「古都奈良を守れ」は後世への責任
――希望ある流れを大きく

 奈良・演説会での志位委員長の訴え(2002年9月19日)


 奈良県のみなさん、こんばんは。日本共産党の志位和夫でございます(拍手)。
 今日は会場いっぱいの多くのみなさんが、ようこそおはこびくださいました。さきほど、南田(奈良市)助役から市長さんの心のこもったメッセージをいただきましたことにも、心からお礼を申し上げたいと思います(拍手)。

日朝首脳会談と日本共産党の立場

 私は、まずはじめに、日朝首脳会談と日本共産党の立場について、お話をさせていただきたいと思います。
 拉致という、たいへん痛ましい事実も明らかになるなかで、一連の経過をどうみたらいいのか、多くの国民のみなさんがさまざまな思いをもち、考えておられると思います。私は三つの点について、私たちの考えをお話したいと思います。 

国交正常化交渉再開の合意――重要な前進の一歩

 まず第一に、日朝国交正常化にむけて交渉を開始する合意がつくられたことは、悲劇のなかの一歩ではあるけれども、私は、やはり重要な前進の一歩だと考えるものです。
 これまでは、北朝鮮と日本の間には国交はおろか、交渉のルートすらありませんでした。交渉のルートがないとどういうことになるか。日本と北朝鮮でもめごとが起こりますと、話し合いができないから、行き詰まってしまう。たとえば、ミサイルの問題、拉致の問題、過去の清算の問題など、いろいろな問題があります。このいろいろな問題も、交渉ルートがないために、話し合いによって解決するのではなくて、「目には目を」という、軍事の対応が双方でエスカレートする。とてもあぶない状況になってしまいます。実際に、1998年から1999年ころを思い起こしますと、「テポドン」というミサイルの問題もありました。そういうなかで、双方が軍事的な対応の悪循環におちいる。そういう危険な状況もありました。
 日本共産党は、1999年1月の国会での不破委員長(当時)の質問で、そういう状況だからこそ、両国間に交渉のルート、話し合いのルートを政府間でちゃんとつくる必要があるのではないか、どんな問題でも話し合いで解決できる窓口をちゃんと開くべきではないかという提案をいたしました。
 それが、そのあと、いろいろな紆余曲折があったのですが、首脳会談ということにつながりました。この日朝首脳会談が発表されたのは8月30日ですが、その後、党首会談がありまして、私は小泉首相と会談する機会がありましたが、その場で、「両国首脳が、直接対話を決断したことは、心から歓迎する。協力はおしまない」ということを表明したのは、そういう立場からでありました。 

拉致問題――正常化交渉のなかで問題の解決を

 第二に、首脳会談がおこなわれて、北朝鮮による拉致という重大な事実があきらかになりました。その結果は、思いもよらない痛ましい結果であり、ご家族の方々の悲しみはいかばかりかと思います。
 これはあきらかな国際犯罪です。国家機関が関与していたとすればいっそう重大です。首脳会談では、真相究明にむかっての一歩が進みましたが、これでもちろん終わりにしていい問題ではありません。いったい、北朝鮮による拉致の全容はどのようなものであったのか。その責任者はだれなのか。拉致された方々は北朝鮮でどのような扱いをうけたのか。そういう問題もふくめた、真相の徹底的究明が当然必要であります。もちろん、それにとどまらず、責任者の厳正な処罰、家族の方々への謝罪と補償を、今後おこなわれる日朝国交正常化交渉のなかで、提起をして、解決をはかっていくことが必要だというのが、私たちの立場であります。

交渉してこそ問題の解決がはかられる

 第三に、一部に、小泉首相が国交正常化交渉に合意したことをまちがいだと批判する声もあります。
 もちろん、17日の首脳会談で日朝間の問題が解決したわけではありません。一日で解決などできません。ああいう痛ましい事実がでてきたことも事実であります。しかし、交渉なしに問題の解決が得られないことも明らかではないでしょうか。もしここで、日本側が交渉の扉を閉ざしてしまったら、解決の道をみずから閉ざすことになります。拉致問題の真相究明や責任追及や再発防止にしても、交渉を通じてこそ解決できるのではないでしょうか(「そうだ」の声、拍手)。制裁で門戸をとざしてしまったら、どんな展望が開かれるというのでしょう。
 ですから私は、昨日の党首会談で小泉首相にこういいました。「日朝国交正常化交渉を開始するという首相の決断は、重くつらいものがあったと思いますが、交渉なしに改善は図られないという立場からの首相の決断を、私は強く支持する」。こう表明いたしました。そして、「交渉の前途には曲折や困難も予想されるけれども、日朝共同宣言にもとづいて、諸問題を理性と道理をもって解決し、日朝両国の平和と友好が築かれることを願ってやみません」ということを申しました。さらに、「わが党は、ひきつづき、必要な協力はおしまない」という立場ものべました(拍手)。
 二回の党首会談がありまして、私は、小泉さんに、「小泉さんと私は、国政のありとあらゆる基本問題で、厳しく対決しているけれども」といいました。先方も「そうだ」といっていましたが(笑い)、「対立しているけれども、この問題については、首相の一連の行動は道理にかなったものだ。道理にかなった方向に努力しているときには、私たちは、国民の利益、アジアと世界の平和という大局にたって、これに協力するのは当然だと考えている」とのべました(拍手)。

アジアと日本の平和のために道理ある主張をおこない、行動する党

 これは一歩ふみだしたところですから、これから先が大事です。いろいろな難しい問題もうまれるでしょう。しかし、隣の国と国交もない、しっかりした交渉ルートもない、そして過去の植民地支配という問題の清算もされていない、そういう問題をずっと持ち越していいわけはありません。
 私たちは、今後も、日朝の関係を敵対から友好に変えるために力をつくしたいと思います。アジアと日本の平和のために道理ある主張をおこない、行動するのが、日本共産党であるということを、どうかご理解いただきたいと思います。(大きな拍手)

いっせい地方選挙――容易でないが、勝利の条件はある

 さて、いよいよ選挙です。選挙になりますと、もちろん小泉首相と対決です(拍手)。
 いっせい地方選挙は、あと半年後にせまりました。これに勝利することは容易でないと考えております。しかし勝利する条件はある。面白い、たたかいがいのある選挙だと思っております。
 9月1日にすばらしいニュースがとびこんできました。長野県の知事選挙で、日本共産党が応援した田中康夫さんが圧勝しました。同じ日に、上田市での、定数1を争う県議補選で、県政会との一騎打ちで、日本共産党の高村京子さんが得票を3倍にのばして、相手に1万票以上の差をつけて圧勝したということも、すばらしい成果でした(拍手)。相手は、「おこるはずがないことがおこった」といって、ぼやいたそうですが、おこったことは事実であります。
 三つの審判がくだったと思います。
 第一に、県議会の共産党以外の多数派がおこなった知事の不信任には道理がない、それに不信任がくだった。田中知事は、選挙がおわった後の記者会見でこういいました。「オール与党的な旧体制が完全に終焉することを県民は明白に望んでいる」。「オール与党的な旧体制」――これは長野だけではありません。全国どこでも、これが問題になっている。この体制に、きびしい審判がくだりました。
 第二に、選挙の争点ははっきりしていました。福田官房長官は、選挙が終わったあと、「争点がわからなかった」といったそうですが、あんなにわかりやすい選挙はなかった。要するに「税金の使い方を変えよう」というのが争点でした。大規模ダムから、福祉と暮らし・環境に変えよう、これが争点でした。そういう方向こそ未来があるということが証明されたのが、あの結果ではないでしょうか。
 そして第三に、じつは田中さんと日本共産党の関係は、最初はずいぶん離れていた問題もあったのです。二年前の選挙では、共産党推薦の独自の知事候補も立てて、三つ巴のたたかいでした。しかし、共産党が正論をずっと言っていると、だんだん両者の距離が近づいてきたのです。三十人学級もやりましょう。2つのダムを中止しましょう。市町村のむりやり合併もやめましょう。接近してきた。気がついたら、すぐそばに立っていた。共産党が県政を前に進める役割をはたしたことを、県民のみなさんが評価をしてくださって、高村さんの勝利ということになりました。共産党攻撃もずいぶんやられまして、「共産党が6議席になれば議会は混乱する」と相手はいいました。しかし、議会を混乱させたのはむこうですから(笑い)、まったく通用しなかった。
 私は、八月の最初に上田市に応援にうかがったときの熱気をわすれられません。私が上田の駅頭で高村さんといっしょに訴えを始めましたら、ときあたかも雷がガラガラピチャンと落ちるのです。そしてどっと雨が降ってきて、前が見えないくらいの豪雨になりました。私は、前で聞いているお年寄りがずぶぬれになってしまって、はらはらしたのですが、みなさんいなくなるどころか、大雨と雷のなか2200人もの人があつまった。上田で最高の演説会になりました。私はその大雨の中の熱気を見て、深くて大きな変化が生まれていると痛感いたしました。
 みなさん、自民党政治は、国政でも地方政治でも、もはや耐用年数切れです。長野と同じような変化がおこる条件は、全国どこでもあります。みなさん、今度の選挙ではこの条件をくみつくして、日本共産党は躍進を勝ち取る決意ですので、絶大なご支援をよろしくお願いいたします。(大きな拍手)

アメリカの危険な戦略――対米追随の政治をつづけていいのか

 さてこの選挙、どういう情勢での選挙でしょうか。
 まず世界をみますと、戦争か平和をめぐって緊迫した状況がうまれています。この間の出来事といいますと、9月11日の同時多発テロ一周年という問題がありました。ここからどういう教訓を学ぶかが、世界に問われました。

テロに報復戦争でこたえたことが、何をもたらしたか

 テロはいうまでもなく、憎むべき行為です。しかし、テロに対して報復戦争という手段で応えたことが、何をもたらしたか。一年たってみればあきらかです。
 一つは、アフガンの罪なき方々の無数の犠牲です。8月8日のイギリスの「ガーディアン」という新聞に、マーク・ヘロルドさんというアメリカの研究者が綿密な調査を発表しています。この一年間の民間人の犠牲者数は、3125人から3620人というのです。ニューヨークの9月11日の追悼式には、亡くなった方が一人ひとり名前を呼ばれて追悼されました。私は、それを見て、それではアフガンでなくなった方々の追悼はしないのかと、米国に問いたくなりました。ニューヨークでなくなった方も、アフガンでなくなった方も同じ人間です。ところがアフガンでなくなった方は、何人なくなったかもわからない。名前もわからない。こういう不条理が放置されていい道理はありません。私は、アメリカの責任で、この一年間の実態を調査し、犠牲者の家族のみなさんに謝罪し、補償がなされてしかるべきだと考えます(拍手)。
 もう一つは、それだけの犠牲者を払いながら、ビンラヂィンはつかまらない。アルカイダもなくならない。テロがなくならなかったということです。チェイニー副大統領が最近の演説のなかで、こう言いました。「テロリストたちの地下世界は、いまだ全世界60以上にちらばっている」。戦争をやっても、60カ国ちらばっている。きりがないじゃないですか。戦争ではテロはなくせない。これが世界が学ぶべき最大の教訓ではないでしょうか(拍手)。

国連憲章を蹂躙するイラクへの攻撃

 ブッシュ大統領がいまやろうとしていることは、いっそう危険な道です。ブッシュ大統領が、あの事件から学んだことは、「テロを相手の戦争は、やられるまでまっていたらだめ。こっちから先にやっつける」という「教訓」でした。先制攻撃が必要だということです。しかもテロリストたちは、岩の中に穴をほってもぐっているから、やっつけるために核兵器もつかう。米国のいうことを聞かない政権があったら転覆させる。そういうことを書いた「国防報告」が議会に出されました。この戦略をいま、アメリカは、イラクにたいして発動しようとしています。
 この問題は、今年の秋から来年の前半にかけて、重要な局面になると考えております。私たちは、アフガンにたいする戦争も反対です。しかし、その戦争と比べてもイラクにたいする戦争は、まったくの無法の領域に踏み込むことになります。
 アフガンの場合は、ビンラディンというテロの容疑者とされた人がアフガンにいるということがほぼ確認されて、その攻撃にたいする「反撃」という議論もありました。しかし、9・11の事件とイラクとの結びつきはアメリカの情報機関が血まなこになって探しても世界に何ひとつしめせないではありませんか。
イラクが核兵器を保有しているという証拠も示されていない。しかも、イラクは国連による査察をうけいれるという表明をいたしました。いずれにせよ、核兵器をもっているかもしれないということで、戦争に訴えるなど許されません。大量破壊兵器の問題は、あくまでも国際的な交渉によって解決すべきであって、戦争に訴えるべきでは絶対にないということを強調しなければなりません(拍手)。
 あるのは憎しみだけです。あいつが憎い、あの国は顔つきが悪いというだけです。それだけで、一つの国を攻撃し、政権を転覆するということが許されたら、国連憲章というものはなくなってしまう。

「国連憲章を守れ」という旗印のもとに平和の声を結集しよう

 ですから、アフガンの戦争をやむをえず容認した国々をふくめて、イラクの戦争だけはやめてくれという声が広がっています。ヨーロッパ諸国もそうです。中東諸国もみんな反対です。中国の江沢民総書記も先日、わが党の不破議長が訪中して会談した際に、「イラク攻撃に反対」と明言しました。
 もし戦争ということになれば、アフガンとくらべものにならない犠牲がでます。なにしろ、戦場はバグダッドになるのです。バクダッドでイラクは迎え撃つ方針であり、アメリカはバクダッドを攻め落とす方針といわれています。しかし、バクダッドには、500万人の人たちが住んでいるのです。人口密集地なのです。ここで戦争がやられ、しかも、この戦争がパレスチナやイスラエルに飛び火したら、いったいどんなことになるか。世界にあたえる被害は絶対に許容しがたいものになるではありませんか。
 みなさん、この問題でのスローガンは簡単です。それは「国連憲章を守れ」というスローガンです。国連憲章を守れ、無法を世界に持ち込むなという、このスローガンのもとに、全世界が力をあわせて、平和を守り抜こうではありませんか(拍手)。 

米国に「反対」といえない小泉首相――有事法制を許さないたたかいさらに

 小泉首相は、この問題では情けない。対米関係は、最大の弱点です。私は、党首会談のおりに、小泉首相に、「ブッシュさんにあったら、イラク攻撃反対とはっきり言いなさい」と主張しました。しかし、ブッシュさんとあって小泉さんが言ったことは、「国際協調」が必要だといっただけなのです。反対といえなかった。しかし「国際協調」であっても、無法は許されないのです。参加する国が多くなったって無法は無法なのです。反対といえないのは情けないではありませんか。
 そして、危険な暴走状態の米国と、一体になって戦争をやろうというのが、有事法制ですから、秋の国会で、有事法制のくわだてを完全に葬り去るために、日本共産党は全力をあげるということを、みなさんにお誓い申し上げたいと思います(拍手)。

暮らしと経済――大不況のもとでの国民負担増を許すな

 さて、国内の政治に目をむけますと、この大不況から国民の暮らしをどうまもるかが、大きな問題だと思います。

社会保障だけで3兆2400億円もの巨額の負担増

 この間、医療の大改悪がやられました。私たちは、お年寄りの医療費にしても、サラリーマンの医療費にしても、こんな値上げをやられたら、お金の心配でお医者さんにかかれなくなる人がたくさんでてくる。受診の抑制がおこるということを国会で問題にしてきました。公明党の厚生労働大臣の坂口さんは、答弁に困ってこういいました。「ちょっと熱があったり、のどがいたかったりする程度の人は受診を控えるかもしれないが、全体からみれば影響がない」。しかし、みなさん。「ちょっと熱があったり、のどがいたい」というところで、すぐにお医者さんにかかって、なおしてゆくのがあたりまえのやりかたです。それを、保障するのが政治ではありませんか(拍手)。だいたい、坂口さんというのはお医者さんだそうであります。お医者さんが、「ちょっと熱があったり、のどがいたい」程度では医者にくるなと、いわんばかりのことを言ってもいいんでしょうか(笑い、拍手)。
 医療保険の値上げだけではありません。介護保険も保険料があがる。年金はカットされる。雇用保険は保険料があがる。合計3兆2400億円もの負担増が社会保障だけでしいられる危険があります。
 私は、七月の党首討論で、この3兆2400億円のパネルをだしまして、こんなことをやったら経済はいよいよたいへんになると、小泉首相と論戦したことがあります。このとき、3兆2400億円という数字をはじめてだしたんですが、いまや3兆円の負担増ということは、みんな言い出しました。この前、「ニュース・ステーション」という番組をみていましたら、経済アナリストの森永卓郎さんという方が、「小泉内閣は3兆円といわれる負担増をやろうとしている。これでは橋本内閣の愚をくりかえすことになる」という発言をしていました。
 1997年に橋本内閣がやった9兆円の負担増というのがありました、消費税をあげるとか、医療費をあげるとかで9兆円です。あの時と比べても、今度は大変なのです。といいますのは、97年のときは、景気がよくなる過程だったのです。国民の所得も年間6兆円くらい増えていた。年間6兆円くらいふえているのぼり坂のところに、9兆円かぶさって、マイナス3兆円というのが97年です。今度はちがうのです。リストラ、倒産で所得は落ちている。年間4兆円も落ちている。そういうくだり坂のときに3兆円かぶせてごらんなさい。あわせて7兆円でしょう。ですから97年のときよりも、家計と経済への被害は甚大なんです。
 こんなことを許したら、ほんとうに経済はめちゃくちゃになる。このパネルをだして、経済にどういう影響をあたえると考えているのかと、小泉首相に聞きました。しかし、答えないのですね。あまり考えてもいない感じなのです。経済はなげてしまっている感じなのです(笑い)。
 小泉首相は、答えられない質問になると、聞かれていないことを答えて、聞いたことを答えないといわれる癖があるんです(笑い)。私が、聞いたときにはこういいました。「負担増がいやだったら増税しかない」。

大企業には減税、大銀行には税金投入――この逆立ちをただせ

 しかし、私は、それならばと、小泉さんに問いたい。いま政府のやっていることはむちゃくちゃではないですか。
 第一に、「負担増がいやなら増税」と国民にはいうけれど、大企業には大減税をやろうとしているではないですか。法人税減税、政策減税など、あわせて2兆5000億円もの減税をやろうとしている。国民には負担増をおしつけておいて、大企業にはばらまきというのはおかしいではないですか。
 第二に、大銀行にはまたまた税金をつぎこもうとしているじゃないですか。公的資金を注入せよという大合唱がおこっています。昨日、日銀が大銀行のもっている株を買い取ってやろうというとんでもない方針をだしました。つまり、大銀行がもっている株が下がったら、銀行経営が不安定になるから、かわりに日銀がもってやるというのです。しかし、日銀が買い取った株が下がったらどうなりますか、日銀が損をするということです。そうなりますと、日銀から国庫に納入しているお金――だいたい1兆円くらい納入しているお金があるがなくなってしまう。つまり国民負担増ということです。大銀行の穴を国民負担でうめるという話です。
 だいたい、これまで大銀行にいくら税金をつぎこんできたか。調べてみましたら、4年間で、なんと30兆円ですよ。30兆円といっても、ぴんときませんね。もったことないですから(笑い)。そこで計算をしてみました。一日になおすとどうなるか。四年間で土日も休まず、一日200億円づつ、つぎこんだことになる。土日も休まず国の金庫から、はい200億円、はい200億円と、毎日運んで、30兆円になるんです。しかし、一日200億円といっても、まだぴんときませんね。もったことないですから(笑い)。そこで計算してみました。今度の医療費の値上げでお年寄りの一割自己負担が徹底される値上げになります。全国のお年寄りの負担増総額が、2000億円です。つまり10日分です。銀行にもっていくのを10日やめたら、お年寄りの医療費の負担増はしなくてよくなるという計算になります。
 私は、大企業や大銀行にばら撒く金があるんだったら、社会保障に対する国の責任をはたしなさい、ということを強く求めていきたい。負担増の中止をもとめる大運動をおこそうではありませんか(大きな拍手)。

「自治体が自治体でなくなる」(1)――「営利企業」化への変質がすすんでいる

 さて、それでは、地方政治をめぐる対決の焦点は、どこにあるでしょうか。「住民の福祉と暮らしを守る」。これが地方自治法にもはっきりと書かれた地方自治体の役目です。いま、この役目にてらして、全国の地方自治体を見ますと、二つの流れの対立がはっきりうかびあがってきます。
 一方には、「自治体が自治体でなくなる」というような変質がすすんでいます。多くの自治体で、自民党と「オール与党」によって、巨大開発に巨額の税金をつかいながら、住民の福祉や暮らしの仕事をなげすてる――これではまともな自治体とはいえないというような変質がすすんでいます。
 他方では、「自治体らしい自治体」をとりもどそうという希望ある新しい流れがあります。長野県はその象徴ですが、これまで保守といわれてきた自治体の首長でも、すいぶん変化がうまれています。この変化は、自民党の自治体支配の矛盾が深いだけに、全国どこでも起こりうる変化だと、私は考えております。
 それでは、奈良県はどうか。まず、「自治体が自治体でなくなる」――悪い変質のほうをいいますと、自民党県政と県内の多くの「オール与党」の自治体のもとでは、二つの大きな問題が進行中だと思います。

「財政健全化指針」――これでは県政はいらなくなる

 一つは、自治体の「営利企業化」ともいうべき変質です。つまり、「福祉と暮らしを守る」という自治体の本来の仕事について、(1)国の基準以上の自治体独自の仕事はやらない、(2)自治体の責任を放棄して、できるだけ民間まかせにしてしまう、(3)最後に残った自治体の仕事についても「効率」の悪いといわれるものは切り捨てていく――自治体を儲け第一の営利企業のようなものに変えてしまおうというものです。
 奈良県が、この三月に発表した「財政健全化指針」というものを見ますと、「民間にできるものは民間に」、「身近なことは市町村に」、「受益に応じた負担を」、こう書いてあります。「民間にできることは民間に」、「身近なことは市町村に」では、県がやることなくなってしまうではないですか(笑い)。「受益に応じた負担を」では、企業と同じじゃないですか。

介護保険――特養ホームの待機者急増なのに、保険料の値上げ

 ここにはいろいろな問題があります。たとえば、特別養護老人ホームの入所待ちの待機者の方が、どんどん増えている。介護保険の実施前には県下900人だった待機者の方が、今年の2月には2382人です。保険がはじまったら、待機者は減るのが当たり前でしょう。保険料を、はらっているのですから。ところが逆に2.65倍にふえている。
 どうして、どんどん待機者が膨らんでいるのか。奈良県の場合を見ますと、国が決めている基準も満たしていないのです。国の決めている基準では、お年よりをお世話する施設の定員数は、高齢者人口の3.4%というのがきまっています。これも勝手な数字で、3.4%の施設をつくれば、待機者が解決するわけではありません。私は、国会で、ずいぶん論戦したことがあります。「3.4%では待機者はなくならないではないか。こんな数字をきめるのではなくて、必要なだけ施設を作ってこそ、保険ではないか」という論争をやったことがあります。しかし、ともかくも3.4%というのが決まっている。しかし、奈良県を調べてみますと、3.4%となった場合、奈良県のお年寄りの施設の定員数は8466人なければいけないところが、実際には7407人しかない。つまり、国のこの非常に不十分な基準にてらしても1059人たらないというわけです。
 みなさん、こんな状態で保険料の値上げをするというのは、がまんのならない話ではありませんか。保険料を払ったすべての人が、在宅も施設も選べるのが介護保険だということが公約だったではないですか。それもやらないでおいて、値上げを押しつけてくる国のやり方、それに唯々諾々と従っているだけの自治体は、自治体とはいえないということをはっきりいわなければならないと思います(「そうだ」の声、拍手)。
 しかも奈良県政では、こういうこともやられています。平群町が町独自で保険料の独自の減免制度をつくりました。住民のみなさんの運動でこれをつくりました。市町村が努力をした。そうしたら、県の当局がなんといったか。「減免制度に町の一般財政を投入するな」といったんです。これは、国がそういう締め付けをやっている。そのとおりのことを言うんです。情けないことですよ。市町村ががんばっているのだったら、応援するのが県ではないですか。逆に国の言いなりになって、言葉はきついかもしれないけれども、悪代官のように、市町村をしめつけるのだったら、こんな県政だったら必要ないということに、私はなると思います。やはり、ここは根本から姿勢を変えさせなければならないと思うのであります(拍手)。 

乳幼児医療費助成制度――無料化でなく、値上げとは許せない

 乳幼児医療費助成でも、たいへん大きな問題があります。県民のみなさんの運動で97年4月から乳幼児医療費の助成の対象年齢が0歳から3歳未満に引き上がりました。ところが、そのときに、0歳の無料はまもったのですが、1歳、2歳については、一部負担金制度を導入しました。この一部負担金制度というのは、お年寄りの医療費一部負担金制度と同じものにする。こういう仕掛けをつくったのです。
 そうしますと、今度の改悪でお年寄りの医療費の窓口負担が、一割負担に増える。それに連動して、1歳、2歳の乳幼児の窓口負担も値上げされることになるのです。もちろん、お年寄りの医療費値上げにも断固反対です。しかしそれに連動させて乳幼児の医療費を値上げするというのは、二重に許せない。国ですら、いま乳幼児の医療費は下げようという方向なのに、値上げしようというのは、ほんとうに逆行した姿ではないでしょうか。
 乳幼児医療費は値上げではなくて、無料化の充実こそ必要です。みんなの力でかちとろうではありませんか(拍手)。 

自治体とは何かが、いま根本から問われている

 全国でも、奈良県でも、いま自治体とは何かが、根本から問われていると思います。国はやらなくても、住民の福祉のために必要ならば、自治体としての独自の施策をやってこそ、自治体といえるのではないでしょうか(拍手)。たとえ目先の「採算」にはあわないことであっても、みなさんの税金でやっているのですから、命と福祉を守るためにどうしても必要ならば、そこにはちゃんとお金を使ってこそ、自治体といえるのではないでしょうか(拍手)。
 私は、その自治体の根本が失われて、「自治体が自治体でなくなる」という流れには、きっぱり反対して、日本共産党とともに、大きな転換を求めていこうではないかということを心から訴えたいと思うのであります(拍手)。 

「自治体が自治体でなくなる」(2)――「開発会社」化への変質

 もう一つ、大きな問題は、自治体の「開発会社」化という流れなのです。奈良県の財政を見ますと無駄と浪費の公共事業に税金を流し込んだあげく、この10年間で県の借金残高が、3201億円から8910億円に、2.8倍になりました。

全国三位の借金残高――巨大開発が暮らしだけでなく、歴史遺産を押しつぶす

 この奈良県の借金残高というのは、全国三位なのです。第一位は兵庫県、第二位は長野県、第三位が奈良県です。ただ、第一位の兵庫県というのは、震災があって借金が増えているという面もあるのです。第二位の長野県は、まさに巨大開発で借金をふやしたということが県民の審判をうけて、田中県政のもとでの県政の改革がすすんでいる。そうするとつぎは奈良県の番ではありませんか(拍手)。
 私は、巨大開発にお金を流し込んで借金をつくる。そういう政治が、奈良県の場合には、福祉と暮らしを押しつぶしているだけではない。かけがえのない奈良の歴史遺産を押しつぶしている。ここが、非常に罪深いところだと思います。
 私事になりますが、私は奈良が大好きで、新婚のころから、ずいぶん通いつめました。市内の東大寺や興福寺。斑鳩の法隆寺から法輪寺、法起寺の道。唐招提寺と薬師寺。山辺の道も何度も歩きました。明日香は、自転車で何回も回りました。甘樫の丘にのぼりますと、大和三山――耳成山、畝傍山、香具山が見えて、なるほど古代の日本人は、この景色をみて、ここに住もうと思ったのかと考えてしまうほど、素晴らしいところであります。私は、奈良に来るたびに、古代の人たちのスケールの大きさといいますか、おおらかさといいますか、そういうものを感じまして、まさに奈良は日本人のほこるべき宝だと考えるものであります。
 ところが、奈良にうかがうたびに、奈良が奈良でなくなるといいますか、これだけの大事な文化遺産が、わずか10年、20年という単位の開発の犠牲になろうとしている。ほんとうに、胸のいたむことが多いのです。

飛鳥池遺跡をこわす「万葉ミュージアム」

 飛鳥池遺跡をこわす、「万葉ミュージアム」は、腹の立つ話ですね。私は、三年前に、遺跡を発掘中の飛鳥池遺跡にうかがいました。ほんとうに、こんなものがよくも古代にあったものだなと思う、国立総合工房ですね。富本銭や木簡だけではなくて、金、銀、ガラス、水晶、琥珀、メノウ、鼈甲、漆、銅、鉄製品、かわら――なんでもつくっていたんですね。日本で唯一無二のものです。それを壊して、130億円をかけて、「万葉ミュージアム」をつくった。「万葉ミュージアム」というから何かといえば、古代のものが陳列されているのではなく、新しい絵がかざってあるというのです。
 定礎式がおこなわれた翌日の読売新聞が、きびしい批判の論説を書きました。「このままでは第2、第3の飛鳥池遺跡があらわれかねない」と批判しました。そのとおりの事態がおこっているではありませんか。

春日山の原始林をこわす岩井川ダム 

 春日山の原始林をこわす岩井川ダムも、その一つです。春日山原始林というのは、841年から伐採が禁止され、もう1000年以上伐採がされていない、国の特別天然記念物になっているもので、東大寺や春日大社とともに、「古都奈良の文化財」として、世界遺産に登録されています。
 その近くに岩井川ダムをつくる。春日山原始林からははずれているけれど、取りつけ道路はその緩衝地帯――バッファゾーンといわれる地帯、つまり春日山原始林のとりまく地帯になります。しかし、緩衝地帯というのは、世界遺産だけを残しても、全体の景観や生態系を守れないから、遺産の周辺に定められ、遺産と同様の保存が求められているものです。そこに道路をつくって壊すというのですから、これは世界にたいしても顔向けできないことなのです。
 県の当局は、わが党が追及しますと、「基本的には望ましくないけれど、すでに建設中なので」というそうです。とにかく、ゼネコン病というのは、いったん始めたものはやめないところに特徴がある。とことんやって、どんなめちゃくちゃになってもやる。しかし、それが1000年以上も守ってきた原始林をこわすというのは、許しがいたことではないでしょうか。
 この岩井川ダム、何のためにつくるのか。「100年に一度の水害のため」ということです。「100年に一度」というのはダム建設の理由によく言われます。というのは、「100年に一度」と説明したお役人は、100年後にはいないですからね(笑い)。安心して「100年に一度」というんです。しかし、このダムの必要性は、根本から疑問視されています。岩井川流域で、年に二、三回おきている水害の多くは、岩井川の水があふれておきているのではない。市内の水路や下水道整備の遅れなどからおこっている。あるいはJRの土手など人工的な地形によって水がせき止められておこっている。つまり、地域内の排水がさまたげられて水害がおこっている。岩井川があふれておこっているのではない。これが実態だということではありませんか。
 それならば、それにたいする水害対策こそ必要ではないでしょうか。「100年の一度」のダムよりも、毎年おこっている水害対策をきちんとやるのが自治体の役目ではないでしょうか(拍手)。

平城京跡の地下をくりぬいてトンネルをつくるとは 

 もう一つ、私が、驚いたのは、平城京跡地下トンネル計画です。まさかこんなことが、というような計画です。京都、奈良、和歌山を結ぶ高速道路を、平城京跡の地下にトンネルをくりぬいて、通す計画だそうです。関西財界が中心に「平城遷都1300年記念事業」として2010年の完成めざして推進している。事業費はいくらかかるかわからないほど巨額です。しかも採算の見通しはない。京奈自動車道も「全国二番目の赤字」(「朝日」2001年7月11日)の自動車道です。これを和歌山にのばして、見通しがあるわけがありません。
 なにより許せないのは、トンネルを掘ることによって、大事な埋蔵文化財が壊されることです。地下水の流れが変わって、地下水によって守られてきた埋蔵文化財が壊される。トンネルをとおして、地下水が流れなくなったら、たちまち酸化・腐食がはじまる。埋蔵文化財が永久に損なわれる危険があります。
 奈良市の文化財保護審議会も意見書を市長に提出して、「平城宮跡内通過は容認しがたい。国際信義にもとる行為になりかねない」といっています。私も、平城宮跡に足を運び、広大な空間を見て、古代に思いをはせたことがありますけれども、ゼネコンがあの空間を見ると、何かをつくりたくなっちゃうのですよ(笑い)。でも高層ビルを建てるわけにはいかない。空港をもってくるわけにもいかない。それではトンネルでも掘るか(笑い)。私は、そういう関西財界の意向が働いて、「ともかく工事ありき」ということで、「遷都1300事業」だということで、その都の大事な埋蔵文化財を壊してしまうとは、こんなばかげたことはない。計画はきっぱり撤回・中止すべきであります(拍手)。
 飛鳥池遺跡も、春日山原始林も、平城宮跡も、みんな大事な世界に誇る古都・奈良のすばらしい遺産です。後世に伝えていかなければならないものを、こんなふうに粗末にあつかう県政であるならば、古都・奈良を語る資格はないのではないかと、はっきりいわなければなりません(拍手)。

「自治体らしい自治体」をとりもどそうという希望ある流れ

 自治体のなかには、もう一つの流れがあります。それは、「自治体らしい自治体」をとりもどそうという希望ある流れです。

全国で起こっている新しい流れ

 さきほど、長野県の話をしましたが、長野県だけではありません。全国をあるきますと、変化をひたひたと感じます。
 徳島県では、この四月に、大田民主県政が生まれました。これは吉野川可動堰に反対する市民運動のたたかいがあり、日本共産党もいっしょになってたたかい、それが一つの流れに合流して民主県政がつくられました。
 高知県では、橋本県政が注目されます。ここでは、わが党は是々非々でやっています。そのなかで、橋本県政は、一歩一歩前進しているのです。私たちが最初に橋本県政を注目したのは、減反の押しつけはやらないとか、米軍機の低空飛行訓練に反対するとか、非核港湾条例を提案するとか、ずいぶん中央とちがう姿勢で仕事をはじめているなという注目だったのです。それが一歩一歩前進がはかられ、最近、これまで一番の弱点だった同和問題――「解同」による利権あさりの問題にメスをいれ、同和行政を終結させる方向にむけた大転換を、高知県政はやりつつあります。共産党が一貫して主張してきた方向なのですが、その方向に橋本さんも、足を踏み込んだ。共産党は高知県では、是々非々でがんばっている。自民党は内部に矛盾をかかえながらも、「是は非」「非は是」と、逆をやっていますから(笑い)、だめになってきます。
 それから鳥取県は自民党の県政です。保守の県政です。ですから共産党は野党です。ところが片山知事がやっていることは、なかなか注目される。先日鳥取に行って聞いてまいりました。中部県営ダムをやめる。鳥取西部地震がおこったときには300万円の個人補償をおこなう。30人学級にふみだす。鳥取大学の統廃合にきっぱり反対。民営化はだめ。大事なものは直営でやらないとだめ。こういう方向なのです。自民党の知事でも、そういう変化があるのです。鳥取県は人口60万人と、一番小さい県です。鳥取県がまるごと、切捨ての対象になっている。そういうところでは、自民党の知事さんでも、自民党政治をそのまま続けるわけにはいかない。そういうなかでの変化だと思います。
 それから全国で日本共産党員の首長は、四年前は七人だったのですが、いまでは10人にまで増えました。今年の四月にも、秋田県の湯沢市で、鈴木さんという共産党員が市長になり、つづいて福島県の霊山町でも共産党員町長が誕生しました。
そこでどういう変化がおこっているか。みなさんにお伝えしたいことがあります。湯沢市で、鈴木さんが市長になったのは四月です。そのわずか後の六月議会で、介護保険の利用料が半額になった。国保料は2万円下がった。全会一致です。あっという間に前進がはかられた。私は、現地のみなさんに、どうやって財源をつくったんですかと聞いたんです。そうしたら、まず介護保険の減免は、市長の給料を3割カットして、交際費を半分にして、黒塗りの公用車をやめた、それだけで財源はでてきたというのです(拍手)。やる気になればできるのですね。国保のほうはもっとお金がかかります。どうやったのですかと聞きましたら、実は下げられると思っていなかったというんですよ。だから、公約にいれていなかったというのです。しかし、市長になったら要望が強いので、市の担当職員の方に研究してくれませんかといったら、すぐに案をもってきたというのです。「市長、こうやればできますよ」というわけです。実によく考えられた案で、その案を議会にだしたら、通って二万円が下がった。公約にないことまでやってしまったわけです。やはり姿勢が変わればできるのですね。姿勢が変れば、自治体というのは生き生きとした力を発揮できるのです。こういう変化が、全国どこでも起こりつつある。ここに大きく目を広げて、大いに志を高くして選挙を勝ち抜いていきたいと思います。どうか、お力をお貸し願いたいと思うのであります(拍手)。 

「古都・奈良を守れ」という良識の声の広がり

 そういう目でみますと、奈良県でも、新しい希望ある変化を感じます。それは、なんといっても、「古都・奈良を守れ」という良識の声の広がりです。
 東大寺の管長を勤められていた新藤晋海さんが、なくなる前年の12月の奈良新聞紙上の対談で、平城宮跡内のトンネル計画にたいして、「たかだか50年あまりの利便性や経済効率のみを追求して、地下遺跡をこわす愚はされないほうがいい。1300年の文化遺産を後世に引き継ぐ役目はありますから、後世に憂いを残さないほうがいい」ということをいわれました。
 これは東大寺で、1300年の建造物を後世に伝えるためにがんばられてこられた方の、いわば遺言として、非常に重いものがあるのではないでしょうか。たかだか50年、実際はもっと短いですよ。そのために1300年の宝を壊してはならない。これは立場の違いをこえた、奈良を愛する多くの方々の共通の声ではないでしょうか(拍手)。
 学会でも、このトンネル計画への撤回要求がどんどんあがっています。木簡学会、日本史研究会、日本歴史学協会、京都民間歴史部会、考古学研究会、古代交通研究会、史学会、奈良歴史教育者協議会、日本考古学協会、大阪歴史学会、歴史学研究会、文化財保護全国協議会と、みんな反対をいっている。
 ユネスコの世界遺産センターの責任者の、フランチェスコ・バンダリンさんという方も、ユネスコ代表部あてに、「この事業は、地下遺稿、とくに木簡にたいして不可逆的な損傷を与えるかもしれない」という重大な関心をよせています。
 私は、「古都・奈良を守れ」というのは、世界にたいするわれわれの責任でもあるし、後世にたいするわれわれの責任であるし、立場の違いをこえて奈良県民の大きなうねりになって広がらざるをえないと思います。その声を、この問題でも、県民のみなさんとともに一生懸命とりくんできた日本共産党に託していただきたいということを、心からお願いするものです(拍手)。

介護保険の利用料減免ではたした日本共産党議員団の役割

 日本共産党の三人の県議団をはじめとする、六九名の地方議員団の奮闘は、希望ある新しい流れをつくるうえで、素晴らしいものがあります。
 奈良県では、介護保険で、県下47自治体すべてで、利用料の減免を実施させています。党の議員団は、その突破口をひらく大きな役割をはたしました。10市市長会があって、「利用料減免のぬけがけはやめよう」という申し合わせがあったそうです。そのなかで、最初に利用料の減免にふみきったのが御所市でした。そこではわが党の議員が実態を調べ、実態を訴え、市の介護保険策定委員会で財源の裏づけもふくめて徹底論議をやって、委員会の合意となり、議会の合意となり、とうとう減免実施に道を開いた。日本共産党の議員団が、どこでもがんばっているのです。 

21世紀が希望ある世紀になると信じる根拠は十分にある

世界と日本は、大きな激動のなかにありますが、21世紀が希望ある世紀になると、私たちが信じる根拠は十分にあると思います。地方政治をみますと、もう自民党型地方政治は、21世紀には通用しない。この奈良でも通用しない。新しい地方政治が求められていると思います。そのためにも、さきほど壇上にならんだ、日本共産党のすべての候補者の勝利を勝ち取らせていただきますことを、心から訴えまして、私のお話を終わりにさせていただきます。ありがとうございました(大きな拍手)。