱虫」という表現で沖縄の県民をののしったわけですけれども、そういう占領者と同じ意識で、沖縄にいるという事態があるわけですから、海兵隊をはじめ基地の縮小・撤去、これは本当に急務だと思います。

再び京都議定書

米国に批准を求めつつ、米国抜きでも日本が率先して推進を

 つづいて、地球温暖化防止のための京都議定書について、アメリカが批准に反対しているなか、日本としてどういう態度をとるか問われ、小泉首相は「イエス、ノーで答えるべき問題ではない。結論を出すには早い」とのべました。志位氏は次のように答えました。

 志位 京都議定書の精神というのは、「(削減の)目標を決め、期限を決め、先進国がまずやる」ということが精神ですけれども、アメリカはいまのところ、これに反対です。

 そのアメリカの態度を批判して、きちんとした批准を求めるのは当然ですけれども、アメリカ抜きでも批准するのは当然で、(批准国が)いま温暖化ガス排出総量で53%まできている、55%にまでいくと発効するわけですから、日本にまさに(条約発効の)決定権があるわけですから、日本が批准して、発効させるべきだと思います。

環境税を導入すべきか

大企業などのCO2発生源の責任を明確にして検討を

 さらに地球温暖化ガス排出量削減問題に関連し環境税導入に賛成か反対か質問されたのにたいし、志位氏は次のように答えました。

 志位 二酸化炭素、温暖化ガスを発生する発生責任者を明確にした環境税ということは必要で、検討すべきだと思っています。やはり一番の発生源は大企業で、ここから生まれているのは間違いありませんから、ここから必要な負担を求めるということは、当然検討されてしかるべきだというのが一つです。

 もう一つは、道路特定財源のあり方です。私たちは、もう二十年前から一般財源化すべきだと申し上げてきました。その際に税率ということが問題になる。道路を使う人たちから税金をとるのは、道路をつくるためだけに使うからだというやり方ですが、これを一般財源化するんだったら、税率をどうするんだという問題は出てきます。

 税率はもちろん検討する必要があるのですが、やはり自動車というのは排ガスを出しますし、交通事故も起こす。社会的にコストがかかる存在であるわけで、私はそういうことも考えて、道路特定財源を一般財源化するときの考え方として、やはり環境にたいするコストも払っていただくという形で、この問題をよく考える必要があると思っています。

東アジアの軍縮

日本がイニシアチブの発揮を

 次に「東アジアの安全保障」をテーマに、「二〇〇一年防衛白書のなかで、中国の軍事力強化、中国と台湾の軍事的対峙(たいじ)がとりあげられている。中国と軍備の縮小を話し合う必要もあるのでは」との質問が出されました。志位氏は次のように答えました。

 志位 私は、東アジア全体の軍縮のイニシアチブは、当然日本が発揮すべきだと思います。(英国際戦略問題研究所の)『ミリタリーバランス』でいいますと、日本一国で、第二位の韓国、(第三位の)台湾、(第四位の)インド、(第五位の)中国、この四つの軍事費をあわせた(額と同じ)軍事費を使っているわけですから、やはりそういうなかで議論していくべきだと思います。

 単純な「中国脅威論」ということがずいぶんいわれるんですけれども、私はこれにくみしえないと思います。

 私たちはこの間、二つの重要な体験をしました。九八年に私は不破議長と一緒に北京にいったおりに、江沢民さんたちとも話し合いをしたのですけれども、その時に、中国の国づくりの目標というのは、二十一世紀のなかごろまでに中進国まで経済成長を遂げる、真ん中の中進国までいくと。そういう経済発展が中心なのであって、平和の環境を求めている、これが一つです。

 もう一ついいますと、台湾との関係で、私たちは“一つの中国”という立場にたちながら、これも不破議長がこの前、中国の要人が来た際に「やっぱり台湾住民の気持ちをとらえることが必要じゃないか」という問題提起をしました。そうしたらその後、中国政府は言い方を変えているんですよ。「台湾は中国の不可欠の領土だ」という言い方をしていたのを、「中国と台湾は一つの中国を形成している」と台湾住民の気持ちをずいぶん理解した態度に変わってきている。やはりそういうところをよく見て、冷静な対応をしなければいけません。

日韓・日中関係

侵略戦争への反省が友好の前提――歴代自民政府に欠けている

 日本と中国、日本と韓国との間の外交関係が悪化していることが指摘され、各党の態度について聞かれました。小泉首相は「(日中、日韓の間では)トゲのある問題ばかりに焦点があたっている」と開き直りました。志位氏は次のように答えました。

 志位 歴代の自民党政府が、あの戦争について「侵略」とか「侵略行為」という言葉までは使っているのですけども、戦争の全体の性格が「侵略戦争」だったというきちんとした反省が欠けてきているというところに、非常に大きな問題があると思います。

 いま例えば、歴史をゆがめた教科書の問題に中国、韓国からも、厳しい批判があるわけですけれども、あの教科書を読んでみると、「大東亜戦争」と書いてあります。

 「大東亜戦争」という呼称は、太平洋戦争が始まった三日後に政府が、「大東亜共栄圏の建設がこの戦争の目的だ」「アジア解放の戦争なんだ」といって、侵略戦争を合理化して、つけた呼称です。そういう呼称ですよ。それが堂々とあの教科書には書いてある。

 そういう教科書について、アジアの方々が厳しい批判や懸念、不安を持つのは当たり前で、やはり侵略戦争への反省という問題をきちんとすることが、友好の前提になるということを強調したいですね。

医療費・高齢者医療

国の負担率ふやし、高すぎる薬価にメスを――健康悪化もたらす総額抑制方式には反対

 つづいて医療制度について、各党首にたいし「医療費の総額抑制、高齢者医療費は目標値を設定することが『骨太方針』に書かれているが、賛成か、反対か」との質問がありました。小泉首相は「いままで出た結論にいろいろ反発はあるが、どう説得していくかが大事」と発言。鳩山氏は「一つの方向としてありうる」とのべ、扇氏、小沢氏は「消費税の福祉目的税化」を主張しました。志位氏は次のようにのべました。

 志位 今年一月からお年寄りの医療費が定率制に変わって、一割負担になりました。これだけでも、お医者さんへの敷居が高くなって、深刻な受診抑制が起こっています。

 このうえ、医療費の総額を決めてしまって、「そこまでしか保険で出さない。あとは全額自己負担だ」ということになったら、ほんとうに必要な医療が、結局受けられなくなる。

 そうなったらどうなるかといいますと、例えば慢性病の患者さんは病院に行けなくなって、国民的規模での健康悪化が進みますよ。そうしたら、結局医療費も膨らんで、悪循環におちいると思います。

 私たちは、いまの医療問題をどう解決するかについて、お年寄りの医療費についていうと、老人保健法がつくられた一九八三年には、国の負担割合が45%だったのが(いまでは)32%まで減っている。これを元に戻す必要がある。

 もう一つは、薬価です。まだまだ高すぎる。「ゾロ新」とか、新薬が高すぎるといういろんな仕かけがあります。薬価の見直しもやる。そういうムダをなくして、ほんとうに安心できる医療体制をつくる。

 財源としては、公共事業の問題とか、軍事費の問題とか、大きなところからいまのあり方を変えていくことを提案しています。

景気と雇用

個人消費を温めることが必要、ただ働きの根絶、残業の規制、若者の就職難に特別の対策を

 民間機関が急速な景気減速を指摘しているとして、景気の現状、さらに雇用とセーフティーネットについてどう考えているのか質問がだされました。小泉首相は「(景気の)状況は厳しい」としながらも、特定の企業の例をだして「悲観的な面ばかり見るべきでない」とのべました。公明党の神崎代表は「景気は夏から秋にかけて悪化する危険がある」「失業給付の充実、能力開発、新産業の育成にポイントを置く」とのべました。保守党の扇党首は「構造改革で乗り切る」などとのべたのに対し、志位氏は次のように答えました。

 志位 景気の現状という点でいいますと、やはり経済の六割を占める家計消費、個人消費が落ち込んでいるのが最大の問題で、ここを温める対策が必要だと思います。雇用についていいますと、三つの点をここで申し上げたい。

 一つは、「サービス残業」、すなわちただ働きを日本の経済界から一掃するという問題です。これは連合の調査でも一千万人から二千万人という規模でまん延しているという実態があって、これをなくしただけでも九十万人の雇用が増える。

 二つ目は、残業の問題ですが、日本では残業の法的規制がありません。ヨーロッパでは法律で残業の上限が決まっているのに、日本では労資の協定で決められる、事実上の青天井になっています。残業の法的規制をやって、ここでも労働時間を短縮して雇用を増やす。

 三つ目に、若者の就職難の問題は特別の対策がいると思います。ヨーロッパの多くの国は、職業訓練の支援とか、所得の保障とか政府がのりだして若者の雇用対策に真剣に取り組んでいます。ドイツでは政府がポスターをはって、“職業のない人はいませんか”という呼びかけまでやって対策に乗り出している。やっぱり、若者の就職(問題)には特別の手だてがいると思います。

今度の参院選は「日本改革選挙」

 最後に、「今度の参院選を一言で意味づけると、どんなネーミングをつけるか」と問われ、志位氏は、「日本改革選挙」と答えました。




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