2002年4月6日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫幹部会委員長は五日、都内の迎賓館で李鵬・中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会委員長(中国共産党中央政治局常務委員)と会談し、日中関係や国際問題などについて約三十分にわたり意見交換をおこないました。
李鵬全人代常務委員長(右)と懇談する志位和夫委員長(左)=5日、迎賓館 |
志位氏は迎えに立つ李氏の手を握り歓迎を表明。日中国交正常化三十周年の今年は、日中両国共産党にとって関係回復四周年にあたる年だとのべ、両国関係と両党関係のいっそうの発展を心から希望すると発言しました。そのうえで志位氏は、一九九八年に訪中した不破議長が江沢民中国共産党総書記(国家主席)との会談で提唱した「日中関係の五原則」に言及。とくに「日本は過去の侵略戦争についてきびしく反省する」「日本は国際関係のなかで『一つの中国』の立場を堅持する」という二つの原則は、日本側がとるべき態度として重要だと強調しました。
さらに志位氏は、台湾問題にふれ、中国が近年、「大陸と台湾は、ともに一つの中国に属する」という表明をおこなっていることは、台湾住民の気持ちに配慮したものとして注目しているとのべ、中国が平和的な対話をつうじて同問題の解決を図ることが、日本を含む周辺地域の人々の強い願いだとのべました。
これにたいし李鵬氏は、台湾問題については「一国二制度」の原則にもとづいて平和的に解決したいと発言。また、大陸と台湾の間で経済関係が発展していることは、この目標実現に大きく寄与し、そのための条件を整えている、とのべました。
李鵬氏は、ソ連解体にともない、国際的に社会主義の運動が低調になり、マルクス主義の有効性にたいする疑問が高まった時期もあったが、一方で資本主義は、科学技術の進歩や生産力の発展で生きのびながらも、資本主義固有の主要な矛盾はまだ解決されていないとのべ、志位氏に社会主義についての日本共産党の見解を求めました。
志位氏は、各国の国民と党が自国の条件にそくして自主的な社会発展の道を探求することが重要だとのべつつ、大きな視野で見るなら、二十一世紀は、人類が資本主義を乗りこえる新しい体制――社会主義への条件が成熟する世紀になるだろうと言明。今日の資本主義がかかえている恐慌と失業、貧富の格差、南北問題、環境問題など深刻な矛盾を根本的に克服する道はそこにしかない、と指摘しました。
李鵬氏は、マルクス主義理論などを中国の条件に自主的に適用し、「中国の特色をもつ社会主義」建設をすすめているとのべつつ、「社会主義市場経済」について紹介。同時に、貧富の格差やいまだに低い生産力などをあげ、中国経済がいまだ日本とは比較にならない段階にあり、目標達成には相当長い期間が必要である、と強調しました。
志位氏は、日本の社会主義的将来の展望として計画経済と市場経済の結合を重視する日本共産党の立場にふれつつ、その観点から中国の経済発展の状況に注目しており、この分野で中国が成功を収めることを願っているとのべました。
話題は世界情勢に移り、志位氏は、「二十一世紀においては国連憲章にもとづく平和秩序をうちたてることが何よりも重要」だと指摘し、「わが党が重大な懸念と批判をもつ三つの問題」を提起しました。
第一に、ブッシュ政権の「悪の枢軸」論にもとづく一方的な軍事力行使・軍事制裁の方針は「世界に無法を持ち込むもの」であり、「国際社会が共同でこれを許さないことが必要だ」と主張しました。
第二に志位氏は、イスラエル政権がパレスチナ自治政府を「テロ支援団体」と決めつけ、アラファト議長を「敵」として無法な監禁状態においていることは、これまでの中東和平への努力を台無しにする許しがたい暴挙だと批判。国連安全保障理事会決議一四〇二にそって停戦とイスラエル軍の即時撤退を求めることが緊急に必要だとして、イスラエルに決議履行を迫る国際社会の共同行動の重要性を強調しました。
第三の問題として志位氏は、ブッシュ政権が議会に提出した「核態勢の見直し」の報告に中国を含む七カ国への核兵器使用計画策定を軍部に指示する内容が含まれていると報じられていることへの批判を表明。これは、非核兵器保有国を含む諸国への先制的な核使用の方針であり、平和へのきわめて重大な逆流であり、唯一の被爆国である日本の共産党として許すことはできないとのべました。
そのうえで、「核兵器廃絶という人類の悲願の実現のために、中国が適切な時機をとらえ、大きなイニシアチブをとることを心から希望している」と表明しました。
志位氏のこれらの提起にたいし、李鵬氏は「おおまかな見方はほぼ一致している」と発言。世界の情勢は、平和と発展が主流だが、状況はよくなったり悪くなったりするとのべつつ、「米国の一国主義、覇権主義、強権政治が世界にとって最大の脅威」だと強調しました。また、パレスチナ問題については、米国の調停活動に触れつつも、イスラエルのシャロン政権への米国の支持がなければ、今日までこのような事態の進展はなかっただろう、と指摘しました。
志位氏は、米国の覇権主義の逆流とのたたかいの重要性を強調するとともに、二十一世紀を展望すれば、米国の覇権主義に未来はなく、けっして世界の人々の支持を得られるものでもなく、孤立の道は避けられないと指摘。歴史にはジグザグもあるが、二十一世紀を希望のもてる世紀にするために努力したいとのべました。
会談には、日本共産党から、筆坂秀世書記局長代行と穀田恵二、緒方靖夫、山口富男、西口光の各常任幹部会委員が、また中国側から王光英・全人代常務委員会副委員長、武大偉・駐日大使、王毅副外相らが同席しました。