核燃依存、大型開発、福祉切捨て
――“三つの害悪”県政をきりかえよう

青森・演説会での志位委員長の訴え(2002年9月23日)


 みなさんこんにちは。日本共産党の志位和夫でございます(拍手)。
 今日は、広い会場いっぱいの、さらに第二会場もあふれる多くのみなさんがお運びくださいました。私からも心からのお礼を申しのべさせていただきます(拍手)。
 青森県といいますと、私ごとですが思い出がありまして、伯母が青森市内に住んでおりまして、子どものころ遊びにきたものでした。市内のはずれの家だったのですが、眼の前に青々と田んぼが広がり、夜になるとホタルがいっぱいというところで、なつかしく思い出します。奥入瀬渓流に遊びにいったり、十和田湖で泳いでしびれるほど冷たかったことを思い出しますが(笑い)、たいへんになつかしいところでもあります。
 今日は、あと半年後にせまったいっせい地方選挙で、日本共産党をぜひ大きく躍進させていただきたいということを、お訴えにまいりました。よろしくお願いいたします(大きな拍手)。

日朝首脳会談と日本共産党の立場

 私は、はじめに、日朝首脳会談と日本共産党の立場についてのべさせていただきたいと思います。拉致というたいへんに痛ましい事実も明らかになるなかで、多くの国民のみなさんが、一連の結果をどうみたらいいのか、さまざまな思いをもち、考えておられると思います。
 私は、三つの点について、私たちの立場をのべさせていただきます。 

正常化にむけた交渉再開――重要な前進の一歩

 第一は、今度の首脳会談で日朝国交正常化にむけた交渉を再開するという合意がつくられたことは、悲劇のなかでの一歩ではありますが、やはり重要な前進への一歩であるということです。
 これまでは日朝の間には国交はおろか、交渉ルートすらありませんでした。何も話しあえないのです。そうするとどういうことになるか。九八年から九九年ぐらいを思い出していただきたいのですが、テポドンというミサイルが打ち上げられた。そういうことがありますと、日本の側では、「いつ攻めてくるかわからない。それなら軍事で身構えなければ」という議論がおこりました。北朝鮮の方でもおなじように「いつ攻めくるかわからない」という議論をやっている。軍事対軍事の悪循環という、とてもあぶない状況がすすみました。話しあいのルートがないと、そういうことになってしまう。
 そこで、わが党の不破委員長(当時)が、一九九九年の国会で、この危ない状況を打開するうえでも、ミサイルの問題でも、拉致の問題でも、過去の清算の問題を解決するためにも、政府の間で話しあいのルートを持つべきではないかという提案をしたのです。それがその後、いろんな曲折はありましたけれども、今度の首脳会談につながりました。
 ですから八月三〇日に日朝首脳会談をおこなう発表された後に、党首会談がありまして、私がその場で小泉首相に、首脳会談をおこなうという首相の決断を、「心から歓迎する。わが党としても協力をおしまない」とのべたのは、こういう経緯があったということをご理解いただきたいと思うのであります(拍手)。 

拉致問題――正常化交渉のなかで問題を提起し解決を 

 第二に、首脳会談のなかで、北朝鮮による拉致という重大な事実が明らかになりました。その結果は、思いもよらない痛ましいものであって、ご家族のみなさんの悲しみはいかばかりかと思います。これは国際犯罪です。国家機関が関与していたならば、いよいよことは重大です。わが党は、すぐにきびしい抗議の態度を表明しました。そして、拉致の被害にあった方はこれだけなのか、拉致の被害にあった方々がどういう扱いを受けたのか、その責任者はだれなのかなど、真相を全面的に明らかにすること、責任者への処罰をおこなうこと、被害者への謝罪と補償をおこなうことなどを、国交正常化交渉の中で提起し、解決をはかっていくことが必要だと主張しています。
 同時にここでよく見ておく必要があるのは、北朝鮮が態度を大きく変えたということです。これまでは「拉致はやってない」という、ほうかむりの態度でした。その態度を変えて、ともかく拉致の存在を認め、責任を認め、謝罪をしたというのは、大きな転換であると言えると思います。
 日朝首脳会談のつぎの日の党首会談で、小泉首相は、国交正常化交渉の再開に踏み切った理由としてこういいました。「先方も誠意ある態度をもって日朝間の関係改善をはかる意思を感じたので交渉再開にふみきった」。小泉首相としても「誠意ある態度」ということを感じたということでした。拉致をやったことは、絶対に許せないことです。しかし拉致の事実をともかくも明らかにしたということは、その点では重要な一歩だとみる必要があるのではないでしょうか。 

国民の利益、アジアと世界の平和の大局にたって

 第三に、一部に、今度の首脳会談で、小泉首相が、国交正常化交渉の再開に合意したことを「けしからん」とする声があります。
 日朝首脳会談の翌日に、小泉首相と野党四党首との会談がありました。その場で、民主党の鳩山代表は、「国交正常化交渉は時期早尚だ」という。自由党の小沢党首は、「共同宣言に署名したのはあやまりだ」という。要するに国交正常化交渉再開に反対という態度です。
 私は、ちがうと思う。もちろん一日の首脳会談で、日朝間のいろいろな問題がすべて解決したわけではない。しかし交渉なしに問題の解決がはかられないことも明瞭ではないでしょうか(拍手)。拉致の問題についても、これから真相究明をしなければならない。被害者の方々への謝罪と補償、再発防止の問題もちゃんとやらなければなりません。これも本気でやろうと思ったら、交渉をつうじてこそ解決できるのではないでしょうか(拍手)。北朝鮮に制裁をやって、交渉の門戸を閉じろという意見がある。それはまちがいだと思います。制裁で門戸を閉じてしまって、その後にどういう展望が開かれるでしょう。
 私は、いま日本と北朝鮮との間に、国交正常化をめざして話しあいをすすめていく、そのなかでいろいろな問題の解決をはかる、そしてほんとうに平和で安心してくらせる関係を両国につくる努力をはかることが、何よりも大切なことだと考えるものであります(拍手)。
 ですから私は、党首会談でこういったのです。「国交正常化交渉再開の小泉首相の決断は、重くつらいものがあったと思うが、『交渉なしに改善ははかられない』という立場からの決断を、私は強く支持する」。そして、「交渉の前途には、曲折や困難も予想されるが、『日朝共同宣言』にもとづいて、諸問題を理性と道理をもって解決し、日朝両国の平和と友好の関係が築かれることを、強く願ってやまない。わが党は、ひきつづき、そのために必要な協力をおしまない」とも表明しました。
 もちろん党首会談で私は、小泉首相にむかって、「小泉さんと私とでは、国政の基本問題では、内政でも外交でも、ありとあらゆる点で、もっともきびしく対決している」といいました。こういいましたら相手も「そうだ」といっていましたから間違いないでしょう(笑い)。「しかし、この問題については、小泉首相のとっている一連の行動は、道理にかなったものだから、支持し協力する」といったのです。国民の利益、アジアや世界の平和にからみて、よい方向に進むというときには、野党であっても協力するのは当然ではないでしょうか(拍手)。
 私たち日本は、アジアに生きている国です。ですから韓国との関係も、北朝鮮との関係も、中国との関係も、東南アジアとの関係も、いろいろな問題をすべて平和的な話しあいで解決できる関係をつくる必要がある。わが党は、そのための野党としての外交努力を重ねてきましたが、北朝鮮の関係でも、お互いが「いつ攻めてくるか」などという議論が必要ない、ほんとうの友好の関係にするために、ひきつづき力をつくしたいという決意を、ここで申しあげたいと思います(拍手)。

いっせい地方選挙ーー容易でないが、がんばれば勝利ができる

 さてみなさん、いっせい地方選挙の問題です。ここから先は、小泉首相と対決です(拍手)。この選挙に勝利するのは、なかなか容易でないと思っています。しかしがんばれば道が開かれる。その条件はあると思っております。
 この九月一日にとても嬉しいニュースがありました。長野県で知事選挙がおこなわれましたが、日本共産党が応援した田中康夫知事が相手候補に圧勝しました。そして同時におこなわれた上田市の県議補欠選挙では、定数一で、相手は県政会の一騎打ちの選挙で、相手を一万票以上はなして、日本共産党の高村京子さんが堂々の勝利をかちとりました(拍手)。
 長野県政では、ほんとうに大きな変化がおこっています。「脱ダム」に象徴されるように、巨大開発にお金をどんどん流し込むのをやめて、公共事業を福祉・環境型に切りかえよう、三〇人学級など教育のためにお金を使おう、そういう税金の使い方の大きな改革がおこっている。日本共産党も、大きな積極的な役割をはたしている。そういうなかでの勝利なのです。
 私は、八月の最初に、上田市に応援にいったときのことを忘れられません。私が上田市で街頭演説を始めますと、時あたかも雷がガラガラドシャンと落ち始めるんですよ(笑い)。そして雨がドーと降り始めました。街頭ですから、お年寄りがずぶぬれになってしまいまして、はやく演説を終わらなければと思って、はらはらしながらしゃべっているんですが、ところが誰も帰らない。それどころか、どんどん人が増えて、二千二百人という上田では最高の演説会になりました。私は、その様子をみて、たいへんな深い変化がおこっている、そう感じました。
 同じような変化は、全国どこでも起こりうる変化だと思います。今度のいっせい地方選挙では、ぜひこの条件をくみつくした必ず勝利・躍進をかちとりたいと決意しておりますので、どうかお力をおかしください。よろしくお願いいたします(大きな拍手)。

イラク攻撃、有事法制に反対ーー平和の願いをこの党に 

 さて、どういう情勢のもとで、今度の選挙がやられようとしているでしょうか。国の政治のほうをみますと、私は、自民党政治が、あらゆる分野で国のかじ取りをする能力をなくしていると思います。

イラク攻撃――国連憲章を蹂躙する無法に反対しよう

 外交ではどうでしょう。日本外交の一番の弱点は、アメリカとの関係です。アメリカには頭が上がらない。この外交を続けていっていいのかという問題は、非常に深刻になっているのです。
 アメリカはいま、同時テロから一年たって、とても危ない道にふみだしてます。あのテロからブッシュ大統領がひきだした「教訓」というのは、一言でいいますと「やられるまえに、やっつけろ」という「教訓」なのです。そのことは、八月十五日に公表された「国防報告」のなかではっきり書かれました。先制攻撃をおこなう、核兵器も使う、気に食わない政権は転覆する。そういうことがはっきり書いてあります。九月二〇日に公表されたホワイトハウスの「国家安全保障戦略」という、政府の基本の文書のなかでも、「先制攻撃を単独でおこなうことをためらわない」と書かれました。
 その最初の標的にされようとしているのはイラクです。しかしイラク攻撃には、大義名分がひとつもありません。イラクと九月十一日のテロ行為を結びつける証拠は何もしめされていません。イラクが核兵器を開発しているという証拠も何もしめされていません。大量破壊兵器の問題は、あくまでも国際的交渉で解決するべきではないでしょうか。大量破壊兵器を持っているかもしれないという疑惑だけで、戦争に訴えるというのは絶対に許されないことではないでしょうか(拍手)。
 大義名分はなく、あるのは憎しみだけなのです。こんなことが許されたら、国連憲章がなくなってしまうではありませんか。国連憲章というのは、武力攻撃を原則的に禁止しています。その例外は、侵略されたときの自衛反撃だけです。先制攻撃というのは、どんな理屈をつけても国連憲章やぶりです。
 そして、この戦争をやった場合の結果は恐るべきものです。どこが戦場になるかというと、今度は砂漠ではない。バクダッドの攻防戦になるといわれています。しかしバクダッドには五〇〇万の人が住んでいるのです。五〇〇万人の都市が、空爆にさらされたり、地上戦の舞台になったら、どれだけの民間人が亡くなるかはかりしれません。しかも中東のみなさんが一番心配しているのは、パレスチナ、イスラエルの紛争に飛び火することです。イスラエルは核兵器を持っているといわれています。アメリカがイラクを攻撃する。そして中東全体が戦乱に巻き込まれる。イスラエルが核兵器を発射する。これは最悪のケースです。
 みなさん、これはどうしても、いま世界が声をそろえて「許すな」の声をあげるべきときではないでしょうか。合言葉はただ一つです。「国連憲章を守れ」という合言葉です。みなさん、「国連憲章を守れ」というスローガンのもとに、イラク攻撃という無法を許さないために、急いで国際的な世論と運動を広げようではありませんか(拍手)。

アメリカいいなりの情けない態度――有事法制をきっぱり葬ろう

 小泉首相のこの問題での態度はどうでしょうか。私は、国会で二回ほど論戦をしたことがあるのです。
 一つは、有事法制特別委員会の論戦です。このとき私は、当時、ラムズフェルド国防長官が「先制攻撃を辞さない」という言葉をはっきり使っているということを小泉首相にしめして、「先制攻撃という無法は許されないというべきだ」と迫りました。小泉首相の答弁は驚くべきもので、「アメリカの選択肢として理解します」という。
 つぎに私が論戦したのは、党首討論のときです。アメリカが核兵器を持っていない国にたいしても、一方的に核兵器を使う戦略をもっている。これがアメリカ政府のいろいろな報告書で明らかになっている。これを示して、「被爆国の首相なのだから、核兵器使用に反対すると言えないのですか」とただしましたが、これについても「選択肢として理解する」という。なんでも「理解する」なのです。
 イラクの攻撃についても、日米首脳会談の前の党首会談で、「ブッシュ大統領に会ったら、イラク攻撃はきっぱり反対だと明言すべきだ」ということを、私は首相にいいました。しかしブッシュ大統領に小泉首相さんが言ったことは、「国際協調でお願いします」ということだけでした。「反対」とはいえない。しかし、「国際協調」でやったとしても、先制攻撃が無法であることには変わりはない。参加する数が多少増えたとしても、無法は無法なのです。どうして「反対」と言えないのか。私は、たいへん情けないことだと思います。
 そう考えますと、有事法制の道理のなさもはっきりしてきたと思います。アメリカがイラク攻撃という危険な方向に乗り出そうとしている、その危険な米軍と日本がいっしょに戦争をやろうというのが有事法制ですから、いよいよ危険性がひどくなった。みなさん、ますます危険性がひどくなり、ますます道理がたたなくなった有事法制を、きっぱり葬るために、ぜひ力をあわせようではありませんか(拍手)。

三兆円の社会保障負担増の中止をーー大企業・大銀行へのばらまきをやめれば

 党首討論――史上空前の社会保障負担増を告発

 経済はどうでしょうか。いまたいへんな不況ですが、そのなかで小泉さんがやろうとしていることは、ほんとうにひどいまちがいです。
 ここにもってまいりましたが、七月の党首討論で使ったパネルです。このときに私が訴えたのは、来年は社会保障だけで史上空前の負担増が押しつけられるという問題なのです。医療費の値上げで一兆五千百億円、介護保険の値上げで二千百億円、年金の引き下げで九千二百億円、雇用保険の値上げで六千億円、あわせて三兆二千四百億円。この告発をやりました。そうしたら心ある方のなかでは、三兆円という数字が共通のものになってきました。この前、テレビ朝日の「ニュース・ステーション」という番組を観ていましたら、経済アナリストで森永卓郎さんという方が、「小泉内閣はこの不況のなかで三兆円という負担を国民に押しつけようとしている。橋本内閣と同じ失敗を繰り返すつもりか。まったく理解できない」というコメントを言っていましたが、まったく同じ主張です。ずいぶん共通の認識になってきたと思います。
 私は、小泉首相に聞きました。橋本内閣がやった一九九七年の九兆円の負担増――消費税、医療費の値上げなどは景気をぺしゃんこにしたけど、あのときは景気は上向きだった。年間でいいますと、国民全体の所得が六兆円ふえているところに九兆円かぶせて、差し引き三兆円減って大不況になった。いまはサラリーマンの所得も下がる、農家の所得が下がる。所得が年間四兆円減っている。そこに三兆円かぶせたら、あわせて七兆円減でしょう。橋本不況以上のひどいことになる。その数字を出して、こんなことをいまやったら、いよいよ景気の底がぬけちゃいますよと、首相の認識をただしたのですが、経済の影響がどうなるかについて、小泉首相の答えはいっさいない。小泉首相の悪いクセは、自分が困ることについては、聞いたことに応えないで、聞かれていないことに答えるということなんです(笑い)。首相が語気を強めていったのは、「負担増がいやなら増税か」ということでした。 

大企業には二兆円こえる減税、大銀行には税金を使った支援

 ならば私は聞きたい。第一に、政府が、国民のみなさんに、こういうひどい負担を強いておきながら、大企業には減税のバラマキをやろうとしているのはどうしてか。大企業には、法人税を引き下げる、政策減税をやる、合計二兆円を上回る大減税をやろうとしているじゃありませんか。国民には負担増、大企業にはバラマキというのは、誰が考えても理解できない話ではありませんか(拍手)。
 第二に、なぜ大銀行にさらに税金をつぎ込もうというのか。公的資金を入れて大銀行を助けようというのか。「不良債権の処理」のためといいます。「不良債権の処理」というのは、中小企業をつぶすということでしょう。しかも今度は、日銀が、大銀行の持っている株を買ってやる。日銀が買った株が下がったら、国民の損になるわけです。危険はみんな国民負担で、大銀行はホクホクです。
 みなさん、これまで大銀行にどれだけ税金がつぎ込まれたか、ご存知でしょうか。四年間で三〇兆円です。三〇兆円といってもピンときませんね。持ったことないですから(笑い)。四年間で三〇兆円というと、一日二百億円。土日も休まず(笑い)、国の金庫から銀行の金庫に、毎日二百億円はこんで、四年間で三〇兆円です。でも二百億円といってもピンときませんね。これも持ったことないですから(笑い)。十月からお年寄りの医療費が値上げになる。窓口負担一割の徹底です。この医療費の負担増は全国で二千億円です。銀行へ十日分、お金を持っていくのをやめて、お年寄りのほうに切り替えれば、医療費の値上げの必要がなくなるじゃありませんか(拍手)。
 私は、大企業や大銀行にばらまく金があるのなら、まず社会保障という命と暮らしを支える基本の責任をはたすべきだ。負担増はやめろという声を、ぜひ広げていただきたいと思うのであります(拍手)。

国民の安全への責任ーー原子力行政の問題について 

原発の損傷隠蔽――「五つの緊急提言」

 国政の問題でもう一つお話したいのは、国民への安全への責任も、自民党政治にはないということです。東京電力、中部電力、東北電力で、あいついで原発のトラブルの隠蔽事件がおこりました。このトラブルは深刻です。というのは原子炉を冷やす、冷却水の配管にかかわる、ひび割れなどの事故なのです。もしひび割れが進んで、冷却水がもれたらどうなるか。冷却水漏れという事故が時々あったでしょう。マンションの水漏れとはわけがちがう(笑い)。たいへんに深刻なのです。原発で冷却水がもれるということは、原子炉が暴走して、温度があがっちゃう。燃料がどろどろに溶けて、たいへんな大事故になる。スリーマイル事故とかチェルノブイリ事故とか、ああいうものになる危険につながるということなのです。
 私は、今日、青森市で記者会見をやりまして、「五つの緊急提言」を発表したところです。明日、政府に申し入れます。みなさんのお手元にもお配りしてあると思いますが、
 一、第三者機関による事故隠しの全容の徹底的な究明をおこなうこと、
 二、安全確保のために、独立した原子力規制機関を確立すること、
 三、プルトニウム循環方式という危険きわまりない政策を中止すること、
 四、核燃料サイクル施設の総点検・計画の中止をはかること、
 五、原発大増設路線に根本的なメスをいれること。
 これは原発に賛成、反対を超えて、緊急にいのちと安全を守る提案として、どなたもご賛同いただけるものと考えるものであります(拍手)。

安全チェック体制なし、プルトニウム循環方式――世界にない異常

 私は、今度の問題をみて、ほんとうに日本は、つくづく異常だと思うことがいくつもあります。
 一つは、安全チェックが働かない国なのです。トラブル隠しがどうして発覚したかというと、ゼネラル・エレクトリック・インタナショナルという外資系の元社員が、二年前に告発していた。そこから始まったのです。政府がみつけたのじゃない。事故隠しは十五年間も続いていた。その間、毎年政府は検査をやっていた。しかし一件も政府は見つけられなかった。経済産業省に原子力安全・保安院というのがあります。ところが毎年検査をやっていても、一件もみつけられない。要するに能力がないということなのです。それどころかいま、「対策」としてやろうとしているのはますますひどい。今度は少しひび割れがあっても続けていいですよというマニュアルを作ろうというのです。たとえば、炉心隔壁(シュラウド)については、その半分までひび割れしていても運転を続けていいですよというものを作ろうとしている。国に報告したら、原発を止めなければならなくなる。だから停めなくてもいいように、多少のトラブルは大目にみようというものを作ろうとしているわけです。とんでもない話じゃないですか。私は、これは、「安全・保安院」とは言えないと思います。「トラブル・保存院」だと思います(笑い)。
 どうしてこうなるかといいますと、経済産業省という原子力発電を推進するという組織のなかに、規制の機構があるからです。これは分離しなければならないというのが国際的なルールです。私たちが、あらためてこの機会に、推進部門から独立した規制機関をただちに作りなさいという要求をしたのは、こういう理由からです。
 もう一つの日本の異常は、プルトニウム循環方式をいまだにやっている唯一の国だということです。すなわち使用済みの核燃料からプルトニウムをとりだして、それを燃料にして、それを燃やして発電する。それをさらに再処理して、さらに発電する。ぐるぐる回してやれば、永久にできる。この方式にいまだに固執している。しかしこれは、すっかりなりたたなくなりました。というのはプルトニウム燃料を、燃やすところはもうなくなっているのです。
 プルトニウム燃料を、高速増殖炉「もんじゅ」のような特別の炉で燃やす計画でしたが、事故が起こって動かなくなってしまいました。そこでしようがなくなって、プルサーマルという、一般の原発の軽水炉でプルトニウム燃料を燃やそうという計画になったけれど、これも今度の事件で、新潟の県知事も反対する、福島の県知事も反対する。プルサーマルもできなくなってしまいました。どこにも燃やすところがないのです。ぐるぐる回しができなくなってしまったのです。それでもまだやめようとしないのは、まったく道理のたたない政治ではありませんか。
 みなさん、この問題でも、国民の安全と命に責任をもつ政治の転換が、いま求められているということを、強く訴えたいと思うのであります(拍手)。 

青森県政ーー自民党と「オール与党」によって“三つの害悪”が

 さてそういうなかで、地方政治の焦点はどこにあるのでしょうか。ここまでお話してきたように、いま国の政治は外交ではとても危険な道に行こうとしている。経済では不景気のもとで逆噴射です。国民の安全にも責任を負わない。そういうときこそ、自治体ががんばるべきです。自治体が福祉とくらしの守り手として、しっかり仕事をするのが当たり前だと思います。
 ところが青森県政は、自民党と「オール与党」の県政のもとで、その仕事をまったくやらない。とんでもない害悪を持ち込んで、県政をひどくしていると思います。“三つの害悪”を持ち込んでいる。このままでいいのか。これが今度の選挙の大争点だということを訴えたいのです。 

原子力依存の県政を、21世紀もつづけていいのか

 第一の害悪は、原子力施設を受け入れ、それに依存する県政を、二十一世紀もつづけていいのか、という問題です。
 青森県の原子力施設の中心は、プルトニウム循環方式のための施設です。これをどんどん建設し、操業にのりだすという道をすすんでしまっていいのか。このことの県民的な議論が、今度の選挙では必要だと思います。 

とほうもない危険が県民におしつけられる

 まず、この道を進んだら、とほうもない危険が県民に押しつけられる。たとえば六ヶ所村に、二〇〇五年から操業される予定の施設で、使用済み核燃料の再処理施設というのがあるでしょう。使用済み核燃料を再処理して、プルトニウムを取り出す工場です。これは、非常に危ない工場だということを言わなければなりません。この原型が茨城県にあるので、その調査にも行き、そこでも詳しく話を聞きました。六ヶ所村に作られる再処理工場というのは、年間八〇〇トンの使用済み核燃料を処理する。八〇〇トンの処理というと、原発八個分です。原発八個分の放射能を抱え込む施設になるのです。ですから事故が起こったときの危険性は、ある意味では原発をはるかに上回る危険性があるということを言わなければなりません。
 再処理というのはどのようにやるのか。この過程がたいへんに危険です。使用済み核燃料を、まず細かく切って、硝酸という酸のなかで溶かすのです。この過程でクリプトンという放射能のガスが出てくる。平常運転をやっているときでも放射能を撒き散らすのが再処理工場なのです。ですからイギリスのセラフィールドの再処理工場では、周辺の人々に白血病が多発している。こんな危険な工場の操業は、いまからでも中止すべきではないでしょうか(拍手)。  

青森県を核のゴミ捨て場にしていいのか

 もう一つは、青森県を核のゴミ捨て場にしていいのか、という問題です。プルトニウムの循環方式というのは、「循環」することが前提なのです。プルトニウムが回ってはじめて「循環」でしょう。ところが、循環の見通しがなくなってしまった。高速増殖炉でも、プルマーサルでも、もうプルトニウム燃料を燃やすことに、見通しがたたないのです。プルトニウム燃料を燃やすところがないのに、再処理工場をつくってプルトニウムを取り出して、MOX燃料というプルトニウム燃料を加工する工場をつくってプルトニウム燃料をたくさんつくったところで、どうしようもないではありませんか。燃やすところがないのに、どんどん再処理工場を稼動させたら、青森県にプルトニウム燃料がたまる一方になるだけということになります。
 しかも、むつ市には、全国の原発から排出される使用済み核燃料を引き取って、「中間的」に保存しようという施設をつくる計画があると聞きました。「中間貯蔵施設」というそうです。しかしみなさん、「中間貯蔵施設」というのは、ここで貯蔵された使用済み核燃料が再処理工場に行って、はじめて「中間」になるんです。ところが再処理工場のほうは先の目途がない。そうなったら「中間」ではなくなる。「永久貯蔵施設」になってしまうではないですか。そんなものをむつ市につくっていいのか。このことを追及しますと、当局は、「中間です。なぜならば施設が六〇年しかもたないから」と言ったそうでありますけれども、そんなことで「中間」の証明になりません。
 さらに六ヶ所村では、これはすでに稼動しておりますけれども、高レベルの放射性廃棄物の貯蔵センターもあります。ガラスのようなものに放射能をとじこめて、ものすごく熱いですから三〇年から五〇年かけて冷まして、どこかの安定した地層に埋めるという計画です。しかしみなさん、三〇年から五〇年先のことなんて、いまの知事が責任を負ってくれるんでしょうか。誰も責任を負わない。どこかに引き取ってくれる所が五〇年後にあるのか。見通しなんかありません。だいたい安定した地層なんて日本列島のどこかにあるのか。この地震列島で。埋めたと思ったら、火山から噴出するかもしれないという笑い話もあるくらい、日本には安定して埋めるところなんてないですよ。ここでも、「最終処分地にしない」と言うけれども、それは口先だけで、その保障はまったくないのです。

子々孫々が、安心して暮らせる青森県を

 このように再処理工場では、行き先のないプルトニウム燃料をつくる。中間貯蔵施設は最終貯蔵施設になる。高レベルの放射性廃棄物の貯蔵施設も最終施設になる。結局、青森県に日本中の核のゴミを集めて、子々孫々までこの青森県が放射能を抱え込むということを、いま選択したら、私は、子々孫々にもうしわけのたたないことになってしまうと思います。ですからどうしても、この路線はやめさせなければならないのではないでしょうか。
 新潟でも、福島でも、いままでプルサーマル推進だった自治体も、反対に変わっているでしょう。青森県だけですよ、知事ががんばっているのは(笑い)。木村知事の発言を聞きますとびっくりします。「政府がこう説明したから安全です」、「電力会社がこう説明したから安全です」、「原子力政策は、揺るがず推進する」。こう言っています。私は、この点でもいまの県政は、青森県の未来をあずかる資格がないと思います。
 みなさん、この無謀な方針を、県政のうえでも大元から見直しをさせて、私たちの子々孫々が安心してくらせる青森県をめざすのが、われわれの責務だということで、がんばりぬこうではございませんか。どうか日本共産党をこの点でもよろしくお願いいたします(拍手)。

破綻した「開発会社」の道を、無反省につづけていいのか

 第二の県政の害悪は、破綻した「開発会社」の道を、無反省につづけていいのかという問題です。
 私は、全国歩いて、どこでも共通している病気だと痛感するものがあるのですが、「ゼネコン病」というのがあるのです。「ゼネコン病」の特徴は、一言でいって「開発をすれば需要が出てくる」ということなのです。開発すれば、必ず儲かるだろう。そう思いこんで巨額の税金を使う。青森県でみますと、とくにひどい問題が山積みです。

破綻したむつ小川原開発――危険な核融合炉を誘致

 たとえば、むつ小川原開発です。五五〇〇ヘクタールの巨大開発ですが、開発すれば工場が来ると思いこんでやったのです。しかし工場が来ない。工業用地の四割しか売れないで、事業を進めたむつ小川原会社は経営破たんです。ところが、その反省なしに、いまとんでもないことに乗りだそうとしていますでしょう。
 イーター(ITER)というのをご存知だと思います。これは、国際熱核融合実験炉というものです。この誘致を計画している。核融合というのは、どういうものか。原爆をゆっくり燃やすのが普通の原発です。核融合炉というのは水爆をゆっくり燃やすようなものなのです。技術的にはるかにむずかしいものです。私は、大学が理科系だったのですが、その当時から核融合の研究はやっていましたけれども、数十年たっても一歩も前進しないくらい、むずかしいのです。その実験炉を、この青森県に持って来ようという計画であります。
 このイーターがもたらすものは何か。核融合の研究を、長い間やってこられた長谷川晃さんという有名な研究者がいるのですが、こういうことをおっしゃっています。
 「イーターそのものが持つ危険性(一キログラムの三重水素が流出した場合の放射性被害はチェルノブイリの事故に匹敵する)と、放射化された装置と建造物の環境汚染はきわめて深刻である」。「建設費は五〇〇〇億円を上まわると想定して難くない。総費用は優に二兆円を上回ると考えられる」
 だから反対だということを、長年、研究してきた専門家が言っている。核融合には三重水素(トリチウム)という物質が使われるんですけれども、これは放射性物質です。これは、チェルノブイリぐらいの放射能を抱えこむ施設になるんですね。しかも、核融合では、非常に高いエネルギーの中性子という粒子が飛ぶわけで、建物も、装置もみんな放射性物質になってしまうのです。
 誘致した場合の地元負担は、四〇〇億円ともいわれています。そういう財政負担を押しつけられる。運転開始から廃炉まで二〇年。そして放射性廃棄物があとに三万九千トン残るのです。結局、財政負担と放射能のゴミがここでも残る。こんなばかげた、そして危険な計画はないではありませんか。これも、私は、きっぱり中止するべきだと考えます(拍手)。 

七里長浜港、工業団地――いたるところに破綻の跡が

 開発至上主義の破綻というのは、あらゆるところにありまして、七里長浜港というのも、調べてびっくりしました。約一四〇億円かけて、一九九七年に開港したと聞きました。でも船は来ないんですね(笑い)。貨物量は想定の四分の一以下。「東奥日報」という新聞がありますが、二〇〇〇年十月一日付でこう書きました。「貨物船は年間四七隻から三四隻にとどまり、係留日数も八〇日から五一日と、流通港湾は年に三〇〇日前後も稼動せず遊ぶ」。三六五日のうち、三〇〇日は遊んでいるというんです。二〇〇一年の数字を見ますと、貨物船の入港はさらに減って二三隻。こうなりますと、いよいよもって遊んでいる(笑い)。
 しかも、入ってきているこの船も、よく調べてみたら、港をつくるための資材を運んでいる船が八割から九割だというんですから(笑い)、何のための港かということになるわけです。それなのに、さらに税金を投じて拡張しようというのでしょう。ポートセールスといって、あちこち世界回って「港はいりませんか」(笑い)とやっているわけですが、売れないわけです。「港をつくれば船がくる」という考えがいかに間違っているかの証明が、ここにあるじゃありませんか。
 工業団地の破たんもひどい。これも同じ考えです。「団地をつくれば、企業が来る」。六戸町にある金矢工業団地は、一九七六年に分譲を開始したそうですが、来た会社はわずか六社、面積で一四%だけ。一〇年連続立地なしの記録を更新中だそうであります。それから、青森中核工業団地は、二八区画のうち分譲は四区画だけ。これもわずか七分の一です。「東奥日報」ではこう書きました。
 「金矢工業団地は分譲から四半世紀になるものの、企業立地は一向に進まず、未分譲地は自生した樹木や雑草に覆われ、原野と見まがいかねない状態だ。六戸町によると、周辺に自生するアカマツの種子が飛来し、自然に発芽したようだ(笑い)。『二〇年以上たつと松も結構大きくなるものだ』と苦笑するのは団地関係者」(笑い)。
 「開発すれば需要がおこる」というのは間違いなのです。本当に必要なところは開発も必要でしょう。しかし、「開発、先にありき」というのは間違いなのです。

 津軽海峡大橋――「原子力事故がおきたら逃げるために必要」

 ところが、そのきわめつきが津軽海峡大橋です(笑い)。「橋を架ければ車が通るだろう」というわけです。
 これには、私は、いよいよ驚きました。海上距離は、何と二〇キロ。最大水深二八〇メートルから三〇〇メートル。海底からの建造物です。風や潮の流れに耐えて、橋げたを吊りあげる。世界に類のない建造物をつくろうとしている。建設費は何と二兆円から四兆円です。
 いま政府がすすめている計画で、新全国総合開発計画(五全総)というのがあります。全国の海峡に六つの橋をかけるというとんでもない計画です。ところが、この六つにも入っていないのが津軽海峡大橋なのです。県民のみなさんは、だれもつくってくれとはいっていないと思います。ところが木村知事はこういっているそうです。「ロマンのない行政をやるつもりはない」、「あきらめるつもりはない」。そしてこうもいったそうです。「原子力施設の事故が起こったら逃げるために必要だ」(どよめき)。
 冗談じゃありません。もうこれにはあいた口がふさがらない。みなさん、ほんとうの自治体のロマンというのは、福祉や暮らしを良くして、住みよい地域をどうつくるかにあるのではありませんか(拍手)。核融合炉をよびこみ、船の来ない港をつくり、企業のこない団地をつくり、果ては途方もない海峡横断道に乗り出すという、この政治はロマンでも何でもない。まさに無謀な道としかいいようがない。ここでも県政改革が必要だということを心から訴えたいと思うのであります(拍手)。

福祉と暮らしを守るという自治体の仕事を放棄したままでいいのか

 第三の害悪は、そういうことをやっておきながら、福祉と暮らしを守るという自治体の仕事は放棄したままでいいのかということなのです。原子力施設を呼びこむ。巨大開発に熱中する。しかし、自治体の一番の仕事というのは、そんなことではない。福祉と暮らしを守ることです。地域の経済を守ることです。みんなが安心して暮らせる青森県をつくることです。この仕事はどうなっているのか。

高すぎる国保料――県の責任も大きい

 たとえば、国保料が高すぎるという問題があります。一世帯当たり平均で十七万九三六九円です。東北六県で、青森県が一番国保料の高い県です。高すぎて払えないで滞納者になっている方がたくさんいらっしゃる。なかでも大変なのは、保険証を取り上げられてしまって、資格証明書になっている方が一八三五世帯。短期保険証といって、一ヵ月から数ヶ月で切れてしまう保険証に切りかえられている方が九二二九世帯。これは命にかかわります。資格証明書では、窓口で全額払わなければならないわけですから。
 これは市町村の問題なのですが、県の責任も大きいのです。市町村などの国保会計への県の支出は、青森県では一人当たりわずか四四円です。まさにすずめの涙とはこのことです。全国平均では八八六円ですから、平均の二〇分の一です。
 医療保険というのは、私は、社会保障のなかでも一番命にかかわる重大性をもっていると思います。即、命にかかわる命綱の中の命綱が医療保険です。ですからこれは、私は、何はさておいても、真っ先に財政を支出すべき分野だと思います。日本共産党をのばし、力をあわせて、引き下げに道を開こうではありませんか(拍手)。  

介護保険――「減免制度をつくるな」という国の方針を市町村におしつける

 それから介護保険の問題です。私はさきほど、来年度、介護保険の保険料が引き上げるという話をしましたが、青森県では、県平均で三二五六円から三八〇〇円に、十七%も引き上げられる。四〇〇〇円、五〇〇〇円をこえる自治体もある。
 これは「デーリー東北」という地元の新聞が、「介護保険料値上げ、青森県全国最高」という記事を書きました。これは共同通信がまとめたんですが、回答のあった二十一都道府県で、青森県の介護保険料が、全国最高になるということです。
 ここでも国の責任が大きいのです。国が介護にたいする財政支出の責任をはたしていない問題が大きい。しかし同時に、自治体の姿勢も問われるのです。青森県では、介護保険料の独自の減免を実施している市町村がありません。どうしてかということを調べてみますと、県の圧力がものすごくかかってくる。県が国の方針を市町村におしつける。減免するなという圧力をかけている。つまり「低所得の方の減免をするんだったら、その分を他のお年寄りから取り立てろ。市町村の一般財源から繰り入れたりしてはいけない」――こういった圧力をかけている。ですから市町村も減免がなかなかできない。国の責任もありますけれど、県の責任も大きいのです。
 他方では、特養ホームでも待機者の方が一三八七人と増え続けているというお話をうかがいました。保険料を上げて、減免を妨害しながら、待機者はそのままにしておく。保険というのは、みなさんが保険料を払っているのですから、すべての方に希望するサービスがちゃんと保障されて当たり前です。在宅でも施設でも選べるというのが公約なんですから、どこでも選べるのが当たり前です。それも保障しないで保険料だけ値上げするっていうのは、許せない話ではありませんか(拍手)。これは国にたいして改善を求めると同時に、県でも市町村でも、日本共産党を伸ばしていただいて、減免制度をみんなの力でつくりあげようではありませんか(拍手)。

乳幼児の医療費無料制度――償還払いという使いづらい制度をあらためよう

 それから、暮らしの問題で、私がこれは問題だと思ったのは、乳幼児の医療費の問題です。みなさんの運動もあって、通院では四歳未満まで、入院では就学前まで無料になりました。ただ使いづらい制度だというんですね。償還払い制度といいまして、いったん窓口でお金を払って、それで役所に届け出て、そこで返してもらう。そういう仕掛けになっている。役所に足を運んで請求手続きをしなければ、お金が戻ってこないわけですから、小さなお子さんをかかえたお父さん、お母さんが、きびしい冬場に役所まで行かなければならないというのは大変です。交通費だってばかにならない。ですからこういうやり方はやるべきではないのです。窓口で負担は無料にすべきなのです。八戸市でも弘前市でも、市独自に窓口無料にした。それならば県段階でも窓口無料にすべきですし、そして通院も就学前まで、無料制度を引き上げる。これをみんなの力で実現させようではありませんか(拍手)。
 私は、これはやる気になればできると思うんですよ。といいますのは、国の政治でも、小さいお子さんの医療費は下げるという方向なのです。今年一〇月から三歳未満の医療費――乳幼児の医療費の自己負担は三割から二割になります。これは国民の運動もあって下げざるをえないのです。三割から二割になるってことは、自治体独自にやっている無料制度の場合、自治体の負担が減るということです。この減った負担の分を当てただけでも、この使いづらい償還払いの制度をやめて、窓口無料にすることは、十分にできると思います。姿勢ひとつでできると思います。どうかやらせようではございませんか(拍手)。
 私は、自民党と「オール与党」が青森県政にもちこんだ“三つの害悪”ということを申しました。原子力施設の誘致という、命を危険にさらす害悪。大型開発に熱中するという害悪。そしてほんとうはまっさきにやるべき福祉とくらしのための仕事を放棄するという害悪。こういう県政に二十一世紀の青森県の未来をたくせない。日本共産党をのばして、地方自治体のほんらいの仕事――福祉とくらしを守り、地域の経済のために役立つ仕事をする、「自治体らしい自治体」の新しい流れを、青森県でもご一緒につくりだそうではございませんか。どうか日本共産党に、絶大なご支持をよろしくお願いいたします(拍手)。

「自治体らしい自治体」をーー希望ある流れを大きく

りんごの価格保障制度――県民運動とともに実現に道開く

 みなさん、日本共産党議員団は、県議会では二議席ですけど、県民のみなさんの運動と力をあわせて、県政を動かすりっぱな仕事をしています。
 私は、いろいろ問題点も残されていますけれど、りんごの価格保障制度のために力をつくして、九九年度から県独自の制度をスタートさせた、これは大きいと思います。この制度は二〇〇一年度から国の制度となり、国でもりんごの価格保障制度がつくられるということになりました。青森ではじまったりんごにたいする価格保障制度、これは全国で希望を与えているのです。私は、南関東ブロック出身なんですが、そこには山梨県もあります。山梨県では、モモやスモモが、作られているわけですが、ここでは青森県でもりんごの価格保障制度をつくったのだから、山梨県でもと運動をやっています。そういう全国のモデルになるような仕事をやり、国の制度にした。こういう仕事を、二議席でもやってきたというのが、日本共産党の議員団の値打ちであります(拍手)。
 青森県の未来を考えるときに。原子力施設を持ってくるなんてことにかけたら、絶対まちがうと思います。やはり青森県の未来は、そこに暮らしている方々の福祉をよくすること、暮らしをよくすること、農林漁業を振興すること、地元商店街を助けること、中小企業を助けること、そこに暮らしているみなさんの生活の支えになる自治体をつくってこそ、青森県の未来は開けると思います。日本共産党といっしょに、この道を開こうではありませんか(拍手)。 

全国に広がる希望ある流れ――この青森からもつくりだそう

 私は、全国を歩きますと、そういう方向での「自治体らしい自治体」を取り戻そうという流れをひたひたと感じます。さきほど、長野県政の話をしたのですが、それだけじゃありません。
 今年四月には徳島でも、大田民主県政が出来ました。日本共産党は与党です。徳島では、吉野川稼動堰に反対する市民の運動と、共産党の運動があって、それがだんだんと合流して、一つの太い流れとなって、とうとう県政をひっくり返しました。
 それから、高知県へ行きますと、橋本県政がおもしろいのです。橋本県政が、一歩一歩前進している。日本共産党の県議団は、是々非々でやっています。最初の変化は、米軍機の低空飛行訓練に反対するとか、非核港湾条例を提案するとか、減反の押しつけに反対するとか、そういったところから始まったんです。いまでは、とうとう「解同」という利権あさりの団体の乱脈にメスを入れて、同和行政の終結に向かうというところまで、県政の転換が本格的になっているのです。もちろん、まだ私たち、与党宣言をしているわけではない、是々非々党です。「いいことはいい、悪いことは悪い」でやっています。ですからひじょうにいま、高知県政の中で日本共産党の役割が大きい。自民党などは矛盾を抱えながらも、「是は非」、「非は是」でやっている(笑い)。いい事は足を引っぱって、悪い事をやれという、こういうわけですから非常に対照的なんです。こういう変化が起こっているところもあります。
 それから、先日私は、鳥取に行きました。ここは自民党の知事なんです。片山知事というのですが、自民党の知事なのですけどもね、あんまり自民党らしくないことを、ずい分やっているのです。たとえば中部県営ダムはムダだから止めましょう。鳥取西部地震が起こったら、一人当たり三〇〇万円の個人補償を出しましょう。三〇人学級をスタートさせましょう。それから鳥取大学の統廃合は断固反対。なかなか面白い変化なんですね。鳥取県といいますとね、青森県もにていると思いますが、だんだんと過疎が進む。人口六〇万です。小さな県です。ですから県ぐるみ切捨ての対象になっているともいえると思う。そういうところでは、自民党の知事であっても、従来の自民党型の県政ではやっていけないというなかでの変化だと思います。
 それから、日本共産党員が首長の自治体は、四年前は七つでした。いまでは一〇に増えました。東北でも増えていますでしょう。今年に入って、秋田の湯沢市で、日本共産党員の鈴木さんが市長になりました。福島の霊前町でも日本共産党員が首長になりました。
 私が、びっくりしたのは、湯沢で鈴木さんが市長になったのは四月、それから二ケ月がしかたたない六月議会で、もうどんどん成果があがっている。まず介護保険の利用料を半額にしました。私は、「どうやって半額にしたんですか。財源はどうしたんですか」と聞きました。そうしましたら、「いや簡単なんです。市長の給料を三割カットしました。市長の交際費を半分にしました。黒塗りの公用車なくしました」。この三つだけで出来たっていうのです(どよめき、拍手)。介護保険の減免はやる気になれば出来るんですね。たいしたお金はかからない。
 ところが、もう一つびっくりしたのは、ここでは国保料の値下げも二万円やっているのです。こっちはもっとかかるお金が大きいでしょ。私は、びっくりして、「どうやって財源をつくったんですか」と聞きました。そうしましたら、これは、「やれると思っていなかったけど、出来ちゃったんです」というんです。鈴木さんが市長になって、市の福祉局の職員に、「国保が高すぎるから、何とか下げる方法を考えてくれないか」と提起した。そうしたら、すぐに案を持ってきた。「こうやったら出来ますよ」。なかなかよく考えた案で、国保の積立金を取りくずすなど、いろいろ工夫をした案でした。本当は、市の職員も、やりたかったんですね。市で働く人だって、国保証の取り上げなんてやりたくないですもの。みんな矛盾に思っているのですよ。下げる案を持っていた。出してくださいといったら、すぐ出てきた。そこで市議会に出した。そうしたら、全会一致で通って実現した。二万円下がりました。ですから、やる気になれば、財源というのは出てくるんです。やる気にならない勢力では、財源がいくらあっても出てこない。やる気になれば、姿勢が変われば、介護だって、国保だって、要求実現の道が開かれる。これが証明されつつあることは、なかなか嬉しい話ではないでしょうか(拍手)。
 いま、国政でも、自民党の政治ではもうダメだっていうことが、外交でも、内政でも、国民の安全でも、こんなにはっきりしていることはない。地方政治でも、新しい前進の流れが広がっているのです。この条件を、今度の選挙で生かして、必ず躍進を勝ちとる決意でございますので、大きなご支持を、日本共産党にお寄せ下さいますことを最後に重ねてお願いいたしまして、私の訴えを終わらせていただきます(拍手)。ご清聴ありがとうございました(大きな拍手)。