2001年10月3日(水)「しんぶん赤旗」

衆院本会議

志位委員長の代表質問


 日本共産党の志位和夫委員長が二日の衆院本会議でおこなった代表質問(大要)は次の通りです。

 日本共産党を代表して、小泉首相に質問します。

 九月十一日に、米国でおこった大規模なテロ事件は、無差別に多数の市民を殺りくした憎むべき犯罪行為です。

 テロ行為が、どのような政治的、宗教的、思想的、民族的理由によっても正当化されないことは、国際社会でもくりかえし確認されてきた原則であり、テロを根絶することは、二十一世紀に人類が平和的に生存していく根本条件の一つです。

 私は、あらためて卑劣なテロリストの蛮行を糾弾するとともに、テロの犠牲者と、ご家族・関係者のみなさんに、心からの哀悼とお見舞いを、申し上げるものです。

報復戦争をひきおこせば、罪のない多数の市民が新たな犠牲者に

 いま世界に問われている問題は、テロを根絶する手段として、どのような手段が法と道理にかなっているか、また真に有効であるかという問題です。

 九月十七日に、わが党は、不破議長と私の連名での書簡を、世界約百三十カ国の政府首脳にあてて送りました。そのなかで私たちは、テロ根絶のためには、軍事力による報復でなく、国際社会の共同の努力によって、“法にもとづく裁き”をはかることこそが必要であると提唱しました。

 この点で、いま米軍を中心として、大規模な報復戦争の準備がすすめられ、戦争開始が切迫していることに、私たちは深い憂慮をもっています。

 何よりも、テロ犯罪にたいして、軍事力で報復するならば、罪のない多数の市民が新たな犠牲者となることは避けられません。

 攻撃対象とされているアフガニスタンは、二十年以上に及ぶ内戦で経済が破壊され、干ばつによる飢餓で苦しめられてきた地域です。報復戦争の危険が高まるなかで、国境が閉鎖され、国際機関の食糧援助が途絶え、飢餓が急速に深刻化しています。

 九月二十四日、ユニセフなど国連の五つの機関は、共同声明を発表し、いまアフガニスタンで五百万人以上の民間人が「生存の危機」にあること、その二割は五歳未満の子どもたちであり、その多くは「すでに生死の境にある」と訴えています。こうしたもとで、武力攻撃が実行されれば、おびただしい新たな犠牲者がつくられることは必至であると、国連機関からも、強い警告の声があがっています。

 無差別に多数の市民を殺害したテロは、憎みてもあまりあるものです。しかし、それへの報復として、罪なき多数の市民、子どもたちを新たな犠牲者とすることも、許されないことではないでしょうか。それは新たな憎しみをうみ、テロと報復の悪循環をつくりだし、テロ根絶にむけた世界の団結を壊し、テロ根絶にも効果がないばかりか、事態をいっそうの泥沼に導く危険があります。

 この憂慮は、私たちだけのものではありません。最近、アメリカの世論調査会社、ギャラップ社が、世界の三十一カ国で世論調査をおこなっていますが、米国とイスラエルをのぞく二十九カ国では、武力攻撃に反対する声が多数であります。ヨーロッパ諸国をみても、武力攻撃に賛成する声は二割前後にすぎず、八割前後は犯人の身柄の引き渡しと法による裁きを求めています。

 首相にうかがいますが、あなたは報復戦争がもたらすこうした危険を、どのように認識しているのですか。テロ根絶のためには、罪なき市民に犠牲者がでても、やむをえないと考えているのですか。明確な答弁を求めます。

テロリストを“法にもとづく裁き”の支配下におくための国際社会の共同こそ

 それではどうやって問題を解決するのか。

 私たちは、いま必要なことは、性急に報復戦争に訴えるのではなく、国連が中心となり、国連憲章と国際法にもとづいて、テロリストとその支援者を追い詰め、“法にもとづく裁き”をくだすことだと考えます。

 第一に、だれがテロ犯罪の容疑者であり、支援者であるかを、事実と証拠によって可能なかぎり特定するための、国際的に協力した努力をおこなうことです。

 米国は、ビンラディンとそのグループによる犯行と断定し、タリバンを同罪とみなして攻撃をくわえようとしていますが、国際社会にたいして、事実と証拠を可能なかぎり明らかにすべきではないでしょうか。事実と証拠によって犯罪者を特定し、国連をはじめ国際社会の共通の認識にすることは、問題解決の大前提ではないでしょうか。

 第二に、これらの勢力が明らかになったならば、彼らを“法による裁き”の支配下におくために、国連を中心に、国際社会が協力してあらゆる努力をつくすことです。

 米国外の容疑者ならば、身柄の引き渡しの要求が必要となりますが、それを拒否した場合には、国連が主体になって、経済制裁などの集団的な強制措置もふくめ、人道上の慎重な考慮をはらいながら、可能なあらゆる手段を行使することも必要となるでしょう。

 第三に、容疑者が逮捕されたならば、厳正な裁判によって、真相の究明と、処罰をはかることです。

 今回のテロ事件は、大がかりな国際テロ組織が関与したものであるとされていますが、それだけに、法にもとづく裁判によってこそ、この組織の全貌(ぜんぼう)を明らかにし、根絶することも可能となります。テロ事件が国際社会全体への攻撃であることにてらして、国連のもとに特別の国際法廷を設置することも検討すべきだと考えます。

 以上が私たちの提案ですが、国連のもとに国際社会が一致協力し、法と理性にもとづいて粘りづよく対応することこそが、無法なテロ集団を国際的に包囲し、地球上から一掃するもっともたしかな道であると、私は確信するものです。

 日本政府は、国際紛争の平和解決を根本精神とする憲法九条をもつ国として、そうした立場で、国連と国際社会に働きかけるべきではありませんか。首相の見解を求めます。

 テロ犯罪の容疑者については、被害を受けた国に引き渡して、法の裁きにかける―これは、国際条約にも明記された、世界のルールです。すでに、それを適用した実例もあります。

 一九八八年に、イギリスのロッカビー村上空で、米パン・アメリカン機がテロリストに爆破された事件がおこりましたが、国連による経済制裁をふくむ粘り強い努力の結果、リビア政府が容疑者とされた二人の人物の引き渡しに応じ、いま裁判がはじまっています。

 日本政府は、この事件の容疑者の引き渡しにあたって、「すべての当事者がおこなってきた忍耐強い努力を高く評価する」という外務大臣の談話を出しています。

 今回のテロ事件は、はるかに規模が大きいものですが、この事件にたいしても、法にもとづく司法的解決を、何よりも最優先させた対応をおこなうことを、妨げる理由はないはずです。首相の答弁を求めます。

米軍が軍事報復をおこなう国際法上の根拠を、日本政府としてどう判断しているのか

 首相は、米軍が軍事報復にふみきったさいに、自衛隊の参加を可能とする新規立法をすすめる方針を、明らかにしています。

 政府の対応の最大の問題は、米国が報復戦争をすすめることを無条件の前提にして、その枠のなかで、日本がこの戦争にどう協力するかという対応に終始していることです。

 首相は、日本として「主体的」に方針をきめたとくりかえしていますが、政府の方針は、米国政府高官に「旗を見せよ」と要求をつきつけられ、「軍事協力ができなかったら湾岸戦争の二の舞いになる」という焦りから、あわただしく決定されたもので、テロ根絶のために、どのような手段が法と道理にかなっており、また真に有効なものかの、主体的検討をおこなった形跡は、率直にいってまったくみられません。

 首相にただしたい第一の問題は、米軍が軍事力行使をおこなう国際法上の根拠を、日本政府として、どう認識し判断しているのか、という問題です。

 国連憲章のもとでは、加盟国の武力行使は原則的に禁止され、例外として認められているのは、侵略にたいする緊急の措置としての自衛反撃と、国連が憲章第七章にもとづいて軍事制裁を決定した場合にかぎられます。

 テロ事件の翌日に採択された国連安保理事会決議1368は、「テロ攻撃の実行犯、組織者、支援者を法にてらして処罰」することをもとめているものであり、米国の軍事力行使を容認する内容はどこにもありません。

 一九七〇年に国連総会で採択され、国連憲章に準じる重要な宣言とみなされている「友好関係原則宣言」は、「武力行使をともなう復仇(ふっきゅう)行為」――すなわち“あだ討ち”の行為を明確に禁止しています。

 米国は、自衛権の名で戦争をおこなおうとしていますが、国連憲章でみとめられている自衛権は、国連安保理事会が「必要な措置」をとるまでの緊急の対処にかぎられており、今回のようにすでに国連安保理事会がテロ根絶にむけた行動を開始しているもとで、個々の加盟国が勝手な武力行使に訴えることは、許されません。

 首相は、政府が新規立法の方針を決めた翌日、九月二十日におこなわれた野党との党首会談で、私が、米軍の軍事力行使の国際法上の根拠をただしたのにたいして、その根拠をしめせず、こう答えました。「それはアメリカが判断するだろう、それをみて日本政府も主体的に判断していく」。しかし、普通は、そうした「判断」を「主体的」とはいわないのではないでしょうか。

 ことは日本の自衛隊を海外に派兵する問題です。米軍の報復戦争への参加の方針をきめながら、その国際法上の根拠について、主体的判断をもたず、米国の判断まかせという態度は、主権国家ならおよそ通用しない無責任な態度ではありませんか。

 首相にあらためてうかがいます。米軍が軍事力行使をおこなう国際法上の根拠がどこにあると判断しているのですか。根拠があるというなら、国連憲章あるいは国連安保理決議の条文を具体的にしめしていただきたい。明確な答弁を求めます。

 私たちは、米軍の軍事力行使も、それへの日本の参加も、今日の国際社会が承認している原則にてらして、国際法上の根拠をもたないと考えます。

 無法なテロリストにたいして、国際社会は法をもってこたえるべきです。法に根拠をもたない対応をすることは、無法者を利する結果になるだけであることを、私は警告せざるをえないのであります。

報復戦争への憲法違反の参戦法案は、きっぱり中止せよ

 第二は、憲法の平和原則との関係をどう考えているのかという問題です。政府がすすめている新規立法は、米軍が報復戦争にふみきったさいに、自衛隊を「医療、輸送・補給等の支援活動」を実施する目的で派遣するというものです。派遣の範囲は、地球的規模に無制限となり、相手国が了解するなら他国の領土でも可能とされています。

 首相は「武力行使と一体にならない範囲でおこなうので、憲法違反ではない」とくりかえしています。しかし、武器・弾薬・兵員の輸送、燃料や食糧の補給、傷病兵の医療など、政府が「後方支援」とよぶ兵站(へいたん)活動が、国際法上も、また実際の戦争でも、武力行使の一部とみなされ、相手側の攻撃目標とされることは、ガイドライン法のさいの国会論戦で、すでに明らかにされている、決着ずみの問題です。

 武力行使と一体でない兵站活動など存在しないのです。戦場に、「前方」と「後方」を区別する道路標識がたっているわけではありません。ましてやテロとのたたかいで、その区別はいよいよ無意味です。そのことは、首相自身が、「今度は、自衛隊には危険なところにも行ってもらう」と明言していることからも明らかではありませんか。

 ガイドライン法のときには、政府は「危険なところには行かないから、武力行使と一体化しない」という奇弁をろうしてきましたが、「危険なところにも行ってもらう」ということになれば、もはやこの奇弁さえ成り立たないではありませんか。いよいよ破たんがあらわになったこうした奇弁によって、憲法違反の海外派兵を合理化することは、もはや通用しないと考えますがいかがですか。

 新規立法は、国際法に根拠がない報復戦争への参戦を目的とするという点でも、憲法九条をずたずたに引き裂くという点でも、二重に許されるものではありません。日本共産党は、憲法違反の報復戦争法案をきっぱり中止することを強く求めるものであります。

大企業のリストラをおさえ、雇用を守るために、本腰を入れた対策を

 つぎに国民生活についてですが、私は、ここではとくに、いま国民が不安を強めている二つの切実な問題にしぼって、首相の見解をうかがいたいと思います。

 第一は、雇用の問題です。完全失業率は史上最悪の5%、三百三十六万人にのぼっています。働き口を求めながら求職活動をあきらめている潜在失業者をふくめれば10%をこえ、十人に一人が失業者という深刻な実態です。しかも、重大なことは、大企業による空前の人減らし・リストラのあらしが、失業増に拍車をかけているという問題です。

 首相は、先日の予算委員会で、わが党議員が、大企業がいまリストラ競争に走り、雇用にたいする社会的責任を放棄している実態をしめし、これをどう考えるかと質問したのにたいして、こう答弁されました。「経営者として、雇用を守る社会的責任があるが、同時に、会社を倒産させてはいけないという責任もある」

 そこで首相にうかがいますが、いま大規模なリストラ計画をすすめている主要な大企業で、それをやらなければ倒産の危機にひんしている企業がありますか。一つでもあれば、具体的にあげてください。

 いまの大リストラ計画を主導しているのは、大手の電機産業や通信産業など、いわゆる「IT関連企業」です。つい最近まで「ITブーム」にのって巨額の利益をあげ、巨額のもうけをためこんできた大企業が、「IT不況」で少し見込み違いになったからといって、みずからの経営責任をたなあげにして、つけを労働者と下請け中小企業におしつけるなど、身勝手、無責任のきわみではないでしょうか。

 いま政治に求められているのは、大企業のリストラを野放しにし、応援する政策をやめ、ヨーロッパではあたりまえの雇用を守るルールをつくることです。

 一つは、解雇規制のルールです。主要国のなかで日本ほど、首切り・リストラが野放しにされている国はありません。ヨーロッパの多くの国々には解雇制限法があります。さらに今年六月には、大企業が大規模なリストラをおこなうさいには、事前に労働者側に情報を提供し、合意を目的とした協議を義務づけるEU指令が、閣僚理事会で合意されています。日本でも、解雇規制のルールをつくるべきではありませんか。

 二つは、賃下げなしの労働時間の短縮による雇用の分かち合い――ワークシェアリングを、雇用対策の柱に位置づけるべきであるということです。フランスでも、ドイツでも、労働時間短縮による雇用拡大の政策は、大きな成果をあげています。政府の対策には、この問題がまったく考慮されていませんが、どうしてこの有効な対策を拒否するのですか。

 現場をみますと、多くの大企業では、「サービス残業」――ただ働きや、有給休暇を取らせないことを前提にしたリストラがすすめられています。私は提案したいのですが、緊急の措置として、リストラ計画をすすめている大企業について、「サービス残業」や有給休暇について、労働基準法が守られているかどうかを調査し、是正をはかるべきだと考えますがいかがですか。

 国連の社会権規約委員会は、八月三十一日、日本政府に勧告書を送り、日本政府が「過剰な労働時間を許していることにたいし、深い懸念を表明」し、「労働時間を削減」する法的・行政的措置をとることを勧告しています。日本政府は、この勧告にこたえる義務があります。勧告をふまえて、どのような実効ある具体的措置をとろうとしているのか、首相の答弁を求めます。

医療費の負担増――国民の健康悪化をもたらすこの計画に道理はない

 第二は、社会保障とりわけ医療制度の問題です。小泉内閣は、サラリーマンなどが加入する健康保険の本人負担を二割から三割に引き上げ、老人保健制度の適用年齢を段階的に現行の七十歳から七十五歳に引き上げるなど、空前の医療費負担増の政策をすすめようとしています。

 何よりも危ぐされるのは、この負担増が、お金の心配で医療を受けられなくなる受診抑制を深刻化させ、国民的な規模での健康悪化をもたらすということです。

 私は、一九九七年九月に、橋本内閣のもとで、健保本人負担を一割から二割に引き上げる医療費負担増が強行されたさい、当時厚生大臣だった小泉さんと予算委員会で議論をしたことを思い出します。

 私は、負担増によって、糖尿病や高血圧など慢性疾患の患者さんを中心に、必要な医療が抑制、中断されるという事態が広がりつつあることを、事実をしめしてただしました。小泉さんの答えは、「必要な医療が抑制されているとは思っていない」の一点ばりでした。

 しかし、その後の経過をみれば、厚生労働省の調査でも、働き盛りの年齢層の外来患者数は、12・4%も減少しているではありませんか。このうえ、さらに医療の負担を増やすことが、国民の命と健康に、どのような影響をおよぼすと認識しているのか、首相にうかがいたいのであります。

 国民の命を、そして健康を危険にさらしてまで、医療費の負担増を強行する道理があるでしょうか。

 第一に、日本の国民医療費は、その経済力に比べて、決して高くはありません。日本の医療費は対GDP比でみますと、OECD二十九カ国のなかで二十位、サミット七カ国のなかで六位と、経済力に比べて低いのが現状です。あたかも医療にお金を使いすぎているかのように描き、患者負担増によって医療費抑制をはかることは、まったく根拠がないではありませんか。

 第二に、医療保険の赤字の原因は、焦点とされている老人医療費についていえば、国庫負担割合を削減してきたことにあります。一九八三年度と二〇〇一年度を比較して、老人医療費に占める国庫負担の割合は13%も削減されています。これを計画的に元にもどし、国の責任をはたすべきではありませんか。そのための財源は、異常に膨張した公共事業の浪費に抜本的にメスを入れることで、まかなうべきであります。

 第三に、医療費の「効率化」をいうなら、世界一高い薬価――薬の値段にメスを入れる改革こそ断行すべきです。七月に発表された政府の産業構造審議会の「中間とりまとめ」では、日本の医療費に占める薬剤費比率20・1%を、欧米諸国なみに16%に引き下げることによって、医療費を一兆四千五百億円削減できると試算しています。この改革を実行しただけでも負担増は必要なくなるではありませんか。以上、三点について首相の答弁を求めます。

 憲法二五条には、国民の生存権がうたわれ、社会保障を増進するのは国の責任であることを明記しています。

 テロ問題にかかわっての平和の問題についても、雇用や社会保障など暮らしの問題についても、二十一世紀の日本には、憲法を生かした政治こそ求められていることを強調して、質問を終わります。


志位委員長への小泉首相答弁

(大要)


 志位和夫委員長の衆院本会議での代表質問(二日)に対する小泉首相の答弁(大要)は次の通りです。

 【報復戦争がもたらす市民の犠牲への認識。犠牲はやむをえないと考えるのか】

テロに対して、アメリカのみならず全世界が協力して、き然として対応していこうと(している)。日本もこのようなテロに対する対応については、主体的にわが国自らの問題として取り組むつもりだ。このようなテロに対するたたかいは、およそ報復戦争と呼ぶべき性質のものではない。テロ組織に向けた世界的な取り組みとしてとらえるべきであり、われわれは世界の国々と一致団結して(いく)。単にテロに対するたたかいは武力行使だけではない。外交努力、資産凍結、経済面の協力、難民の支援に対する協力、医療活動、いろいろある。武力攻撃だけではない。武力行使だけでない。あらゆることから、テロに対してき然として立ち向かっていかなければならないと認識している。(「質問に答えろ」との議場からの声)質問に答えている。

 【テロ犯人を特定する事実と証拠の開示を米国に求めることについて】

 日米間では事件発生以来、ウサマ・ビンラディンに関する情報公開や事件への対応を含め、緊密に連絡を取っている。先月二十五日の日米首脳会談においても、ウサマ・ビンラディンについて触れるとともに、本件事件への対応につき今後とも緊密に連絡を取っていくことを確認している。

 【国連の下での国際社会による法と理性にもとづく対応について】

米国でのテロについては、そのようなことが二度と起きないよう、関係各国とともに断固たる決意で立ち向かう考えだ。国連安保理においては今回のテロ事件を国際の平和および安全に対する脅威であると認め、テロの実行者および支援者等の処罰ならびにテロ行為の防止、抑圧のための国際社会の努力を求めること等を内容とする決議が採択されている。わが国としても安保理決議を踏まえ、このような国際社会の取り組みに積極的に協力していく。

 【法にもとづく司法的解決を最優先させることについて】

ブッシュ大統領は九月十一日の国民向け演説の中で、情報機関、法執行機関に対して、これらの行為に責任を有する者を見いだし、裁きを受けさせるため全力を尽くすよう指示した旨述べている。こうした方針の下、米国政府は、本件テロの主要な容疑者と考えているウサマ・ビンラディンの引き渡しをタリバンに求めている。わが国としては、安保理決議一三六八を踏まえ、国際社会の取り組みに積極的に協力していく考えだ。

 【報復戦争の国際法上の根拠に関する日本の判断は】

米国がいかなる行動をとるか、現段階で明らかではないが、今回の事件に関し採択された国連安保理決議は、自衛権が国連加盟国の固有の権利であることを確認するとともに、先般の米国におけるテロ攻撃を国際の平和および安全に対する脅威と認めている。米国による軍事行動が行われる場合には、米国から得られる各種情報を踏まえて判断し、主体的にわが国としての対応を決定する。米国の判断まかせとの指摘はまったく当たらない。各国がこのテロに対応する措置というのは、それぞれ国情、国力にもよる。その国が主体的に考えるべきことだ。わが国はき然として国際協調の下でテロにひるまず、テロを二度と起こしてはならない。テロ根絶のために国際協調の下で努力していきたい。

 【米軍が軍事力行使をおこなう場合の国際法上の根拠は】

米国が今後いかなる行動をとるかは明らかではないが、今回の同時多発テロ事件に関し採択された安保理決議一三六八および決議一三七三は、国連憲章第五一条で規定されている自衛権が各国固有の権利であることについて、改めて言及している。これらの決議は、今般のテロに対応して米国等が個別的または集団的自衛権を行使しうることを確認したものと考えられる。

 【新規立法と憲法九条の関係について】

自衛隊の活動地域も含めたテロ攻撃に対応する諸外国の活動の支援のあり方については、今後いろいろ予測しうる事態を考えつつ、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力は何かという観点から、早急に検討していきたい。いずれにせよ、武力の行使と一体化に関する政府の従来からの基本的考え方に変わりはない。

 【大企業のリストラについて】

個々の企業の経営状況について言及するのは差し控えるが、経済・社会が大きく転換する中で企業がその存続をはかるために雇用調整を余儀なくされる場合がある。しかし、そうした場合においても企業としては失業の予防や雇用の安定に努力すべきものと考える。

 【IT関連企業のリストラについて】

各企業がリストラをすすめる際には、可能なかぎり配置転換や職種転換によって対応しており、下請け中小企業については、その関係を一方的に断ち切るのではなく、親会社、子会社ともにコスト削減に向けた努力をおこなっていると理解している。各企業は雇用の維持等にむけ最大限の努力をおこなっていると思う。

 【解雇規制のルールを】

解雇については、整理解雇の四要件や合理的な理由を必要とするという判例により対処されてきている。しかし、経済・社会の構造変化等にともない雇用の流動化がすすむなかで、労働関係をめぐる紛争の防止の観点から、解雇基準やルールを明確にすることは大切だと考える。そのため、厚生労働省において、労使をはじめ関係者の意見を十分に聞きながら検討していく必要があると考える。

 【ワークシェアリングを雇用の柱として位置付けることを求める】

現下の厳しい雇用情勢をふまえ先般、総合雇用対策をとりまとめた。さらにワークシェアリングによる雇用対策という議論もある。これについては、労働時間を短縮して、ワークシェアリングにより雇用を確保することについて労使間で考え方の相違がある。まず労使間をはじめとして十分な議論を深めてもらうことが必要。

 【サービス残業と年次有給休暇について】

いわゆるサービス残業については、厚生労働省が今年四月に通達を発出し、その内容について周知指導をおこなっており、年次有給休暇についてはその取得促進をはかっているところである。いずれにせよ、労働基準関係法令に照らして、問題が認められる場合には関係機関において適切に対処していく。

 【労働時間短縮に関する国連の勧告について】

(国連の社会権規約)委員会は締約国が労働時間を削減するために必要な立法上、行政上の措置をとることを勧告している。政府としては目標としている年間総実労働時間千八百時間の達成・定着にむけて年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減に重点をおき、今後とも労働時間短縮に取り組んでいく。

 【医療制度改革の影響について】

平成九年以降の累次の医療制度改革は、必要な医療を抑制することではない。医療保険制度、国民皆保険制度を堅持しなければならない。制度の破たんを防ぎ、健康な人にも保険料を負担していただく、そして病気になったら、できるだけ軽い負担で病気の治療ができる。世界でも高度な水準をいっている現在の日本の国民皆保険制度を強化するためにおこなわれたものだ。

 高齢化の進展にともない、医療費が増大する一方、経済が低迷するなかでは、「給付は厚く、負担は軽く」というわけにはいかない。高齢、少子社会にあって、お互いが健康な者も病気になった者も支え合う精神で、この医療制度改革を今後も見直していく必要がある。

 【国民医療費について】

医療サービスの水準は、国民の健康寿命など、国民の健康がどれだけ守られているかによって計られるべきであって、医療費の額や対GDP比の大きさだけで計るのは適当ではない。

 わが国の国民一人当たりの医療費は、OECD加盟国のうち第七位、サミット参加国中第三位である。

 将来にわたり、医療制度を持続可能で、安定的で効率的な制度へと再構築していくためには、医療の質を確保しながら、給付と負担両面にわたる大幅な改革が必要だ。

 【老人医療費の国庫負担について】

国民医療費の国庫負担は、一般歳出の関係でみれば、制度創設時と比較して、国の一般歳出の予算額が約一・五倍の伸びであるのにたいし、老人医療費の国庫負担は約二・四倍で、その額は約三・五兆円だ。

 今後、いっそう高齢化の進展が見込まれるもとで、高齢者医療制度を持続可能で安定的な制度とするためには、保険料、公費、患者負担の適切な組み合わせにより、安定的な財源を確保していくことが必要であり、年末にむけ、政府・与党内で十分議論を尽くして、必要な改革を実行していく。

 【薬価について】

昨年四月の薬価改定における価格ルールの見直しや価格決定手続きの透明化など、さまざまな決定価格を講じてきた。その結果、薬剤比率は過去十年間で30%から20%へと大幅に低下し、薬剤費の総額も、過去四年間で約一兆三千億円減少した。今後とも薬価の見直しや薬剤市場の適正化に取り組んでいく。




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