2002年4月17日(水)「しんぶん赤旗」

志位委員長の記者会見


 日本共産党の志位和夫委員長が十六日、国会内で行った記者会見で、機密費問題にかんする発言(大要)と記者との一問一答は次の通りです。


 機密費の問題について、いくつかの点をのべたいと思います。

 十二日に、私が会見で公表した、機密費の詳細な使途を明らかにした内部文書は、たいへん大きな反響を呼び起こしています。

機密費にかんする文書の真実性は、いよいよ動かしがたいものに

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記者会見する志位委員長(右)と筆坂書記局長代行=16日、国会内

 私たちは、公表の段階で、すでに多角的な検証をおこない、その真実性は十分な根拠をもって裏付けられたとのべましたが、その後の全体の状況を見ますと、幾人もの方が、自分はたしかにもらっていたと証言されています。もちろん機密費とはわからずにもらっていたという方が多いわけですが、それは、そういう場合が多いだろうと私たちは予想していたことでした。受け取った側の証言がつぎつぎに出てきているというのが、たいへんに重要な注目される動きです。

 そういう反応とは別ですが、私がとりわけ注目した反応は、加藤紘一事務所のコメントです。「政府は官房機密費の具体的な使途について、一貫して公表していないと思います。したがって今回の指摘につきましてもコメントは差し控えさせていただきます」というコメントを出したのです。

 これはたいへん重要な当事者の発言です。すなわち、ここにいう「今回の指摘」というのは私たちがおこなった指摘です。これについてコメントを差し控える理由として、機密費について公表してはならないことになっているからだと言うことになりますと、加藤事務所、加藤氏ご本人の口から、あの文書は機密費に関する文書だということが、このコメントでは事実上出ているのです。私はこれはたいへん決定的なコメントだと思って読みました。

 このように、私たちが先日発表した機密費に関する文書の真実性は、いよいよ動かしがたいものになったと考えます。

無責任な政府の対応――「出所不明」ということで逃げることはできない

 これにたいする、政府の対応ですが、率直にいってたいへん責任のない対応をやっていると思います。

 首相の対応は「記憶にない」ということですまそうというものです。もちろん首相に、五十万円の「せん別」が渡ったということ自体の究明も必要なのだけれども、私が首相におこなった問題提起は、この五十万円の問題だけではなくて、ああいう党略的な私的な機密費の流用が現実にどのようにやられていたのか、きちんと調査をして、全容を明らかにすべきだということなのです。これはごまかしで避けて通れない問題です。

 福田官房長官の会見の様子を見ますと「出所不明なので、調査する考えはない」という一点張りですが、これもなりたたないことです。私たちは十分な根拠をしめしてあの文書を示しています。出所不明だから調べないというんですけれども、出所が明らかにできない性質だということは、私たちはかねがねいっています。その文書がどこから出たかにかかわりなく、文書それ自体によって、その客観的な真実性が十分証明されたと私たちは提起しているわけですから、「出所不明」ということによって、逃げることはできないと、いっておきたい。

首相には真実を調査し、公開する重大な責任がある

 この間、疑惑がかけられた場合には、自らの責任で国民に説明すべきだということを、首相も官房長官も繰り返し、鈴木さんのときも、加藤さんのときも、辻元さんのときも言いつづけてきたわけです。

 今度は首相官邸に深刻な疑惑がかけられているわけです。ああいう血税の党略的な私的な流用がやられていたという疑惑がかけられているわけです。

 これは十年前ということでは、すまされない。たとえば、その後の官房長官でも党略的な流用をおこなっていたという発言をしている方が、村山内閣の官房長官などいらっしゃいます。ですから連綿として続いている可能性があるわけです。その全容を明らかにしなかったら、この問題についての疑惑は晴れません。

 こうして、首相官邸そのものが疑惑の対象にされているのですから、疑惑がかかったら自ら責任をもって究明すべきという、これまでの発言からしても、自らきちんと真実を調査し、公開するべき重大な責任があるということを、重ねて言いたいと思います。

機密費文書の入手と、その扱いの経過について

 機密費文書の入手の経過について、いくつかの報道もあったので、この機会にのべておきたいと思います。

 第一に、「しんぶん赤旗」は、一九九四年九月までにこの文書を入手していたわけですが、当時は機密費であるという認識がなく、自民党の首脳部が自分の政治資金を他党にばらまいているという認識で、その主旨の報道を裏付ける文書として使ったというのが経過でした。機密費という国民の税金がこんな無法なやり方で使われているとは、夢にも思っていなかったというのが、九四年当時の報道の実情です。

 ですから、報道をみていただければわかるように、自民党の実力者が公明党、民社党、社会党の議員に金品をばらまいているということが書かれておりますが、その原資がどこであるかについては、言及されていません。

 このときの政治状況についていうと、日本共産党を除く「オール与党」体制が問題になり、なれ合い国会という問題が深刻だったのです。こういう時期だっただけに、どこにお金が渡ったかというところが注目点になって、それを裏付ける資料としてあの資料を使い、報道したのが当時の経過でした。

 第二に、機密費問題が国政の重大問題となるなかで、「しんぶん赤旗」編集局が最近この資料を改めて点検した。そして、機密費の資料であることを「しんぶん赤旗」編集局として確認して、三月十一日付の「しんぶん赤旗」で編集委員会の責任で報道した。機密費の資料という主旨で、この資料の部分的な報道をおこなったというのがつぎの経過でした。

 第三に、われわれはこれをみて、問題の重大性を知り、「しんぶん赤旗」編集局から資料の全体を取り寄せ、部分的な報道は中止させて、資料の真実性の検証など全体的な検討作業にとりかかりました。その検証作業を通じて、あの資料について真実性の確信をえたので、先(十二日)の発表に踏み切ったというのが、全体の経過です。

機密費文書としての全内容公表は初めて――「二番煎じ」というけちつけは通らない

 自民党の山崎拓幹事長などが、「今度の発表は二番煎(せん)じだ」と、この文書の真実性を弱め、否定するために、あれこれと発言しているようですが、この文書を機密費の文書だということをわれわれとして認識し、その根拠も示し、全内容を発表したのは今回が初めてのことです。「二番煎じ」でもなんでもない、まさに今回初めてそうした公表にいたったというのが経過です。

 その文書自体の客観的な真実性は、もはや動かないところにきていると思います。ですから、姑息(こそく)な、「二番煎じ」とかというけちつけをしないで、みずからきちんと調査し、真相を公表して、この政治悪をなくすという対応を、政府・与党がとるべきだと重ねていいたいと思います。

記者団との一問一答

 ――十二日の委員長の会見で経過をどうして説明しなかったのですか。

 志位 率直に言いまして、あの時の私たちの気持ちは、あの文書そのものの客観的な真実性を検証し、明らかにすることに集中し、その結果を明らかにすれば十分だろうという認識でおりました。しかし、いまからふりかえりますと、あの会見で経過も含めてきちんと明らかにしておけば良かったと考えています。

 ――公明党の冬柴幹事長は、九四年の「しんぶん赤旗」報道を根拠に、政治団体の出納簿じゃないかといっていますが。

 志位 九四年当時は、機密費と認識できなかったけれども、その後、機密費についての認識が深まったわけです。昨年から今年にかけて、いろいろな人が証言をしました。塩川正十郎さんとか、野坂浩賢さんなどの官房長官経験者の重大な証言もありました。それから国会での追及で新事実も明らかにされました。そういう経過のなかで認識が深まり、そういう目で見てみると、この文書は、あきらかに機密費の使途の詳細を示した文書だという認識に到達したわけです。だから、私たちの八年前の認識を根拠にして、ここ(九四年の記事)に機密費と書いていないから機密費ではないという議論は、およそ通用しない話です。

 それから、公明党がしきりに「個人の文書だろう」といいます。しかし、文書が個人的なものであるか、公的なものであるか、それが問題ではないのです。機密費の使い方として、ああいう乱脈と不正がおこなわれていたかどうかが問題なのです。この点では事実はすでに明りょうです。ですから、個人的なメモだから取るに足らないとか言う議論も通用する議論ではありません。