2002年2月26日(火)「しんぶん赤旗」

府民と日本共産党との共同ひろげ

暮らし守る民主府政をとりもどそう

京都府民大集会での 志位委員長の訴え

(大要)

・「小泉政治の正体見えた」――「北方四島」疑惑と小泉首相の責任
・暮らし痛めつける「小泉改革」にどういう態度をとるのか
・「暮らしを守る」――この原点に照らせば、争点はくっきり見えてくる
・暮らしと民主政治への攻撃をはねかえそう


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12000人を超す府民が集まった「府民大集会」で訴える志位和夫委員長=22日、京都府立体育館

 二十二日、京都府立体育館で開かれた「府民大集会」(主催「府民本位の新しい民主府政をつくる会」)での日本共産党の志位和夫委員長の訴え(大要)は次のとおりです。

 みなさんこんばんは。日本共産党の志位和夫でございます(拍手)。この広い体育館をいっぱいにしたみなさんの熱気を、私もひしひしと感じます。新しい民主府政をつくろうという大きなエネルギーを感じます。(拍手)

 みなさん。今度の選挙の対決構図はたいへんわかりやすい。荒巻自民党府政の「継承」を公言する官僚候補を選ぶのか、「民主府政の会」の森川明さんか――この一騎打ちの対決で勝ち抜こうではありませんか。(大きな拍手)



「小泉政治の正体見えた」――「北方四島」疑惑と小泉首相の責任

 みなさん。今度の選挙は、どういう情勢のもとでたたかわれるでしょうか。私は、国の政治では、「小泉政権の正体見えた」、こういう大激動がいま目の前で展開されていると思います。

 きっかけは、国際会議からのNGO(非政府組織)排除と田中外務大臣の更迭問題でした。鈴木宗男議員の圧力でNGOが排除されたという経過はすでに明瞭(めいりょう)です。ところが、政府が出した見解では、「鈴木議員の関与はなかった」。鈴木議員をかばう見解を小泉首相は出したのです。

 ところが、これが、根底からひっくり返ってしまいました。私たちの党の佐々木議員、木島議員の連続追及ですっかりひっくり返りました。「北方四島」への人道支援のお金を、鈴木議員が食い物にしていた事実が明らかになりました。あの国後島(くなしりとう)の「ムネオハウス」は、すっかり有名になりました。ワイドショーもスポーツ紙も取りあげて、このスポーツ紙は、「宗男氏、北方利用土」(笑い)、「ムネオ号走りムネオハウス建つ」と、でかでかと書いています。

 この「ムネオハウス」にからんで、税金を食い物にするどういうひどいことがやられてきたのかが、一昨日、昨日(二十、二十一日)の予算委員会の質疑での佐々木、木島議員による、外務省の内部文書をもとにした追及で、すっかり明らかになりました。

人道支援私物化の三つの重大事実

 三つの重大事実が、この文書でははっきりうかびあがってきました。

 第一は、「ムネオハウス」の入札に、鈴木議員が関与し、地元根室の自分の後援企業に受注させ、その企業から献金をもらっていたという事実です。

 外務省文書では、外務省と鈴木議員のやりとりを記録した文書がある。「秘 無期限」と判がおしてある。だいたい、こうしたメモを「秘 無期限」とすること自体、問題ですが、内容はきわめて重大です。

 まず外務省が、「ムネオハウス」の「入札の対象にする企業を、どうするのか頭を痛めております」と言うんです。それにたいして、鈴木議員が「いっそのこと北海道内ではなく、根室管内に限定してはどうか」と言う。すると外務省が困って、「道東ということではいけませんでしょうか」。鈴木議員は、「それはやはり根室管内だろう」。こういうやりとりが出てくるわけです。

 「根室管内、根室管内」というでしょう。ところが、根室管内には、受注資格のある「Bランク以上」の企業は、一つしかない。鈴木議員に多額の政治献金をおこなっている渡辺建設工業の一つしかない。

 第二に、そうなりますと、はっきりと「根室管内」と限定してしまうと、あまりにもバレバレになってしまいますでしょう。そこで、外務省は、偽装工作をはじめるんです。つまり一社しか、実は受注できないのに、一般競争の形だけはとるという偽装工作をやるのです。

 この文書を読みますと、「なぜ根室管内に限定するのかと詰問された場合、事務局としてはもちこたえられない」と書いてある。そこで、少し表現をぼかして一般競争入札の公示を出そうということになった。そしてその公示では、入札参加資格のある企業について、こういうふうな文章になっているんです。「北海道内に本社を有する者であって、根室管内で施工実績を十分有する者」(笑い)。つまり北海道内のすべての企業を対象にしているように、いちおう書いておきながら、「根室で施工実績」とぼかすわけですね、まさに偽装工作であります。

 その結果は、根室の渡辺建設工業に落札したわけです。この経過をごまかすために、鈴木議員と外務省がまさに共犯関係で、偽装工作をやった。許すことができないではありませんか。(大きな拍手、「そうだ」の声)

 第三に、偽装工作の入札の公示をやる前に、もう落札業者がちゃんと決まっていた。入札の公示がだされた十日前に、入札予定価格を知りうる立場にあるコンサルタント会社と受注企業である渡辺建設の社長などが、鈴木事務所で鈴木秘書の立ち会いのもとで、会っていたことも明らかになりました。一般入札の公示がでる十日前に、だれが落札するかは決まっていた。予定価格も漏れていたということになります。これが、この間、明らかになったことです。

 まさに鈴木議員と外務省が、共犯関係で人道援助を私物化していた。これが事件の真相です。こういう資料が、「秘 無期限」なんてとんでもないことです。すべて出してもらおうではありませんか(拍手)。鈴木宗男さんには証人として国会に出てきてもらおうではありませんか(拍手)。徹底的にうみを出しつくすまで、真相究明を力をあわせてやりとげようではありませんか。(大きな拍手)

「共犯者」まかせの調査では真実はわからない

 そして、小泉首相の責任が重大です。佐々木議員が先週(十三日)質問したさいに、小泉首相は、「よく調べていると感心しました」(笑い)と、ひとごとみたいなことをいいました。しかし、もはやひとごとではすまなくなっています。

 第一に、「鈴木議員の関与がなかった」というのが政府の公式見解でしょう。しかし、「関与だらけ」だということになるではありませんか。ODA(政府開発援助)にも関与していた、海外支援にも関与していた、「北方四島」にも関与していた、アフリカのほうにも関与していた、人事にも関与していた、「関与だらけ」ではないですか。外務省自身が「ムネオハウス」ではないですか。(笑い、拍手)

 みなさん、これだけ事態が明らかになっていて、NGOの問題だけ関与がなかったなどということが通用するわけがないと、私は思います。(拍手)

 そしてもう一つ、首相の対応で許せないことがある。こういう事実が明らかになってさすがに政府はきょう、「外務省にこういう文書がある」と、文書の存在は認めました。認めざるをえなくなりました。そして「調査をする」といいました。

 しかし、首相は外務省に調査を指示しているんです。しかし、鈴木議員と外務省は共犯ですよ(笑い)。泥棒が二人いて、一人の泥棒にもう一人を捕まえろというようなもので、こんなことで、まともな真相究明などできない。「調査する」というのなら首相自らやってこそ、ほんとうの責任ある調査になる。それができないのなら首相も同罪だといわざるをえないではないでしょうか。(拍手)

 みなさん、この問題、徹底した真相解明によって、腐った利権政治を日本の政治から一掃するまでがんばりぬこうではありませんか。(大きな拍手)

暮らし痛めつける「小泉改革」にどういう態度をとるのか

 小泉政権は、そういう腐った利権政治をかばいながら、「改革の手綱はゆるめない」といって、二つのことにいま熱中しています。どちらも大不況でへとへとになった府民の暮らしを痛めつけることです。

京都での「不良債権早期処理」の大被害

 一つは、「不良債権の早期最終処理を促進する」というのです。

 京都でもすでにこの政策で大被害が起こっています。中小企業がつぶされ、伝統産業がつぶされ、地場産業がつぶされている。昨年の京都の倒産数は五百二十四件と最悪の水準とうかがいました。しかし、これは序の口で、政府の方針通りにやったら五千件を上回る中小零細企業が京都でつぶされる、昨年の十倍の規模での倒産が起きるといわれています。

 しかも手口がひどい。政府がやっているのは、大手銀行に「貸しはがし」をやらせるだけではありません。地域経済を必死になって支えている信用金庫や信用組合に、金融庁が、土足で乗り込んできて、大銀行に使っているのと同じ「金融マニュアル」で検査をやって、無理やりつぶしていくのです。去年から今年にかけて全国で五十三もつぶされました。

 つぶし方がひどいのです。この「金融マニュアル」でいきますと、ちゃんとお金を返している中小企業でも、赤字企業は正常債権ではなくて不良の方に入れられる。冗談ではないですよ。こんな不景気の中で黒字でゆうゆうとやっている中小企業はごくわずかです。中小企業のみなさんは、苦しいなかで黒字、赤字をくりかえしながら、長年にわたって地域経済を支えているのです。信金・信組というのは、地域経済に密着して、そういう方々に、たとえ赤字であっても、社長さんの人物を見て、「この社長さんだったら、ちゃんと返済について責任を持ってやってくれるな」と実績を見て、少々赤字でもなんとか融資をつづけて地域経済を守ってきたのが、ほとんどの信金・信組です。それを無理やりつぶす。

 京都では南部の二つの信金がつぶされました。私は去年、六月に南部地域をうかがったさいに経済懇談会をやりまして、たくさんの訴えを聞きました。業者のみなさんからつぎつぎと、「ちゃんとうちでは借金を返済している。それなのに赤字というだけで不良の方に入れられようとしている。こんなひどい政治がまかり通っていいのだろうか」。たくさんの訴えの声がよせられました。これは、ほんとうにまちがったやり方です。

 つぶされるまでにはいたっていない信金・信組も同じように締めつけられている。大手銀行に「貸しはがし」をやらせるだけではない。信金・信組にまで融資という命綱を断ち切らせるような政治、こんなことをして日本の経済はどうなるでしょうか。残るのは巨大銀行だけではありませんか。地域経済も京都経済も焼け野原にされてしまう。こんな亡国の政治はきっぱり中止させようではありませんか。(拍手)

窓口負担増で医療費抑制は邪道中の邪道

 もう一つは、医療の大改悪です。お年寄りの窓口負担一割を徹底する、サラリーマンのみなさんは自己負担を三割に引き上げる、とんでもない大改悪がいま進められています。

 二月十四日に埼玉で一万五千人が集まって抗議の大集会がおこなわれました。私も参加したんですが、京都からは、京都府保険医協会の理事さんで西陣の真ん中で内科をやっておられる、垣田さち子さんというお医者さんが、こういう訴えをされました。

 「西陣が不況のさなかにあるなかで、いまでさえ、二週間分出したお薬を、一日三回のところを二回にしたり、一回にしたりして飲んでおられる。『これ以上医療費が上がったら、医者にかかれない』という切実な思いがひしひし伝わってきます」

 京都の保険医協会では返信はがき付きのチラシをだして、たくさんの声が返ってきたそうでありますが、綾部市に住む七十五歳の男性からは、「二十歳のころは『青春は死ぬことにあり、国の為』と戦場にかり出された。いまは、『老人は早く死んでよ、国の為』という世の中だ」という痛切な告発もよせられた。

 ヨーロッパの主要な国ぐにでは、日本のように重い患者の窓口負担を強いて、医療の抑制をやっている国はありません。私どもの「しんぶん赤旗」特派員が、外国に行って驚くのは、ドイツ、イギリスでは、医療機関に、会計窓口がないんですよ。お金を払うところがないんです。わずかな自己負担はあるんですけど、あとで請求がくる。

 だいたいみなさん、医療保険というのは、病気になって、収入が減って、困るときのために、高い保険料を払っているわけでしょう。いざ病気の時は、重い窓口負担でお医者にかかれないというのでは、保険とはいえないではないですか。(「そうだ」の声、拍手)

 私は、医療保険の窓口負担を引き上げて、医療費を抑えるなど邪道中の邪道、「絶対に反対」という声をあげていこうではないかということを、みなさんに訴えたいのであります。(拍手)

自治体は国の出先機関ではない

 みなさん、こういうときだからこそ、ほんとうの知事の出番です。悪い政治を国が押しつけてきたら、府民の代表として、「間違いは間違い」と国にキッパリいってこそ、知事といえると私は思います。さきほど森川さんが「痛みの押しつけに立ち向かって、国に堂々とものをいいます」とのべたのは、頼もしい限りだと思ってうかがいました。(拍手)

 自民党府政は、国のやることはなんでも賛成です。不良債権問題でも、「国全体で構造改革に取り組んでいる」として、当たり前だと賛成です。医療でも、大改悪に反対するどころか、国保料が高すぎて払えない未納者の方から保険証を取り上げる、それを市町村にどんどんやれと締め上げる、そういう連絡文書を出している。

 自治体は、国の出先機関ではありません。国いいなりの悪代官のような府政を「継承」する人には、絶対に負けられないではありませんか。(大きな拍手)

「暮らしを守る」――この原点に照らせば、争点はくっきり見えてくる

 私は、今度の知事選挙というのは、そもそも「地方自治体というのは何のためにあるのか」という、原点が問われる選挙だと思っています。

「暮らし守るのが地方自治の根本」――蜷川知事の言葉がいま新鮮に心うつ

 自治体が自治体として輝いていたすばらしい伝統を、京都のみなさんはもっておられます。一九五〇年から一九七八年にかけて続いた蜷川(にながわ)民主府政。全国から「地方自治の灯台」といわれた、宝の伝統をもっておられます。蜷川さんは、知事を去る直前の一九七七年の十一月の講演のなかで、「暮らしを守るのが、地方自治の根本」として、次のようにのべておられます。

 「私が知事になって呼びかけたのは、憲法九二条における地方自治の本旨は、住民自身が住民の暮らしを自分たちで守ることなんだと。そのために作っている組織が自治体であり、その自治体を運営することが、地方自治なんだと。だから暮らしを守るということが根本であるということです。住民の日々の営みをどうやって守り育てていくかっていうことが、地方自治の問題なんです」

 私は、この言葉を、いまあらゆる分野で府民の暮らしを痛めつける荒波が、京都のみなさんを襲っているときに、「自治体のあるべき根本」を示す言葉として、新鮮に心に響く言葉だと思って読みました。この根本に照らしてみれば、「自民党府政継承」の人か、森川明さんか、どちらが知事にふさわしいかはっきりしてまいります。(拍手)

 私は、三つの分野でこのことを申し上げたい。

福祉――民主府政の成果崩し、新しい仕事やらない自民府政

 第一は福祉の問題です。私は、この問題にかんして、自民党府政がやってきたことには、二つの特徴があると思います。

 一つは、「蜷川民主府政の築いた優れた成果はほり崩すこと」。二つ目は「府独自の新しい仕事はやらないこと」。この二つの特徴です。

 「成果のほり崩し」という点では、六十五歳以上のお年寄りの医療費の助成制度をみてください。この制度は一九七三年に京都で全国で初めてつくったものです。これが東京にも、大阪にもひろがりました。ところが、いま調べてみますと、京都でこの制度で助成を受けているお年寄りの比率は、どんどんどんどん下がって、21・3%まで減っています。つまり自民党府政になって、「所得制限をゆるめて、もっとたくさんの人が受けられるようにしてほしい」と、府民のみなさんがくりかえし要求したのに、拒否をつづけてきた結果、五人に一人しか、制度が使えなくなってしまった。

 私は、国が医療改悪の悪い政治を押しつけているいまこそ、民主府政がうち立てたこの制度の実を取り戻す前進を森川さんにやっていただきたい、そのことが切実に求められているときであることを訴えたいのであります。(長い拍手)

 「府独自の新しい仕事をやらない」という点では、介護保険への冷たい姿勢が、きわだっていると思います。保険が始まったけれど、利用料が重すぎて、訪問看護や訪問入浴を受けられない、さらに重すぎる保険料がかぶさってたいへんです。

 ところが、初年度をみまして、京都府の介護保険では、十二億円も予算の使い残しがある。予算が使いきれなかった。私は、この数字から府民のみなさんの悲鳴が聞こえてきます。つまり利用料・保険料が重すぎて、受けたいサービスが受けられない、この実態がうかびあがってくるではありませんか。保険というのは保険料を払っているすべての人にサービスが行き届いて当たり前です。ところが、高い保険料をとったあげく、いざ使おうとなったら利用料が重すぎて使えない、そして十二億円も使い残しというのでは、サギ同然のやりかたではありませんか。(拍手)

 利用料、保険料の減免を、森川さんがおっしゃっていましたが、当然の主張です。現に府下でも六市十四町が減免にふみだしている。東京では、都として利用料の減免にふみだしている。ところが京都の自民党府政はがんとして減免をやらない。やったのは、これまで一万三千人に支給されていた、寝たきりのお年寄りのお世話などでがんばっておられる家族に出されていた介護激励金をなくしてしまった。年間七万円の命綱を断ち切る。みなさん、こんな冷たい府政の「継承」は、ご免こうむりたいではありませんか。(長い拍手)

 介護保険でも、森川さんで、府独自に、保険をみんなが使いやすいようにする充実の仕事をやってもらおうではありませんか。(拍手)

中小企業――森川さんで不況から中小業者守る府政へ転換を

 第二は、中小企業の問題です。不景気のときに自治体がどういう心構えでのぞんだらいいのか。この点でも蜷川府政は、すばらしい伝統を残しています。

 一九七〇年代初めに、不景気が日本列島をおそった時に、蜷川さんは「京都府だけで景気を良くすることはできないが、悪い景気から京都の中小業者を守る仕事は、府の仕事としてできる」。そういう考えで“曳(ひ)き舟”方式と言われる政策を強力にすすめました。

 丹後や西陣の織物など、伝統産業や地場産業を守るために、学識経験者、業界の代表、行政側と、三者が協力して知恵を出し合い、調査・研究して、振興計画をつくり、“親舟が子舟を曳いて不況の荒波を渡っていけるように”と、本格的な振興策を実行しました。

 不況の時に、自治体は何をすべきか。「府だけで景気を良くすることはできない。しかし不景気から府民を守ることはできる」、そういう立場での本腰を入れた対策こそ、いま求められているのではないでしょうか。(拍手)

 京都の民主府政がつくって全国にひろがったすばらしい制度に、無担保無保証人の融資制度、いわゆるマル小融資があります。景気が悪い時に銀行も貸してくれない、だれも助けてくれない、それでは府が助けようではないか、そういうことではじまった制度です。一九六六年につくられた制度で、この時は限度額が百万円で出発したのですが、七〇年代前半の不景気の時に、蜷川さんは限度額を三百万円まで引き上げて、三倍にした。一九七五年には、このマル小融資が約四千件、六十三億円も使われています。

 ところが、自民党府政になってから基本の限度額を据え置いて、上げようとしない。ところが物価は上がるでしょう。自民党府政の間に物価は約二倍です。そのなかで限度額据え置きとは、つまり実質では限度額が半分になってしまったということです。

 そのために、せっかくつくった制度がいまでは形がい化しています。調べてみましたら最近の数字で、年間たった約五百件しか使われていない。蜷川さんの時代の七分の一です。額では十三億円しか使われていない。五分の一です。

 みなさん、「不良債権の処理」という名前で中小企業つぶしが、荒れ狂っているいまこそ、このマル小融資、無担保無保証人の融資制度を充実させる時ではないでしょうか(拍手)。納税証明のいらないマル小融資の限度額を引き上げて、使いやすい制度にする、この仕事も森川さんにぜひやっていただこうではございませんか。(拍手)

 一九七一年、大不況がはじまりつつある時に、蜷川さんは、こういう言葉を残しています。

 「われわれの仲間の一人も自殺者を出してはならない。どうしても死にたくなったら府に相談に来てください。そうすれば死ぬだけは思いとどまれるくらいの世話は出来ます」

 みなさん、これこそ私は、不況にたいしてどういう姿勢で自治体が立ち向かわなければならないかを示した言葉だと思います。この蜷川さんの精神は、森川さんに私は脈打っていると思います。どうかこの復活をみんなの力でかちとろうではありませんか。(拍手)

京都の町並み――歴史都市への高速道路引き入れを中止させよう

 第三に、京都の町並み、景観を守るという問題です。自民党が自治体に押しつけている有害さはどこでも同じですけれども、京都でとりわけがまんのならないのは、これが環境、景観破壊とつながることです。新幹線の京都駅を降りると、巨大な駅ビルがあって、でっかい墓石みたいな(笑い)、がっかりする風景ですね。あんなものをつくったおかげで、景観をこわし、町並みを支えてきた地元商店街をこわしてきました。

 いまたくらまれている問題がいろいろとありますが、なかでも高速道路を京都市内に引き入れる計画は大問題だと思います。五つの路線が計画されて、うち二つは着工されつつあるという重大な段階です。ですから今度の選挙の審判は、この点でも大事な意味をもつと思います。

 これが強行された場合の、いちばんの心配は、やはり京都の景観がこわされ、環境が破壊されるということです。京都市内に車があふれ、高速道と一般道路をつなぐランプ付近や接続道路の渋滞がひどくなる。要するに、京都が東京みたいになってしまうということです。

 この地下高速道路の出入り口のランプは、市内のど真ん中――五条通と堀川通、西大路通の交差するところの二カ所につくられる。市の中心部が車だらけになる。高速道路を市内に引き入れたら渋滞が緩和されるなどということは絶対にありません。逆に車が増えるというのは、東京をみれば明らかです。

 だから、ヨーロッパでも、歴史都市には高速道路を入れちゃならない。これが当たり前の姿になっている。ヨーロッパの歴史都市では、都心への高速道路の引き入れをやめて、都心では公共の交通機関を整備して、歴史的町並みを残すということを、どこでもやってます。ですからドイツの環境保護団体から、「京都の高速道路は中止してくれ」「歴史遺産の保管都市である京都の責任だ」という手紙が、府知事や市長にきたではありませんか。

 私は、いま歴史都市を守るのが世界の当たり前の流れになっているときに、日本が世界に誇るこの京都のど真ん中に、二つも自動車の出入り口をつくる、高速道路の計画を進めるのは、歴史に逆行する愚行そのものだと考えるものであります(拍手)。ばく大な税金の負担を、府も市もせまられるという点でも、有害以外の何ものでもありません。みなさん、いまからでも間にあいます。森川さんで、きっぱり凍結・中止してもらおうではありませんか。(拍手)

暮らしと民主政治への攻撃をはねかえそう

 みなさん。京都の選挙になりますと、相手は、蜷川府政攻撃、共産党攻撃を必ずやります。府知事選挙でも、市長選挙でも必ずやりますね。

 蜷川府政が終わってから、今年でもう二十四年でしょう。二十四年もたって、いまだに攻撃するとは、逆にこの府政の業績がいかに大きく、いかにいまに生きているかを、自分たちで証明しているようなものだと、私は思います。(拍手)

蜷川予算案の賛成討論は野中広務氏

 だいたい、いろいろな悪口を相手はいいますけど、蜷川さんが知事として最後にくんだ一九七八年度予算案も、すべての党派が自民党も含めて賛成したんです。

 私は、ここに証拠物件を持ってきました。七八年の京都府議会定例会会議録です。この時に、予算案の賛成討論を、自民党を代表してやったのはあの野中広務さんですよ(笑い)。なんといってるか。「この予算は福祉の後退をさせないで、さらに国・地方一体となった景気浮揚策を積極的におこなうための予算がくまれております」。蜷川さんについても、「議場が蜷川教授の教室ではないかと錯覚に陥るような知事の答弁に聞きほれたこともございます」(笑い)とか、「偉大なる政治家の足跡を思い」とか、「まことに清潔な方」とか、「立場は違う」といいながら絶賛しています。どこを読んだって、蜷川府政が「暗黒政治」だとか、「一党独裁」とか書いていません。

 みなさん、そういう悪口をいうんだったら、この時にいうべきではありませんか。いまになっていったって遅いのです。

 私は、はっきりいいたい。「一党独裁」とか、「暗黒政治」などというのは、後からつくった作り話です。自民党でさえ予算に賛成せざるをえなかったような、「府民が主人公」だった民主府政を攻撃するということは、自分がどういう立場に立っているかを逆に示すものだと私は考えるものです。(拍手と声援)

民主府政の伝統にたち21世紀に生かす日本共産党とともに

 そして、京都の場合、こういう蜷川民主府政への攻撃が、私たち共産党への攻撃と一体におこなわれているのが特徴です。今度の選挙も「共産党に渡してはならない」という反共の一点で相手は野合しました。私はそこには、理由があると思います。

 蜷川民主府政の誇るべき伝統を、二十一世紀に引き継ごうと堂々とがんばっているのが、政党では日本共産党しかないからであります。(拍手)

 ほかの党はすべて自民党陣営に身を投じた。国政では自民党と対決しているといっている野党も、いっしょになって「オール与党」です。みなさん、そのなかで堂々と蜷川さんの築いた民主府政を二十一世紀に引き継ぎ、二十一世紀に新しいかたちで復活させようと堂々と訴えてきたのは、政党では日本共産党です。

 ですから、京都府民のみなさんもその姿勢を評価してくださって、一九七五年には京都の日本共産党の地方議員の数は百四十九人だった。ですけれども、自民党府政になってからも数が増えて、いま百七十五人と第一党であります。

 みなさん、ですから蜷川府政攻撃、反共攻撃は、必ず今度の選挙でも、激しいたたかいになると思うのですけれども、この攻撃は民主政治にたいする攻撃、「暮らしを守る」ということにたいする攻撃ですから、暮らしそのものへの攻撃だとどうかご理解いただいて、みんなの力ではねのけていただきたい。心からお願いしたいと思います。(大きな拍手と声援)

 「日本の夜明けは京都から」。これがみなさんのすばらしい合言葉です。「府民の暮らしを守る民主府政をとりもどそう」――この旗を高々と掲げて、多くの府民のみなさんと、私ども日本共産党が共同して、森川明さんを知事に押し上げるために、全力で奮闘する決意を最後に申し上げ、ともにがんばろうということをみなさんによびかけて、私の訴えとさせていただきます。(長い拍手)