2002/01/24

志位委員長がCS放送で語る

経済危機から国民生活をいかに守るか

 日本共産党の志位和夫委員長は、1月23日放映のCS放送朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、党活動の展望や政局の見通し、議員秘書などによる口利き疑惑、有事法制問題などについて質問に答えました。聞き手は、小林暉昌(きよし)・朝日新聞編集委員。


 小林 今年は経済問題を軸に政局が大荒れするという見方が多い中で、野党側がどのような役割を果たしていくのか注目されています。今日は共産党の志位和夫委員長に、政局の展望や国会の対応についてお聞きします。志位さん、今日はよろしくお願いします。

 志位 よろしくお願いします。

草の根で国民と党との結びつきをいかに強めるか――今年の大きな課題

 小林 先日通常国会が始まったときの議員団総会で、志位さんは「国民こそ主人公の政治を実現するんだ」と。そのための党の躍進、大運動を展開していきますということを強調されたんですが、ことしの目標、躍進できるかどうか、この自信はいかがですか。

 志位 いま、党員と「しんぶん赤旗」の読者を大いに増やす運動に取り組んでいまして、去年の11月、12月から、本格的に開始したのですが、だいぶ広がってやってきています。

 私たちの党は、全国に2万6千の党の支部があるのですが、「支部が主役」になって草の根で国民のみなさんと結びついて、要求実現のためにがんばっている。社会保障とか雇用とか、いろんなたたかいを起こしながら、党を大きくしていく運動に取り組もうということで、ずいぶん、多面的で豊かな広がりをもってきまして、党員もだいたい6千名以上、この2カ月余で増えています。「しんぶん赤旗」も増え始まっていますので、これはうんと広げたいですね。

 今年は、党と国民のみなさんとの草の根での結びつきをしっかり強める年にしたいと思っております。

 小林 大運動ということなんですけれども、これは、うまいなんかキャッチコピーみたいなものはないんですか。

 志位 これは、草の根での国民と党の結びつきをいかに強めるか、ということなんですよ。一言でいいましてそういう運動として取り組んでいます。

 私たちは、入党を呼びかける場合には、党員としてみんな共産党員がそれぞれ生きがいをもち誇りを持っておりますから、生きがいを語ろうと。それから、「しんぶん赤旗」の魅力を大いに語って増やそうと、そういう楽しい運動としてやろうということで取り組んでいるんです。

 小泉内閣の内閣支持率は高いんだけれども、これまでやってきた自民党の古い政治、「属国日本」といわれるようなアメリカいいなり政治。それから、大企業中心主義が「ルールなき資本主義」とまでいわれるような、たいへんなゆがみをつくっている。このゆがみには全然メスを入れない古い政治が、うんと乱暴に続いているというのがいまの実態ですから、この大本をどうしても変えなければならない。

 ただ変えるには、やっぱり共産党自身が、国民から見て「頼もしい党」として強力な党にならなければいけないということで、そういう思いでいまやっています。

 小林 綱領の改定問題というのは、おそらく党のムードも変えるんじゃないかと思って期待している人も多いんじゃないかと思うんですが、この作業はいかがなんですか。

 志位 これは、今度の定期党大会の課題ということを確認しています。まだこれは、集団的に、たとえば委員会を作って、集団的に検討を始めるという段階ではありません。

 小林 今年中に大会を開くということはないんですか。

 志位 それはまだ相談していないです。規約でいいますと(党大会の開催は)二年ないし三年ですから、前回が2000年の11月ですから、今年は11月で2年ということになるんですけれども、もちろん規約にそった開き方をするわけですけれども、いつかという相談はまだしていません。

 小林 志位さんが就任されてマスコミ報道ですけれども、「柔軟頑固路線」ということで、非常に若さと柔軟さで党の色彩も変わるんじゃないかと。ただ、われわれ1年あまり見てきて、そう変わってないんじゃないかなと。もっとソフトなり若さみたいなのを前面に出すような党の改革というのはできないんですか。

 志位 党の運営は全体でやっているわけですから、私は委員長としてもちろん、その職責を果たす必要があるわけですけれども、指導を日常的にやっていく場合も、全体の知恵ですから。もちろん私なりの特徴はあると思うし、そこらへんは自然体でやっていきたいと思うのです。

個性豊かな党として国民にかったつに訴えていく――インターネットの活用もおおいに重視して

 小林 党といえば党で、いろいろ宣伝もするし、売り込みもするというのはそれでいいんですけれども、今の時代はやっぱりパーソナリティというのがかなり重要でないかと。

 志位 それはそうだと思いますよ。

 小林 まあ、志位さん自身、このあいだの参議院の選挙のときにコマーシャルにも出ましたけれども、あれは失敗したっていうことで逡巡しちゃうと惜しいなあと。あれでどんどん押してパーソナリティを売ったほうがいいんじゃないかと思うんですけれども。

 志位 それは、あの、私たち共産党員というのは、なかなか個性豊かで、多士済々ですから、個性が死んでしまうようだったらそれはつまらないことになるわけで、それぞれ個性をいかして、自由かっ達にものをいうし、もちろん党の団結を守りながら、大いに自分の言葉、自分の気持ち、これを大事にして国民のみなさんに訴えていくと。これはすごく大事ですね。おっしゃるように、それぞれのパーソナリティは大事だと思いますよ。

 ただ、CMの件は、これはいろいろ総括しまして、いろいろご批判もあったんですけれども、あのCMを通じて、15秒ですから、どういうメッセージを国民のみなさんに発信するかという点について党としての検討といいますか、これが安易だったなという反省をしまして今後に生かしていこうと思います。

 小林 インターネットで党の売込みをおそらく独自のいろんな調査報告もあるわけで、個人もまた先ほどありましたように、個人のまた個性もあるわけで…。

 志位 インターネットも、党のホームページも非常に充実したものだと思っておりますし、それからそれぞれの議員さんもみんなそれぞれインターネットを独自に開設している方、これはもうそれぞれ自由なんです。それから、地方議員や地方の議員団、これもどんどん開設しています。インターネットはいま非常に大事な媒体になっているので、これは私たちは、おおいにこの媒体を駆使して取り組んで行きます。(ホームページを日常的に)更新するのは大変ですけれどね。

小泉政治の「構造改革」――不況下での逆噴射

 小林 本論の政局の展望の方に移りたいんですけれども、小泉内閣の先行きというものは経済問題と直結しているといわれています。2、3月の経済危機、金融危機というものが、いわれていますけれども、政局は今年1年どんなふうな見方をされますか。

 志位 これはやっぱり経済の問題が、今後の小泉政権にとっては一番の危機の根源になると思います。

 私ははっきりいって、小泉さんのとりくんできた「構造改革」という路線が行き詰まっていると思うんですよ。破たんしている。

 私は、「構造改革」というのは、端的にいいますと、大銀行と大企業、この当面の儲けさえあげればいい、そのじゃまになるものは全部壊していく、あとは野となれ山となれ。国民経済の全体はどうなっても、これは知りません。国民のくらしがどうなっても知りません。これが、実態だと思うんですよ。

この不況下で、そういうことを押しつけるわけですが、国民には痛みだけ、大銀行にはものすごい大甘の政治となる。そのもとでいま、日本経済は、政府自身も景気の悪化と、物価の下落の連鎖的進行――デフレスパイラルの危険に陥りつつある、これはもう認めざるを得ないわけで、前例のない危機にきています。

 そういう危機に際して、まったく打つ手なしで、「構造改革」という、逆噴射だけは続けているというのが、今の小泉内閣ですから、この経済のかじ取りがまったくきかなくなっている点では、危機は深いですね。非常に深いと思います。

 ですから私たち、この危機のなかで、どう国民の暮らしを守るたたかいをやるかということが、非常に大事な課題だと思っています。

 小林 小泉内閣のゆくえはどう見たらっしゃいますか。都市銀行も破たんするんじゃないかとか、失業率もどんどん上がっていくだろうという予測も出てたりして、しかも、経済成長率も、政府自身がゼロというような感じで見ているようですし、どんな推移を見てらっしゃるんですか。

 志位 経済は、さっきいったデフレの悪循環が現実のものとして進んでいると思うんですよ。つまり、今のデフレというのは社会全体の需要が不足することから起こっている。これは(政府・内閣府の)「経済報告」も認めているわけですね。そうしますと、企業の収益が落ちてくる、そこから所得が落ちる、また消費が落ちる。生産と所得と消費、この三者が連鎖的に縮小していくという、逆の歯車が回り始めているのです。

 ここまできてしまった経済を立て直すということを本気で考えたら、「構造改革」といわれる逆噴射の路線は、中止する。そして、「よい意味での需要対策」、つまり、国民の家計を応援する、家計を元気づける、こういう需要対策が、雇用の問題や社会保障の問題などで必要です。

 これをやるという頭が全然ないもとで、かじ取り不能に陥っているというのが、いまの内閣の実態ですね。

 小林 通常国会中にも破たんをきたす、政権の方が破たんをきたすということになりそうですか。

 志位 これは分かりませんね。経済の動きは予測がつかないものがあるんですけれども、今の路線を続けていく限り、先は開けてこないことだけは間違いないですね。

この十年余の「景気対策」――一貫しているのは大銀行・大手ゼネコン応援、国民の暮らし犠牲

 小林 自民党の抵抗勢力というのがあるわけですが、そっちの方の動きは、関心がおありなんですか。

 志位 この抵抗勢力と改革勢力というのも、小泉さん自身が、「抵抗勢力は協力勢力」だと自分でいっていますから。私は、前回のこのCSでカレーライスとライスカレーの違いくらいしかないって話したのですけれども(笑い)、そんなものです。

 要するに小泉さんの論理というのは、この十年間、いろいろ景気対策はやってきました。しかし、不況は十年間続いてなおりません。財政政策もやってきた。金融も打つ手は打ってきた。ところがうまくいかない。だから「構造改革」なんだと。「構造」が悪いから「構造改革」なんだと、こういう論理なんですね。

 ところが、財政政策としてやってきたことは、公共事業の積み増しですよ。つまり、むだな巨大ダムとか港湾とか、そういうところにお金をジャブジャブ入れる。大手のゼネコンには吸い上げられるけれど、国民の暮らしには回らない。雇用も増えない。こういうやり方ですよね。これが財政対策としてやってきたことです。

 金融対策としてやってきたことは、なにかといえば超低金利政策をとって、そして大銀行をもうけさせることをやったけれども、庶民の懐の方は預金が目減りするわけですから、逆の効果になります。

 財政政策も金融政策も結局、大銀行と大手のゼネコンという、バブルをやった張本人を助ける政策をやってきただけなんです。一貫しているのは、国民の暮らしについては、消費税増税、社会保障の負担増、リストラによる首切り、中小企業つぶし。何から何まで、痛めつける話ばっかりやってきたわけですね。これは、抵抗勢力といわれている人たちも、改革派と呼ばれている人たちも、国民の暮らしを痛めつけること、あるいは、大銀行と大手ゼネコンを応援する、この基本線では全然違わないですね。若干の手順の違いが少しあるくらいのところでね。

 こういうやり方が破たんしたというのが、いまの経済の現状なんです。そこから教訓を導くならば、そういうやり方をやめて、庶民の暮らし、とくに、GDP(国内総生産)の六割を占める個人消費を応援し温める本格的な本腰入れた対策に切りかえる。これは十年間、(自民党政治の)だれもやっていないわけですから。やってこなかったことを、ちゃんとやるべきだということを、私たちは訴えています。

国会でおおいに正論をとなえるとともに、国民的なたたかいをもってこたえる

小林 野党がどういうとりくみをして、政策を転換させるかということもあるんでしょうけれども、通常国会で、共産党がいう「国民こそ主人公」の政策をやるための野党側の結束というのはどうなんですか。

 志位 これは、なかなか難しい面がありまして、やはり、野党第一党の民主党の経済政策というのは、はっきりいいまして、「構造改革」をもっとやるべきだと、もっと急進的にやるべきだという立場ですから、私たちとは180度違ってくるわけですよ。ですから、経済の基本線で野党協力ができるかというとはっきりいいまして難しいですね。お互いに論争をやっていくということになるでしょう。

 私たちは、国会で大いに正論を唱える。そして国会だけのたたかいにしないで、国民的なたたかいをもってこたえようということを訴えています。

 たとえば、リストラの問題でも、いま、職場でやられているリストラというのは、サービス残業――タダ働きを押しつけたり、有休を取らさないとか、本人の同意のない転籍を強要するとか、ムチャクチャな無法をやっていますよ。こういうことをやめさせる。これをやめさせることができれば、雇用を増やす方向に働きますから、そういうことで雇用を守っていく。そういうたたかいを組織する。

 それから、医療の問題でも、これは医師の団体、患者さんの団体、様々な団体の協力を得て、いまの負担増をストップしようという動きは、かなり幅広く起こっています。

 最初の小泉さんの計画は、お年寄りの医療費は自己負担2割にするというのが目標だったわけですけれども、さすがにこれはすぐには持ち出せないで、1割の徹底という、これ自体も改悪なんですけれど、これしかできませんね。

 それから、サラリーマン3割も、来年からやれるかどうか、まだはっきり決められません。

 そこまで、相手も一定は動揺するところまでもってきていますから、これも、国民のたたかいでこたえる。あらゆる分野で、国民のたたかいで、相手を追いつめていくというのが、いま非常に大事になっていると思います。

野党間の協力についてどう対応するか

 小林 民主党は先日の党大会で、小泉内閣と対決するという姿勢を確認しているんですけども、その辺の政治路線についてはどうなんですか。

志位 見てみないと分かりませんね。対決姿勢も、いろんな対決があるでしょうから。

 小林 必ずしも、野党の方で、一緒に「さあ、いくぞ」という感じには、見ていないんですか。

 志位 対決にも、「構造改革」という、私に言わせますと「強きを助け、弱きをくじく」という間違った、逆立ちした経済対策を「もっとやれ」という立場で、「これが足らないから、けしからん」という「対決」の仕方もあるでしょうしね。

 私たちのように、「構造改革」という路線そのものが間違っていると、もっと庶民の暮らしを活発にするという方向に、経済政策の大転換をやりなさいという対決もありますし、ですから、対決といってもいろいろありますね。

 小林 野党側の路線のなかで、一番幅が広いというのは、外交・安保というところなんでしょうけれども、先日、この番組で小沢さん(自由党党首)にインタビューしたら、例えば、国連の平和維持活動への協力というところは、自衛隊とは別組織でやるんだというようなことで、けっこう野党内でも合意ができているんですよ、ということを、盛んに強調されたんですけれども、防衛・安保でどうなんですか。われわれからみると、相当幅が広くて、とても足並みがそろうというのは、難しいんだろうなと思うけれども。

 志位 小沢さんの党との関係でいいますと、小沢さんの党というのは、国連という旗印があれば、軍隊を出してもいいと、別組織といっても、軍隊ですからね、という考えがどうも強いようですけれども、どういう旗印があろうと、(憲法)九条というのは、海外派兵はおろか、軍隊を持つことも禁止しているわけですから、無論、派兵は駄目なんですよ。ですから、これは、私たちとは相いれない考えです。

 ただ、今度の国会で問題になる有事立法の問題については、先日、市民団体の主催する集会が、国会開会日にありまして、このときは、私と土井党首(社民党)、それから横路さん(民主党衆院議員)もお見えになっていましたけれども、党派を超えたスクラムというものもできました。ですから、これを今度の国会で通さないための共同というのは、いろんな形で広げていきたいと思っています。

 小林 有事法制は、時間があったら、また後でお聞きしますけれども、そうすると、野党戦線というのはなかなか難しいんですか。うまく、組みたてるというのは。

 志位 これは、率直に言って、いまの現状を、リアルに言うと、野党共闘でやれることは、かなり限られていると思います。腐敗の追及とか、あるいは、狂牛病の政府の対応がなっていない問題とか、こういう問題では、一緒にやれると思うんですけれども、そういうものに限られてくると思います。

 それから、一定の党と、たとえば社民党などとは、有事法制の問題で、協力の可能性はあると思いますが、これは、全体のものにはなかなかならないでしょう。それが、いまの現実です。

 やっぱり、国会内だけで見ますと、そういう現状があるけれども、もっと国民的な大きな闘争を、各分野で起こしていくことが、いま大事になっていると考えていて、そこにも力を入れていきたいと思います。

公共事業めぐる腐敗事件――「金丸政治」はまだ生きている

 小林 通常国会で、新たにクローズアップしてきたのは、政治倫理の問題。政治家の秘書、元秘書が、公共事業の談合に関わったり、不正なお金をもらったりというような話が、出てきているわけです。これは、野党が一致できるとりくみになるんでしょうけれども、共産党としては、これは、どういうとりくみにしていくんですか。

 志位 あの問題を聞いて、私は、「金丸政治」はまだ生きているな、というふうに思いましたね。 あの金丸金権疑惑が噴き出した、92年当時でしたか、ゼネコン疑惑が出たときには、公共事業というのは、受注するためには、「コーヒー一杯いくら」とか、そういう「口利き」料のわいろ、これがないと公共事業がもらえないというのが、全国でどこでも常態化していて、金丸さんがその仕事で、金庫のなかにざくざく金塊(きんかい)が出てきたり、そういう話がありましたね。 あの政治が、まったく変わっていないという実態が、氷山の一角として出たというのが、今度の事件だと思うんですよ。

 山形で、加藤さん(元自民党幹事長)の秘書、それから鹿野さん(民主党副代表)の元秘書、この二人が両方で山形の利権を分け合っていたといわれているけれども、結局公共事業の口利きをして、その代わりにお金をもらって、脱税をするというやり方でしょう。ですから、これはまったく、「金丸政治」がまだ続いていると。

 では、山形だけかというと、そんなことはないですね。おそらく、全国で同じやり方が続いているというのは、国民のみなさんがみんな思っていることで、ここに本格的なメスを入れないで、「改革」というのは、まったく空語です。

 ですから、この問題は、もちろん当事者、つまり秘書、元秘書、それから関係する政治家、この人たちの責任は重いわけで、当然、証人喚問を含めて、徹底した究明が必要なんですけれども、やっぱり、関係する政党ですね。何といっても、まず自民党、それから民主党も含めて、これはやっぱり個人の問題にしないで、みずからの問題として、徹底的な自浄作用、努力、これが必要です。

徹底した真相究明とともに企業献金の全面禁止にふみこめ

小林 こういう問題になると、結局、証人喚問で対立したとか、そういうような対立だけで、喚問してもあまり中身がなしに終わってしまうというような、そういう意味では、いつも不毛な対決みたいなものが繰り返されているんですけれども、そのへんは打破するということは、できないんですか。

 志位 これは、真相の究明というのを、そこまで本気になって迫れるかという点でいいますと、野党の側も、鹿野さんの元秘書という問題を抱えていますよね。これをやっぱり、ずばっと整理をして、明らかにする立場に立っていかないと、真相のフタをするという自民党の動きを、結局助けてしまうということになると思います。ですから、今度はそれが問われていると思います。

 もう一つ、根本的には、あっせん利得罪の抜け穴をふさぐという問題もあるんですけれども、企業献金の禁止がいよいよ重要です。

 いま、政治家個人へのものは、確かに禁止になったんだけれども、私たちがかねてから主張していたように、政党支部をたくさんつくって、なかには「幽霊支部」もあるんだけれども、そこを抜け穴にして、お金をとるというやり方で、事実上変わっていないわけですから、やはり、企業献金の禁止、これを個人だけじゃなくて、政党・団体を含むものも全部禁止するというところまで踏みこまないと、この問題の本当の解決にならないと思うんです。その点を主張していきたいですね。

 小林 政党支部の抜け穴防ぎというのは、うまく国会に持ち出せるというか、法律改正まで持ち出す手はないんですか。

 志位 これをやめさせようと思ったら、企業・団体献金そのものを禁止という以外ないですよ。だって、政党支部というのは、「政党支部をつくってはいけない」みたいなことをもし決めたら、政党内部の問題に加入することになりますから、それはムリですね。

 だから、政党であろうと個人であろうと、企業・団体献金は駄目というふうにしませんと、問題は解決しない。

 小林 このスキャンダル追及では、「赤旗」がいろいろ業者の話を聞いたりして、調査報道的なのは面白いなとみているんですけれども、ああいう独自調査で突きつけるということはできないんですか。

 志位 これは、やっていきたいと思います。今度の談合疑惑でも、関係者の直接の証言をいくつか得て、スクープも何回か張っていますから。

 KSD(ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団)疑惑のときは、私も連携して国会で追及したけれども、例のKSDの「豊明支部」なるものが、「幽霊支部」だった。党員も「幽霊党員」だった。「赤旗」がスクープしまして、私のところに情報を提供してくれて、国会で私はそれを突きつけて、やったこともありますけれども、そういうことも含めて、「赤旗」は腐敗追及では、それこそ「ロッキード(事件)」以来、かくかくたるいろいろな成果をあげていますから、今度も大いに論陣を張ると思います。 

有事法制――何のための有事法制か、国民の人権がどうなるかをしっかり糾明する

小林 最後に有事法制のことで、どうしても聞かなくてはいけないとおもうんですけれども、さきほどは、どうも野党の足並みが乱れるんじゃないかという感じでしたけれども、やはり、このインタビューで、民主党のほうは、「いま有事法制というのは、生煮えのままやるんで、慎重を期さざるをえない」というようなことで、少なくとも、このまま自民党や政府が出してくるものに、そうは乗らんぞという、かなり対決姿勢みたいなものもみえるんですが、このへんはいかがですか。

 志位 ちょっと分かりません。これは、民主党のことは、何ともいえません。 ただ、今度の有事法制について、何のための有事法制かということを突き詰めてみると、「テロ」とか「不審船」というのは、司法と警察の世界であって、全然別の次元の話であって、結局私は、米軍が、アジアで戦争をやると、そのときに日本が動員していくというための戦時体制づくりということが、狙い目だと思うんですね。そこらへんを糾明していく論戦を、ぜひやっていきたいと思っています。

 小林 やはり、これは、憲法問題とも絡んでくるんでしょうけれども、特に国民としては、基本的人権との関わりが大きいんじゃないでしょうか。

 志位 それは、非常に大きいですね。結局、戦時体制のために、たとえば、土地を強制的に収用する。あるいは、お医者さんとか看護婦さんの徴用をやる。これを、いまの法律の仕組みでは、罰則付きで強制できないような仕組みになっているわけだけれども、罰則付きで強制してまで、国民の基本的人権を奪ってしまうというところに、非常に大きな問題があります。

 しかも、日本が攻められたときというよりも、米軍がやる戦争に、日本が一緒に参戦するときのことが、大体の頭にあって、アメリカの要求も、そういうときに日本がもっとしっかりせよというのが頭にあって、出てきている話だということを、ぜひしっかり見ぬいた議論をしていきたいと思っています。

 小林 ぜひ、有事法制の議論に沿って、またお話を聞きたいと思います。きょうはどうもありがとうございました。