2002年6月7日(金)「しんぶん赤旗」

 志位和夫委員長が五、六の両日開かれた日本共産党第四回中央委員会総会でおこなった幹部会報告は、つぎのとおりです。

第四回中央委員会総会

志位委員長の幹部会報告


 みなさん、おはようございます。衛星通信をごらんの全国のみなさんにも、心からのあいさつをおくります。

 私は、幹部会を代表して、第四回中央委員会総会にたいする報告をおこないます。

一、内外情勢の焦点と日本共産党の任務

 まず内外情勢と日本共産党の政治任務について報告します。

 この総会は、国会開会中の大きな政治的激動のさなかに開かれています。そこで、情勢問題については、いくつかの当面の焦点にしぼって、報告することとしたいと思います。

(1)小泉政治の破綻──解散・総選挙で国民の審判をあおげ

「自民党を変える」という延命作戦の破綻──日本の政治は新たな激動的局面に

 三中総以降、とくに今年二月以降、小泉内閣の支持率の急落という、政治の大きな激動がおこりました。

 発足当初には、八割から九割という異常な高支持率――「小泉旋風」を記録した小泉内閣でしたが、いまではどの世論調査でも、不支持率が支持率を上回り、すでに国民の信任をこの内閣は失っています。

 小泉内閣の支持率急落の契機となったのは、田中外相更迭問題、鈴木疑惑や加藤疑惑をはじめ底知れない腐敗事件、経済や外交など国政のかじ取り不能などさまざまですが、国民の多くはこれらの事実をつうじて、小泉内閣の「改革」が偽物であること、その正体が、古い、腐った、危険な自民党政治の継続にすぎないことを、見抜きつつあります。「“小泉改革”の正体は見えた」という、私たちがポスターでかかげたスローガンは、日ごとに国民の多数の実感となりつつあります。

 もともと自民党の総裁自身が、「自民党を変える」「自民党を壊す」と叫ぶことで、国民の支持をつなぎとめようという延命作戦をとらざるをえないこと自体が、自民党政治の深刻なゆきづまりの結果でした。その延命作戦が、いま無残な破綻(はたん)をとげています。

 これは、自民党政治の危機をいよいよ深刻なものとするとともに、日本の政治に新たな激動的局面を開きつつあります。

自民党は政権党としての統治能力を喪失しつつある

 小泉内閣発足後の一年余をふりかえってみたとき、自民党が、どの分野でも、政権党としての統治能力を喪失しつつあることが、浮き彫りになってきます。

利権・腐敗政治――自浄能力のかけらもない

 第一は、利権・腐敗政治です。

 この間、鈴木宗男衆院議員の疑惑、加藤紘一自民党元幹事長の疑惑、井上裕前参議院議長の疑惑などが、あいついで明るみにでました。これらは、国民の税金でおこなわれている公共事業や対外支援に介入し、それを食い物にする旧来の醜悪な腐敗政治が、いまなお自民党全体の体質であることを、物語るものでした。

 わが党が公表した内閣官房機密費の実態は、国民の税金を党略的・私的に流用して恥じない、自民党政治の腐敗の奥深い闇を明るみにだすものでした。

 しかし、どの疑惑にたいしても、首相と与党のとった態度は、疑惑隠しと責任のがれに終始し、真相を自ら解明するという自浄能力はかけらも見られませんでした。

 自民党は、ロッキード事件、リクルート事件、ゼネコン事件など、金権・腐敗事件をくりかえしてきましたが、ともかくもこれまでは、「党所属国会議員による国民に疑惑を招いた事件については、党自らが究明にあたる」などとのべてきたものでした。ところが、いまの自民党には、真相解明への責任はおろか、その当事者であるという自覚すら、まったく見られません。道徳的・道義的に、その退廃はきわまっているといわなければなりません。

外交の深刻な破綻――長年の対米追従外交の帰結

 第二は、外交の深刻な破綻です。

 この一年は、自主性・主体性をまったく欠いた対米従属の無定見・無責任な外交姿勢が、日本の国の進路をいかに危うくし、国益をいかに損なうかを、まざまざとしめした一年となりました。

 福田官房長官が、核兵器の保持などを禁止する「非核三原則」について、「変わることもあるかもしれない」と「見直し」に言及したのは、全世界で広がっている核兵器のすみやかな廃絶を求める流れにたいして、こともあろうに被爆国日本の政府が最悪の逆流をもちこんだ、許しがたい暴言です。わが党は福田長官のすみやかな罷免を強く要求します。

 「非核三原則」は、歴代自民党政府ですら、これを「国是」として、政権がかわったとしても将来にわたって守り抜くことを、国会で何度も答弁し、その旨の国会決議もあがっています。小泉内閣を支える中枢に位置する政治家が、言語を絶する悲惨な体験にもとづいてうちたてられたこの「国是」を、かくも軽々と踏み破る発言をおこない、首相が「どうってことはない」と容認する姿勢をとっていることは、被爆国政府としての最小限の国内外への公約をなげすてるものとして、この一点をとっても政権を担う資格そのものが問われる重大問題であります。

 日ロ領土交渉は、先のみえないゆきづまりにおちいっています。もともと政府がとなえてきた「四島返還」論は、「国後(くなしり)、択捉(えとろふ)は千島にあらず。だから返せ」という国際的に通用しない根本的弱点をもつものでした。くわえて、鈴木宗男議員と外務省一部幹部とが結託しておこなった対ロ秘密交渉は、政府の公式な方針をも大幅に後退させ、歯舞(はぼまい)・色丹(しこたん)の二島返還だけで領土問題を決着させる――領土交渉の事実上の放棄という方向に、日本外交をゆがめるものとなりました。日ロ領土交渉の破綻は、国際的道理をもたない外交の帰結をしめすものであり、政府は、従来の方針の根本的反省と見直しがせまられています。

 中国・瀋陽の日本総領事館事件は、日本外交の信頼性の根本が問われる事件となりました。わが党は、道理ある外交は、真実のうえにたってこそ可能になるという立場にたって、事実関係の究明を追求しましたが、日本政府の態度は、「総領事館の主権が侵犯された」という日本側があとでだした結論にあわせ、その結論に都合のよい説明でつじつまあわせをするというものであり、そのため矛盾がつぎつぎと露呈する結果となりました。

 このように、どの分野をみても、もはや自民党政治は、日本の外交を担う資格も、能力も、喪失しています。そして、日本外交の自主性・主体性の喪失の根本には、「外交は米国のいうことを聞いていればよい」という、長年にわたる対米追従外交があります。

 財界系の研究所のある有力な論者は、「沖縄に巨大な米軍基地をおいてよしとしながら、外交官に主権意識をもてといっても無理だ」とのべました。対米追従外交が、国の主権への無責任・無感覚をつくり、外交の信頼を根本から損なう事態をつくりだすところまで、事態は深刻になっているのであります。

経済のかじ取り不能――経済運営の政策手段をもてず

 第三は、経済のかじ取り不能です。

 小泉「構造改革」の破綻は、その最大の看板であった「不良債権の早期最終処理」という方針がおちいっている現状をみれば、いまや明らかです。

 五月二十四日に、大手銀行グループがいっせいに決算を発表しましたが、不良債権は、一年前に約十八兆円だったのが、何と二十六・八兆円に増大しました。一年間で49%増であります。

 わが党が一年前に警告したように、この方針がもたらしたものは、たくさんの中小企業を無理やりつぶし、信金・信組など地域経済を支えてきた金融機関を無理やりつぶし、そのことによっていっそうの景気悪化がすすみ、新しい不良債権が発生するという、深刻な悪循環にほかなりませんでした。

 小泉政権が発足して一年余の経済運営は、国民生活と経済活動を破壊し、委縮させただけの結果となりました。空前の失業増、企業倒産の増加、所得と消費の減少など、あらゆる経済指標がそのことを示しています。

 政府は、五月の「月例経済報告」で、鉱工業生産が増加に転じたことをもって、「景気の底入れ宣言」なるものをおこないました。しかし鉱工業生産の増加は、輸出に依存したものであり、きわめて弱々しいものです。経済回復の主役となるべき内需――個人消費と民間設備投資は、依然として落ち込みをつづけています。

 こうした経済情勢のもとで、医療費の大幅な負担増、消費税増税の計画など、内需をいっそう痛めつける悪政が強行されようとしていますが、それは橋本内閣による一九九七年の九兆円負担増の経験がしめすように、国民生活にいよいよ耐えがたい苦しみをおしつけるだけでなく、日本経済をさらに深い底に落ち込ませてしまうことになります。

 もともと「構造改革」路線は、九〇年代に自民党政治がすすめてきた「景気対策」の二つの手法――大手ゼネコン救済のための巨額の公共事業積みまし、大銀行救済のための金融緩和という政策手段が破綻するもとで、それに代わるものとして、押し出されてきたものでした。その破綻がいま、明りょうになるもとで、自民党は日本経済を運営する政策手段を、もはやもてなくなっている。これが現状であります。

 大企業中心主義から、国民の暮らし中心の経済政策への転換が、いまほど切実に求められているときはありません。

小泉政権をおいつめ、情勢をきりひらくうえで、日本共産党が果たした役割

 小泉政治の正体を国民の前に明らかにし、この政権をおいつめ、情勢を前向きに打開していくうえで、日本共産党が果たした役割は、大きなものがありました。

小泉政治にたいするもっともきびしい対決者として

 何よりも、わが党は、小泉政治にたいする一貫した、もっともきびしい政治的な対決者として、奮闘してきました。

 「小泉旋風」という困難な条件のもとでたたかわれた昨年の参院選で、わが党は残念な後退を喫しましたが、その結果についての常任幹部会の声明のなかで、私たちは次のようにのべました。

 「議席を後退させたとはいえ、今回の選挙戦で、わが党が訴えた政治的主張は、こんごに生きる大きな値打ちをもつものと考えます。

 わが党は、『構造改革』の大合唱のなかで、『小泉改革』が、国民にたえがたい『痛み』をおしつけ、日本経済を破局においやるものであることを、勇気をもって正面から批判した唯一の党でした。

 そして、経済、外交など、あらゆる分野で、わが党の日本改革の提案――ゆきづまった自民党政治からの真の改革の道筋を明らかにしてきました。……わが党の政策と訴えは、国民の利益にたち、日本の将来に責任をおった道理あるものであり、こんごの政治、経済の展開のなかで、きわめて重要な意味をもってくることを、私たちは確信しています」

 それから約一年の情勢の展開は、この声明でのべたことを、事実の裏付けをもって確認していると考えるものであります。

腐敗・利権政治追及で現実政治を動かす

 今年に入ってからあいついで明るみにでた腐敗政治にたいして、わが党は国会での真相究明の先頭にたち、現実政治を大きく動かす、重要な役割を果たしてきました。

 鈴木宗男議員の疑惑追及では、わが党が独自の調査にもとづいて告発し、外務省内部文書を使って追撃した「ムネオハウス」の入札介入問題が、真相究明をすすめるうえで衝撃的な力を発揮しました。それは、国会と世論を大きく揺り動かし、司直による捜査にまで発展し、この政治悪をおいつめつつあります。

 官房機密費の使途を明らかにした内部文書の公表も、政界に衝撃をあたえました。政府はなお、真相究明に背をむけつづけていますが、今回の公表が、今後の機密費問題の解明、この問題での改革に、大きな意義をもつことは間違いありません。

 これらの追及は、企業・団体献金も政党助成金も受け取らず、機密費にも無縁の党であったからこその追及であります。その根本には、草の根で国民と結びついた地道な財政活動があることを、私たちは誇りにするものです。

全国の草の根で「たたかいの組織者」として

 わが党は、国会闘争と一体に、全国の草の根で「たたかいの組織者」として、暮らしと平和を守る、先駆的な役割を果たしてきました。

 全国各地で、リストラの横暴に反対し、雇用と営業を守る、社会的反撃が開始されました。違法な退職と転籍強要をはねかえした住友金属和歌山のたたかい、「サービス残業」を是正させた三菱伊丹のたたかいなど、貴重な成果を記録したたたかいも生まれました。リストラ反対の全国交流集会は、リストラの新しい特徴やたたかいの課題を鮮明にし、全国のたたかいを促進する新たな契機となりました。

 医療改悪反対のたたかいでは、この悪法の廃案をめざして、社会福祉団体、老人クラブ、医療機関、医師会などもふくめて幅広い共同を広げ、すでに二千五百万をこえる反対署名を集めるなど、力強い多面的な運動が発展しています。

 有事法制に反対するたたかいは、いま重大な山場をむかえていますが、この間、労働組合の潮流の違いをこえた陸海空港湾などの労組、宗教者などがよびかけた国民大集会が四万人余を集めて成功するなど、たたかいが急速に広がっています。全国の多くの知事、首長が「反対」や「慎重審議」を求める声をあげ、地方議会で反対決議がつぎつぎにあげられていることも、これまでにない広がりであります。

 BSE(狂牛病)問題、食肉偽装、添加物の不正使用など、「食の安心・安全」にかかわる事件が続発するなかで、国民の不安と怒りが広がり、消費者と生産者の共同したたたかいが、行政を動かしつつあることも重要であります。

 私たちが、三中総決定で確認した「たたかいの組織者に」という方針は、不当・無法な攻撃がくわえられたら、国民の側から、強力な反撃がわきおこるような社会へと、日本の社会のあり方そのものを変えていこうという、息の長いとりくみとしてよびかけたものでした。わが党は、この方針をあらゆる分野でさらに豊かに発展させ、全国の職場、地域、学園で、暮らしを支える政治の担い手として、また憲法と平和の頑強な守り手として、広範な人々と手をたずさえて、ひきつづき奮闘するものであります。

国民をあざむいた責任は重い──すみやかな解散・総選挙を要求する

 小泉政治の破綻はいまや明りょうです。国民はこの内閣を見放しつつあります。とりわけこの内閣のおかした重大な罪は、参議院選挙での公約――「自民党を変える」という公約によって、国民の期待を集めながら、それを裏切ったことです。

 小泉政権が、利権と腐敗政治でも、外交でも、経済でも、旧来の自民党政治の枠組みをほんとうに改革することにたいしては、頑強な抵抗派であり、反対派であることは、この一年間の事実が証明しました。この正体を、「改革」という看板で隠して、国民を欺いた責任は、きわめて重大であります。

 わが党は、すみやかな解散・総選挙によって、国民の審判をあおぐことを、強く要求するものであります。

 わが党は、小泉内閣の悪政に反対する国会内外のたたかいを合流させ、この内閣を解散においこむために力をつくします。そして、きたるべき総選挙を、腐敗温存、経済破綻、憲法破壊の小泉・自公保政権に、痛烈な国民的審判をくだす選挙とするために、全力をあげるものであります。

 同時に、日本共産党が躍進してこそ、自民党政治へのもっとも痛烈な審判となり、政治変革のたしかな力となることを、訴えてたたかいます。

 現在、わが党は、国会での一致する課題で野党共闘を誠実に追求していますし、その立場は今後も変わりません。しかし、「構造改革」や「有事法制」など、国政の基本の問題で、わが党と他の野党との間に、政策的一致が存在していないことも事実であります。「自民党政治をこう変える」という政治の足場をぬきに、政権交代によって政治の担い手だけを変えればよしとする立場に、わが党はくみするものではありません。

 「自民党政治をこう変える」というたしかな展望を、「日本改革の提案」という形で明らかにしている日本共産党が、新たな政治戦で躍進をかちとることにこそ、わが国の政治を衰亡の危機から救い、暮らしと平和を守る唯一の道があるということを、堂々と訴えてたたかいぬきたいと思います。

(2)海外派兵国家づくりを許さないたたかいの前進を

国会論戦と国民のたたかいでおいつめてきた有事三法案──必ず廃案をかちとろう

 いま小泉内閣は、有事三法案、医療改悪法案、「個人情報保護」法案、郵政関連法案という、四つの悪法を、国会会期を延長をしてでも強行しようという構えを崩していません。わが党は、悪法を強行するための会期延長にきびしく反対し、四つの悪法を廃案においこむために、最後まで全力をつくすものであります。

 報告では、激しいたたかいの焦点となっている有事三法案(「武力攻撃事態法案」「自衛隊法改正案」「安全保障会議設置法改正案」)についてのべます。この法案をめぐっては、これまでの国会論戦をつうじても、憲法にまっこうからそむく二つの重大な問題点が、浮き彫りになっています。

海外での「武力の行使」に公然と道をひらく仕組みをつくる

 第一に、有事三法案が、海外での自衛隊の武力行使に、はじめて公然と道を開くものとなっていることであります。

 「武力攻撃事態法案」は、「我が国に対する武力攻撃」が「発生した場合」「おそれのある場合」「予測される場合」の全体を、「武力攻撃事態」という一つの概念でひとまとまりに包括的に規定して、それへの「対処措置」として、自衛隊が「武力の行使」などをできるという構造になっています。

 ここで「我が国」としているのが、くせものであります。これが、政府の答弁によっても、日本の領土だけではなく、公海上で米軍支援の活動をしている自衛隊の艦船なども「我が国」となるとされることが重大です。いま「テロ対策特別措置法」でインド洋に派兵されている自衛艦隊も「我が国」であり、「周辺事態法」が発動されたさいに、アジアの各地に派兵される自衛艦隊も「我が国」になります。世界の海のどこでも「我が国」になりうるのです。

 海外で米軍支援のために活動している自衛隊が、「武力攻撃事態」におちいれば、この法律が動きだし、相手から攻撃されれば「武力の行使」で対抗することは、政府も答弁で認めました。

 そのうえ、武力攻撃の「おそれ」や「予測」の場合での「武力の行使」にも、この法案には歯止めがいっさいありません。自衛隊法では明記されていた「国際法規の遵守」という規定も、この法案ではまったく欠落しています。

 政府・与党は、有事法制が想定する事態を、もっぱら「日本有事」と設定して、「国民の命を守るための備え」と描き出しますが、日本への本格的な侵略をおこなう能力や意図をもった国など現実には存在しないことは、政府も認めざるをえないことです。

 米軍の海外での戦争に、自衛隊が「武力の行使」をもって参戦できる仕組みをつくろうというところに、有事三法案のもっとも重大な現実の危険性があります。

 いま米国は「テロ対抗」を名目に、報復戦争を世界に拡大する戦略をとっています。すでに沖縄に駐留する米海兵隊がフィリピンでの米軍の軍事作戦に動員され、沖縄は「対テロ戦争」の最前線基地とされています。

 さらに米国は、イラクなど特定の国を「悪の枢軸」として、先制攻撃も辞さない戦略をとっており、インド洋に米軍支援のために展開している自衛隊が、イラク攻撃のための共同作戦にひきこまれる危険が存在することを、直視しなければなりません。

 そうした無法な介入戦争への日本の参戦こそ、有事法制のもたらす現実の危険であることを、広く国民に明らかにしていくことが重要であります。

米国の戦争に国民を強制動員する戦時体制をつくる

 第二に、米軍の戦争への参戦のため、国民の人権や自由をふみつけにして強制動員する戦時体制をつくる法案だということです。

 すべての国民に戦争への協力が義務づけられます。医療、土木建設、輸送などに従事している民間人には、業務従事命令が出されます。取扱物資などの保管命令が出せ、命令違反者には懲役などの罰則が科せられます。自治体や指定公共機関などを動員するために、国が「指示」権をもち、「指示」に従わなければ直接の「実施」権ももつ。まさに戦前の国家総動員法を想起させる、戦時体制がつくられることになります。

 政府は「公共の福祉」を理由に、国民の人権と自由の制限を合理化しようとしていますが、米軍の介入戦争への協力が、どうして「公共の福祉」でしょうか。

 国民の権利の深刻な侵害の危険にたいして、国民各層、自治体、公共団体など、これまでにない広範な人々から、批判の声があげられているのは、当然であります。

 防衛庁が、情報公開を求めた人々について、思想調査もふくむ個人情報を、不法・不当に収集し、組織ぐるみでリストを作成、回覧していた事実が明らかになりました。わが党は、防衛庁ぐるみの犯罪行為の重大な責任にてらして、防衛庁長官の罷免を強く求めるものであります。有事法制が強行されるなら、およそ国民の人権や自由を蹂躙(じゅうりん)して恥じない体質をもつ防衛庁・自衛隊が、この悪法執行の主役になる危険性を、強く警告しなければなりません。

 有事三法案の危険な本質を突くわが党の国会論戦、全国で広がる反対運動の高まりによって、政府が当初えがいていた法案強行のスケジュールは大幅にくるい、戦争勢力はおいつめられています。だいたい法案を提出している官房長官と防衛庁長官という二人の主管大臣が、国民の指弾をあびて、当事者能力を失うという状況におちいっています。しかし彼らはなお国会での多数を背景に、法案の強行をあきらめておらず、国会での攻防は予断を許さないものがあります。

 わが党は、この法案が、海外での武力行使法であり、国民の強制動員法であるという本質を、国民にいそいで広く知らせきり、廃案をめざして全力をあげるものであります。

有事三法案の危険を、海外派兵国家づくりの歴史的脈絡のなかでとらえる

 これまでも九六年の「日米安保共同宣言」、九七年の「新ガイドライン」などにもとづいて、日米軍事同盟に基礎をおいた海外での日米共同作戦体制づくり――海外派兵国家づくりのくわだてが、すすめられてきました。その歴史的な脈絡のなかで、有事三法案を位置づけると、どういうことになるでしょうか。

 戦後はじめて海外での日米共同作戦を可能にした法律は、九九年に強行された「周辺事態法」でありました。わが党がこの法律を「戦争法」と特徴づけたように、この法律によって、自衛隊がおこなうことになった米軍への後方支援は、日本政府がどう奇弁をろうしようと、国際法のうえでは武力の行使――戦争行為にほかなりません。しかし、この法律は、建前のうえでは、あくまでも「武力の行使に当たるものであってはならない」と明記し、そのために後方支援も、戦闘が想定されない安全な地域――後方地域でしかできないということが建前とされていました。また民間や自治体の動員も、「協力を求める」「協力の依頼」など、建前上は強制ではないとされていました。

 「武力攻撃事態法案」をはじめとする有事三法案は、米国の要求にこたえて、「周辺事態法」のこれらの制約を、一気に突破しようというものです。すでにみてきたように、「周辺事態法」では明示的に禁止されていた海外での「武力の行使」は、「武力攻撃事態法」では大手をふって可能とされています。また民間や自治体の強制動員を公然と法案に明記しています。これらは、有事三法案が、海外派兵国家づくりの危険を、新たな質的段階に高めるものであることを示すものであります。

 くわえて「武力攻撃事態法案」は、この法律を基礎にして、「二年以内を目標」に、海外派兵国家づくりのための、より具体的な法律―「事態対処法制」とよばれる法律をつくることを規定する、プログラムをさだめる法案ともなっています。この法案が、二年以内に整備するとしている法律には、「武力攻撃事態」のさいに国民の自由と権利を制限する法律とともに、「武力攻撃事態」のさいに米軍がおこなう軍事行動への自衛隊の支援の内容をきめる法律も、ふくまれます。この新しい米軍支援法が、集団的自衛権の行使――集団的介入戦争への参加の道を、公然と開くものとなる危険があることを、強く警戒しなければなりません。

 有事三法案を国民におしつける最大の欺まんの論法は、いかにも「日本有事」が問題であるかのように宣伝しながら、実体としては「米軍有事」のための日本の参戦に道を開こうとしていることにあります。

 いったんこの法案を許すなら、政府は、海外派兵国家づくりをいっそう危険な段階へと具体化していく新たな土台を手に入れることになります。

 同志のみなさん、この法案を許すわけには絶対にいかないという決意を、この総会としても固めあおうではありませんか。

(3)アメリカの“覇権主義の暴走”をくいとめ、平和の国際秩序をめざすたたかい

むきだしになった先制攻撃戦略と、核兵器の一方的使用政策

 つぎに国際問題について報告します。

 三中総決定は、国際テロは、報復戦争ではなくすことはできない、国連中心の制裁と裁きの道へのきりかえが必要である、という立場を表明しました。そして、報復戦争が、世界の平和秩序に深刻な脅威をもたらしていることに、強い警告をおこないました。その後の事態の展開は、三中総決定の正確さを裏付けるものとなっています。

 アメリカ・ブッシュ政権は、国際テロと報復戦争を契機として、“覇権主義の暴走”ともいうべき危険な道にのりだしています。

 一つは、国連憲章を無視した先制攻撃戦略を、むきだしにしていることであります。ブッシュ大統領は、今年一月の一般教書演説で、米国が一方的に「悪の枢軸」――「テロを支援している」「大量破壊兵器を開発している」と決めつけた一連の国々にたいして、先制攻撃を辞さない立場を公言しました。ラムズフェルド国防長官は、五月に明らかにした論文で、「アメリカを防衛するには、予防戦略、ときには先制攻撃も必要」と、「先制攻撃」という言葉を使って明言しました。先制攻撃をためらわないというのは、これまでもアメリカの一貫した立場でしたが、ここまで具体的に、また公然と、それを世界にむかって宣言したことは、かつてありませんでした。

 いま一つは、核兵器政策においても、非核保有国にたいする核兵器の一方的使用という、きわめて危険な戦略に、ふみこもうとしていることです。今年一月、米議会に提出された「核態勢の見直し」報告(NPR)では、「テロや大量破壊兵器への対抗」などを口実に、核保有国のロシア、中国にとどまらず、北朝鮮、イラク、イラン、シリア、リビアをもふくむ七カ国を名指しし、核兵器使用計画の策定を指示しています。

 またアメリカは、「テロへの対抗」や「大量破壊兵器の地下施設などの破壊」など、「実際に使用することを想定した核兵器」の開発のために、核実験を再開することを公言しています。

 歴代米政権は、これまでも核先制使用計画を実際には維持してきました。同時に、一九七八年以来、対外的には「核攻撃を受けたときや、核保有国と同盟を組んでいる国からの軍事攻撃を受けた場合以外は、アメリカ側からは核攻撃をおこなわない」と、非核保有国への一方的核攻撃はおこなわないとの態度表明をおこなってきました。今回の「核態勢の見直し」報告は、こうした従来の表向きの政策すら、公然と取り払うものにほかなりません。

 こうしていま、アメリカによる、歯止めをなくした“覇権主義の暴走”は、国連憲章にもとづく世界の平和秩序を根底から脅かし、アメリカが横暴をほしいままにする戦争と抑圧の体制をつくる、国際社会にとっての最大の脅威となっていることを、正面から直視する必要があります。

ブッシュ政権の論理を利用し、中東和平に最悪の逆流をつくりだしたイスラエルのシャロン政権

 ブッシュ政権の「テロ対抗なら何をしても許される」という論理は、イスラエルのシャロン政権にも利用され、パレスチナ問題でも最悪の逆流をつくりだしました。

 イスラエルのシャロン政権は、「パレスチナ自治政府はテロ支援組織」「アラファト議長は敵」と決めつけ、今年三月二十九日から、パレスチナ自治政府が治める領土への侵攻、住民や難民キャンプの制圧、住宅や病院や学校などへの破壊活動をおこない、住民の無差別虐殺の重大な疑惑も問題とされています。

 イスラエルの蛮行には、国際社会からきびしい批判が集中しました。国連安保理事会は、即時停戦と侵攻地域からのイスラエル軍の撤退を求めた決議を採択しました。国連総会は、イスラエル占領軍が、パレスチナの諸都市でおこなった攻撃を非難し、国連安保理決議の即時履行を求める決議を採択しました。

 こうした状況のもとで、イスラエル軍は、五月十日、侵攻した自治区からひとまず撤退しましたが、その直後から自治区への再侵攻をくりかえし、パレスチナ人の自爆テロともあいまって、深刻な事態が続いています。シャロン政権は、依然としてパレスチナ自治政府を「敵」として、交渉を拒否するという態度を変えていません。

 わが党は、市民を無差別に殺傷するテロ行為は、民族自決をめざす闘争の大義を傷つけるものということを、以前から指摘してきました。しかし、今日のパレスチナの危機的状況をつくりだしたのは、イスラエル政府による一方的な戦争行為であり、これを「テロへの対処」という口実で正当化することはできません。こうした行動をとりつづける限り、イスラエルはテロを批判する資格を失っているということを指摘しなければなりません。

 わが党は、イスラエル・パレスチナの双方が、相手の抹殺論にたたず、相互の生存権を認め、平和的に共存できる条件を確立することを、一貫して求めてきましたし、今後も強く求めていくものであります。

 五月十一日には、イスラエルのテルアビブで「占領地撤退と和平交渉再開」を求めて十万人の平和集会が開かれました。わが党の立場は、多くのイスラエル国民もふくめ、中東に公正な和平の確立を求める全世界の理性ある声と合致していると確信するものであります。

米国の暴走は、国際的な批判の声によって包囲されつつある

 この間の国際情勢の新しい特徴は、アメリカの“覇権主義の暴走”にたいして、アフガンへの報復戦争のさいには沈黙や協力を余儀なくされていた諸国もふくめて、世界の多くの諸国から批判の声が澎湃(ほうはい)としてわきおこり、アメリカが孤立と矛盾を深めているというところにあります。

 「悪の枢軸」論にたいしては、欧州の同盟国からも、パッテン欧州連合対外担当委員が「一国主義的暴走」と批判するなど、きびしい批判が集中しています。五月中旬に開かれた欧州連合と中南米諸国首脳の会議でも、「一国主義的で事実上自らを治外法権的な地位に置くあらゆる措置に反対する」との共同宣言が採択されました。

 とくに注目すべきは、世界人口の77%を占める非同盟諸国(正式加盟国百十五カ国、オブザーバー参加十五カ国)が、調整ビューロー外相会議を四月下旬に南アフリカのダーバンで開催し、そのコミュニケで、「テロとのたたかいを口実にして他国をねらうためにある国が口にしている『悪の枢軸』という言葉を全面的に拒否する。それは、一種の心理的・政治的テロリズムである」と、「悪の枢軸」論を、もっともきびしい言葉で拒否していることです。

 コミュニケでは、米国が現在おこなっている「核態勢の見直し」と「新型の核兵器の開発」に「深刻な懸念」を表明し、「非核兵器国にたいする核兵器の使用ないし使用の威嚇は、核兵器国がおこなった消極的安全保障の約束に違反する」と、アメリカの新しい核政策への批判ものべています。

 コミュニケではまた、「経済の低開発、貧困、社会的不公正など、増大する国際的な不平等を正すことなしには、民主主義、安定、安全、平和を固めることはできない」と、宣言しています。

 ここには世界人口の77%を代表する諸国からの、アメリカがすすめている一国覇権主義、核兵器使用政策、「グローバル化」の名による途上国からの収奪などにたいする、きびしい告発の声があります。

 これらの流れと比べたときに、アメリカの先制攻撃戦略を「理解する」とのべ、唯一の被爆国でありながら緊急の核兵器廃絶をめざす国際社会の努力を妨害しつづけ、さらに「非核三原則」の「見直し」まで言及して恥じない日本政府が、世界の大勢にさからう、何と惨めな立場にたっているかは、歴然とするではありませんか。

 二十一世紀の世界は、けっしてアメリカの横暴勝手が通用する世界ではありません。アメリカの覇権主義、それに追随する一握りの勢力には、けっして未来はありません。

 わが党は、国連憲章にもとづく平和の国際秩序の確立、すみやかな核兵器廃絶の実現、新しい民主的国際経済秩序の確立をめざす、国際的な連帯と共同を発展させるために、ひきつづき力をつくすものであります。

インド・パキスタン問題──非同盟運動の大義に立った平和解決を要求する

 インド・パキスタン両国をめぐる今日の事態は、きわめて深刻です。

 両国間では、かねてからカシミール地方の帰属をめぐっての緊張の歴史が続いてきました。この問題は、一九四七年八月の両国のイギリス支配からの分離・独立いらい、両国間の領土紛争の焦点となってきたもので、双方が領有権を主張し、三次にわたる印・パ戦争をへて、国連の調停による停戦ライン=実効支配線がひかれましたが、それをはさんで軍事衝突が続いてきました。

 この紛争が激化し、この五月には、パキスタン側の武装テロ勢力によるインド側への襲撃事件などがあいつぎ、砲撃戦が日増しに拡大し、双方の兵士・民間人に多数の死傷者が出るなど、全面戦争への発展が強く危ぐされています。

 わけても両国が核保有国であり、核実験や核弾頭も搭載可能なミサイル実験をくりかえしてきただけに、紛争の前途は一段と憂慮されます。万一にも今後のなりゆきのなかで、核保有国同士の核戦争という最悪の事態が起こったとしたら、数百万から一千数百万人もの犠牲者が出るともいわれており、さらにその被害は地球のより広大な地域をもおおうことになります。そうした恐るべき事態は、何としても回避しなければなりません。

 インド、パキスタンがともに重要な位置をしめている非同盟運動は、紛争の平和的解決を大原則とし、核兵器使用禁止、期限を切った核兵器廃絶の課題を高く掲げて、国際社会でも大きな役割を果たしています。両国が、紛争の平和的解決の道を放棄し、かりにも全面戦争に突入するということになれば、両国民の甚大な犠牲をもたらすだけでなく、世界平和にとって重大な脅威となり、非同盟運動の大義そのものを大きく傷つけることになります。

 わが党は、両国政府にたいし、非同盟運動の大義にたち、あらゆる紛争の平和的解決と核兵器使用禁止・核兵器廃絶というこの運動の本来の精神にもとづいて、カシミール問題など両国間の紛争の解決に全力をつくすこと、具体的には――、

 第一に、武装テロ勢力の越境侵入をふくめ、あらゆる戦闘行為をただちに中止すること、第二に、そのうえで、事態の平和的打開のために両国間の対話を再開すること、第三に、双方が、国際社会にたいして、どのような理由であれ正当化されえない核兵器の使用はおこなわない旨声明することを、強く求めるものであります。

二、「大運動」の教訓と、選挙勝利をめざした党建設・党活動の方針

 つぎに「大運動」の教訓と、選挙勝利をめざした党建設・党活動の方針について報告します。

 昨年十月の三中総から、四月末までの半年余にわたって、全党は、「党員・読者拡大の大運動」にとりくみました。

 「大運動」は、参院選の教訓から、「どんな嵐が吹こうが、ゆるがず前進できる強く大きな党をつくろう」、また党の長期的任務を展望して、「二十一世紀をたたかう党の根幹をつくろう」――これらを合言葉にしてとりくまれました。

(1)「大運動」の成果と教訓を全党の共通の確信に

党員でも読者でも貴重な前進をきずいた「大運動」のとりくみ

 まず「大運動」の結果についてでありますが、党員拡大では、「大運動」をつうじて、一万数千人の新たな同志をむかえ、「四十万の党」に到達することができました。

 わが党の党勢は、反動攻勢や旧ソ連・東欧崩壊という国際的激動の影響もうけ、また実態を失っていた党員の問題の解決の結果として、一九九四年の第二十回党大会時には三十六万人弱にまで後退していましたが、その後の全党の努力、「大運動」の奮闘によって、党員数でふたたび四十万人台を回復したことは、大きな意義をもつものであります。

 新しく社会進歩を促進する党の一員として、人生を歩むことを決意されたすべての同志に、中央委員会として、心からの歓迎のあいさつをおくりたいと思います。

 「しんぶん赤旗」の読者の拡大は、「大運動」をつうじて、およそ三万人の純増をかちとりました。読者拡大は、この間、全党の努力で支えられてきましたが、思うように前進できなかった分野でした。最近の二回の「大運動」(九九年七月から十二月、二〇〇〇年七月から十一月)でも、党員拡大は前進したものの、読者拡大では後退しています。停滞・後退傾向がつづいていたこの分野で、年末、年度末という難しい条件をはさむこの時期に、前進の一歩をふみだしたことは、全党のみなさんの奮闘によって開いた貴重な成果であります。

意識的追求の姿勢の強まり──党勢拡大への“自信”と“喜び”が全国から報告されている

 これらの数字のうえでの成果以上に、「大運動」でかちとった最大の成果は、党建設と党勢拡大を、いついかなるときにも意識的に追求する姿勢が、全党的に強まったことにあります。「大運動」をつうじて、約三割の支部が新たな党員をむかえ、72%の支部が読者を増やし、ほとんどの支部がこの運動に参加しました。

 全国の都道府県委員長、地区委員長のみなさんに、「大運動」にとりくんだ感想を求めましたが、その多くから、党建設・党勢拡大への“自信”をつかみつつあることが、報告されました。「この道をすすめば、『五十万の党』はつくれる」「『読者が減るのもやむをえない』という気分を、実践で打ち破った」などの報告が、数多くよせられました。

 また「大運動」をつうじて、党を強く大きくすることの“喜び”が、たくさんの党員、党支部、党機関の共通の実感としてつかまれつつあることも、報告されています。“党員拡大は自らの党員としての生きがいを語り、読者拡大は「赤旗」の魅力を語ること、それは相手にとって無理なお願いではなく、人生をよりよく生きるための働きかけ”――こういう見地でのとりくみが広くおこなわれました。「『大運動』にとりくんでほんとうによかった」という感想が、全国からよせられていることも、うれしいことであります。

多面的で豊かな活動をすすめながらの前進──発展性のある運動への足がかり

 しかも、「大運動」は、党勢拡大運動だけに集中したものでなく、多面的で豊かな活動を発展させながら、そのなかでえた成果でした。

 「たたかいの組織者に」という三中総の提起にこたえて、雇用、社会保障、平和の問題から、身近な日常要求の問題まで、支部を基礎にした要求実現のとりくみ、対話と討論が、多彩にとりくまれました。情勢の激動にこたえて、国民のなかに広く打ってでる活動も、積極的にとりくまれました。これらは、党に新鮮な活力をもたらし、党勢拡大運動の発展の推進力ともなりました。

 「量とともに質を」を合言葉にして、とくに「週一回の支部会議」を軸にした温かい人間集団として支部をつくっていくとりくみで、前進の一歩がつくられたことは、きわめて重要だと思います。「大運動」期間をつうじて、「週一回の支部会議」にとりくんでいる支部は、18・7%から23・7%へと、5%広がりました。この前進は初めの一歩であり、県や地区によるアンバランスも大きいものがありますが、まだ前進がつくれていない党組織もふくめ、全国からの報告で、ほとんど例外なく「週一回の支部会議」の重要性が自覚的に語られていることは、貴重な変化として、たいへんうれしくうけとめました。

 「双方向・循環型」の精神で、お互いに学びあいながら運動を発展させたことも、今回の「大運動」の新しい特徴です。支部の経験交流会がかつてない規模で開催されました。困難をかかえている支部への個別の援助も、ともに現状を打開するという精神でとりくむ努力がはかられました。私たち中央委員会も、地方の同志とともに「大運動」にとりくみ、地方のみなさんの経験から多くのものを学びました。そこには心をゆさぶられる無数の感動的なドラマがありました。

 こうしてわが党が総合的活動、多面的活動にとりくみながら、党勢拡大運動を前進させたことは、党勢拡大運動を、「大運動」だけの一過性のとりくみに終わらせず、発展性のあるとりくみにしうる、新しい足がかりをきずいたものといえるのではないでしょうか。

党外の識者からよせられた注目と期待の声

 わが党が、参院選での後退から教訓をひきだし、党勢拡大運動で前進をかちとりつつあることにたいして、党外の識者からも注目と期待の声がよせられていることを、紹介しておきたいと思います。

 ある著名なジャーナリストは、「大運動」の成果を「非常に貴重な成果」として、「それは、今日の情勢のもとで、人間集団としての共産党、真実の報道を唯一貫く『しんぶん赤旗』にいかに信頼がよせられているかを証明するものといえる。その意味で、今度の『大運動』の成果に十分確信をもってほしい。そして、これに甘んじるのではなく、次の新たな前進にむけて力強く進んでいただきたい」という言葉をよせてくれました。

 ある著名な評論家は、「『大運動』であげた成果は、日本共産党の歴史にとっても、二十一世紀の日本政治の方向にとっても、大きな意味をもつものである。いよいよ共産党が二十一世紀の新しい国づくりにむけ、本格的に踏み出すための土台を築く仕事で貴重な成果を収めつつあるという思いで受け止めている」、「参院選の教訓をきちんと総括し、政治情勢の推移と状況を分析しながら、大胆かつ緻密(ちみつ)な方針のもとに『大運動』をすすめてきた成果であると思う」という評価をよせてくれました。

 中央委員会は、「大運動」で奮闘された全国の党組織と党員のみなさんに、心からの敬意を表するものであります。

 「大運動」の到達点は、党組織によってさまざまです。しかし、どの党組織でも、この運動にとりくんだ結果、今後の前進の糧(かて)となる豊かな教訓をえているのではないでしょうか。全党の奮闘によってきずいた成果と教訓を、全党の共通の確信にすることは、新たな前進にむかううえで、きわめて重要であるということを、まず訴えたいと思うのであります。

(2)選挙勝利を前面に、二十一世紀を展望して──党勢拡大を本格的前進の軌道に

総選挙・いっせい地方選挙での躍進めざして──激動の情勢を打開する強大な党を

 「大運動」での党勢拡大は、前進の一歩を開始したところです。多くの問題点や課題も残されています。「大運動」にひきつづく五月のとりくみでは、党員拡大では前進がかちとられ、四十万二千二百五十二人の現勢にまで到達しましたが、読者では三十二県、63%の地区委員会が前進したものの全国的には約二千人の後退となりました。

 「大運動」ではじまった前進の流れを、全党に定着させ、本格的前進の軌道にしっかりのせることができるかどうかは歴史的大事業であり、それはこれからのとりくみにかかっています。

 「大運動」の成果をふまえ、つぎの二つの角度から、党勢拡大の継続的な前進をかちとる重大な意義をしっかりととらえ、この課題をひきつづき全党の活動の中心課題にすえ、力をつくしたいと思います。

 第一に、総選挙といっせい地方選挙で、わが党が躍進をかちとるためには、情勢の新たな激動的局面を前向きに打開する力量をもった、強く大きな党をつくることが、きわめて切実な課題となっていることです。

 大会決定では、総選挙の目標として、得票では、「過去最高の峰(一九九八年の八百二十万票)をこえる積極的な目標を、都道府県ごとにきめる」、議席では、「現有議席を確実に確保し、比例選挙での大幅な上積みをめざすとともに、小選挙区制でも議席の獲得に挑戦する」と確認しています。

 いっせい地方選挙では、前回の全体として躍進した陣地を守り前進させること、党議員空白議会を克服することが重要な課題となります。

 これらの目標を、現実にやりぬくためには、なみなみならぬ構えととりくみが、必要であります。この点で、私たちは、三中総以後の中間地方選挙の結果から、リアルな教訓をひきだすことが、いま必要だと考えます。

中間選挙の結果からリアルな教訓をひきだす

 三中総以後、百四十六の自治体で定例中間選挙がおこなわれていますが、そのうち前回比での議席増減をみると、議席増が十三議席、議席減が三十二議席、差し引き十九議席減となっています。そのほかに補欠選挙での当選が十八議席あります。前回比で得票を増やした選挙が31%、減らした選挙が69%であります。

 もちろん、勝利・前進をかちとった、すぐれた経験もあります。定数削減のもと前回水準の得票をえて六人全員勝利をかちとった大阪・河内長野市議選、得票を前回比で約一・五倍にのばして議席を一議席から二議席に倍増させた大分・臼杵市議選などは、学ぶべき多くの教訓があります。

 首長選挙でも、秋田県湯沢市で共産党員市長が誕生したこと、徳島県知事選挙でわが党も推薦した民主的候補が勝利したことなど、特筆すべき成果もありました。

 しかし、全体として、わが党が、中間地方選挙で前進する勢いにいたっていないという事実を、直視しなければなりません。いまおこなわれている選挙は、四年前、九〇年代後半の躍進の時期の改選にあたるものですが、わが党の勢いは、この時期の躍進をつくりだした勢いにまだ及んでいない。これが現状です。

 その原因は、選挙によってさまざまであり、個々に総括が必要です。反動陣営の反共攻撃や組織的締めつけの激しさに、わが党がとりくみの構えのうえで打ち勝てていない選挙もあったことは、今後に生かすべき重要な教訓です。

 同時に、根本の要因の一つとして、党勢拡大が、選挙勝利を保障する水準においついていないということを、指摘しないわけにはいきません。この間の中間選挙をみると、党員では前回比を上まわる勢力でたたかっているところが多いわけですが、読者では前回比で平均して87%という水準にとどまっています。得票が前回比で91%であることを考えると、かりに前回並みの読者を回復してたたかっていたなら、得票も違った結果があらわれていたことは間違いないでしょう。

 また、定例選挙での後退では、候補者がたてられずに、見送りによって十の議席を失っていることは、党建設の遅れが選挙の後退に直結したものとして、重大視する必要があると思います。

 こうした事実にてらしてみるならば、総選挙といっせい地方選挙での前進・躍進という政治目標をやりぬくためには、「四つの原点」にもとづく選挙勝利のための活動を全体としてすすめながら、どのような政治情勢のもとでも党の前進・躍進を保障するための強く大きな党づくりに、全党が知恵と情熱を傾けてとりくむことが、なによりも重要であることは明らかだと思います。このことを全党の共通の自覚にし、この課題に新たな意気込みで挑戦しようではありませんか。

「二十一世紀をたたかう党の根幹をつくる」──愛知・一宮尾北地区の経験から

 第二に、「二十一世紀をたたかう党の根幹をつくる」「民主的政権をになう党をつくる」という大きな長期的な展望とのかかわりでも、それぞれの職場、地域、学園で、どういう党をめざすのかという政治目標をもち、党勢拡大の意義と目標を、あらためて鮮明にすることが重要となっているということです。

 ここが胸に落ち、腹に落ちたところで、深い力が発揮されています。愛知県の一宮尾北地区委員会では、「大運動」を通じて、党員拡大で73%の支部が成果をあげ、百六十一人増と目標を大幅に超過達成しています。読者拡大でも、100%の支部が成果をあげ、二百六十人の読者を増やしています。この地区の活動の教訓は、たいへん多面的で豊かなものですが、その根本にあるのは、「二〇〇五年までに五十万の党をつくる」という目標が、地区と支部全体の生きた自覚的な目標となっていることにあると思います。地区では、「五十万の党をつくる」という場合に、人口比での到達を重視し、人口比0・4%の党をつくることをきめ、それをやりきったらどういう党になるかのロマンを語り、みんなの共通の決意にしています。「大運動」で十二人の党員を増やしたある支部では、小学校単位に支部を確立し、地元から市議会議員を出せる力をもつことを、政治目標としてとりくんでいます。ここには、全党が学ぶべき、深い教訓がしめされていると思います。

党員拡大と読者拡大の目標について

 都道府県、地区委員会、支部は、「大運動」の成果をふまえ、つぎのような考えにたって、党勢拡大の目標を決め、その実現をめざすことを提案するものです。

 党員拡大は、「大運動」のとりくみの速度と規模を、継続的に発展させれば、「二〇〇五年までに五十万の党」をつくる「五カ年計画」を達成することは可能です。それにみあう目標を、いつまでにどうやりきるかの計画を、それぞれの党組織で自主的に決め、やりぬくことにしたいと思います。

 「しんぶん赤旗」の読者拡大では、有権者比、労働者比での到達目標をやりぬく計画をたてるようにします。とくにいっせい地方選挙までに、読者で、前回比を回復・突破して選挙をたたかうことを、全党的な目標としたいと思います。それぞれの党組織によって到達はさまざまですが、全国すべての党組織で、遅くともいっせい地方選挙までには、この課題をやりぬいて、読者拡大でも確実な上げ潮をつくって選挙をたたかいたいと思います。

 「党を強く大きくして、総選挙、いっせい地方選挙での躍進を必ず果たそう」、「二十一世紀をたたかう党の根幹をつくりあげよう」――このことを合言葉に、ひきつづき奮闘しようではありませんか。

(3)党建設・党勢拡大運動を前進させるための、いくつかの留意点について

 党建設と党勢拡大運動を前進させるための方針の基本は、すでに党大会決定、三中総決定で、明らかにされています。これらの方針にたえずたちかえり、実践をはかることを前提にして、ここでは「大運動」をつうじて、解決が求められていると、全党が痛切に実感しているいくつかの課題にしぼって、報告したいと思います。

職場支部の前進と、青年・学生のなかでの活動の強化をどうはかるか

 第一は、職場支部の前進と、青年・学生党員の獲得という二つの問題についてです。全国の都道府県・地区委員長からの報告では、党勢拡大運動を文字どおり「支部を主役」にした全党運動にしていくうえでも、「二十一世紀をたたかう党の根幹をつくる」うえでも、この二つの問題が大きなカギをにぎっているということが、共通した感想としてよせられています。

 今後の活動を展望するうえで、「大運動」をつうじて、この二つの分野でも萌芽的ではありますが、前進のたしかな一歩をふみだしていること、そこには発展をはらんだ多くの教訓がふくまれていることを、よくつかみ、生かす必要があります。

職場支部――発展をはらんだ多くの教訓に学ぶ

 職場支部でも、「大運動」をつうじて貴重な一歩をふみだしています。まだ部分にとどまっているとはいえ、近年にない変化をつくりだしている職場も生まれています。職場支部が全体の九割をしめている大阪・中央地区委員会では、「大運動」期間中に大企業の職場もふくめて約七十人の新入党員をむかえています。

 大阪・中央地区委員会をはじめ、変化をつくりだしている職場支部に共通しているのは、リストラの無法な攻撃にたいして、職場で公然と党の旗をかかげたたたかいに立ち上がり、労働者の雇用と生活を守るよりどころとしての役割を、果たしていることです。退職や転籍を強要された労働者が、悩んだ末に、党員に相談し、攻撃には勇気をもってたたかうしかないと入党を決意しています。「たたかいの組織者」という場合に、リストラ攻撃との大規模なたたかいも重要ですが、職場の労働相談、生活相談などの地道なとりくみによって、「困ったときは日本共産党に相談すれば、力になってくれる」という信頼をかちとることが、その基本であることを強調したいと思います。

 党大会決定が強調した、党員拡大で“広く入党をよびかけ”“広くすべての支部・党員がとりくむ”という方針――「二つの広く」という方針は、居住支部だけでなく、職場支部でも、きわめて重要です。職場での新入党員をみると、これまで党との結びつきが深かった人にかぎらず、これまでは党とあまり結びつきのなかった人も、リストラ問題などをつうじて信頼を深め、急速に変化して、入党した例も多い。人間的な信頼関係をきずくとりくみと結びつけた拡大とともに、広く気軽に真剣に働きかけたところで、予想をこえた変化が起こっていることに注目する必要があります。

 経営側からの攻撃が激しい職場であればあるほど、「週一回の支部会議」と学習を軸に、党生活をしっかりと確立する努力が大切です。そうした努力がはかられているところでは、入党や購読の働きかけのさいにも、説得力をもって対話をする力を、一人ひとりの党員が身につけています。この点で、組合活動が忙しいということで、党生活がおろそかになっている職場支部が少なくない現状を、思い切って改善していく必要があると思います。

 党員の生活の全体にそくして、結びつきを生かした党建設の探求をはかりたいと思います。党員の一日の生活を考えれば、職場のつながりだけでなく、仕事のうえのつながり、居住地域のつながりなど、多面的なつながりがあります。すすんだ職場支部では、その全体を視野において拡大をすすめ、そのことが職場支部の確信と活力にもなっています。

 わが党の職場支部は、長年の不屈の努力によってきずきあげてきた、かけがえのないものです。ここには全党の四割をこえる同志たちが活動し、巨大なエネルギーが存在します。それをどう全面的に発揮するかは、今後の大きな課題であります。

青年・学生分野――青年に心をよせ、要求や悩みにこたえて

 青年・学生分野でも、「大運動」をつうじて千五百人の新たな若い同志をむかえ、まだ一歩であるが、意欲的なとりくみが広がりました。この総会の準備の過程で、中央として、青年・学生分野で先駆的とりくみをすすめている地区委員会の経験を聞く会などをもちましたが、そこではつぎのような教訓が明らかになりました。

 一つは、青年に心をよせ、要求や悩みをつかみ、それにこたえるという基本姿勢でとりくむことが重要だということです。「後継者対策」という趣旨をとりちがえ、青年・学生やその支部の自覚や成長を励ますのでなく、「重荷を早く背負ってほしい」という考え方でとりくんでは、うまくいかない。まず青年を訪問し、さまざまな結びつきで働きかけ、相手の悩みや実態に耳を傾けることから、青年対策の前進ははじまっているということが、共通して報告されました。

 青年の要求という点では、有事法制や、奨学金、雇用などの問題で、多種多様なたたかいと運動が、若者のなかに広がっていることに注目する必要があります。インターネットや携帯電話など、新しい結びつきの手段もつかった、いろいろな運動がうまれています。その全体を視野にいれ、若者のたたかいを励まし、共同を広げるとりくみを、思い切ってすすめることが大切です。

 二つは、青年支部の自主性を尊重し、学習を中心にして温かい援助をおこない、とくに青年を結集するリーダーを育てることに力を入れることが重要だということです。青年が青年を結集する――そうした自立的な運動にしていってこそ、この運動の飛躍への道が開かれます。その中心となるリーダーを育てることは、きわめて大切です。

 横浜北東地区では、四つの青年支部のすべてが「大運動」で成長し、自力で新しい党員を迎えています。ここでは、毎月一回、青年支部長会議を開き、支部会議を粘りづよく開く援助をはかるとともに、地区党学校や講師資格試験を重視し、青年支部が自前の力で活動する中心になるリーダーを育てています。この地区では、居住支部と青年支部との協力や交流もすすみ、それが地区全体を活気づけています。

 三つは、学生分野では、「科学の目」――社会と自然にたいする科学的世界観を学ぶ場を、多様な形で提供するとりくみが、いくつかの大学でおこなわれ、それを通じて学生党員が入党してきていることは、重要です。民主的・進歩的立場で研究活動をすすめている大学教員と協力して、多様な形態でのセミナー、社会科学研究会など、さまざまな形で学ぶ活動を抜本的に強化したいと思います。

 四つは、民青同盟への援助です。

 さきほど強調した青年への働きかけの基本姿勢――青年に心をよせ、その要求と悩みにこたえるという基本姿勢は、民青同盟への援助についての基本姿勢ともすべきことであります。

 民青同盟がいま、有事法制のたたかいをはじめとする平和のたたかいで発揮しているエネルギーは目覚ましいものがあります。奨学金、雇用など暮らしを守るたたかいでも、民青同盟は先頭にたって奮闘しています。

 民青同盟にたいする親身の援助をはかるうえで、民青同盟がこの間組織再編をおこない、地区委員会がなくなるなかで、地区段階で、その地域の民青同盟への党の親身の援助の関係がなくなっているところが多いというところに目をむける必要があります。この問題での改善が必要です。

 地区委員会でまずとりくむべき課題として、その地区のなかで活動している民青同盟の県役員、民青同盟の班と、日常的な懇談にとりくみ、民青同盟の要望を聞き、親身の援助にとりくむようにしたいと思います。とくに学習への援助がいまいちばん民青同盟が望んでいる問題ですから、これに全面的にこたえるとりくみが必要であります。

 「大運動」の教訓も生かし、職場支部と青年・学生のなかでの活動の強化という二つの分野での本格的前進のために、探求と実践をはかりたい。党機関の指導と援助も、居住支部の前進のための援助をひきつづき強化するとともに、職場支部と、青年・学生支部にたいして、抜本的な改善と強化をはかるようにしたいと思います。

 これは、二十一世紀をたたかう党をつくるという大きな展望でわが党の前途を考えたら、「なりゆきまかせ」にしてはならない、計画的・系統的にとりくむべき、きわめて重大な任務であります。

「大運動」の教訓を生かした党員拡大と読者拡大の発展方向

 第二に、党員拡大と読者拡大を、いかにして持続させ、飛躍をつくるか。「大運動」のとりくみをつうじてえた教訓、問題点にかかわって、報告したいと思います。

党員拡大――「内なる壁」を打破し「二つの広く」にとりくむ

 党員拡大では、「党建設・党勢拡大の根幹は党員拡大」という大会決定の正しさが、多くの党組織で実感をもってつかまれ、確信となっていることが、重要だと思います。新入党員をむかえた多くの支部では、それがきっかけになって支部に活力が広がり、見違えるような変化をしています。そうした支部の変化をみて、大会決定が明らかにした「根幹」論の意味が、全党に深くつかまれつつあります。

 全国の報告を読むと、党員拡大の「二つの広く」という方針のもつ力にたいしても、この方針にそくして読者訪問などにとりくんだ経験から、確信が広がっています。そして、「『二つの広く』の方針を文字どおりやりきれば、五十万の党は必ずつくれる」という展望も、多くの県・地区から語られています。

 ただ、すべての読者・支持者を対象として、気軽に、真剣に、広く入党をよびかけるという活動は、まだ始まったばかりです。逆にいえばまだまだくみつくされていない大きな条件と可能性があるということです。

 先駆的なとりくみを切り開いている党組織では、「二つの広く」をとりくむうえでは、「内なる壁」を打破することがカギだったとのべています。すなわち、「こんなやり方で入れても力にならない」「結集できずに離党してしまうのではないか」という声を、克服していくということです。

 そのためには、新入党員にたいする責任をもった教育と援助の実践的努力が必要であることはいうまでもありません。

 同時に、党大会決定が明らかにしたように、今日の日本社会と日本共産党の関係は、新しい発展段階をむかえており、この発展段階にふさわしく、わが党は、日常の活動において文字どおり数千万人の人々を視野にいれて活動することを基本姿勢にすべきであります。また、日本共産党の門戸は日本社会の進歩をめざすすべての人々に開かれているのであって、党の側の都合で「えり好み」せず、広範な人々に入党をよびかけることが、今日の党の発展段階にかなったやり方であることを強調したいと思います。党大会決定にそくして、これらの点を大きくつかんで、足をふみだしていくことが大切ではないでしょうか。

 「大運動」のとりくみをつうじて、私たちは党員拡大で、わが党が大きな前進をかちとる可能性と条件が、広大に存在していることへのたしかな手応え、展望をつかみました。党員拡大運動の持続的発展のために、知恵と力をつくそうではありませんか。

読者拡大――「支部が主役」の自覚的な前進の軌道にいかにのせるか

 読者拡大では、「『しんぶん赤旗』をよく読み、その魅力に“ほれ込み”、それを語ろう」という方針にもとづくとりくみが広がりました。

 多くの支部が、毎月前進するのがあたりまえという活動の水準をきずいている地区委員会で共通しているのは、「しんぶん赤旗」の紙面をつかった支部学習――日刊紙も日曜版も――を重視していることです。「しんぶん赤旗」の役割は毎月違うし、紙面は毎日・毎週違う。それをつねに新鮮につかみ、その中身で対話をしてこそ、拡大が広がります。

 党大会決定では、“「しんぶん赤旗」中心の党活動”を機関紙活動の基本として明確にしましたが、その「大前提」として、「党員と党支部、党機関が、『しんぶん赤旗』をよく読み、討議して、活動する」ことをあげています。この決定にてらしても、「しんぶん赤旗」をよく読み、党の値打ちとともに、「しんぶん赤旗」の値打ちを縦横に語ることこそ、読者拡大運動の基本中の基本であることを、強調したいと思います。

 同時に、「大運動」期間中でも、毎月読者拡大で成果をあげている支部は三〜四割台、前進をかちとっている支部は二割前後でした。この現状を前向きに打開し、それぞれが自覚的にきめた政治目標の実現をめざし、読者拡大で、毎月成果をあげ、着実に前進する党支部を、いかに全党の大勢にしていくかが、全党の大きな課題です。

 読者拡大を、「支部が主役」の安定した本格的前進の軌道にいかにのせるかは、中央も地方も、苦労と模索の段階にあるのが現状だと思います。そのために二つの点で、ぜひ討論で深めていただきたい問題提起をしたいと思います。

 一つは、どうすれば“土日型”“月末型”“いっせい行動型”だけの活動からの脱皮をはかるか、ということです。もちろん、“土日”や、“月末”や、“いっせい行動”の重要な意義を、いささかも否定したり、弱めたりするものではありませんが、事実上これにだけ頼る活動からの脱皮なくして、安定的な前進はないことも明らかです。こうした活動から脱皮する一つのカギは、一人ひとりの党員が、さまざまな結びつきを生かして、日常的に党を語り、「しんぶん赤旗」を語る――日常的対話にとりくむ気風を、いかにつくるかにあるのではないでしょうか。

 いま一つは、いかにして減紙を減らすか、ということです。その基本は、安定した配達・集金体制を全党の力を結集してつくることもふくめ“「しんぶん赤旗」中心の党活動”を全体として軌道にのせることにありますが、ここでも一人ひとりの党員が読者と、日常的に、またさまざまな折にふれて、党と「しんぶん赤旗」についての対話をおこない、相手の声や要望に耳を傾け、人間的な信頼をきずくことが、重要になるのではないでしょうか。

 どちらも、党が国民のなかに打ってでて、さまざまなたたかいを組織し、結びつきを広げ、それと一体に党と「しんぶん赤旗」を語る対話を、日常的に自由闊達(かったつ)におこなう気風をつくり、対話をする力を多くの党員が身につけることが、この問題の前進的打開の一つのカギになるのではないでしょうか。

 これらのことは、ぜひ討論によって深めていただきたいと思います。

「量とともに質を」──学ぶ気風、週一回の支部会議、党機関の指導力量について

 第三に、「量とともに質を」ということについても、「大運動」の教訓をふまえ、若干の問題を報告をいたします。

「学ぶ気風」――新入党員教育のすみやかな修了は最優先課題

 まず、「学ぶ気風」を強めるということです。

 ここで、まず何をさておいても最優先すべきは、新入党員教育のすみやかな修了です。「大運動」期間中に一万一千四百十六人が修了しましたが、どんどん新しい同志が入ってくるもとで、未教育数が八千人にのぼります。希望と抱負をもって入党を決意した新しい同志に、党員としての基本的な教育を保障し、それぞれの条件や悩みもよく聞き、支部活動に参加し、その一員としての活動が軌道にのるまで援助することは、真剣で努力を要する一大事業だということを肝に銘じて、この仕事にとりくみたいと思います。

 地区党学校は、不破議長の二つの文献(綱領と科学的社会主義)、第二十二回党大会決定をテキストに、全体として意欲的にとりくまれてきましたが、都道府県別に大きなアンバランスがあります。すすんだ党組織では、地区党学校・支部教室が開かれています。このとりくみのいっそうの推進を求めたいと思います。

 党本部では、不破議長を講師に、「代々木『資本論』ゼミナール」がとりくまれていますが、ある財界人からそれに注目して、つぎのような感想がよせられました。

 「いま共産党で『資本論』を党内で読みなおしているという話だが、いま起きている世界と日本における変化は、シチュエーション(状況)の変化にとどまらない、歴史そのものの変化という気がする。それで今マルクスに戻ってみようという試みとして納得できる」

 二十一世紀にはいって、目の前で展開している情勢は、日本でも、世界でも、まさに一つの状況の変化にとどまらない文字どおりの歴史的な激動です。激動の時代では、歴史の本流と逆流を見抜く科学の力、理論の力が、とりわけ大切になります。こうした見地からも、「学ぶ気風」をいっそう党内にみなぎらせたいと思います。

「週一回の支部会議」――全党に定着するまで力をつくすべき大事業

 「支部が主役」の活動をつくる要のなかの要として、「週一回の支部会議」の全党での定着を、私たちは、くりかえしよびかけてきました。二月の都道府県委員長会議で紹介した東京・新宿地区の副委員長の発言――「週一回の支部会議を開くのがたいへんなのではなく、開かないことがかえってたいへん」という指摘が、広く実感をもってうけとめられ、自覚と努力がすすんだことは、うれしいことです。

 しかし、「週一回の支部会議」が定着した支部が、全体の約四分の一という到達点は、ごく初歩的な前進にすぎません。

 私は、今年の「党旗びらき」のあいさつで、「党員の生きるよりどころ、心のよりどころとなる温かい人間集団としての支部を、週一回の支部会議を軸に建設することは、一つひとつは小さいようにみえても、やりがいのある大事業」であること、「これが大勢になれば、党が生まれ変わったような力を発揮することが必ずできる」とのべましたが、この「やりがいのある大事業」にひきつづき挑戦し、全党に定着するまで力をつくしたいと思います。

党機関の指導――支部のもつ“前進を願う内発的な力・動機”に依拠して

 党建設・党勢拡大運動を、「支部が主役」の文字どおりの全党運動にしていくうえで、党機関の指導水準・指導力量をどうひきあげるのか。このことが昨日の幹部会でも議論になりました。それぞれが苦労しているところだと思います。

 情勢を主体的に切り開く党の役割を全党の確信にする政治指導を何よりも、優先させるとともに、支部の実情にそくした個別の指導・援助に、どう熟達するかが、大きな課題になっていると思います。

 支部の条件や特徴は、一つひとつすべて異なっていますが、どんな困難をかかえている支部でも、そのなかには「支部を大きくしたい」「みんなが団結した温かい支部活動をつくりたい」という、前進を願う内発的な力・動機が存在しているのではないでしょうか。その力をみつけだし、そこに依拠するならば、困難をかかえている支部を、一つひとつ自覚的な運動の軌道にのせていくことができることを、すすんだ経験はしめしていると思います。

 いわば“おしつけ型”でなく、内発的な力・動機をみつけだして、それを励まして支部の困難を打開する。そうした支部がもつ成長の可能性に信頼をおき、自覚的成長をうながす個別の指導・援助をする力を、すべての党機関が身につけることが大切になっているのではないでしょうか。

(4)選挙勝利のための独自のとりくみについて

 総選挙といっせい地方選挙で勝利をかちとるためには、党を強く大きくする運動にとりくみながら、選挙勝利のための独自のとりくみを、早くから着実にすすめることが、必要です。大会決定、三中総決定の方針を前提に、当面の強化点について報告します。

選挙体制のすみやかな確立──とくに候補者決定について

 第一は、党が後援会と一体に選挙体制をすみやかに確立し、国民の要求にこたえる活動に多面的にとりくみ、大量政治宣伝と対話・支持拡大をはじめ、広い有権者のなかに打ってでる活動を、抜本的に強めることです。

 その大前提が、政治目標の設定と、候補者の決定であることは、いうまでもありません。

 衆院選挙について、わが党は早期の解散・総選挙を要求する党として、いつ解散となっても対応できる備えをとっておく必要があります。

 比例選挙の候補者については、次期比例候補者の最終名簿はしかるべき時期に発表しますが、当面は前回の比例候補者名簿を、ひきつづき現在の候補者名簿として、活動していくことを基本としたいと思います。

 小選挙区の候補者については、現在決定しているのは三百選挙区のうち、約八十選挙区ですが、すみやかに予定候補を決定するようにします。

 いっせい地方選挙について、候補者決定は立候補予定にくらべて42%と、大きく遅れています。この間の中間選挙の教訓にてらしても、こうした状況がつづくなら致命傷になりかねない重大な遅れです。党議席空白議会の克服も、大事な課題ですが、いっせい地方選挙がたたかわれる五百五十の党議席空白議会のうち、立候補計画は二百七十二市町村、候補者決定は五十七市町村にとどまっています。すべての空白議会で候補者を擁立し、議席をかちとることを、全党の共通の目標として、奮闘したいと思います。

 八月末には、全国地方議員集会が予定されていますが、どんなに遅くとも、この会議までに、すべての予定候補者を決定するようにしたいと思います。

中間(国政・地方)選挙で、党の上げ潮をかならずつくりだす

 第二は、中間選挙で、党の上げ潮を必ずつくりだすということです。

 国政での補欠選挙が、四月と十月にまとめて実施されます。十月二十七日投票の選挙では、現在のところ、衆院補選では山形四区、神奈川八区、大阪十区、参院補選では千葉選挙区、鳥取選挙区と、あわせて五選挙区で中間国政選挙がたたかわれます。この選挙結果は、そのときどきの政局はもとより、その後の国政選挙、地方選挙の動向にも影響をあたえます。その位置づけを早くから鮮明にして、躍進と勝利をめざして全力をあげるものです。

 中間地方選挙で、停滞・後退傾向を打ち破り、上げ潮に転じることは、総選挙・いっせい地方選挙の勝利にとって、きわめて重要であります。いっせい地方選挙までに、茨城県議選、沖縄いっせい選挙など、数多くの中間地方選挙がありますが、その一つひとつを重視し、議席と得票での前進を、必ずかちとって、全国的な政治戦にのぞみたいと思います。

 東大阪市長選、沖縄県知事選をはじめ、重要な首長選挙での勝利をかちとるためにも、力をつくすものです。

 選挙方針については、私たちは、参議院選挙の結果を深く総括し、全党の英知を結集してねりあげた、三中総決定をもっています。この方針を縦横に生かし、つぎの政治戦では、必ず勝利者となるために、全力をあげようではありませんか。

三、党創立八十周年の記念すべき年に大きな前進を

(1)八十年の党のたたかいは、二十一世紀に生きる大きな財産をつくった

 わが党は、この七月十五日で、党創立八十周年をむかえます。

 私たちが、党史をふりかえって痛感するのは、二十世紀に、八十年の歴史のなかでわが党がなしとげてきた成果と到達は、二十一世紀の日本と世界の前途を切り開く、大きな生きた力をもっているということです。

二十世紀の日本の最大の政治的変化──専制政治から民主政治への転換と日本共産党

 二十世紀の日本の最大の政治的変化は、「主権在君」の専制政治から、「主権在民」――“国民が主人公”の民主政治への転換でありました。これは、日本の歴史上、画期的な出来事であり、“国民が主人公”という原則は、二十一世紀に生きる日本の政治の大原則であります。

 この原則をかちとるうえで、戦前の党の不屈のたたかいが果たした役割は、不滅のものでありました。一九二二年に日本共産党が誕生したことで、はじめて、天皇絶対の専制政治に反対し、主権在民の徹底と民主主義の実現をかかげる政党が、公然と日本に生まれました。そして、多くの犠牲をともないながらも、凶暴な弾圧に抗した不屈のたたかいは、戦後、憲法に実をむすび、主権在民の原則を憲法に明記させる力となりました。

 専制政治に反対するたたかいは、侵略戦争と植民地支配に反対するたたかいと不可分のものでした。このたたかいもまた歴史で決着がつきました。それは、今日の憲法の恒久平和主義の原則に実をむすんでいます。

 戦前のわが党の不屈のたたかいは、二十一世紀に生きる巨大な意義をもっています。歴代自民党政府が、戦後半世紀たってもいまだに侵略戦争への真の反省を欠いたまま、歴史の事実をねじまげ、歴史を逆行させる態度をくりかえすなかで、戦前の日本共産党のたたかいは、二十一世紀の日本が、アジアの諸国民と心の通った平和と友好の関係をきずくうえで、かけがえのない意義をもつものであります。

 憲法の平和的・民主的諸原則――国民主権と国家主権、恒久平和主義、基本的人権、議会制民主主義、地方自治などの諸原則は、日本の進路をしめす羅針盤として、今日いよいよ光彩をはなっています。わが党の二十世紀の不屈のたたかいは、二十一世紀の進路をてらす羅針盤となるこれらの憲法の進歩的原則を、日本国民のたたかいの伝統そのものに根拠をもつ原則として、うちたてていくうえで、大きな歴史的意義をもつものでありました。

自主独立──二十一世紀の自主外交の土台、社会主義の展望を語る根拠となった

 戦後、わが党は、「五〇年問題」などの痛苦の試練をへて、武装闘争のおしつけと他国の干渉を拒否し、自主独立の立場と綱領路線を確立しました。そして、この立場を、党の理論と実践のすべてでつらぬいてきました。

 とりわけ旧ソ連と中国・毛沢東派の覇権主義的干渉を打ち破ったことは、党と日本の民主的運動を守っただけでなく、社会主義の大義と理想を守るうえで、二十世紀の科学的社会主義の運動への国際的貢献ともなりました。

 二十一世紀を展望したとき、このたたかいも、大きな意義をもつたたかいであります。わが党は、このたたかいをつうじて、党としての外交活動の基本をすえました。それは、相手がだれであれ、わが国の運動への干渉は許さない。それが守られれば、どの国、どの政党とも、対等の立場で交流する。日本の国民の利益や世界の平和にかかわる重大な問題がおきれば、相手がだれであれ、国際的な道理にたって堂々とものをいうという立場であります。

 わが党は、こうした立場にたって、アジア諸国をはじめとして積極的に外交活動にとりくみ、さまざまな成果が実をむすびつつありますが、この姿勢は、将来、わが党が民主的政権に参加したときにも、一貫してつらぬく立場であります。

 干渉を打破し、自主独立を確立したたたかいは、今日、わが党が、二十一世紀の科学的社会主義の展望を堂々と語れる歴史的・理論的根拠ともなっています。

 旧ソ連からの干渉との長いたたかいをつうじて、わが党は、旧ソ連社会の実態が政治的にも経済的にも、社会主義とは無縁の体制であること、わが国の社会主義の未来において、「ソ連型の政治・経済・社会体制による人間への暴圧を、『社会主義』の名においておしつけることを、けっして許さない」ということを、きっぱりと明らかにしました。

 この立場にわが党が揺るぎなく立っているからこそ、自由と民主主義をあらゆる分野にわたって豊かに開花させ、利潤第一主義をのりこえ人間による人間の搾取を根絶した「真に平等で自由な人間関係からなる共同社会」への展望を堂々と明らかにすることができるのであります。

 いま二十一世紀の世界資本主義は、恐慌や失業、南北問題、環境問題など、利潤第一主義の狭い枠組みでは解決不能の、深刻な諸矛盾に直面し、「ポスト資本主義」という問題が、さまざまな立場の人々からも模索されています。資本主義をのりこえる新しい社会制度への前進をはらんだ世界的な激動のなかで、わが党が確固とした社会主義論をもって新しい世紀をむかえた意義はきわめて大きなものがあると考えるものであります。

綱領路線──歴史の試練にたえ、二十一世紀に現実政治とかみあった生命力

 八十年の党史でわが党がかちとった最大の成果は、綱領路線の確立と、この路線にもとづく党の発展をかちとってきたことにあります。

 一九六一年の第八回党大会で確立した綱領路線――当面の改革の課題を「資本主義の枠内での民主的改革」とする路線は、その後の四十年余の歴史の試練に立派にたえただけでなく、二十一世紀のわが国の真の改革をさししめすプログラムとして、現実政治とかみあっていよいよその力を発揮しつつあります。

 自民党政治はこの四十年余、アメリカいいなりに軍事同盟を強化する道、大企業のもうけの応援を最優先する道をひたすらすすんだ結果、冒頭にものべたように深刻なゆきづまりにつきあたっています。

 わが党の綱領路線は、このゆきづまりから日本が脱出するには、「この道しかない」というふとい展望を明らかにしています。とくに、九〇年代以降、「ルールなき資本主義」をただし大企業の民主的規制をはかること、「逆立ち財政」をただして社会保障の将来にわたる安心できる展望を開くこと、安保廃棄をめざしつつ当面の日本外交についても民主的転換の方策を明らかにしたこと、憲法九条の完全実施をめざして自衛隊の段階的解消にとりくむことなど、綱領路線を現実政治にそくして多面的に具体化した「日本改革の提案」を明らかにしてきたことは、綱領路線が二十一世紀に大きな生命力をもつことを、立証するものであります。

 また、わが党は、大会決定で、アメリカ主導ですすめられている「グローバル化」という事態にたいして、単純に「グローバル化反対」をいうのではなく、多国籍企業・大企業の国際的規模での民主的規制を中心とする民主的な国際経済秩序の確立を対置しました。これは今日、多くの非同盟諸国の共通の要求となっていることでありますが、ここにもわが党の綱領が国際的にも大きな応用力をもっていることが示されていると思います。

(2)世界的な視野からみても、党の八十年の成果と到達は大きな意味をもつ

 わが党の八十年の歴史は、こうした政治的・理論的到達点とともに、この路線にたって、広く国民と結びつき、営々とした努力で党をつくり、国政と地方選挙でもたしかな地歩をきずいてきたことでも、二十一世紀に大きな財産をつくりました。

 わが党が、戦前に誕生した同じ時期に、世界各国でも共産党が生まれました。しかしサミット七カ国をみても、最初から共産党の運動を非合法として苛烈(かれつ)な弾圧の対象としていた国は日本のほかにありませんでした。欧州諸国の共産党は、誕生当初から、議会で一定の地歩をしめるところから出発しています。

 ところがいま、わが党は、サミット諸国のなかの共産党で、四十万人をこえる党員、二百万ちかい「しんぶん赤旗」読者という、もっとも大きな党勢力をもつ党となり、二十世紀をつうじて発達した資本主義国の共産党のなかでも最大の勢力をもつ党となっています。欧州の有力な諸党が、ソ連との関係に弱点をかかえてきたことが大きな要因の一つとなって、その勢力を後退させるなどのなかで、わが党が、こうした地歩をえていることは、政治路線の正確さとともに、国民と結びついた党をうまずたゆまずつくるための草の根での全党の同志のみなさんの不屈の努力の成果であります。

 とくに、「しんぶん赤旗」を日々発行し、粘りづよい配達・集金、拡大によって支えてきたこと、草の根で国民と結びつく二万五千の党支部を、全国津々浦々にもっていることは、国際的にも先駆的な、わが党の誇りある到達点です。

 二十一世紀にはいって、地球的な規模で、巨大な社会進歩の可能性をはらんだ激動的情勢が進行しています。世界人口の77%をしめる非同盟諸国――多くは発展途上諸国のなかからは、社会進歩への大きな胎動が発展しています。「社会主義をめざす国」は、個々さまざまですが、「市場経済をつうじて社会主義へ」という壮大な事業に挑戦している国も存在しています。そのなかで発達した資本主義国での変革の勢力としては、世界のなかでも日本共産党がしめる位置は特筆すべきものがあります。二十一世紀の人類の進歩を展望したとき、わが党の果たすべき役割は、世界のなかでも大きなものがあると考えます。

 党創立八十周年の記念すべきこの年に、全党が、党史への誇りを新たにし、党建設・党勢拡大でも、選挙でも新たな前進を記録するように、全力をあげようではありませんか。

 以上をもって、幹部会報告といたします。




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