2002/01/08

小泉政治は国民に痛み、大銀行には"大甘"の政治

志位委員長がCS放送で発言

 日本共産党の志位和夫委員長は、1月8日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、峰久和哲・朝日新聞政治面編集長のインタビューに次のように答えました。


峰久 志位さん、今年もよろしくお願いします。

志位 よろしくお願いします。

国民にたいへんな痛み、大銀行には“大甘”の政治

峰久 新年早々景気の悪い話をしなければならないんですけれども、小泉改革はかけ声だけはかなり勢いがよかったんですけれども、8カ月経ちまして、なかなかかんばしい話はない。それどころか、3月にかけて大きな会社が倒産するのではないかとか、ほんと不景気な話なんですけれども、まず志位さん、小泉内閣になって8カ月、いわゆる「小泉改革」は現状で採点されると何点ぐらいつけられますか。

志位 これはマイナスになりますね。

峰久 そうですか。最大の減点要因はどのへんにあるんですか。

志位 私たちは、この「改革」というのは、国民に耐えがたい痛みを強いる、そして経済もダメにしてしまうということを一貫して批判してきたんですけれども、その通りになりましたね。

結局痛みというのは、中小企業を「不良債権の処分」といって無理やりつぶす、リストラを応援して失業率を5・5%という最悪にしてしまう、さらに社会保障の問題では医療という命の基本になるところを負担増でお医者さんへの敷居を高くしてしまう。

こういうやり方がすべて暮らしを直撃し、暮らしを冷え込ませ、所得を冷え込ませ、消費を冷え込ませ、需要を冷え込ませて、そして経済全体がいわゆる「デフレの悪循環」「デフレスパイラル」に落ちこんでいく。つまり、景気悪化と物価の下落が同時進行していくというところに落ちこんで、非常な危機に直面していることです。これが一つです。

ただ、もう一方で、“大甘”なところがあるんですよ。

峰久 ほうほう。全然痛みがきていないところ。

志位 全然痛みがくるどころか、至れ尽くせりの分野があるんですね。大企業、とりわけ大銀行、これにたいする小泉さんの姿勢というのは、私は非常に対照的だと思いますね。

だいたい70兆円の銀行支援の枠組みは温存したままで、いまさらに大銀行にたいして公的資金をまた入れるという話が出てきていますね。

それで一方で、大銀行にとって邪魔になるものは「民業の圧迫だ」という掛け声で、つぶしていく。たとえば住宅金融公庫。これはマイホームを取得するためになくてはならない大事な役割を果たしていて、マイホームの資金の6割ぐらいがここから出ているんですが、これをつぶしてしまう。あるいは郵政民営化。これも郵便局が大事な役割を全国津津浦浦で果たしているものをつぶしていく。「つぶせ」という声が国民から全然おこっていないのに、これも、大銀行の儲け口を確保するためにつぶしてしまう。

結局、大銀行には税金を入れてやったうえ、儲け口を新しくつくるために国民が望んでもいないもの、反対しているものをつぶす。大銀行優遇政治というのは極まれりという感じですね。

ですから、「痛みを等しく分かち合おう」なんていう話がよくあるけど、国民には痛み、大銀行には“大甘”の政治という図式のなかで、銀行のバランスシートとしてはきれいになっても、景気はどんどん悪くなる。そうすると、銀行の経営がまた苦しくなる。そこでまた税金を入れようとする。こういうデタラメなやり方になっているわけで、これを切り換えて、国民の暮らしを活発にする方向に政治を切り換えないとだめですね。

乱暴な不良債権処理と、大銀行への税金投入の悪循環

峰久 銀行の不良債権処理はまだまだ進んでいない、それが何より最優先事項であるから税金を投入してもやむをえない、という考え方に政府・与党はたっているわけですけれども、それは間違いなんでしょうか。

志位 私は、間違っていると思いますよ。不良債権を処分するということは、結局、生きている企業をつぶすということでしょ。しかも、いまの「不良債権の処分」というやり方は、たとえば地域の信金・信組だけでも去年で四十六もつぶれた。なんとか不況のなかでやり繰りしている中小企業もどんどん切っていくようなやり方で、そして中小の金融機関もつぶすようなやり方でつぶしていく。このやり方だったら、もっと景気を悪くしますよね。結局、不良債権の拡大再生産です。

そして、不良債権の処理をしたら銀行の自己資本が減りますよ。減ったから自己資本注入を公的資金でやりましょう。こういうことをやってまた不良債権の処理を繰り返す。また(自己資本が)減りました、また(公的資金を)入れましょうと。これは限りないですね。どんなに入れたって。70兆という枠組みを全部使ったってできないですね。

こういう悪循環ではなく、ほんとうによい意味での需要を起こしていく。つまり家計をあたためていく。景気を回復するなかで不良債権問題も解決するという道筋に切り換えなかったら、これはもう“逃げ水”みたいにどんどんどん解決は先にいくと思います。

峰久 いま経営が大変なゼネコンはたくさんあります。昨年、青木建設が破たんしたわけですけれども、あのとき小泉さんのせりふが「構造改革が進んでいる一つの証である」という趣旨の発言をされた。志位さんはあの発言についてはどういうふうにお考えですか。

志位 冷酷非情だと思いましたね。こういう発言を一国の総理がやるというのは。青木建設1社だって、7千人もの人が働いているわけですよ。それから5千社に近い取り引き先があるわけですよ。まずその人たちを心配するのが総理大臣の仕事のはずなのに、順調ですと、私どもの手柄ですと。それ一つをとっても、総理の資質として失格だと思いますね。この痛みにたいして痛みと思わない冷酷さ。いまこれは、国民のみなさんが「こんな政治でいいのか」と思いだしたところだと思います。

特殊法人――ムダ遣いや利権構造にメスを入れず、国民に必要な法人をきりすて

峰久 道路公団をはじめ、さまざまな特殊法人の整理合理化のメニューが出できたように思われます。名前が決まったものもあるし、先送りになったものもたくさんあるし。この特殊法人改革についてはどういうふうに評価されますか。

志位 特殊法人の改革で国民のみなさんが一番願っていたのは、特殊法人を通じたムダ遣いとか、利権の構造とか、天下りとか、こういうのをただしてくれということだったと思うんですよ。ここは、私は、基本的に全然メスが入っていないと思うんです。

たとえば、道路公団の決着も、問題は2400キロメートルの未供用の高速道路計画をやるかどうかの問題だったわけですよね。ところが、これは結局、「償還50年」ということでつくりつづける道が開かれた。

それから関西空港の法人の問題がありますけれども、あれはすでに大赤字で大変ですね。これを成田空港と一体化して、成田の黒字で関空の赤字を穴埋めして、関空の2期工事という全然採算の見通しのないものを、いけいけどんどんでしょ。これは全然、手がついていないですね。

一番肝心の国民の願っている、利権の構造とか、ムダ遣いの構造とか、全然メスが入っていない。

一方で、さきほどもいった、住宅金融公庫をつぶすとか、育英会をつぶしちゃうとか、国民の暮らしにとって大事な法人はつぶしてしまうというのは、まったく逆行するやり方だと思います。

ペイオフ解禁――2つの大きな問題がある

峰久 そんななかで、金融機関にかんしていえば、ペイオフの解禁を予定どおり4月にやると小泉さんはおしゃってしいますけれども、これについてはどうでしょうか。

志位 私たちは、いまやる条件はないと思っているんですよ。2つ問題があります。

一つは、だいたいペイオフというのは、預金者の預金が原則1千万円までぐらいしか保護されない、あとは保護されない、全額保護されないという仕組みなんですけれども、一方で、大銀行に対する70兆円の税金投入の枠組みはペイオフ解禁してもこれはこのままだというんでしょ。私は、国民の預金は保護しない、大銀行は保護する、これはおかしいと思いますね。

私は、国際的信用を取り戻すというんだったら、銀行への税金投入の仕組みをやめる、そして銀行業界の不始末は、自分たちの責任と負担で処理すると、このルールに立ち戻ることが一番の信用回復だと思います。だいたい、国民の税金に助けてもらっているような銀行に信用なんかおけませんよ。

もう一つ、このペイオフとの関係でいいたいのは、ペイオフという問題をテコにして、地域の経済を支えている信金信組がどんどんつぶされているんですね。この淘汰がおこって、結局、資金を巨大銀行に集中させる。この流れが起こってくるというのも非常にまずいことですね。私はいま、やる条件がないと思います。

なぜ金融不安がおこっているのか、解決の道筋はどこにあるのか

峰久 志位さん、銀行は自分の責任で始末をつけるべきだとおっしゃったんですけれども、いまの銀行にそういう力はあるんでしょうか。

志位 2つあると思んですけれども、一つは、まずいまの銀行の赤字という問題、あるいは自己資本の問題が起こってくるのは、2、3年という期限を決めて、むりやりに不良債権をバランスシートから落としなさいと、この政策が危機をつくっているのです。むりやりやるから銀行の資本も減っちゃうんですよ。この政策を中止して、私は、需要をおこして、そして景気をよくして、そのなかで不良債権問題を解決するという道にきりかえることが必要だと。これが一つです。

もう一つは、銀行のいまの実態について、そういうきりかえをやるなかで、それでもなお金融不安がおこった場合にどうするかということについては、私たちは、60兆、70兆の枠組みがつくられたときにも、かりに金融不安がおこって、銀行業界全体の力で処理できなくなったと、対応できなくなったと、こういうときには、日銀が一時的に貸してもいい、そのかわりちゃんと返してもらう。10年かかっても20年かかっても返してもらう、そういうことは一時的なこととして認めていいだろうという提案までしたんです。

そういう解決方法もあるわけです。アメリカでは実際にFDIC(連邦預金保険公社)の資金の底をついたときには連銀から金を借りて、返してるわけです。返して、ちゃんとそういうことをやっているから、そこで信用を回復しているわけです。ですから、日本ができない道理はない。やはり税金をいただいて、信用回復というのは虫のいい話だと思いますよ。

峰久 経済問題で最後にうかがいたいのは、「ともあれデフレスパイラルが一番こわいから、日本経済をインフレに誘導する」と、そういうことをいっているエコノミストや政府・与党のなかにもいますね。そういう政策については、志位さんはどういうふうに考えていますか。

志位 これは非常に危険な政策で、結局、インフレターゲットということで市場にお金をたくさんいれることでむりやり人為的にインフレをつくるというやり方をしますと、これは悪性インフレに制御できなくておちいっていくという危険がある政策です。

その場合は、庶民の貯蓄が全部吸い上げられてしまうことになるわけです。

さっきいったように、いまのデフレというのは、国民の所得が減り、消費が減っているところからおこっているわけですから、この力をあたためないでおいて、ただ市場にどんどんお金をいれれば問題が解決するということには絶対にならないと思います。

「アメリカの武力行使はアフガンに貢献した」という見方は絶対になりたたない

峰久 ちょっと海外の方に目を向けたいんですけれども、アフガニスタンではいま、米国が、オマル氏を探すとか、いう話がありますけれども、ともあれ新しい国づくりというそういう局面になりましたよね。ここまできた背景には、アメリカの非常に強い軍事的な姿勢があった。その意味では、ああいったアメリカの武力行使はアフガンのために貢献したと、そういう見方をする人もいますけれども、志位さん、どういうふうに思いますか。

志位 私は、そうは絶対にいえないと思います。

まず、あの報復戦争がもたらしたものとして、たくさんの罪のないアフガンの人たちの命が奪われたと。これは、アメリカのニューハンプシャー大学のマーク・ヘロルドさんという人が試算を発表しています。インターネットに出ていますね。だいたい4千人にのぼる民間人が亡くなったと。この犠牲です。

そして、パレスチナ問題の悪化ですね。この問題ではイスラエルの暴走が起こっている。「テロ対策」という看板をかかげたら、なんでも許されるような風潮を世界に広げている。

さらに、アフガンだけで戦争を終わりにしないで、イラクだ、ソマリアだ、スーダンだという戦争の拡大という方向の危険も広がっている。

ですから、報復戦争という道にいったん踏み出したことが、そういうもろもろのまさに歴史をまったく逆行させるようなたくさんの逆流をつくっていると思います。

そして、アフガンにできた政権についても、あの政権にたいするアフガンの国民の期待はあるでしょう。国際社会がアフガンの再建のためにアフガン人の民族自決権を尊重しながらいろんな協力をやっていくのは大事でしょう。

しかし、あの政権がはたしてその期待にそうものになるかの保証はないですよ。

だって、北部同盟がかなり主体なわけだけど、かつては、たいへんな残虐行為をやったり、内戦を繰り返したりして、だからタリバン(政権)になったわけですからね。そういう問題について、吟味したかというと吟味してない。ただ、アメリカは反タリバンに都合がいいから使ったというだけでしょ。

この問題では、アメリカには前歴があって、たとえばパナマのノリエガ問題、あの人はCIAのエージェントエだったですよね。いうことをきかなくなったからといって、パナマを攻めた。イラン・イラクの戦争のときに、イラン憎しのあまりフセインに肩入れし、ああなった。ビンラディンだってもともとはCIAが育てたものでしょう。

アメリカという国が自分の都合のいい相手に肩入れする、いらなくなったらもう後はほったらかす。そこから、たいへんなことが繰り返されているわけです。

いまの政権についても、これにたいする期待は当然あると思いますし、この期待は実らせたいと思うけれども、その保障というものはないのです。

空爆の成果だ、めでたしめでたしとはいうふうには決していえません。

アメリカのダブル・スタンダード(二重基準)――イスラエルの暴走を許すな

峰久 反テロリズムといいますか、テロリズムとの戦争を標ぼうしているアメリカが、パレスチナにかんしては、たいそうイスラエルに甘いという印象をもちます。

志位 そのとおりですね。

峰久 これはやはりアメリカはダブルスタンダードだといわざるを得ないんですかね。

志位 私はそう思います。それがイスラムの諸国のみなさんに、アメリカにたいする非常に強い反感、あるいは批判をつくっていると思いますね。

もともとパレスチナ問題というのは、国連の決議があって、共存するという方向があったにもかかわらず、イスラエルが不当に(パレスチナ領を)占領する、こういう問題から起こっているわけですね。

ですから、パレスチナの民族自決権をちゃんと認めて、独立した国家をつくるという権利を認める、それからイスラエルは占領地から撤退する、同時に、双方が抹殺論にたたないで共存論にたつ、この道理のある方向が必要で、私たちは70年代からこれをいってきたんですよ。

その線にそって、オスロ合意が1993年に結ばれて、やっと和平に向かって一歩進んだと喜んだ矢先に、テロと報復が始まり、さらにアメリカでのテロに便乗してイスラエル政権がアラファト議長とは「断交」だ、パレスチナ自治政府は「テロ支援団体」だと、まさに抹殺論の立場で対応していますね。これはまさに、アメリカのやったことを、もっと乱暴な形でイスラエルの政権が繰り返すという形で、非常に危ないところにきています。これはぜひもとの和平の軌道に戻るという国際的努力が必要だと思いますね。

小泉対米追随外交は「アジアの恥部」(コリアン・ヘラルド)

峰久 それで小泉政権の外交ですが、テロにかんしていえば、小泉さんはまあ、対米追随型といいますか、アメリカに対する全面的支持という外交を展開していますが、これでいいんですかね。

志位 これは大問題ですね。私たちはきびしく批判してきました。ただ、私たちだけの批判ではなくて、とくにアジアの国々の批判が強いですよね。韓国の新聞で「コリア・ヘラルド」という英字新聞があるんですけれど、こういう一節がありました。

「韓国朝鮮人や中国人を含め、多くのアジア国民が現行のテロとの戦争における日本の役割を安全のための盾というというより、むしろ恥部として認識している」

つまり、日本がやっていることを、安全のために盾となって頑張ってやってくれているというんではなくて、恥ずかしいことだと。憲法九条をもっている国が侵略戦争の反省もしないで、むしろ美化をするような行為ばかりしながら、どんどん戦争に出て行く、これは恥ずかしいことではないですかということが、韓国の世論では強いですね。中国でも強いです、そういう批判をあびて当然の行為を繰り返して来た。この(対米)従属姿勢をあらためることは、いまつよく求められていると思いますね。

「不審船」問題をどうみるか

峰久 日本周辺で物騒な動きがありまして、北朝鮮かどこかわかりませんけれど、不審船が結局、日本の公権力による武力行使がおこなわれ、沈没した、こういう事態が起きていること、日本の公権力による武力行使がおこなわれたこと、これをどうごらんになりますか。

志位 海上保安庁によって武器が使われたということだと思いますけれど、この問題は吟味がいると思っているのです。

問題は領海内でおこったことではなくて、排他的経済水域ということではあっても、公海のうえで起こった事ですね。ですから、海上保安庁がとった行動について、事実経過、そして法的根拠について、国内法、国際法、両面から日本政府はちゃんと国内外に説明する義務があると思うんです。この説明をやってませんね。だから、周辺諸国は、不安感をもっていますね。とりわけ、東アジア諸国には、日本が侵略戦争をやったという前歴がありますから、海上保安庁であれ、ああいう行動をやることには非常に不安感が強いわけですから、内外に説得力のある説明が必要だと思います。

私たちも、国際法、国内法両面から吟味しているところです。

有事法制――アメリカがおこした戦争に日本を総動員することに目的が

峰久 この議論の行き着く先には危機管理、有事法制、そういったところまで話が及んで行くんでしょうか。

志位 これはごっちゃにしたらいけないと思っているんですよ。「不審船」の問題というのは、あくまでも領海あるいは排他的経済水域のなかで警備活動?警察活動をやるという問題ですから、これは海上保安庁の仕事なんですよ。

ところが有事法制とはなにかというと、戦争が起こったときに非常時体制をつくるというのが有事法制ですから、全然次元の違う話なんですね。ごっちゃにするのは危ない議論で、そのことはきちんとまず区別する必要がある。

そして、有事法制についていえば、これはわが党の吉岡吉典議員が国会で質問したんですね。「いったい、いまの日本にたいして上陸侵攻作戦するような大規模な武力攻撃の可能性あるんですか」と聞いたら、防衛庁長官が「想定できません」というんですね。こんなことは、想定できない。

結局、なんのための有事法制かというと、アメリカがアジアで戦争をやる、その戦争に日本が参加する、それに備えて日本国民を総動員する。そのときにたとえば、土地の強制収用、あるいはお医者さんや看護婦の徴用、これをやるときに、罰則つきでも、つまり人権を侵害しても動員するんだと。これが有事法制ですから、その危険性をしっかりみて、私たちはきびしく反対の論陣を張っていきたいと思います。

選挙制度と衆院解散について

峰久 最後に選挙のことを聞きたいのですが、国政調査の結果をうけて、小選挙区の区割りについて勧告が出ましたね。この勧告が出て、やがて公職選挙法の別表の改正という段取りになると思うんですが、いまのこの状態というのは小泉内閣は解散権をもっている状態だと思いますか、それとも持っていないと思いますか。

志位 まず区割りの案なるものが、格差2倍以内におさまっていないですよ。これはやはり小選挙区制の欠陥がそこにもあらわれているわけで、私は小選挙区制を撤廃して比例代表制を中心にした制度に変えるという改革が必要だということをいっておきたいですね。

いまのご質問については、国民が求めるときには解散においこむ必要があるわけですよ。解散を求めるときもあるわけですよ。非常に重要な国政上の課題で国民の意思表示を求めるとき、われわれが求めるときがあるわけですよ。そのときにもし、この問題が解決していなかったら、それは政府・与党の側の責任に属するということになるんではないでしょうか。

峰久 格差2倍以内ということにかんしていえば、各県に1議席配分してそのうえで比例配分するという計算方法をする限り、この格差は縮まりませんよね。

志位 いまの小選挙区制の制度自体が生み出している矛盾ですね。しかも、いまの小選挙区制というのは、どんどん人口が変わるでしょう。だからいったん格差2倍以内におさめても、またまた変わってくると、そのたびに選挙区の区割りを変えるという問題が生まれるわけです。

だから1票の価値の平等を担保する上でも、小選挙区制という制度はだめだというのが結論ではないでしょうか。私はやはり、早く大政党が議席をひとり占めにする制度は日本の政界からなくして、比例代表を中心にした制度にしたいと思います。

峰久 そうしたなかで公明党が定数3の中選挙区を150つくるという案をかなり前からだして、与党内で抜本改革の議論をしようという話がありましたけれど、どうやらその話は決着して次の総選挙はいまの選挙制度でいこうということになりましたけれど、この流れについてはどう評価されますか。

志位 これは与党の中の問題ですからね。ただ、公明党の動きというのは党利党略ということをまるだしにした動きでしたね。ただ自民党の方も、そのときに公正な選挙制度とはどうなのかということをまともに議論した形跡もないということでしょうか。

峰久 これは志位さんに、政治評論家のようなことを聞かないといけないかもしれませんけれど、もし小泉さんが解散に打って出るとすれば、それはどんな状況になったときでしょうか。

志位 ぜひわれわれの力で、小泉政権を、いろんな意味で、経済政策の破たんという点でも、あるいはアメリカ追従外交の破たんという点でも、追いこんで、信を問えという状況をつくりだしたいですね、やはり評論家的にはいえませんね。

峰久 そのとき小泉さんというのは、抵抗勢力は一緒にいくさをするんでしょうか。

志位 だって、(首相は)「抵抗勢力は協力勢力だ」と自分でいっているじゃないですか。同じですよ。たいした違いはありません。カレーライスとライスカレーぐらいの違いだと、私は思っています。