2002年7月18日(木)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長は十七日の党首討論で、小泉内閣が強行しようとしている社会保障改悪が日本経済に与える影響について追及。経済への深刻な打撃について小泉首相にまったく自覚がないことが鮮明になりました。
社会保障の国民負担増について小泉首相を追及する志位委員長=17日、衆院第1委員室 |
志位 私は、社会保障の負担増の問題についてうかがいます。
このパネルを見てほしいんですが、来年度は、社会保障の史上最悪の負担増の年になる危険があります。
まず医療保険ですが、いま参議院で大問題になっている法案が通りますと、健保本人三割負担への引き上げ、高齢者一割負担の徹底、そして保険料の値上げなどで、一兆五千百億円の負担増となる。
介護保険では、来年は三年に一度の保険料の見直しの年でありまして、日本医師会の調査によりますと、保険料は平均で約一割アップになる。そうしますと、二千百億円の負担増です。
それから年金保険ですが、財政制度審議会の報告によると、物価スライド凍結の解除が打ち出されておりますが、これをやられますと、物価の下落に従って(年金が)カットされることになる。これは九千二百億円となります。
それから雇用保険。厚生労働省の方針として伝えられるところでは、保険料率を(月収の)1・2%から1・4%、1・6%に段階的に上げる。これをやられますと、負担増は六千億円。
合計三兆二千四百億円ですよ。これは政府の公式の方針(による計算)です。私は、これは非常に重大な史上最悪の負担増になろうとしていると思います。
ほんらい社会保障というのは、国民が苦しい生活をしているときに、生活の支えとなるのが、社会保障です。ぎりぎりの苦しい生活をやっているときに、逆に社会保障が国民に襲いかかるような事態をつくっていいのか。(「そうだ」の声)これが問われていると思います。
首相に認識をうかがいたいのは、そういうことが強行されたら、日本経済にどういう影響を及ぼすかということについての認識です。先ほど「景気の底入れ」ということをおっしゃいましたけれども、そういうことを実感されている国民の方は、ほとんどいらっしゃらないと思う。実際、倒産とリストラで、所得はどんどん落ち込む。消費は落ち込みっぱなしです。そういう状況のもとで、三兆二千四百億円もの―社会保障だけでですよ―、負担増をかぶせたら、いったい経済にどういう影響を及ぼすか。私はたいへん深刻な打撃をこうむることは間違いないと思いますが、経済にたいする影響という点での、総理の認識を端的にうかがいたいと思います。
小泉首相 社会保障は、国民のいわゆる安全・安心確保という観点から、極めて大事な問題であり、経済の面からも十分配慮しなければいけないと思います。経済政策と切り離して考えることはできないと思います。経済政策のみならず、政治の安定ということを考えても、きわめて重要な課題であると思っております。
同時に大事なことは、社会保障におきましても、国民がいかに負担していくかということであります。財政面も経済面も、そして具体的な、いま言った医療にしても年金にしても介護にしても、考えていかなきゃならない。そういうなかで、私どもとしては、いまの財政状況をどう思うか。これから高齢化の時代、少子化の時代、いまの制度で、果たして社会保障の制度はもつのかどうか。保険制度にしても、このままやっていけるのかどうか。そういうことを総合的に考えなきゃならない問題であります。
しかもいま、財政にしても、きわめて深刻な状況でございます。そういうことから考えて(「質問に答えていない」の声)いま、私は質問に十分答えているつもりなんですが、社会保障と経済とどういう関係があるかという質問です。その点について、経済政策と社会保障政策を切り離すことはできないと言っているんです。
私は、それじゃあ、給付ばっかり先やりなさい、財政はどうするんですか、という観点がなかったら、社会保障制度は維持できないんです。保険料ばっかり下げなさい下げなさいと言ったら、あと税金はどの程度もつのか、そういう問題が出てきます。これは経済と密接な関係があります。財政政策と密接な関係があるんです。社会保障制度というのは、経済の面も両面に考えなければならないということを、申し上げているんであります。
志位 私は、三兆二千四百億円の負担増をかぶせられたら、経済にどういう影響があるかを聞いたんです。それにたいして、何にもお答えにならないじゃないですか。(「そうだ」「答えてないぞ」の声)
総理はいま、財政がたいへんだとおっしゃいましたけど、長野のダムの中止のためにがんばっている知事を、みんなで引き降ろすような、そういう無駄遣いをどんどん進めているのは、あなた方じゃないですか(「そうだ」の声)。私は、そういう税金の使い方というものを含めて、この問題を真剣に検討すべきだと(いう立場です)。
私は総理の答弁を聞いていまして、いまの負担増の深刻さについての認識は、まったくないなと思いました。
志位 97年時の負担増より事態は深刻。経済が悪くなれば、財政の悪化と負担増の悪循環まねく
志位 九七年度の橋本内閣、あなたが厚生大臣だったときの消費税増税などの九兆円の負担増、あれが景気をみんなたいへんな大不況に突き落としたということは、国民のみなさんが経験ずみのことです。しかし、あの時は、政府の統計でも、国民の全体の(雇用者)所得(注)は、景気の回復のなかで伸びてたのですよ。毎年五兆円伸びていた(グラフ)。五兆円伸びている上り坂のときでも九兆円負担増ですから、さしひき四兆円の所得が減って、ああいう事態になった。
ところが総理、いまは所得が減っているんですよ。景気悪化で政府の統計でもだいたい毎年二兆円の(雇用者)所得の減少がある。所得が減っているところに三兆円の負担増の追い打ちをかけたら、合計五兆円も所得を奪うことになるでしょう。これが経済にどういう影響を及ぼすか。
経済が悪くなったら、税も入ってこなくなる。保険料だって入ってこなくなる。現に二〇〇一年度の税収は、政府見通しより三兆円少ないじゃないですか。健康保険だって、(保険料収入が)一千億円減ることになるんですよ。
結局、総理のやり方をすすんだら、またここへ三兆円も負担増かけたら、ますます景気が悪くなる、税も入ってこなくなる、保険料も入ってこなくなる、それで、また負担増だということになれば、悪循環になるじゃありませんか。ですから、ここは全体をみて、この負担増政策を真剣に見直すべきだと、中止すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
首相 この提示した先ほどあげたなかでは、政府の試算とは違う点があります。細かくあれこれとはいいません。しかしながら、それでは、これを税負担でやるといったらどうやって財源を調達するんですか。共産党のいってることをみれば、これをやらないで税金・公費を投入しろということでしょ。財政状況をどう考えるのか。どこで増税するんですか。そういうことを言わないで、つぎはぎをとらえて、ここは負担が多い、負担が多いと。医療保険とか社会保障だけではありません。経済は総合的に考えなければだめです。
志位 増税でなく、税金の使い方を変えようと言っているのです。負担増中止を、かさねて要求して終わりにします。
【注】雇用者所得(報酬) 生産活動から発生した付加価値のうち労働を提供した雇用者への分配額をさします。あらゆる生産活動に従事する就業者のうち、個人事業主と無給の家族従業者を除くすべての人を含みます。法人企業の役員、特別職の公務員、議員なども含みます。