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TBS「草野満代の朝なま報道局」で志位委員長縦横に語る《大要》

――疑惑追及、自衛隊問題、社会主義から音楽まで(2002年5月19日放送)



  志位和夫委員長は、5月19日早朝に放送されたTBS番組「草野満代の朝なま報道局」に生出演しました。草野キャスターと日経新聞の田勢康弘論説委員とのトークで、疑惑追及や自衛隊の問題、社会主義、党名問題など縦横に語りました。以下は、その大要です。

TBS系「草野満代の朝なま報道局」に出演する志位委員長(右)=19日

 草野 さあ、そろそろ今朝のゲストの方がスタジオに到着なさったようです。

 「朝なま報道局」。今朝のお客様は共産党委員長の志位和夫さんです。おはようございます。ようこそお入りください。

  志位 おはようございます。

  草野 どうぞお座りください。ようこそお越しくださいました。ありがとうございます。  日曜日というのは、普段お休みできるんですか。

  志位 休みは少ないですね。地方に行くことも多いですし、いろいろと仕事が溜まっているものを片付けなければならないことが多いです。

 田勢 いつもはだいたい何時ごろおやすみになって、何時ごろ起きておられますか。

 志位 寝るのがだいたい12時で、起きるのが6時とか7時という感じです。

 草野 きょうは、ちょっと早くに起きていただきました。

 志位 きょうは早いですね(笑い)。

 草野 ありがとうございます。  それでは、これから志位さんにお話を伺っていくんですが、まずは、いっしょに今朝の新聞をみていきたいと思います。まず、読売新聞です。

  ――中国・瀋陽の亡命者連行事件は、18日も北朝鮮住民5人の第三国出国をめぐって日中間の水面下の交渉が続きましたが、具体的な進展は見られませんでした。今回の事件では日本政府のあいまいな対応が目立ちますが、その背景には、在外公館での亡命希望者の対応方針が定まっていないということが、深く関係しているようです。

 「対応が定まっていない」というのは、やっぱり問題ですよね。

 田勢 そうですね。それでやはり、意識的に隠しているのかどうかわかりませんけれども、次から次へと新しい事実が出てきて、中国側の言い分と、日本側の言い分が違っているんですけども、なにか中国側の方が具体的で説得力があるような感じになってきていますよね。

 草野 この状態で「信じろ」と言われても、なかなかね、難しいですよね。

 田勢 そうなんですよ。ですから国際的にも日本はたいへん恥をかいているような状況ではないかと思いますが、志位さんは、どういうようにこの瀋陽の事件をみておられますか。  


●総領事館事件――事実にもとづく道理ある外交でこそ信頼をえられる●

 志位 日本側と中国側の言い分が違うわけですが、いまおっしゃられたように、次から次へと外務省の発表がされたあと、新しい事実が出てくる。例えば、手紙をもらってつきかえした、大使が「追い出せ」といっていた、それから電話を直後にかけて「片付きました」といっていた、あるいは握手をしていた。こういう四つの問題が出てきました。どれも日本側に不利な状況、事実なんですね。これを追認する形で認めざるをえないとなると、やはり最初の(外務省の)発表は何だったのかという、信頼性に大きな疑問符がついてきているというのが、いまの状況なんですね。

 田勢 この頃起きるあらゆる問題に全部、後から新しい事実が判明するというようなことが、ずうっと続いてますよね。

 志位 ええ、それは本当に一番まずいやり方で、結局隠しているんではないかというふうに、国際社会からも国民からも思われるわけですね。  いちばんまずいという苦言を一つ呈したいのは、小泉さんの立場で、いま民主党の調査団が(現地に)行って新しい事実が出てきますとね、これは自虐的だといって抑えようとするでしょう。あれは非常にまずいと思いますね。私は、外交というのは、事実にもとづく道理のある立場をとってこそ信頼が得られるのであって、事実を明らかにすることが、何か国益に反しているみたいな言い方はまずい。きちんと事実を明らかにすることが大事だと思います。  

 草野 さて続いてなんですが、その小泉さんに関するフィナンシャル・タイムズからの注目記事です。「コイズミズ・キャンペーン」と題されたこちらの記事では、大きな顔写真とともに外国メディアによる独自のインタビューを紹介しています。これによりますと総理は、「城を攻めるならまず外堀から、続いて内堀を埋めることでやっと城そのものを攻撃できる」としたうえで、「郵便事業は外堀だ」と語ったということです。

 田勢 本当に不思議なことなんですけど、日本の新聞は内閣総理大臣の単独インタビューというのは、おそらくどなたも見たことがないと思うんです。

 草野 そうですね。言われてみると。

 田勢 どうしてないかというと、お互いに約束をして、抜け駆けをやめようじゃないかと、ですから日本の新聞もテレビも、テレビの場合には順番で「総理に聞く」とか総理大臣の番組があるんですけど、新聞の場合には1社がやると他が困るからということなんでしょうね。長い間習慣になっていまして、これは記者クラブ制の弊害と同じようなものだと思います。なぜもっと自由にやろうとしないのか。結局、外国の新聞だけ日本の総理大臣のインタビューを載せるという非常に奇妙なことになっている。なかなか客観的で、おもしろいんですよね。

 草野 最後はサンケイスポーツです。

 ――日本代表に復帰した中山雅史選手が、ワールドカップ期間に放映される契約メーカーpumaのCMに起用されることになりそうです。アニメになって登場する可能性が高いということで、まさに日本の顔としてワールドカップに沸く列島を席巻しそうだということです。

 本当にベテランの代表復活というのは、びっくりしたニュースだったんですけれども。

 田勢 びっくりすると同時に、ホッとしたんじゃないでしょうか。やはりゴンか秋田選手か、もしかして三浦知か、そのうち誰か入るだろうか、もしかしたら3人ともだめかもしれないなと思っていた人が多いだろうと思います。

 草野 志位さん、この代表メンバー決定のニュースをどんなふうにご覧になりましたか。  

 志位 ゴンが(代表に)決まったということで、コマーシャルが喜んでいるというのが昼のニュースで入ってきて、できるだけああいうスポーツですから、商業主義ということもいろいろあるでしょうけども、さわやかにいきたいですね。楽しみです。


●疑惑追及の急先鋒となってきた日本共産党にいま注目が●

 草野 それでは、この後じっくりとお話を伺っていきますが、まずはこちらのVTRをご覧いただきましょう。

 竹内 ついに側近の逮捕にまで発展した鈴木宗男議員に関する疑惑。そもそも疑惑は、国会でのこの質問から始まりました。

(佐々木憲昭議員の鈴木宗男参考人にたいする質疑、志位委員長の官房機密費資料公表会見の模様をVTRで紹介。)

  日本共産党の志位和夫委員長は、宮沢内閣当時の内閣官房機密費の使途が記載されたとする内部文書を公表。機密費が与野党議員への餞別や飲食費などに使用されたとして、政府を批判します。そしてとどまるところをしらない政治と金の問題。こうしたなか疑惑追及の急先鋒となってきた日本共産党に注目が集まっています。

  しかし、共産党という言葉の響きになじみにくさを感じている人が多いのも現実。それに対して、志位委員長はいままでのイメージを覆す柔軟路線を打ち出します。憲法違反としていっかんして否定してきた自衛隊について、その活動を自然災害などの場合に限り認めることにし、さらにこれまでほとんど接触のなかった財界とも意見交換をはかりました。 その志位委員長が、いま掲げている目標があります。「21世紀の早い時期に民主的政権というのが目標なんです」(志位委員長)。共産党はどのように変わったのか、また変わっていくのか。日本共産党・志位和夫委員長に伺います。

 草野 あらためてご紹介します。今朝のお客様は、共産党委員長の志位和夫さんです。

  志位 よろしくお願いします。

 草野 まだまだ国会はごたごたしているんですが、一連の問題で口火を切ったのは、共産党の佐々木憲昭さんでしたね。ああいう情報というのはどういう形で入ったんですか。

  志位 2月20日の鈴木宗男さんの参考人質疑で(外務省の)内部文書を示したわけですが、じつはその一週間前に、佐々木さんが2月13日の予算委員会の総括質疑で、「ムネオハウス」の問題をとりあげているんですね。「ムネオハウス」の問題というのは、去年からずっと調査をしていまして、根室にへんな艀(はしけ)があるという情報が寄せられ、調査にいって例の「友好丸」の調査をして、そのときにいろいろと私たちは調査をしていたんですね。それで2月13日の質問になって、そのときに「ムネオハウス」の告発をやって、それから一週間後にあの質問になるんですが。

 草野 そもそもの情報は内部告発ですか。

 志位 一番最初は、地元の方から「どうもへんな船、艀が泊まっている」というところから始まったんです。それで私たちが調べを始めた。そして調べてみたら、たしかにおかしなことがたくさんおこっていると。「ムネオハウス」があったり、「ムネオ診療所」があったり、「ムネオ号」が走っていたりということがわかって、そしてあの事件が起こった。それで(佐々木)憲昭さんが13日にとりあげて、その後20日の朝、ポンと(議員会館の事務所ポストに)投げ込まれていた。(その内部告発の文書が)憲昭さんがやろうとしていた質問を裏付ける中身だったものですから、投げ込まれて、見て一時間後だったのですが、あの質問になったということです。

 草野 最近のご活躍もあるということも大きな理由なんでしょう。共産党の支持率が上がっているということで、ちょっとグラフを見せてください。

 竹内 これはここ半年の支持率をまとめたものですが、自民党がご覧のように、支持率が下がっているのにたいして、共産党は2月20日、佐々木議員が「ムネオハウス」問題を国会で追及したことを境に4・3%に上がって、その後も横ばいということです。

  田勢 はっきりでていますね。

 草野 わかりやすいですね(笑い)。

 竹内 もう一つ。こちらは日本共産党の党員数をまとめたものなんですが、こちらもまた上がっています。 志位 ことし、つい最近40万人になりました。これは営々と努力してきた、この8年間の成果なんです。


●竹内アナウンサーが共産党本部・委員長室を探検●

 草野 ただですね、共産党でもなじみがない方も多いと思います。そこで竹内さんが、共産党に行ってきてくれました。

  竹内 私はいま、東京・千駄ヶ谷にある共産党本部前にきています。この共産党本部ビルなんですが、いまリニューアルが行われているんです。そして7月中旬に完成するビルがこちらなんです。新しい党本部ビルは11階建て。高さおよそ50メートル。85億円といわれる総工費のうちおよそ23億円が支持者からのカンパです。

  ではいまから本部探検に行ってきます。こちらには共産党のグッズが展示してあるコーナーがありますね。党員以外の人も買うことができる共産党グッズの数々。どれもロゴ入りです。いちばん私が驚いたのは、ベルトまで売られているんですね。これにもしっかりマークが入っています。

 さらに志位さんが普段仕事をしている委員長室に特別に入れていただきました。本がたくさんありますね。思ったよりも狭い仕事部屋。志位さんの愛用の品がいくつもありました。こちらは机ですね。いつもこちらでお仕事をなさっているんですね。こんなところにダンベルを見つけました。志位さん、これで普段鍛えているんですかね。けっこう重いです。

 草野 ということなんですけど、きょうは志位さん、共産党ベルト?

 志位 いや、そうじゃないんですけど(笑い)。

 草野 竹内さん、実際行ってみてどうでしたか。共産党の本部は。

 竹内 志位さんがいらっしゃらない間に、勝手に入ってしまったんですが、ラジカセやテレビや洗面道具など、いろいろあったんですけども、けっこうあの部屋にいる時間は長いんですか。

 草野 生活感がありますよね。

 志位 そうですね、けっこう仕事してます。あそこでね。

 竹内 あとインターネットにけっこうはまっていらっしゃると、伺ったんですが。

  志位 インタ―ネットは便利ですね。とくに(昨年の)テロが起こったあと、かなり国際情報を取ることができますから。直接いろいろな情報が取れるというのは便利なものです。ただやり始めると、1時間、2時間と夜遅くなりますね。


●共産党員になるための条件は?――「党員大募集中です」●

 竹内 共産党探検に行ってきたんですが、それに関連しまして、共産党員になるには、共産党について考えてみました。 こちら、4つの条件があります。18歳以上の日本国民であること。党員2名の推薦を受けること。実収入の1%を党費として納める、そして入党費300円を納めるということで、私はこのうち、「党員2名の推薦を受ける」以外の3つに当てはまるんですが、どうしたら党員の方とお知り合いになれるんですか。

 志位 まず私が知り合いになったわけですけど(笑い)、これはご近所の方とか、お友達とか、いろんな関係で入党をお勧めしています。

 それからこの条件のなかに、もう一つ大事なことがありまして、党の綱領と規約を認めていただくということがあります。党の綱領というのは、日本共産党がどういう日本をめざすのか、世界にたいしてどういう働きかけをするのかという基本が書いてありますから、大きな基本のところで一致するということが大事です。

 田勢 この条件とか、方法は昔と変わっているんですか。

 志位 基本は変わらないです。

 田勢 昔は党員になるのはなかなか大変だというふうに、私たちもきいていたんですが。 志位 以前は、入党しても、党員の候補の期間というのがあったときもありましたが、いまはもうそういうことはありません。こういう条件を満たせば、どなたでも大歓迎ということで、いま党員の大募集中です。


●自衛隊問題――9条を守り抜きながら、解消の現実的なプログラムをあきらかに●

 草野 変わるというお話でいいますと、自衛隊の活動について、これまでは憲法違反だということで認めていなかったのが、志位さんになってから、自然災害などにおける活動は一部認めるということになったと。

  志位 これは私たち、自衛隊が憲法違反の軍隊だという立場は変わっていません。憲法違反だから国民の合意をへて、これをなくしていくという方針は変わっていない。ただなくしていくには、一気にできませんから、これはやはり一歩一歩、段階を経て、一つひとつ国民の合意でことをすすめていこうということです。どうしても一定の時間がかかるんです。

 たとえば安保条約をなくして、アメリカとの関係は友好平和条約に変えようというのが私たちの方針なんですが、安保をなくした段階でも自衛隊をすぐなくすわけにはいかないという展望を、私たちはもっています。ですから、(私たちが参加する政権が)自衛隊と共存する一定の期間があるわけです。もしこの共存する期間に、これは理論的想定ですが、万万、万が一のことがおこったらどうするかについて、これはあらゆる手段で抵抗する必要がある。そのときは自衛隊も活用していくことは当然だということを決めました。

 草野 やはりそれは、柔軟路線といわれるものですか。

 志位 マスコミの方たちは、柔軟路線だとかおっしゃるんですが、私たちがそういうふうに自分たちで言っているわけではないんです。

 私たちが(憲法)九条の問題を頑固に守りぬくし、自衛隊は違憲だから国民の合意でなくしていくということは変わりません。ただそのプログラムは、現実的なプログラムをもつ必要がある。そうしなければ、実際になくしていくことはできません。そういうプログラムを明らかにしたということです。途中で何か起こったときにどうするか、という答えが、一つだけ未回答になっていたので、この前の大会で回答をきちんと出したというのが経過です。


●志位さんの生い立ちと道のり――作曲家を志したことも●

 草野 まだまだお話を伺っていくんですが。その前に、志位さんの生い立ちから、これまでの道のりをまとめてみました。VTRをご覧下さい。

――志位和夫さんは1954年7月、千葉県四街道市で生まれました。まさか政治家になるとは思いもよらなかったと語る志位さんが政治の世界にかすかに触れたのは、まだ小学校にも上がらないときのことでした。日米安保条約の改定をめぐり、日本は大きく揺れました。各地で連日行われた安保反対のデモ。志位さんも共産党員の父親に肩車をされ、デモ行進したことを覚えているそうです。 そんな志位さんは、成長するにつれ、政治ではなく、音楽の世界に関心を深めていきます。

 「高校のころは音楽に熱中していまして、作曲とピアノと、バイオリンも含めて習っていました。それで作曲家の道を本気で考えていたこともあるんです」(志位)

  一方で物理のおもしろさにも目覚めます。アインシュタインの『相対性理論』などの著作を読み耽るようになり、物理を研究することを決意します。東京大学理科?類に進学。

 しかし、研究者をめざす志位さんに、ついに政治の世界へ足を踏み入れる転機が訪れます。きっかけをつくったは、いまの志位さんとは正反対の、当時絶頂をきわめたこの政治家でした。圧倒的な支持率を得て田中角栄内閣が誕生したのは、志位さんが大学に入学する前の年でした。しかし、その年の総選挙では企業丸抱えの選挙体質などが批判され、自民党は惨敗。一方で共産党は、過去最高の議席数を獲得します。このため当時の田中総理は、自民党に圧倒的に有利な小選挙区制の導入を主張します。全国に広がった小選挙区制反対の波。田中総理は断念せざるを得ませんでした。このとき志位さんは、一連の反対運動のなかでもっとも輝いて見えたという共産党に入党します。

  大学を卒業後、党の職員となった志位さんは、当時の共産党の議長、宮本顕治氏に認められ35歳のとき、党中枢の役職である書記局長に選ばれます。これまでで最も若い書記局長でした。

「これはえらいものがきちゃったなと。私もびっくりしました。本当に。ただ、まあ思い切ってやってみようかということで引き受けたんです。」(志位)

  このころベルリンの壁が崩れ、ソビエト連邦が崩壊するなど共産党を取り巻く環境は厳しく、また日本では他の政党が離合集散を繰り返す激動の時代でした。しかし共産党執行部は党名も変えることなく、独自の路線を守りとおしました。 そんななか、またしても史上最年少でこんどは委員長に選ばれたのです。

「国民のみなさんからみて、政権を担っても安心だと思っていただけるような、幅広い柔軟性を持つ必要がある」(志位)

  作曲家を志したこともある志位さん。共産党というオーケストラを舞台にどのようなシンフォニーを奏でていくのでしょうか。

 草野 本格的に党活動に入るきっかけになったのが、なんと田中角栄さんというのは、ちょっと意外な気がしました。

  志位 これは、きっかけだったんですが、父も母も共産党員ですから、そういう親しみはありました。ただ、大学に入って最初にぶつかったのが小選挙区制で、私たちの大学でもストライキもやり、駒場からだいたい700人ぐらいのデモが国会にどっと行くと。そういう非常に熱気もありました。(田勢――角マンダ−のときですね)。これは上程もできないでつぶしたんですが、これが一つの大きなきっかけになりました。


●なぜ党員がふえているのか――旧ソ連の干渉と断固たたかってきた党だから●

 田勢 私も、年齢でいいますと志位さんより10歳上なんですが、つねに学生時代からいろんな意味で日本共産党の存在というのが、つねに頭の中に、いまもそうなんですが、あるんですね。ときには自分との距離を測るための存在であったり、ときにはシンパシーを感じたり、ときにはちょっとまちがっているじゃないかと思ったり。ちょうど私ぐらいの世代は、安保をはさんで高揚した人たちがすごく多いんだろうと思います。そのなかでどうしてもひっかかるのは、コミュニストパーティーというのはコミュニストでなければだめなんだろうかというところで、それから世界的にみますと、東西冷戦構造が崩壊したということで、ある種の勝ち負けでいうと、共産主義が負けたんではないかという雰囲気がある。私は、けっしてそんなことはいえないんだろうと思いますが。そういうなかで、いなぜ共産党が党員数を伸ばしているんだろう、なぜ支持率が上がっているんだろうかと。これもまた不思議な現象といえば不思議だと思う。

 志位 いま共産主義は崩壊したという話があったんですが。ソ連の崩壊ということはありましたが、あのソ連と三十数年来、ソ連との関係では向こうから、(日本共産党の指導部を)転覆させようとか、そういう非常にむちゃな干渉がありましたが、それと激しくたたかってきた歴史があって、そのたたかいを通じて、どうもこれ(ソ連)はもう共産主義でも社会主義でもないという認識をわれわれがはっきりさせていくという過程がありました。そういうなかで私たちは、ああいうソ連型の抑圧社会は絶対拒否する立場もはっきりさせました。そういうソ連とのたたかいがあるものですから、私たちはソ連の崩壊というなかでも踏みとどまって、逆に伸ばというのは、そのたたかいがあったからなんですね。    


●中国について――大きな国づくりの挑戦に期待をもって注目●

 田勢 中国はいかがですか。

 志位 私は、中国は一つの大きな国づくりの挑戦をしているさなかだと思う。私も訪れましたが、市場経済と計画経済を組み合わせて独自の社会主義の建設をすすめようと。だいたい二十一世紀の半ばぐらいに先進国、中進国、後進国のなかの中進国までいこうという、かなり壮大なプログラムでいますすめているところで、これがどうすすむか。これによって、二十一世紀の人類にずいぶん大きな影響を与えるだろうと注目しています。

 田勢 必ずしも否定的な立場ではないわけですね。

 志位 この動きというのはやはり、ぜひ成功する方向でいってほしいなという期待をもっています。  


●テリー伊藤氏からの〃辛口メッセージ〃に応えて●

  草野 さて今朝は志位さんに、とても辛口の方からメッセージが届いていますので、こちらをごらんいただきます。

  〈タレントのテリー伊藤氏からのメッセージ〉

  『お笑い革命日本共産党』という本をだすときに、何度か代々木の方にお邪魔しまして取材していたんですが、いざ実際できた本がですね、多少共産党を茶化したということで、幹部のみなさんにですね、おこられまして。「赤旗」でもですね、とんでもないやつだといわれまして、出入り禁止になった時期があったんですが。まあ何年か経ちましたらですね、志位さんの方からお許しがあったということで。

 基本的には、8年前もいまも、そして20年も30年も前も、僕は共産党は変わらないと思いますよ。変わったのは国民だと思いますよね。自民党も、民主党も頼りないな。じゃあ学校の風紀委員みたいな生真面目な共産党でもいいかなというふうなところが、いまの状態だと思いますね。

  共産党が変わったか、変わっていないのかというのを、もし測るとしたら、連立政権でこんどは自分たちが政権政党になったときですよ。そのときにどういうふうな意見を言えるのか。イデオロギー的なことをこれ以上言っても、僕は国民はそんなに説得力ないと思うんですよ。それよりもどういうふうに国民を豊かにさせてくれるのか。どういうふうに外貨獲得ができるのか。そういうことが、僕は大きな問題だと思いますので。

 多分そんなに共産党も志位さんもお金儲けうまいとは思えないんですけど、ここは一つ、国民にお金をもってくることを、ぜひ志位さん考えてください。また遊びに行きます。

 草野 お金儲けは得意ですか。

 志位 個人的には、あまり得意ではないと思います(笑い)。

 草野 変わったという人もいるし、変わらないという人もいるし、そのなかで変わらなければいけないという思いはあるんですか。

 志位 これは、私たち今年で党をつくって80年になるんです。それからいまの綱領ができてから41年。そういう歴史や路線の大きなところには自信をもっています。そういう点では、いっかんしたところをずうっと貫いていくというところ。さきほどテリーさんが、そういうところでは変わらないんだという話をしていらっしゃいましたし、田勢さんも、ある意味では共産党というのは一つの尺度になるという話をしていらっしゃいましたけども、変わらないである一つのものを追い求めるという、原則をつらぬくということは、私は今後もやってゆくつもりです。

 ただ多くの方々から支持していただく上では、原則を保ちながら思い切って柔軟なことをどんどんすすめてゆく必要がある。そういう努力が必要で、さきほどの「どうやって国民の暮らしを豊かにするのか」ということにも当然私たちは答えをもっていますが、示してゆく必要があるでしょうし、自衛隊の問題もなかなか難しい問題ですが、どうやって解決してゆくのか、これは現実的な道筋を示してゆく必要があるでしょう。個々の一つひとつの問題について、共産党に任せても安心だと、実際政権の一翼に参加しても大丈夫だなと思っていただけるような、そういう努力というのは今後も必要だと思っています。

 草野 街でそのへんのところも聞いてますので、どうぞこちらをみてください。

 「共産党という左だとか、赤いだとか。そういうのが、言葉としてはイメージされます」(男性)。

 「改革というイメージですね。社会改革」(男性)。

  「共産党。労働者。赤い。戦前とかそういうときのイメージがあって、アカとか、わりと暗いイメージがあったでしょ。でもいまは普通の政党という感じ」(女性)。

 「いまいちばんまともなことをいってる政党だと思いますけど、名前は確かに変えたほがいいかもしれませんけど。もうちょっとありきたりの名前の方がいいかもしれませんね」(男性)。


●党名について――21世紀は資本主義をのりこえる世紀に●

 草野 名前の話がでましたけれども、名前を変えるおつもりというのはないんですか。  

 志位 これはないんですよ。(草野――まったくないんですか)。ないんです。さきほどコミュニストという話をされましたけど、いまの名前をどうして今後も続けていくかといいますと、私たちのめざす終局的な理想社会を刻んだ名前だからなんですね。

 つまり私たちは、資本主義という制度ができてだいだい200〜300年ですが、資本主義で人類の歴史は終わりかというと、けっしてそうは思っていません。この前「ニューヨークタイムズ」に「この世界のどこかで次のマルクスが歩いている」という記事がでたんです。これを書いている人はクリントン時代のブレーンですが、この人は結局、いかにして公正に富を分配するかという答えが出されていないと。これを出さなかったら次のマルクスが現れて世界をひっくり返すということをいわざるをえないくらいに、南北問題、あるいは不況・恐慌の問題、環境問題、資本主義ではなかなか人類がもたないという課題がたくさんありますから。私は、21世紀は資本主義を乗り越える新しいところに人類がいく世紀になるだろう思っています。

 田勢 私はコミュニズム、共産主義という日本語の部分が、非常に排他的なイメージが強いので、コミュニズムというのは残しても、日本語の部分を変えるという方法はあるんじゃないかと思うんですけど。

 志位 これはコミュニズムというのを共産主義と訳した一つの歴史があって。

 草野 たださきほど街の声もありましたけど、「暗い」とか「近寄りがたい」というイメージが名前とつながってきてしまっているという部分は、それでもいいんですか。  

 志位 私は「暗い」というイメージは、いつどこでつくられたかということで、いろんなことがあると思うんですが、けっして共産党の側から暗いイメージを発信してつくられたというよりも、戦前の方でしたら、弾圧を受けましたでしょ。共産党が。(草野――ええ。ええ)。弾圧を受けたのは反戦・平和を叫んだからで、それが逆に暗いイメージになってくると。だから、よくわかっていただければ、マイナスのイメージがプラスになるという感じじゃないでしょうか。


「おきに」コーナー――リヒテルの「不意打ちの感覚」に魅せられて●

  草野 恒例となりました「おきに」というコーナーを、これからお伝えしてゆくんですが。オフの時間をこんなふうに過ごしていらっしゃるということで、きょうはコレクションを持ってきていただきました。

〈志位さんのコレクション=リヒテル氏のCDなどがスタジオに〉

 これはリヒテル。  

 志位 私は、スヴャトスラフ・リヒテルというピアニストのたいへん熱烈なファンでありまして。五年前亡くなってしまったんですが、コンサートには通い詰めて。(草野――CDすごいですね)。CDは手に入るものはすべて…(草野――何枚ぐらいあるんですか?)百枚ぐらいあるかな。

 田勢 全部リヒテルですか。すごいですね。

 志位 全部リヒテルです。リヒテル以外は聞かないということではないんですが。

 草野 何がそんなに引きつけるんですか。

 志位 私は勝手に思い込んでいるですが、おそらく音楽史上のなかでも最大、最強のピアニストではないかと思い込んでおりまして。  この人は、テンポ一つとっても早い曲はものすごく早く弾いて、遅い曲はものすごくゆっくり弾く。その意外性がものすごく次から次にでてくるんですね。  

 草野 志位さんも、こんなふうに弾けたらいいなと思いながら…。

 志位 この人の本のなかに私がいちばん好きな一節があって、彼が音楽のなかで「不意討ちの感覚の誘発」というんです。つまり音楽のなかで、ありきたりの紋切り形の演奏になるのか、それとも観客にとって「不意討ち」のように感じられる、意外性のある演奏になるのかという、ここらへんが感動を呼び起こすんだと。そういうすばらしいものがあります。


●後半国会――主権にかかわる領土交渉問題はあいまいにできない問題●

 草野 静かにこうやって過ごしていらっしゃるようですが。国会会期末まであと一カ月となりましたが、次の疑惑追及というのはなにかあるんですか。  

 志位 疑惑追及では、ひきつづき鈴木さんの疑惑が依然として解決されていない。それから機密費の問題も、こんごさらに究明を続けたい。この二つの問題は、こんごもやっていきたい。(草野――何か隠し球はあるんですか。)それはなかなか。あれば出しますよ(笑い)。  

 田勢 やはりああいう事実関係に裏打ちされた証人喚問ができるかどうかというのは、政治の信頼を取り戻すためにも非常に重要なことですよね。  

 志位 鈴木さんについては、鈴木さんご本人と東郷前局長の証人喚問がどうしても必要です。利権の問題がありますが、領土交渉をゆがめたというもう一つの問題がありますから、これは主権にかかわる問題なので、これもあいまいにしないでやっていきたいと思います。  


●漫画について――『ガラスの仮面』で徹夜?●

 草野 さあきょう日曜日で、志位さん。どちらかお出かけになるんですか。  

 志位 きょうは地方にゆく計画はありません。

 田勢 奥様孝行ですか。 志位 多少は家庭のこともありますが。あとは少し溜まった仕事をいろいろとやらないと。

 草野 たまに漫画なんかも読んだりなんか。

 志位 漫画は読みますよ。

 草野 実はこちらに『ガラスの仮面』があるんですけど。

 志位 これは、美内鈴江さんともお会いして対談したこともあるんですけど。

 草野 意外でした、『ガラスの仮面』。

 志位 これはおもしろいんですよ。

 草野 どんなところがお好きなんですか。

 志位 いやもう、主人公の北島まやさんが、ひたむきにともかく演劇に打ち込むというところが。なかなかおもしろいですよ。これは読み出したら徹夜になっちゃうような本ですね。


●天気と選挙と日本共産党――雨降って地固まるです●

〈小林さんのお天気コーナー〉

 小林 さあきょうは志位さんもいらっしゃるということで、選挙の投票率と天気は関係あるのかという話をちょっとしてみたいんです。

 投票率というのは、もちろん政治的関心度がいちばんかと思いますが、天気もちょっと影響してるんだぞというところで、とくにもちろんみなさんご存知でしょうが、95年、最低の投票率だったといわれている42%のときなんですが、このとき7月23日、夏休みに入って最初の日曜日。お天気もまずまずだったんですね。天気図を見てみますと、高気圧が張りだしていまして台風も近づいています。きょう遊んどかないと、つぎどうなっちゃうかわかんないみたいな、そんな天気だったと記憶しているんですが。

 こういうときにわざわざ選挙をやるというのは、田勢さん、志位さん、作戦もあるわけなんですかね。どうなんでしょうね。

 田勢 選挙の日程を決めるのは自民党ですから。自民党は、そういうことを考えているようですよ。夏休みで人出がどうだという。

 小林 そして、志位さん。93年7月18日。もちろんご記憶にあると思いますが、当選されたときの天気なんて覚えていらっしゃいます。

 志位 天気ですか。うーーん。ちょっと記憶にないですね。どうでした。

 小林 雨なんですよ。(志位――雨でしたか)。そして96年10月20日。これも雨マークがついているんですね。そして2000年6月25日も雨ということで、志位さん当選するときは必ず雨が降っているということみたいですよ。

 われわれデータを調べましたら、こちらに共産党の議席が増えたのか減ったのかも出しているんですけど。これを見ますと、こんなことになります。曇りのとき共産党の議席は増えているということなんですね。こんなデータ、共産党ではありますか。

 志位 いやあこのデータはとったことないですね。天気はその日になってみないとわからないんで、それはどんな天気でも、選挙は勝たなければなりません。

 草野 志位さん、雨が縁起がいいみたいですね。

 志位 どうでしょうか。やはり雨降って地固まるということで、雨にも負けずがんばりたいと思います。

 草野 きょうは本当にありがとうございました。

 志位・田勢 ありがとうございました。


●トークを終えて――自信に裏付けられた穏やかさ(田勢氏)●

 草野 きょうのお客様は共産党委員長の志位和夫さんだったんですけど、田勢さんは、もうかなり長くお付き合いを…。

 田勢 そんなに長くはないですけども。共産党の場合には、政治が堕落してくると共産党の存在価値というのが高まって支持率も高くなるということなんですね。

 非常に重要な存在だと思いますけど、いつまでもそういうだけの存在でいいのかどうかですね。ほんとうに政権を視野に入れたときに他の野党との協力関係をどうするのか。何よりも共産党にたいする一般の国民のイメージをもう少し巾を広げてゆくにはどうするかという問題があると思いますね。

 草野 そのへんは志位さんの肩にかかっているわけですけども。

 田勢 なかなか魅力的な、ほんとうに開放的な雰囲気の人ですから。

 草野 驚くほど穏やかな方で、驚きました。

 田勢 やっぱりあの穏やかさは自信に裏付けされているのかなと思いました。

 草野 それではこのへんで失礼します。また来週お会いしましょう。