2002年8月5日(月)「しんぶん赤旗」
日本共産党長野県委員会は四日午後五時から、長野県・上田駅前で、志位和夫委員長を迎えて街頭演説を開催しました。あいにくの雷雨のなか二千二百人が駅頭を埋め、志位委員長と石坂千穂・日本共産党長野県議団長、県議補選候補(上田市区)の高村京子さんの訴えに熱心に耳を傾けました。
「全国がかたずをのんで注目している選挙です。公共事業のあり方、自治体とは何かが根本から問われています」。こう切り出した志位委員長は、知事選は田中前知事への不信任の可否を問う選挙になると強調しました。
ダム推進の県議会多数派による不信任案の強行は、「公約を守って公共事業見直しにとりくんでいる最中に無理やりひきずりおろすという、県民に対する乱暴な挑戦」と批判。道理のない暴挙に正面から反対したのは五人の日本共産党県議団だけであり、この立場から日本共産党は田中康夫氏を支援して勝利のために力をつくすと述べました。
そのうえで、党県議団が田中県政に対し、積極的な施策には協力し、いうべきことは率直にいうという基本姿勢をつらぬいてきたことを紹介。県議会で六議席以上になれば議案提出権、代表質問権を得られるとして、知事選と同時にたたかわれる上田、下伊那の両区県議補選で、県民の声を堂々と代弁できる日本共産党を必ず勝利させてほしいと力を込めて訴えました。
志位氏は、選挙戦の「最大の争点」は、「『脱ダム』の道をすすめるか、逆もどりさせるか。具体的には浅川、下諏訪両ダムの建設を中止するのか、推進するのかです」と述べ、田中知事が表明した「二つのダムの中止」が道理と県民の声にたったものであることを明らかにしました。
第一は、「民主的な手続きにもとづく検討をしっかり踏まえている」ことです。
二つのダム中止は、議員提案でつくられた「長野県治水・利水ダム等検討委員会」での検討と「答申」をふまえたものです。「検討委員会」は県議会全会派、市町村代表、専門家など幅広い人々で構成し、住民参加を貫き、安全性、環境問題、財政問題など多面的な検討を一年間にわたってすすめてきました。その結論として出された「ダムによらない」という「答申」を田中知事は尊重したのです。
第二は、「県民の意思はすでに明りょうである」ことです。県世論調査協会の調査で「ダム中止支持」約六割、信越放送が流域住民を対象に行った面談調査でも「ダム不要」が六〜七割を占めており、「県民にとっては、『ダム中止』は突然でも唐突でもない。長い議論での結論」だということです。
志位氏は、他の知事候補が、総論では「脱ダムは当然」といっても、具体論になると「二つのダムは反対」といえないと指摘。女性弁護士候補は、自民党中心のオール与党県政時代に、公共事業評価監視委員会のメンバーで、二つのダムの「継続」を認めたことをあげ、「ダム固執の県議会多数派がこの人を応援すると伝えられているのも、『この人なら安心』と考えているからです。こういう逆戻りの動きに県政を託すわけにはいきません」と訴えると、「そうだ」の声援が飛びました。
さらに志位氏は、ダム固執派がいっているさまざまな攻撃は「どれも自分の身にかかってくるものだ」と反論しました。
「ダムを中止すれば国から『補助金返還』を命じられ、県財政が破たんし、三十人学級もできなくなる」というが、政府は一九九八年にムダとわかった公共事業を必要な手続きで中止した場合、「補助金の返還は求められることはない」との通達を出しており、「補助金返還」には何の根拠もないと指摘。
さらに、県借金(普通債)は吉村県政後半(九一年度末から〇〇年度補正後)で一兆円増となった一方、田中県政の二年間は三百七十一億円減らしたことをあげ、「ムダな公共事業を積み増して一兆円の借金を増やしたのはだれか、三十人学級の要望を阻んできたのはだれかを、自分の胸に手をあててしっかり反省すべきだ」と述べると、大きな拍手がおきました。
また「ダムの代替案がない」との攻撃に志位氏は、田中知事が「検討委員会」の「答申」を踏まえ、河川改修と森林整備や遊水池など流域対策を組み合わせて対応する代替案の枠組みをきちんと示し、その具体化作業を始めていたことをあげ、「具体化のため責任ある努力を妨害しておきながら、代替案がすすんでいないというのは天につばするものだ」と強調しました。
「知事の手法が問題。説明責任を果たしていない」との攻撃に志位氏は、「『手法』というなら何よりも大切なのは、県民への公約を守り、県民への説明責任を果たすことではないか」と指摘。世論調査の結果は、「ダム中止」の側が説明責任を果たし、逆に「ダム推進」の側が二十年以上もかかって説明責任を果たしていないことをはっきり示していると述べました。
「ではなぜ、これほどまでにダムに固執するのか」。こう問いかけた志位氏は、ダム建設下請け企業・山崎建設の内部文書(九五年十二月)に、全国のダム工事を受注する「本命企業」の一覧表が記載され、その後発注された二十六ダムのうち二十二までが内部文書通りだった事実を告発。浅川ダムの受注企業も入札の五年前から決まっており、受注した大手ゼネコンのひとつ、前田建設は自民党本部への企業献金トップの企業でした。
志位氏は「全国的に張り巡らされた談合ネットワークがあり、ゼネコンが税金を食い物にし、自民党に巨額の献金をするという政官財癒着の典型がある」と指摘。「ダムに固執する理由は、こうした利権のおこぼれにあずかろうというほかに説明がつきません。ダム固執派の議論は県の財政、県民の命、対話、民主主義を真剣に考えてのものではありません。ただ自分たちの利権を守ろうとしているだけです。そんな勢力に、絶対に負けるわけにはいきません」と力を込めると、大きな拍手がおこりました。
志位氏は、「巨大開発の浪費政治から抜け出してこそ、自治体の本業である福祉と暮らしを守る道が開かれます」と訴え。田中県政の二年間で注目すべきものとして、(1)公共事業と社会保障の逆立ち財政に変化が生まれたこと(2)公共事業の中身も土木、農政、林務の「三公共」から福祉・環境型に変わりつつあること(3)県民の運動、党県議団の要求などもうけ、小学校一年生からの三十人学級を実現したことをあげました。
志位氏は、国政で三・二兆円の社会保障の負担増計画が狙われているだけに暮らしを守る自治体の役割が求められていると述べ、「長野県の変化は全国が注目しています。この変化を絶対に後戻りさせてはなりません。田中康夫さんの再選、そして日本共産党をぜひのばしてほしい」と訴え、大きな拍手がおきました。
高村候補は「県民の願いを踏みにじった知事不信任は許せません。今度こそ議場で頑張りたい」と決意表明。石坂県議団長は、「田中前知事の再選と、日本共産党の前進で、変わり始めた県政をさらに前進させましょう」と呼びかけました。参加者から「そうだ」「頑張るぞ」などと元気なかけ声が飛び、拍手がわき起こりました。
長野市から駆けつけた男性(48)は、「田中県政で県政が県民に近くなった。脱ダムの理念は世界的に評価できるもの。日本共産党の県議が増えて田中さんを応援してほしい」と語っていました。