2002年11月7日(木)「しんぶん赤旗」

「不良債権処理の加速」という方針が何をもたらすか

党首討論後 志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は六日、党首討論後、国会内で記者会見および赤旗記者に、次のように語りました。


二重の意味で中小企業を痛めつけ、景気悪化をもたらす

一、「不良債権の早期最終処理」とその「加速」という方針がもたらす結果について、きょうは追及した。

 この方針は、二重の意味で中小企業を痛めつけ、景気悪化をもたらすものだということを、追及のなかで明らかにした。

 一、第一は、この方針のもとで「不良債権」とされた企業が「処理」される――すなわち無理やり倒産に追い込まれるということだ。

 第二は、銀行が「不良債権処理」を無理やりすすめれば、自己資本比率が減ることになり、そのために「健全」とされる中小企業もふくめて、中小企業全体にたいする貸しはがしが、猛烈にすすむということだ。

 すなわち銀行は、自己資本比率が減るもとで、それをとりもどすために二つの行動をとることが迫られる。

 一つは、貸出金利を引き上げて、もうけを増やすということだ。自己資本比率の表式(表を参照)でいえば、分子を増やして、比率をひきあげるものだ。

 もう一つは、貸しはがしを猛烈にすすめ、貸出資産を圧縮するということだ。これは自己資本比率の表式でいえば、分母を減らして、比率をひきあげるものだ。

 こうして「不良債権の早期最終処理」という方針のもとで、全国の銀行が貸出金利の引き上げと貸しはがしという二つの行動を、いっせいにとっている。

 この二つの行動の対象とされているのは、いわゆる「不良債権」とされた中小企業だけではない。「健全」とされている中小企業もふくめて、すべての中小企業が、この行動の対象とされている。「健全」「優良」とされている中小企業もふくめて、すべての中小企業を対象に、貸出金利引き上げ、貸し渋り、貸しはがしが、たいへんな勢いですすんでいる。

UFJ銀行の内部「マニュアル」――“金利引き上げに応じろ、さもなくば融資は打ち切る”

一、きょう質問のなかで明らかにした、UFJ銀行の内部「マニュアル」は、わが党が独自に入手したものだが、そうした銀行の行動を、生々しく明らかにしている。

 ここには「適正金利への引上げに応じなければ取引解消も辞さない」という「方針」で「交渉」にあたれと明記している。

 また、将来その企業の格付けが上がっても、「金利を引き下げる確約はできない」――そういう約束は絶対にしてはならないと書いている。

 さらに「適正水準以上に(貸出金利が)とれている場合」でも、「現状の貴社の金利水準は弊行が判断する適正水準の範囲内で考えております」と、金利をとり過ぎている場合にもしらをきってとり続けろと明記している。貸出金利の引き上げは、ここまで「あこぎ」なやり方で、おしつけられている。

 「金利引き上げか、さもなくば融資打ち切りか」――この圧力が、すさまじい勢いで中小企業にかけられていることを、この内部文書は物語っている。

 こうした方針は、大手銀行で、どの銀行でも共通している。これをやられたら、いくら「優良」な企業でも、たとえば金利が2%から3%に引き上げられたら、ただちに経営が苦しくなる。「健全」な企業も、「不良債権」に落ち込ませていくメカニズムが働くことになる。

首相の答弁――金融機関に責任を転嫁し、自らの責任への自覚なし

一、きょうの党首討論では、小泉政権のもとですすめられている「不良債権の早期最終処理」とその「加速」という方針こそ、中小企業全体を襲っている貸しはがしの原因になっていること、その自覚はあるかと、首相に聞いたが、首相の答弁は、金融機関に責任を転嫁するだけで、そういう事態を引き起こしている自らの責任についての自覚がまったくないという答弁だった。

 この道の「加速」は、日本経済全体を文字どおり土台から破壊することになる。その転換を強くもとめていきたい。

日本の金融を、米国の大手投資銀行などの支配下に――国を売る方針は許せない

一、いま小泉政権がなぜこんなことをやるのかということの背景には、アメリカの強い要求が働いている。

 すなわちアメリカの大手投資銀行が、日本の金融業界を丸ごと支配下におくという動きが、いまの事態の根本にある。

 旧長銀の破たんのさいに、国民の税金を三兆円も投入して、不良債権をきれいにしたうえで、アメリカのリップルウッドという大手投資会社に、十億円というただ同然の値段でうりとばし、大もうけをさせた。新生銀行となったわけだが、この銀行は、まともな融資ははなからやるつもりがない。目に余る貸しはがしをやったあげく、昨年十月に金融庁が業務改善命令を出さざるをえなくなった銀行第一号となった。

 「不良債権処理」の「加速」を無理やりやらせ、銀行の自己資本が減ったら、貸しはがしで中小企業をつぶさせ、さらに公的資金をそそいで、長銀と同じような国有化をはかる。それを、米国の大手投資銀行が食い荒らす。さらに不良債権は市場に出されて、アメリカの「ハゲタカ・ファンド」と呼ばれる投機集団のえじきになる。

 これが行き着く先ではないか。日本の金融を、アメリカの大手投資銀行の支配下におくという、国を売る道をすすんでいるのが、小泉・竹中ラインの「不良債権処理の加速」方針だ。こんな日本経済破壊策を、絶対に許してはならない。


自己資本比率自己資本→貸出金利引き上げで増強/総資産(中心は貸出金)→貸しはがしで圧縮

 ※自己資本比率は、国際決済銀行で、国際業務をおこなう銀行は8%以上、国内業務では4%以上と定められている。