2002年8月1日(木)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長あいさつ

(大要)


日本共産党の志位和夫委員長が七月三十一日の議員団総会で行ったあいさつ(大要)は次の通りです。


 百九十二日間にわたる長い国会でしたが、閉会にあたって、ごあいさつを申し上げます。

小泉政治の底が割れ、正体が見えた――すみやかな解散・総選挙で審判を

 私は、先日あるマスコミからインタビューを受けたさいに、「今度の国会を一言でいうとどうなりますか」と問われまして、「小泉底割れ国会」と答えました。すなわち、小泉政治の底が割れた――正体が見えたというのが、今度の国会の特徴だったと思います。

支持率の急速な崩壊――衰退をたどることは避けられない

 国会が開会されたときは、まだこの内閣の支持率は八割を超えて、熱狂的なブームが続いていました。それが、その後、急激な崩壊がおこり、だいたい支持率が四割台、五割台の前後まで落ちました。

 この間の「抵抗勢力」といわれる人たちとの“八百長試合”もあってか、多少もちなおしたという観測もありますけれども、私は、この内閣が衰退の道をたどることはさけられない、かつてのような熱狂的なブームは永久に過去のものになったと思います。

 この政治的激変の直接の契機になったのは、つぎつぎとあふれ出てきた腐敗政治にたいして、この内閣が何らの反省も、ひとかけらの自浄能力ももち合わせないことを、さらけだしたことにありました。

 同時に長く続く不景気で、ぎりぎりの生活苦を強いられている国民にたいして、医療改悪法の強行にみられるように、耐えがたい痛みを押しつけて、そのことを痛みに感じない政治。有事法制の論戦でうきぼりになったように、度はずれたアメリカ追随と憲法蹂躙(じゅうりん)の危険な政治をやりながら、そのことを危険と感じない政治。このことが深いところで国民の怒りと不安を広げた結果だと思います。

戦後自民党政権のなかでも最悪、最低の内閣の一つ

 私は一月二十一日の国会開会日のあいさつで、小泉政治について、「古い自民党政治を変えることについては、もっとも頑迷固陋(がんめいころう)な反対派、抵抗派」であるとのべましたが、この国会を通じて小泉内閣が戦後の歴代自民党政権のなかでも最悪、最低の内閣の一つということが明りょうになったというのが、今度の国会の結論だということを言いたいと思います。(拍手)

「平和」「福祉」「清潔」「公約実現」――公明党の“四枚看板”はすべてはがれ落ちた

 くわえて言いますと、小泉・自公保政権をささえる公明党の役割も明りょうになりました。

 この党がかかげていた“四枚看板”がすべてはがれ落ちた国会であったと思います。

 「平和の党」という看板は、有事法制の推進をもっとも忠実に支えた党ということで、まったくの偽りだということが明らかになりました。

 「福祉の党」という看板は、自民党議員ですら、あの医療改悪法案の強行に躊躇(ちゅうちょ)しているときに、もっとも熱心にこれを推進した党として、これも偽りであったことが証明されました。

 「清潔の党」という看板についても、ムネオマネーが公明党議員にもわたっていたということを私たちが指摘したら、逆うらみをして「共産党の中傷」だといってきたことにあらわれるように、腐敗政治の側に身をおいていた。これも偽りの看板であることが明りょうになりました。

 そして、最後に「公約実現の党」はどうか。これも参議院選挙で「健保本人三割負担は反対」といいながら、法案を強行したことで、まさに公約を裏切る党であるということが、この党の正体であったことも、のべておかなければならないことであります。

 この党の“四枚看板”はすべてはがれ落ちたということです。(拍手)

 国民をニセの「改革」の看板で欺いてきた小泉・自公保政権の責任は重い。すみやかな解散・総選挙で審判をあおげということをこの機会にあらためて強く求めたいと思います。(拍手)

国会論戦と国民運動の力が合流して、重要な成果をあげた

 この国会は、国会論戦と国民運動の力が合流して、一連の重要な成果をあげた国会でもあったと思います。私は、二つの点について強調しておきたいと思います。

腐敗政治の追及――汚れたカネと無縁の党ならではの真価を発揮

 一つは、やはり腐敗政治の追及です。この問題で日本共産党が果たした役割は、汚れたカネを一切受け取らない党ならではの真価を発揮したものだったと確認できると思います。(拍手)

 とくに、「ムネオハウス」の告発に始まる一連の追及は、今度の国会の全体の流れを変える転換点となりました。ムネオ疑惑に司法のメスが入るところまで追い込みました。

 それから機密費問題の告発も、政府は知らぬ存ぜぬの一点張りでありますけれども、私は、事実を明らかにしたことは、今後ああいう乱脈をおさえていく一定の抑止の力となって働くと思います。高級紳士服を、「国会対策」と称してばらまき、「着服」するということは、なかなか恥ずかしくてやりづらくなるでしょう。

 さらに、同和問題と鈴木疑惑とのつながりについてのわが党の追及は、わが党ならではのものでありまして、マスコミも注目したところであります。

 私たちは、これらの一連の追及のなかで果たした先駆的役割について、自信と誇りを持って、ひきつづき奮闘する決意を固めあいたいと思います。(拍手)

有事三法案――道理の力、国民のたたかいの力に確信を

 いま一つは、有事三法案の今国会での強行成立を食い止めたということです。

 首相は「備えあれば憂いなし」の繰り返しでした。すなわち、日本が攻められた場合の備えという、“偽りの土俵”に国民世論を引き込むという作戦をとりました。

 これにたいして、私たちは、それはまやかしであって、この法案の本質は、米軍が海外で行う介入戦争にたいして、日本が武力行使をもって参戦する法案であり、国民を強制動員する法案だという、“真実の土俵”を設定し、その土俵のうえで、相手を追いつめる論戦を行いました。

 そのことが、国民的運動と合流して、世論の流れを変え、強行成立を食い止めた。

 調べてみますと、政府・与党が重要法案と位置づけた法案を、衆議院も通過させずに食い止めたのは、一九九三年にいわゆる連立の時代が始まって、与野党が入り乱れるようになってから、実はこの法案が初めてのことであります。(拍手)

 道理の力、国民のたたかいの力に確信をもって、つぎにのぞみたいと思います。(拍手)

秋にむけてのいくつかのたたかいの課題について

 秋にむけてのいくつかのたたかいの課題についてふれておきたいと思います。

臨時国会――有事法案の息の根を止めるたたかいの正念場に

 有事三法案のたたかいの決着は、秋の臨時国会に持ち越しとなりました。この国会での不成立という事態は、政府・与党にとっては手痛い失敗であって、屈辱だろうと思います。ですから、彼らはここから彼らなりの教訓を引き出し、態勢をたて直し、新しい策略を用いて、秋の臨時国会では成立をはかるために執念をもやしてくるでしょう。われわれはいささかもここで気をゆるめるわけにはいきません。

 いま米国がすすめている新しい覇権主義の戦略とのかかわり、その覇権主義がイラクにたいして発動される危険ともかかわって、私は、秋の臨時国会が有事法制の息の根を止めるうえで、たたかいの正念場になる国会だということをしっかり腹にすえて、がんばり抜く必要があると思います。

 相手は、閉会中からさまざまな手だてをとってきますから、私たちも、国会はここで閉じますけれども、手をゆるめず、この法案の危険な本質を広く国民の共通の認識にしていく努力を、ひきつづき強めたいと思います。(拍手)

くらしと経済――国民負担増政策を許さないたたかいを

 くらしと経済の問題では、国民負担増政策を許さないたたかいが非常に重要であります。

 すでに明らかにしてきたように、来年度は社会保障の分野だけで、医療、介護、年金、雇用保険合わせて三・二兆円の負担増の危険が目の前に迫っています。

 それにくわえて、所得税の控除見直しによる庶民増税、外形標準課税の導入による中小企業増税などの増税計画も、具体化されようとしています。

 その一方で、大企業むけに法人税の減税の動きもあります。社会保障を削減して、大企業減税の財源にあてることほど、私は逆立ちした政治はないと考えるものであります。(拍手)

 この負担増の計画は、国民のくらしと健康を破壊するだけでなく、日本経済をまさに破局に突き落とすものです。一九九七年に橋本内閣が行った九兆円の負担増という大失政を、さらに悪い形で繰り返すものであります。これを許さないたたかいは、秋から来年にかけて非常に重要なたたかいになる。ぜひこのたたかいでも国民のくらしを守るよりどころの党としての真価を発揮した奮闘をしたいと思っています。

ガルブレイス氏の警告――「『哀れなフーヴァー』の二の舞になるな」

 この問題にかかわって紹介したいのは、ジョン・ケネス・ガルブレイス氏――アメリカの著名な経済学者が、最近公刊した『日本経済への最後の警告』という著作です。小泉政権にたいする辛らつで、痛烈な批判がここにはのべられています。

 「日本の政権担当者たちは、『消費税率の引き上げ』を初めとする広く薄い税収増や、『健康保険の自己負担分の増額』などの社会保障制度への切り込みなど、結局は『社会的弱者』層の“痛み”感が増すようなことばかりに力を入れている。……これでは早晩、内閣支持率の低下どころではなく、それこそ本当の『恐慌』が起こりかねない」。「『哀れなフーヴァー』の二の舞になるな」。「貴重な財政資金は福祉充実にこそ使うべきだ」。こういう主張であります。

 フーヴァーというのは、一九二九年の大恐慌のおりに、「事態は好転している」と株価の大暴落の直前まで言い続けて、なすすべをもたなかったということで悪名高いアメリカの大統領です。橋本内閣が日本経済を大不況に突き落としたときに、“フーヴァー橋本”といわれたのを思い出しますけれども、いまや小泉首相も“フーヴァー小泉”と海外から見られ始めているのも非常に印象深いことでした。

 私たちの主張――社会保障の切り捨てをはじめとする国民負担増を許さない、税金の使い方を変え、税制の民主的改革をすすめることで、内需を拡大し、国民のくらしを守りながら経済をたて直すという主張は、日本の経済についてまじめに考え、まじめに心配している方でしたら、立場の違いを超えて、共有できる、ひとつの流れになりうるということを、この本を読んでも痛感したわけであります。

政治戦での躍進・勝利、党を強く大きくするたたかいをともに

 今年は党創立八十周年の年であります。私たちはこの記念すべき年を新たな党躍進の転機に向かう年にどうしてもしたいと考えています。

 そのためには、十月二十七日に投票予定の五つの国政補欠選挙で、私たちが躍進・勝利を勝ち取る。総選挙といっせい地方選挙で躍進・勝利を勝ち取る。選挙で上げ潮に転じることがどうしても必要であります。

 そして、そのためにも、強く大きな党をつくるための取り組みを、暑い夏の盛りですが、全党の同志のみなさんと一緒にすすめたい。去年のくやしい参議院選挙の後退から私たちがひきだした一番の教訓は、強く大きな党が必要だというところにありました。この教訓を私たちは片時も忘れてはなりません。

 この暑い夏の盛りの八月、そして九月、つぎの臨時国会までの間、おおいに国民のなかに打って出る活動を強めながら、党を強く大きくする活動に取り組み、つぎの国会の論戦の準備もおこたらず、理論学習につとめ、みなさんに健康でまたお会いしたいということを最後にのべまして、閉会にあたってのごあいさつといたします。ご苦労さまでした。(拍手)