2001年10月16日(火)「しんぶん赤旗」

党首会談での志位委員長の発言

(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が十五日夜の小泉純一郎首相との党首会談でおこなった発言(大要)は、次の通り。

国連中心の対応にきりかえてこそ、国際社会の大同団結が確保され、国際テロ集団を根絶できる

 米国による軍事攻撃の開始という新たな事態を受けて、わが党は不破議長と私の連名の第二の書簡を各国政府にあてて送った。

 そのなかでものべたが、今回のような国際テロ集団を根絶するためには、全世界の大同団結がなによりも大切だ。そのためには国連中心に告発と制裁という手段をつくすことが必要だ。その努力をつくさないまま、米国など一部の国によって軍事攻撃が始められたことは、重大な問題を引き起こしているというのが、現状に対する私たちの見方だ。

 罪のない民間人への犠牲が広がっている。戦争の大規模化の危険が、たとえばイラク、スーダンなどへの大規模化の危険が強く危ぐされる。

 そのなかで国際的なテロ根絶の団結に亀裂が入っていることが、とりわけ重大だと思う。

 たとえばイスラム諸国の中に分岐が起きている。マレーシアのマハティール首相、インドネシアのメガワティ大統領などが軍事攻撃反対の声明を出した。イスラムの民衆の中からは、激しい抗議の行動が起こっている。

 国際世論の亀裂と分裂は、結局はテロ勢力の破壊活動の条件を広げることになり、ビンラディンもこういう米軍の軍事攻撃を最大限に利用して、テロ根絶のたたかいを、“アメリカ対イスラム”のたたかいにねじまげようとしている。ここに今の情勢の危険な特徴がある。

 私たちが提案しているように、一部の国の軍事力行使から、国連中心の制裁と“裁き”にきりかえる。そのために報復的な武力行使を中止する。日本政府もこういう選択肢について、真剣に検討するべきだ。

 今度の法案は、その検討なしに米軍の軍事報復を無条件に前提にするもので、その前提そのものを再検討すべきだ。国際社会にも道理ある立場で働きかけるべきだ。

戦後はじめて、現実の戦争に参戦する法案――徹底審議のうえで廃案を強く求める

 政府の新規立法については、わずかな審議でも憲法にかかわる重大問題が、三点にわたって明りょうになった。

 第一は、今度の法案は、「テロ根絶」のためとして米軍が行動すれば、白紙委任的に日本がその戦争に参加するという仕組みになっている。米軍の軍事行動への協力が、地理的にも、米軍の活動内容の面でも、まったく限定がない。しかも事前に米軍の軍事作戦を知らされない。

 たとえば米英軍は、クラスター爆弾という特殊爆弾を使っている。これは国際赤十字もやめるべきだといっている残虐な爆弾だ。(空から地雷をばらまくもので)対人地雷禁止条約にも抵触するといわれているものだ。こういうものを日本は中身も知らされないで輸送することになる。そうなってもいいのかという問題が出てくる。

 第二に、「武力行使と一体でない範囲でやるから憲法違反ではない」という(政府の)議論がいよいよ成り立たなくなっている。

 国際基準で言えば、日本のやろうとしていることは、すべて集団的自衛権、武力行使にあたるものだ。国会質問で、わが党が明らかにしたように、NATO(北大西洋条約機構)は、日本がやろうとしている兵たん支援活動とほぼ同じ活動を、集団的自衛権の発動として実行しようとしている。

 (政府は「戦闘地域」ではやらないというが)テロとのたたかいで「戦闘地域」と「非戦闘地域」の区別はいよいよ無意味ではないか。どうやって判別するのか。首相は「テロ行為と戦闘行為は違う」と答弁したが、その違いはどうやって識別するのか。識別しようがないではないか。

 どの角度からみても、この法案でおこなうことは、武力行使となり、憲法違反になる。

 第三は、難民支援は、自衛隊派遣の理由にならない。国連の諸機関やNGOなどがとりくんでいるわけで、その支援こそ重要だ。米軍の側に立って参戦している自衛隊がおこなえば、攻撃対象とされ、逆に難民を危険にさらす。これは理由にならない。

 今度の法案は、戦後初めて、現実におこなわれている戦争に自衛隊を参加させる法案だ。戦後はじめて、日本の軍隊が他国の人を殺す危険のある法案だ。戦後はじめて、日本国民の戦死者が出る危険のある法案だ。

 そういう法案で、これだけの問題点が噴出しているのに、戦争が起きたからといってまともな審議もなく通すということは、大きな禍根を残す。徹底審議のうえで、廃案にすることを、強く要求したい。

国連中心の道になぜ切りかえないのか

志位委員長に首相、答えられず

 (志位委員長の発言のあと、小泉首相との間で次のようなやりとりがありました)

 志位委員長 国連中心に告発と制裁がつくされないまま、米軍などが軍事報復をおこなっていることは、ひじょうに危険な状況をつくりだしている。国際社会がテロ根絶で団結していくためにも、米国の武力行使は中止して、国連中心の道にきりかえるべきではないか。いまの危険を首相はどう認識しているのか。

 小泉首相 配慮は必要だと思う。イスラムの世論にたいしても、配慮が必要だ。しかし、今度の措置(米軍の武力行使)を国際社会は全体として支持している。

 志位 マレーシアのマハティール首相につづいて、人口二億人の最大のイスラム教国のメガワティ大統領も、軍事攻撃に反対する立場を表明している。東アジアの有力な国が二つも反対だ。現に亀裂が生まれているではないか。

 国際テロ集団は、数十カ国にあるといわれている。世界のどこにも逃げ場をなくすためには、国際社会の大同団結こそ必要ではないか。

 福田官房長官 国連中心というのは大事なことだが、それがうまくいくならいい。しかし、国連というのはオールマイティーではない。

 首相 国連中心というが、米軍が武力行使をしないと、なかなか(ビンラディンが)出てこない。

 志位 今度の事件で、国連は、ビンラディンの引き渡しをもとめる安保理決議も、出していないではないか。まず、容疑者の引き渡しを(タリバンに)もとめる。それに応じなければ、国連として制裁の措置をとればいい。まず、憲章四一条の非軍事的措置をつくす。それでも不十分なら憲章四二条の措置もありうる。そういう手はずをふんでこそ、国際社会が団結してテロ集団をおいつめることができるのではないか。

 官房長官 前の事件(ケニア、タンザニアでのテロ事件)で、すでに国連は(引き渡し要求の)措置を決めている。

 志位 それは前の事件についてであって、今度の米国へのテロ事件では、国連は引き渡し要求の措置を決めていないではないか。そういう手はずをふむことを、なぜ求めないのか。

 山崎幹事長 第二、第三のテロをおこなう可能性がある。だから国連とか何とか、そんなことを言ってられない。だから武力行使をしなければならない。

 志位 国連安保理で、容疑者引き渡しを求める決議をあげることに、だれも反対しないはずだ。やる気になれば、すぐにできることだ。なぜそれを求めないのか。そういう手立てをとってこそ、テロ集団を国際社会で孤立させ、おいつめることができる。首相はどう考えるのか。

 首相 共産党とは立場が違う。

 志位 テロ根絶では一致しているはずだ。どういう手段を選択するかを問題にしている。これは、法案の前提になる大事な問題だ。この問題での、日本政府の立場を真剣に再検討してほしい。




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