2003年3月17日「しんぶん赤旗」関西版に掲載

〔HP限定〕

日本共産党の躍進で、無駄づかい一掃し、福祉と暮らしに「自治体らしい自治体」を県でも市でも

神戸市での志位委員長の演説から(大要)(2003年3月9日)


 九日、神戸市のワールド記念ホールでおこなわれた日本共産党演説会での志位和夫委員長の訴えのうち、兵庫県の地方政治にかかわる部分の大要を紹介します。


兵庫県でも大きな変化が進行中

 それでは兵庫県ではどうか。兵庫県でも大きな変化が進行中だと思います。なにしろ、共産党員の首長だけでも南光町、福崎町、黒田庄町で、全国に誇るすばらしい実績をあげている。そして、尼崎市で白井文新市長が誕生しました。(拍手)
 前市長が強行しようとした「経営再建プログラム」なる二百九十一項目の福祉切り捨て、市民負担増の計画。これが大問題になっていました。そして白井さんは当選後、見直しに着手し、短い期間だけれども、市民のくらしに関連の深い十四項目を見直して、保育料の据え置き、老人医療費助成、身心障害者医療費助成、母子家庭医療費助成の所得制限の引き下げ見送りなどをおこないました。暮らしの切り捨てにストップをかけ、約六億円の市民負担増をやめさせました。(拍手)

市民とともにの姿勢に前途は洋々、白井尼崎市政

 それからタウンミーティング――「市民と市長いっしょにトーク」というのをやっているとうかがいました。公約の第一歩として、今年一月から二月に市内六カ所でやられたそうですが、どこも超満員、大盛況だったそうです。あの市長さんだったらトークにいってみたいと、私も思うくらいですから(笑い)、市民のみなさんで大盛況になる。参加した方は、「なんでも市民とともに歩んでいこうとする姿勢がひしひしと伝わる。市民も誇りに思います」「白井市長に変わって尼崎のイメージは、グレーからパステルカラーに変わった」。(拍手、笑い)
 こういう市民とともに歩むという姿勢を新しい市長がつらぬいてゆけば、そして、市民みんながそれを支えるならば、前途は洋々と開けていると、私は信じて疑わないものであります。(拍手)
 もう一つの兵庫の変化で、おおいに確信がもてるのは、日本共産党県議団が前回の七から十四に増え、補選も含めて十五に増え、大躍進した日本共産党県議団が大活躍をしているということです。(拍手)

4つの巨大開発をストップ、2470億円節約させた県議団

 十五名の共産党県議団というのは、全国の四十七都道府県で第一位です(拍手)。京都府と並んで第一位の力をもっている。県議会でも第二党です。この力は大きなものがあると思います。躍進した議員団は、戦後初めて得た議案提案権を、五回にわたってこれを行使しました。
 まず一九九九年九月に、テレクラカード自販機などの風俗業を規制する「県青少年愛護条例」の改正案を提案しました。条例案は否決されましたが、議会で風俗問題が大議論になって当時の貝原知事も「議会らしい議会になりましたね」といってきたそうです。その後、お父さん、お母さんや住民の運動も励ましになって、けっきょく規制が実現して、テレクラ関係の自販機が撤去された。こういう変化をつくってきた。(拍手)
 それから去年の九月の議会、県議団は三年間かかって調査をし、全国の都道府県ではじめての中小企業・地域経済振興条例を提案した。条例案そのものは県議会で否決されましたが、この条例案の波紋がうんとひろがりました。読売新聞も「新しい政策条例が県議会に議員提案されるのは二十九年ぶり」と書いた。二十九年間、「オール与党」は何をやってきたのかと思いますが、そういう快挙をやったわけで、やっぱり否決されても生きていくんです。あわてた当局が、商店街の振興、地場産業の活性化などを盛り込んだ対策をとらざるを得なくなった。今年一月からは、中小業者のみなさんの借り換え融資の制度も実現する。いまの井戸知事も、その議論を聞いて、「いい勉強をさせていただいた」といったそうですから、勉強の成果を生かしてもらわなければならないと思います。(笑い、拍手)
 そしてみなさん、私が、こちらに来る際に調べて驚いたのは、十五の議席の力が四つの巨大開発をストップさせたことです。私は、四年前に、たとえば播磨空港について、こんなものはムダだということをこの場で訴えたのを思い出します。これをストップさせた。金出地(かなじ)ダムもストップさせた。西宮沖の埋め立てもストップさせた。神戸市のテーマパーク計画もストップです。合計二千四百七十億円のムダ遣いをやめさせたというのは、快挙じゃないでしょうか(拍手)。この力を守り、伸ばしていく。これが今度の選挙の焦点です。

驚くべき自民・公明の「オール与党」政治の実態

 ただみなさん、兵庫の県政と神戸の市政、共産党がだいぶ力をつけ、変化もありますけども、冷たい政治の基本は変わっていません。「オール与党」によって、自治体の本来の仕事である福祉と暮らしをないがしろにした、住民いじめの政治が続いているのが実態です。
 こちらにうかがいますと震災を思い出します。震災から八年です。しかし、地元の神戸新聞の調査を見ましても、「いまだに生活再建は途上だ」というのが、多くのみなさんの実感だと思います。神戸新聞がやった「震災8年被災者追跡アンケート」を見ますと、64%の方が「震災前と比べて収入が減った」と回答されている。55%の方が「被災者にたいする公的支援の継続、拡充が必要」だと答えています。
 みなさん、生活再建はまだ途上、まだ本当に傷が癒えたとはいえない状態ならば、兵庫県と神戸市は、暮らしを守るという自治体の本来の仕事を、ほかの自治体にもましてしっかり果たすことが求められているのではないでしょうか。(拍手)

国保証取り上げを市町村に指導する自公県政

 たとえば、国保証の取り上げという問題です。国保料が高すぎて払えない。やむなく滞納になる。そういう世帯から無慈悲にこれを取り上げる。短期証明書とか資格証明書とか、こういうものに置き換える。これを「オール与党」と県・市が一体になってすすめている。二〇〇一年六月から二〇〇二年六月の一年間に、資格証明書の交付された世帯は、千三百一世帯から六千二百七十三世帯に、四・八倍です。全国平均が二・〇倍ですから、全国でも突出した保険証とりあげがやられていることになります。
 この推進を迫っているのが、自民・公明連合です。私は、議事録をずっと拝見させてもらいましたが、二〇〇一年の十二月議会の議事録に、こういうやりとりがありました。自民党の県議がこう聞いているんです。「滞納している十三万の世帯にたいし、資格証明書は千三百一、ちょうど1%。極めて低い水準だ」。これに答えて県が、取り上げの要項をつくるように市町村に、「適正な運用を指導、助言していく」。こういうやりとりをやってるんですよ。
 みなさん、資格証明書というのは、窓口で全額医療費を払わなければならない。後で保険料を払えたら戻ってくる可能性もありますけど、ともかく窓口で全額払わなかったらお医者さんにいけないという制度なんですよ。行くなといわんばかりのものなのです。取り上げを義務づける法改悪をやったのは国です。しかし、国がそういう悪い法律をつくったって、がんばってはねのけて、そういうことを許していない自治体もあります。しかし、兵庫では、いまいったように、「オール与党」と県が二人三脚で、市町村に取り上げろ取り上げろといっている。これは、自治体の本来の姿をまったく放棄したものといわなければならないのではないでしょうか。(拍手)

老人医療費助成資格喪失の冷たい通知

 それから、県民と市民のみなさんの運動で築いてきた、県や市の独自の施策があります。この切り捨てがいま進行中です。県は二〇〇〇年に「行革方策」というのをつくった。市は二〇〇二年に「行革報告書」というのをつくりました。その切り捨ての実態はひどいものです。
 たとえば、六十五歳のお年寄りから受けられた医療費助成制度の切り縮めです。これは、七〇年から市が、七一年から県が、独自の制度として、みなさんの運動をバックにつくった制度です。ところが、この「行革方策」なるもので、制度の対象者を住民税非課税世帯に限定する。そうしますと、これまでお年寄りの七割が使えた制度が五割に切り縮められてしまう。対象者は、二十一万人のお年寄りが使っていたのが、十五万人に減らされつつある。
 県がこれをやりますと、神戸市も「右へならえ」と切り捨てる。「老人医療費助成資格喪失通知書」――こういうものを、市は送っているんですね。「次のとおり医療費助成資格を喪失しましたので、お知らせします」(どよめき)、「窓口で資格を喪失した旨を言って、保険の自己負担分を支払ってください」。あなたは資格がなくなりました。この通知がいっている方が、いらっしゃるんじゃないでしょうか。これをやってるんですね。ここには何のおわびもない。何の経過説明もない。ただ「資格を喪失しました」。
 みなさん、お年寄りの医療費の助成制度の切り縮めは、東京でもやられました。大阪でもやられました。しかし、東京や大阪でも、現にこれまで助成を受けている人から資格を奪うことはやってないんです。新しく受けられたはずの人が受けられなくなるという改悪です。ところが神戸では、こういう「資格喪失通知書」なんてのを送りつけている。ここでもひどい姿勢が、私は、兵庫、神戸では、本当に突出していると思います。許されない、冷たい政治ではないでしょうか。(拍手)

介護手当―9割の世帯で切り捨て

 それからみなさん、「行革方策」にもとづいて、在宅老人介護手当の切り捨てもすすめられています。この介護手当というのは、在宅で寝たきりのお年寄りを介護している家族を支援する制度です。月額一万円として、これまで給付されてきました。対象を限定して、これまで一万二千世帯に給付されていたものが、来年度には一千世帯になってしまう。つまり九割が切り捨てになります。
 「介護保険が導入されたから手当がいらないんだ」というのが行政側のいい分ですが、介護保険の実態はどうでしょうか。利用料が高すぎて払いきれない。だから、在宅での介護を支えきれない。やむなく施設に申し込む。しかし、特養ホームはいっぱいで入れない。待機者の数を調べてみましたら、この三年間で三千五百六人から一万二千八百四人、どんどん増えている。在宅は利用料が高くて支えきれない、施設もいっぱいで入れない。在宅も施設も介護保険とはいえない実態があるわけです。そのなかで、手当てが一万円ある、これでなんとか支えてきた。この一万円を奪い去るというやり方は、これも冷酷きわまるやり方です。許すわけにはいかないという一票を、日本共産党に託していただきたいと心からお願いします。(拍手)

乳幼児医療費助成では一部負担を導入

 もう一つ「行革方策」にかかわって驚いたのは、乳幼児医療費助成制度での一部負担の導入です。これは、みなさんの運動があって、去年の七月から助成対象が就学前まであがった。これは成果です。しかし、それとセットで、通院の場合一割負担が導入され、償還払いといって窓口での助成ではなくて、面倒くさい手続きやってやっとお金が返ってくる。こういうものになりました。そして、県の乳幼児医療費助成の予算は、二〇〇二年度に四十三億円あったのが、二〇〇三年度予算は三十五億円に減らしている。いま、乳幼児医療費の助成の予算を減らしているというのは、これも、全国のなかで突出した冷たさです。これは、せっかく就学前まで上げたわけですから、それとひきかえのこういう冷たい仕打ちはやめさせて、窓口を無料にする。そして自己負担は撤廃させる。みんなの力で、そして、共産党を伸ばしてかちとろうじゃございませんか。(拍手)
 自治体というのは、独自の仕事をやってこそ自治体ですね。国の基準では行き届かなくても、独自にお年寄りの医療費助成をやる、独自に介護手当をおこなう、独自に乳幼児の助成をやる、やってこそ自治体なのに、これを切り捨てていこうというのがさっきの「行革方策」、あるいは「行革報告書」、県と市がやってる冷たいやり方であります。しかしこれは、いま現在進行形でやられているわけですから、今度の選挙で日本共産党の議席を伸ばせば、食い止める道も開かれます。食い止めて取り戻す。日本共産党への一票にどうか託してください。よろしくお願いいたします。(拍手)

「開発会社化」がうんだ「70億円の“釣り堀”」の無駄

 その一方で、県と市の開発会社ぶりは、「山、海に行く」と全国でも悪名高い状況があります。ただ、四年前にうかがったときと比べますと、破たんがはっきりしてきました。
 淡路の花博の海の玄関口として、七十六億円かけて建設した「交流の翼」港という港が、淡路島にあるそうです。しかし、花博が終わったら定期船の就航もなく、「神戸新聞」によりますと「淡路交流の翼港 70億円の“釣り堀”に」という記事がでておりました。みますとですね、閑散としてるだろうと思って港に行ってみた。そしたらなんと、人出でにぎわっていると(笑い)。釣りの名所になっていたという話なんです。しかし、七十億円というのはいくらなんでもムダ遣いですね。
 それから但馬空港、これは結局採算が取れずに、赤字の穴埋めに毎年一億数千万円の税金を流しこんでる。明石海峡の大橋、架けましたけども赤字の穴埋めで大変です。県民のみなさんの税金を毎年五十二億円、すでに累計五百五十六億円も注ぎ込んでいる。やっぱり巨大開発は、税金を吸い上げるだけ、ゼネコンを太らせるけれども、地元の経済の発展にも暮らしの役にも立たない。残るのは借金だけというのが証明済みだと思います。

市政への市民の不満 神戸空港が第1位

 そこでいま大問題なのは、やはり神戸空港だと思います。「神戸新聞」が昨年十一月におこなった世論調査を拝見しますと、市政への不満の第一位はやっぱり神戸空港建設ですね。42%です。やめてくれといってるわけですね。事業費は三千百億円。しかし県も全面支援で、県の方からも完成までに、七十五億円もの補助を出すという約束だそうです。
 しかしこれを、つくって、見通しがあるのか。「神戸新聞」が書きました。「神戸空港需要 数字の独り歩きは禁物だ」。こういってます。「神戸空港の潜在利用者として、兵庫県だけでなく近畿一円の計三百八十六万人を基礎としているので矛盾しないという。しかし、和歌山や奈良などから、本当に神戸空港を利用するのかどうかは、首をかしげざるを得ない」。神戸空港の需要見通しというのは、近畿一円のみなさんが、みんな神戸空港を使うと、これが建前になってるんですよ。奈良からも使わなきゃならない(笑い)。奈良から神戸にくるには、近鉄で京都に出て、新幹線で神戸に出て、それからまた神戸空港までいって、大変ですよね。これは、考えがたいことですが、これで需要予測なんてものをつくっている。

つじつまの合わない需要見込み

 ところがもう一つ、なんともつじつまがあわないことがある。兵庫の県知事の発言なんです。昨年二月に今度は「朝日新聞」が、その近畿一円を対象に世論調査をやったんです。そうしましたら、この調査で「神戸空港は不要」と答えた方が62%。建設中止を求めた方が71%。近畿一円の方が、みんないらないといっているんです。このとき、知事は見解を聞かれましてこういったというんです。「神戸空港は神戸を中心に兵庫県南部の航空需要に対応した地方空港でありまして、利用圏外の人の意見を聞いても意味がない」(笑い)
 これは、なんともおかしいですね。航空需要の見込みをつくるときは近畿一円の人が使うという。近畿一円の人が世論調査で「いらない」と答えたら、それはもう「利用圏外」だという。まったく自己破たんを遂げているではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

無駄が無駄よぶ大型開発 日本共産党の躍進でストップを

 ムダというのはムダをよぶんです。一つムダをつくると、次のムダをつくるようになる。神戸空港の建設中止を求めた上京団に、扇さんという国土交通大臣はなんといったか。「反対ばかりせず、たとえば関空と神戸空港を海底トンネルで結ぶなど、もっと建設的な意見をもつべきだ」と(どよめきの声)。今度は海底トンネルですよ。こういうことになっていくわけですね。ですからこれは、つくりかけていますけど、中止するのは早ければ早いだけ傷は少なくてすみますから、いまからでもきっぱり中止をという声を日本共産党に託してください。よろしくお願いいたします。(大きな拍手)
 日本共産党が躍進して、二千四百七十億円以上のムダ遣いがストップしました。これをさらに躍進させて、ムダ遣いをきれいさっぱり一掃して、福祉と暮らしにまわす。本当の「自治体らしい自治体」を、県でも市でもみんなの力でつくりあげる選挙にしていこうではありませんか。どうかよろしくお願いいたします。(大きな拍手)