2001年10月3日(水)「しんぶん赤旗」

米報復戦争に追随する小泉内閣

志位委員長の代表質問


 日本共産党の志位和夫委員長が二日の衆院本会議でおこなった代表質問。テロ根絶と報復戦争参加法案、雇用、医療問題での追及とそれにたいする小泉純一郎首相の答弁をみると――

テロ問題

武力報復による犠牲

人道援助必要な市民500万人

さらに深刻な状況に

 志位委員長 報復戦争がもたらす危険をどう認識しているのか。罪なき市民に犠牲者がでてもやむをえないと考えているのか

 小泉首相 (質問に答えず)あらゆることからテロに対してき然と立ち向かっていかなければならない

 米軍がアフガニスタンに対する報復戦争の準備をすすめ、小泉内閣が戦争の「支援策」を具体化するなか、志位委員長は、報復戦争が「おびただしい新たな犠牲者」をもたらすと具体的に指摘しました。

 志位氏が紹介したのは、ユニセフ(国連児童基金)など五つの国連機関が九月二十四日に発表した共同声明。アフガニスタンの状況について次のように指摘しています。

 ▽現在、生存のために人道援助を必要としている人々は五百万人以上。そのうち百万人以上が故郷から追いたてられた国内避難民である。

 ▽すでに三百八十万人のアフガン国民が生存のために国連の食糧援助に依存し、WFP(世界食糧計画)の推測では、十一月一日までに五百五十万人が食糧搬入に頼る可能性がある。

 ▽ユニセフによれば、支援の必要な人々の20%が五歳未満の子どもで、その多くが深刻な状況にある。

 こうした強い警告をあげての志位氏の質問に小泉首相はまともに答えられず、「武力行使でない」というのが精いっぱいでした。

国際法上の根拠

国連憲章、安保理決議…

勝手な武力行使許していない

 志位 米軍が軍事力行使をおこなう国際法上の根拠がどこにあると判断するのか

 首相 米国が今後、いかなる行動をとるかは明らかでない

 報復戦争の国際法上の根拠は何か――九月二十日の党首会談で、志位委員長がただしたのにたいし、小泉首相は「米国も判断するだろうし、国連も判断するだろう。それを見て日本政府も判断する」とのべ、日本政府として何の認識ももっていないことが示されました。

 志位氏は代表質問で再度、この問題を質問。国連憲章の規定やテロ事件の翌日に採択された国連安保理決議一三六八、一九七〇年の国連総会決議「友好関係原則宣言」(いずれも別項)をひきながら、「米国の軍事力行使を容認する内容はどこにもない」と追及しました。

 小泉首相は安保理決議一三六八が「個別的または集団的自衛の固有の権利」を前文で確認したことをとらえ、「自衛権を行使しうることを確認したものと考えられる」とのべ、今回の事件で米軍が武力行使しても自衛権発動だと強弁しました。

 しかし、志位氏が指摘したように、「国連安保理事会がテロ根絶にむけた行動を開始しているもとで、個々の加盟国が勝手な武力行使に訴えることは、許されていない」のが原則。今回の事件で自衛権の発動を武力行使の根拠にする首相の言い分は成り立ちません。

 しかも、決議一三六八は、国連憲章の一般的規定をのべたにすぎず、武力行使について規定した同憲章第七章についての言及はまったくありません。

憲法違反の参戦法案

兵たんは武力行使と一体

もはや奇弁は通じない

 志位 新規立法は、国際法に根拠がない報復戦争への参戦を目的とする点でも、憲法九条をずたずたに引き裂くという点でも、二重に許されるものではない

 首相 早急に(新規立法を)検討していく

 政府が提出を準備している米軍の報復戦争に自衛隊を派遣する法案。志位氏は、自衛隊による「医療、輸送・補給等の支援活動」=兵たん活動は、「国際法上も実際の戦争でも、武力行使の一部とみなされ、相手側の攻撃目標とされる」と指摘。その兵たん活動を「後方支援」と言い換えて「憲法の枠内」などとごまかす政府に対し、「戦場に、『前方』と『後方』を区別する道路標識がたっているわけではない。ましてやテロとのたたかいで、その区別はいよいよ無意味だ」と批判しました。

 訪米の際、小泉首相自身が、「今度は、自衛隊には危険なところにも行ってもらう」と明言しています。志位氏は、この点をつき、「ガイドライン法の審議では、政府は“危険なところには行かないから、武力行使と一体化しない”という奇弁をろうしてきたが、もはやこの奇弁さえ成り立たない」と、憲法違反の報復戦争参戦法案をきっぱり中止することを強く求めました。

 小泉首相は、法案が未提出であることをたてに、憲法上の問題はなにひとつ答えませんでした。

 ▼国連憲章から

 第二条四 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を…慎まなければならない。

 第五一条 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和および安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。

 ▼「安保理決議一三六八」(九月十二日)から

 安全保障理事会は、……憲章にしたがって、個別的または集団的自衛の固有の権利を認め、……三、すべての国に対し、これらのテロ攻撃の実行犯、組織者、支援者を法に照らして処罰するために緊急に協力することを求める。

 ▼国連総会決議「友好関係原則宣言」(一九七〇年)から

 国は、武力の行使を伴う復仇(ふっきゅう)行為を慎む義務を負う。

雇用問題

解雇規制、時短のルールを

大企業のリストラ野放しやめよ

 志位 大企業が経営責任をたなあげして、つけを労働者と下請け中小企業におしつけるなど無責任のきわみだ

 首相 各企業がリストラをすすめる際には、可能なかぎり配置転換や職種転換によって対応している

 志位氏は、大企業による空前の人減らし・リストラの問題について質問。「リストラ計画を進めている主要な企業で倒産の危機にひんしている企業があるのか」とただしました。小泉首相は、それにまともにこたえず、「企業がその存続をはかるために雇用調整を余儀なくされる場合がある」と大企業のリストラを容認したうえ、「各企業は雇用の維持などにむけ最大限の努力をおこなっている」と賛辞を送る答弁をおこないました。

 「いま政治にもとめられているのは大企業のリストラを野放しにし、応援する政策をやめることだ」と迫る志位氏。ヨーロッパでは当たり前になっている解雇規制のルールをつくること、雇用拡大策として大きな成果をあげている賃下げなしの労働時間の短縮による雇用の分かち合い(ワークシェアリング)を対策の柱に位置付けることを要求しました。

医療問題

負担増に根拠なし

国民の健康破壊もたらす

 志位 医療の負担増が、国民の命と健康にどんな影響をおよぼすと認識しているのか

 首相 (負担増は)必要な医療を抑制することではない

 志位氏は、九七年、小泉首相の厚相時代に強行された健康保険本人負担の二割への引き上げによって、働き盛りの外来患者数が12・4%減少したことを紹介。

 今回、三割負担へのさらなる引き上げ、老人医療費負担増の医療改悪が実施されれば、「国民的な規模での健康悪化をもたらす」とただしました。

 健康破壊の問題にはまったくふれず「制度の堅持のため必要」と負担増を正当化する小泉首相。

 志位氏は、(1)日本の医療費は対GDP(国内総生産)比でみると、OECD(経済協力開発機構)二十九カ国中二十位で経済力に比べて低い(2)医療保険の赤字の原因は、老人医療費にしめる国庫負担割合の削減にある(3)政府の審議会が、日本の薬剤費比率20・1%を欧米諸国なみに16%に引き下げれば、医療費を一兆四千五百億円削減できると試算している――ことを指摘。小泉流医療改悪の根拠のなさをあげて中止を迫りました。

 日本はOECD(経済協力開発機構)29カ国のなかで20位総医療費の対GDP比(%)

 (1997年)

 1 アメリカ 13.9%
 2 ドイツ 10.7%
 3 スイス 10.0%
 4 フランス 9.6%
 5 カナダ 9.2%

 14 ニュージーランド 7.6%
 14 イタリア 7.6%
 14 ベルギー 7.6%
 17 ノルウェー 7.5%
 18 フィンランド 7.4%
 18 スペイン 7.4%
 20 日本 7.2%




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