2003年1月6日(月)「しんぶん赤旗

2003年 どうする日本

NHK新春インタビュー

志位委員長の発言


 日本共産党の志位和夫委員長は五日、NHKの「日曜討論 各党に問う 2003年どうする日本」に出演し、今年の政治課題や経済政策などについて山本孝解説委員のインタビューにこたえました。大要は次の通りです。


来年度予算案

不景気のもとで4兆円の国民負担増は許せない

国民の暮らしにウエートをおいた予算に

 

NHK「日曜討論」に出演する志位委員長=5日、NHKテレビから

 山本 新年度予算案、政府は今年度の補正予算とあわせて十五カ月予算を切れ目なく運営していけば景気の下支えには十分なるんだと、こういう主張ですけれども、どうごらんになりますか。

 志位 やはり最大の問題点は、この不景気のもとで国民のみなさんにこんな巨額の負担増を押しつける予算案を強行していいのか。ここが大問題だと思いますね。

 私たち、かねてからいってきましたけれども、社会保障の四つの分野、すなわち医療の問題、年金の問題、介護の問題、雇用保険の問題、この四つの分野でだいたい三兆円にのぼる負担増。それにくわえて税金でも、発泡酒の増税、たばこの増税、それから配偶者特別控除の撤廃による所得税の増税、だいたいあわせますと四兆円規模ですよ。

 一九九七年に、当時の橋本政権の時代に、九兆円の負担増をやって、これが景気をどん底に陥れた。私はこの問題を批判したことがあるんですが、あのときと比べてみましても、リストラ、倒産で、どんどん国民の所得が落ちこんでいるときですよ。そのときに四兆円の巨額の負担増をかぶせるようなやり方は、本当に日本経済にとって大変に悲惨な事態を引き起こすと思いますね。これをやめるということが大事です。

 山本 現実には、非常に財政が厳しいですよね。そういう状況のなかで、共産党のいう、暮らし優先、福祉優先の予算は組めるんですか。

 志位 一方でそういうところに負担増を押しつけながら、今度の予算案をみますと、やはり公共事業――たとえば関空二期工事とか中部国際空港とか、こういう巨大開発の公共事業はほとんど“聖域”ですよ。五兆円の軍事費も“聖域”です。

 くわえて、減税をやるといいますけれども、減税をやる相手は黒字でもうかっている大企業に投資減税、研究減税をやるというものが中心ですから。

 そういうところに回すお金があれば、その無駄を削る、あるいは大企業優遇の減税をやめる、そして国民の暮らしにウエートを置いた予算にするということが、いま必要です。

 山本 歳出を洗い直せば可能だと、こういうことですね。

 志位 可能です。

不良債権問題

無理やり中小企業をつぶすやり方は悪循環をつくっている

需要を活発に、景気を良くするなかで解決を

 山本 不良債権の処理も政府はいまスピードアップしているわけですけれども、当然のことながら倒産、失業者が増える。共産党は不良債権の処理というのは急ぐべきじゃないと、こういう立場なんですか。

 志位 これは解決は必要です。不良債権といまいわれているものの実態は、長期の不況で苦しんでいる中小企業のみなさんがほとんどですから、この方々の経営を立て直すということが必要です。そういうやり方での解決が必要なんですね。つまり社会全体の景気をよくする。需要を活発にする。そのなかでいま不良債権といわれている人たちも立ち直れるような道を政治の責任でつくって解決していく。これが必要なんです。

 ところが政府のやり方というのは、だいたい二年、三年という期限を決めて、この期限内に銀行のバランスシートからこれをみんな落としてしまえという、無理やり倒産、失業をどんどん増やすというやり方をやっています。これをやって結局、この一年間をみても、不良債権は十兆円増えたんですよ。二年間で処理するといって、もうだいたい二年ですよ。それが十兆円増えて、ますます悪循環に入っているわけで、こういうやり方では解決がつかない。本当に経済をよくするなかでこの問題を解決するというのが私たちの立場です。

 山本 まずデフレを早く止めることだと。

 志位 いまの経済を立て直すということですね。

北朝鮮核問題

制裁でなく平和的な話し合いによる解決を

北東アジアの平和と安定という広い視野にたって

 山本 北朝鮮の核をめぐる問題ですね。北朝鮮側は核関連施設の封印を撤去するだとか、核拡散防止条約を脱退するぞとか、こんな強硬措置を打ち出しているんですが、この北朝鮮側のいわゆる瀬戸際外交を、どんなふうにごらんになっているんですか。

 志位 これは北朝鮮に核兵器の開発計画を放棄させる。そのためのきちんとした交渉は当然必要です。ただそのさいに、軍事的緊張につながるような制裁、あるいは抑圧の方法をとるのではなくて、あくまでも平和的な話し合いによる解決という道を、日本政府としてはとるべきだと思います。韓国の新政権もこの道をとっています。

 この問題で大事なのは、日本は当事国だということです。すなわち「日朝平壌宣言」というものがある。ここで核兵器にかんするすべての国際協定の順守ということを約束したわけです。これに違反する行動を北朝鮮がとっているわけですから、これを是正させるために交渉する義務を日本政府は負っているわけですね。当事国として交渉の最前線にたっているという自覚を持った交渉が必要です。

 この問題はさまざまな問題がありますけれど、北東アジア地域の平和と安定、これが何よりも大事ですから、この立場で交渉をすすめる。それから諸問題がいろいろあります。拉致問題も重要です。過去の(植民地支配の)清算の問題もある。それらを包括的に問題を解決していくという、理性的な立場で交渉にのぞむべきだと思います。

 山本 いま平壌宣言、拉致問題というお話がありましたけれども、共産党は、小泉総理の北朝鮮訪問、日朝国交正常化(交渉)の再開は支持をしたわけですね。この態度にはいまも変わりはないですか。

 志位 変わりはありません。ただそのなかでいま生まれている複雑な障害、あるいは困難がありますね。これを打開するうえではいまいったような冷静で道理ある態度を日本政府がとるということが大事だということを主張しています。

 山本 いまの状況からいきますと、国交正常化交渉、なかなか次を再開する見通しもたたないわけですけれども、拉致事件の解決なくして国交正常化なし、これは政府の基本的な態度といわれるわけですが、この態度にも異論はないわけですか。

 志位 拉致問題の解決を交渉のなかですすめていくということは非常に重要な課題です。ただ同時にいまいった核兵器の問題、過去の清算の問題、この全体の包括的な解決ということがはかられてこそ事態は前にすすみますから。もともとそれが両国の合意事項でもありますから、その立場での広い視野に立った交渉が必要ですね。

 山本 やっぱり広い視野にたって国際協調もはかりながらということが大事になってくるんでしょうね。

 志位 そうです。やはり大事なのは北東アジアの平和と安定をいかにはかるかということ、そのなかで拉致問題も同時に重視していくということじゃないでしょうか。

イラク問題

米国の軍事行動へのいっさいの協力を拒否せよ

いまなすべきは平和解決の努力をつくすこと

 山本 もし、アメリカがイラクへの軍事行動に踏み切った場合、日本はどういう態度をとったらいいと思いますか。

 志位 アメリカの軍事行動には、いっさいの協力をすべきではないというのが、私たちの立場です。

 わが党は、去年、中国、東南アジア、南アジア、中東諸国とずっと訪問しまして、各国政府と話し合ってきましたが、どことでも一致するのは、イラク攻撃に反対すると(いうことです)。この問題は、国連の枠組みの中での平和的解決の可能性をくみつくそうではないか、追求しようではないかということで、すべて意見が一致しますよ。

 多くの国がそうやってがんばっているときに、私は、日本政府が戦争が起こる前からイージス艦を出して、戦争開始の背中をボンと押すような行動をとったということは恥ずべきことだと思います。戦争不可避論の立場に立って、戦争が起こったらどうするかという先のことを、いまから考えるという立場にたつべきではありません。

 いまなすべきことは、戦争をいかに起こさないか、いかに問題を平和的に解決するかということです。日本政府が国際社会の中でこうした役割を果たすべきだと思います。

 山本 軍事行動後の復興にどう日本がかかわっていくかということで、新しい法体系が必要だというのが日本政府の考え方ですが。

 志位 ドイツのシュレーダー首相が、軍事行動は不可避という立場に立って、それに対してどう対応するかというのは考え方自体が間違っていると、やはりいかにくいとめるかだといったけれども、私はそれが大事だと思います。

 軍事行動が前提となって、その先をどうするかということをいま議論して、国民にもうこれは戦争不可避なんだという雰囲気をあおりたてるということは、本当に間違っています。

 山本 むしろアメリカ側に軍事行動は控えるように日本として働きかけていくべきだと。

 志位 そうです。日本としてアメリカに対して、戦争はやめなさい、国連憲章に基づく平和解決のためにアメリカはきちんとやりなさいと(いうべきです)。国連も安保理では、決議一四四一というのがあがっていて、ともかく国連の枠組みの中で問題を解決するということをアメリカも含めて合意しているのですから、それを守りなさいということをアメリカにはっきりいうべきですね。

 山本 もっと努力する必要がありますかね。

 志位 全然努力していませんから(笑い)。この努力が必要ですね。

選挙協力

基本政策の合意ないと有権者への責任はたせない

「安保条約なくせ」が52%――流れの変化が

 山本 解散・総選挙がとりざたされていますが、共産党は野党間の選挙協力にはいっさい参加しないのですか。

 志位 国政レベルでは条件がないですね。やはり国政レベルとなりますと、国政の基本問題、安全保障の問題とか、経済の基本政策とか、合意がありませんと、有権者に責任が負えないということになります。

 とくに日米安保条約の問題で、私たちはこれをなくして、対等・平等の日米関係をつくろうということをいっております。年頭のある世論調査では、安保条約をなくすというのが52%、現状維持が37%。国民の中でもずいぶん大きな変化が起こっている。韓国でも「対米自主性」を掲げた新しい大統領が生まれる。やはりそういう流れがありますから、そういう流れを日本でもつくろうではないかというのが私たちの立場なのですが、この点でなかなか一致がでてきません。ですから、選挙はそれぞれたたかうというのが、私たちの基本です。

 山本 たしかに政策のすりあわせなしで協力していくのはいかがなものかということは当然ですが、一方で野党がばらばらでたたかった結果、議席が増えないという指摘もありますが。

 志位 これは、政策的な一致がないまま野合したとすると、かえってお互いに力が出せなくなるのですよ。それぞれの立場で旗を立ててたたかうというのが大事ですね。

地方の変化

保守をふくむ無党派の人々との共同の可能性

いまおこっている変化くみつくせば前進できる

 山本 共産党の最近の選挙の結果をみますと、地方ではわりあい躍進しているが、国政レベルではあまりふるわないようですが。

 志位 九〇年代に、かなり参院選でも総選挙でも躍進が続きました。その中で相手側からも、このまま共産党を伸ばしたら大変だということで、ずいぶん激しい封じ込めの攻撃もやられました。そういう中での二〇〇〇年、二〇〇一年の国政選挙での後退という結果もありました。しかし、やはりこれは歴史の中のいろいろなジグザグで、つぎは巻き返したいと思っています。

 いまいわれましたけれども、地方ではなかなか面白い流れが起こっていまして、たとえば、尼崎の市長選挙で私たちが支持した候補が、「オール与党」の候補を相手にして堂々と勝利するという流れも起こっていますし、私たちが支援した長野県の田中康夫知事が堂々と勝利するという流れも起こっていますし、徳島県でも私たちが与党になる民主県政が前進をはじめているという流れが起こっていますから、なかなか地方の変化は大きいですね。

 これまで、自民党を支持してきたような方々、これまで保守といわれている方々とも日本共産党との共同がいろんな形で広がっていますから、こうした条件をくみつくせば、前進に転ずることは十分可能だと思っています。

 山本 これからはやはり無党派層に照準をおいて支持を訴えていくことになるのですか。

 志位 これは非常に大きな課題となっていると思います。やはり、「小泉政治」に対して期待をした方がずいぶんいたわけですね。「痛みに耐えれば未来がある」という期待をした方もずいぶんいたと思うけれども、しかし、実際は「痛み」だけだった、未来は見えてこないと、このままではやっていけないと。

 たとえば、日本医師会をはじめとする医療(関係)四団体も「医療費値上げ反対」ということでがんばっていますね。全国の町村長さんも「合併押しつけ反対」でがんばっていますね。つまり、これまでの自民党の選挙の支えになってきたような人たちも変化を起こしています。そういう方々とも大いに対話と共同をすすめていきたいと思っています。

 山本 ありがとうございました。

 志位 ありがとうございました。