2003年4月17日(木)「しんぶん赤旗」

〔HP限定〕

いっせい地方選挙前半戦の結果、イラク戦争について

CSテレビ・朝日ニュースター

志位委員長が語る(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長は、十六日放映のCS放送・朝日ニュースターの番組「各党はいま」に出演し、いっせい地方選前半戦の結果、イラク戦争と復興問題、小泉政権二年の評価などについて質問に答えました。聞き手は、朝日新聞編集委員の星浩氏でした。


いっせい地方選挙――教訓を生かし、後半戦での勝利を

「反転攻勢」の足がかりつかんだ――後半戦では議席増へ

 統一地方選前半が終了しました。共産党にとっては、若干、残念な結果といいますか、とくに道府県議を減らしました。政令指定都市も伸び悩み、若干減らしたようですが、この総括から話をうかがいたいと思います。
志位 道府県議で、前回獲得したのは百五十二議席でした。今回は百十ですから、残念ながら現有を確保できなかったわけです。まず、ご支持いただいたみなさんに心から感謝を申し上げたいと思います。
 ただ、私たちは、全体の流れからいいますと、「反転攻勢」の足がかりをつかんだなという感じをもっているんです。といいますのは、四年前のいっせい地方選挙というのは、一九九九年の選挙ですけれども、このときは日本共産党は躍進のいわばピークにあった時期なんですよ。九六年(総選挙)、九七年(都議選)、九八年(参院選)と連続的に躍進しまして、九八年の参議院選挙では八百二十万票を獲得する。まさにその流れのなかで百五十二の議席を得たという、そういう議席なのです。
 そのあと、二〇〇〇年の総選挙で、かなり大がかりな反共攻撃をやられて後退しました。二〇〇一年の参議院選挙では「小泉旋風」があってさらに後退して、八百二十万から四百三十三万まで票が減ったのです。
 ですから、今度の統一地方選挙というのは、いわば四百三十三万まで押し戻されたところからどう押し返すかというたたかいだというふうにわれわれは位置付けて、勝つには本当によほどのことが必要だということで、とりくみをやりました。
 結果は、議席は残念ながら現状確保ができなかったのですが、そのなかで私たちが指標として重視したのが、二〇〇一年の参議院選挙の比例票と比べて、今度は票がどうなったかという動きなのです。
 これを見ますと、立候補した三百六十七選挙区で、二百四十五万票から三百二十四万票に、32.2%得票を増やしている。三百二十四選挙区で得票を増やしています。
 得票を増やしても届かなかった、惜敗したというケースがずいぶんあるのですけれど、かなり二〇〇一年の水準までぐっと反共の波で押されたというところから、押し返す第一歩の足がかりはつかんだというのが前半選の結果なので、ぜひこれを後半選で、議席増までいけるように力をつくしたいと思っています。

徳島、長野での前進――無党派の人々との共同広げたい

 一方で、自民党は、それなりにふんばったという面がありますし、共産党と激しく論争を繰り広げた公明党は道府県議が全員当選です。他党のことですがどうごらんになっていますか。
志位 公明党が今度の選挙でとった立場は、国民のみなさんに説明がつかないものだったということは動かせないと思います。
 たとえば、「平和の党」といってきたわけですが、私たちはイラク戦争―ああいう無法な戦争に賛成して、どうして「平和の党」という看板が成り立つかという批判をやりましたが、これは、きちんとした相手側からの反論も弁明もありませんでした。
 選挙の結果は結果として存在するわけですが、そのことによって、この党が果たしてきた役割というものが決して免罪されるわけではないと思います。
 今回、市民運動が独自の候補を立てて、うまくいったところとそうでなかったところがあるのでしょうけれども、政党に頼らない市民の動きについては千差万別でしょうが、どういうふうにごらんになりますか。
志位 これは動きの中にもいろいろな流れがあります。市民の運動ということをいっているけれども実態的には自民党と同じ流れもあるし、そうではなくて本当に政治の改革をめざしている市民の流れもあります。
 後者の方についていいますと、長野とか徳島で起こっているいまの現状改革の流れ、これは共産党もその流れのなかで重要な役割を果たしているのですが、ここでは広い市民のみなさんといろいろと協力関係をつくっています。
 そういうなかで、私たちが全体的に残念ながら道府県議を減らしたなかでも、長野では五から七になりました。徳島は二から四になりました。そういう無党派の方々との協力、共同がすすんだところは、躍進が勝ち取れています。ぜひ、これを全国的に広げたい。市民運動のみなさんとの協力、無党派のみなさんとの協力の流れを全国的に広げていきたいですね。

イラク戦争の現状、「復興」の問題について

戦争の無法性、非人道性を、国際社会は厳しく批判を

 イラク戦争が始まって三週間で、一応アメリカがバグダッドを制圧したということですけれど、このイラク戦争、ここまでの経過についてどう総括されていますか。
志位 米英が圧倒的な軍事力をもってフセイン政権をつぶしたと、崩壊させたという結果となったと思います。ただ「勝てば官軍」というわけにはいかないということは、私は国際社会は声を大にしていわなければならないと思うのです。
 もともとこの戦争というのは国連決議もなく、アメリカが勝手に起こした先制攻撃の戦争、無法な侵略戦争でした。この戦争の無法性に変わりはありません。それから、戦争によってどれだけのイラクの人々が犠牲になったのか。少なくとも千数百人という市民が犠牲になった。無辜(むこ)の人々を犠牲にした。この責任からは逃れられません。
 そういう無法性、非人道性を持った戦争をやった責任というものを絶対にあいまいにしてはならない。これについて国際社会が厳しくこれを認めないという立場をとるということが必要です。
 米軍はいまなお、空爆、攻撃を続けているわけですから、ただちに戦争は中止しなさいという声を広げて、一刻も早く戦争をやめさせるということも、焦眉(しょうび)の課題になっていると思います。

イラク戦争は「始まり」――これを許せば他の国への攻撃に道開く

 そのなかで“日本の場合には北朝鮮問題があるからアメリカとの同盟関係が必須なんだ”、“日本への攻撃を自国への攻撃とみなすのはアメリカだけだ”というのは、小泉さんがいわれていることなんですが、北朝鮮問題とのリンク、この辺についてはどういうふうに…。
志位 私は、北朝鮮問題を平和的、外交的に解決するうえでも、無法な戦争に支持を与えてはいけない。これは非常に大事な点だと思います。つまり、今のイラク戦争というのは、(米国にとっては)イラク戦争で終わりではないわけですね。いわば始まりなわけです。
 つまり、昨年出された「国家安全保障戦略」で、先制攻撃論を国家戦略としてアメリカは公式に世界に向かって宣言したわけです。その中でまず最初のターゲットとしてイラクが選ばれたということなのです。彼らの攻撃リストのなかには昨年のNPR(核態勢の見直し報告)の中には七カ国入っていますよね。その中には、シリア、イラン、北朝鮮も入っている。中国まで潜在的リストとして攻撃対象に名前が入っているわけですね。
 イラク戦争というのは、アメリカが世界をつくりかえていく、自分たちの都合のいい「力の論理」が支配する世界につくりかえていく第一歩なのであって、これを許したら、ほかのところも同じ論理でアメリカが攻撃するということに道を開くことになる。
 ですから北朝鮮のことを考えても、この平和解決のうえでも、イラクの戦争に支持を与えるというのは絶対に間違っていると思います。

世界のルールブックの書き換えは許せない

 アメリカの「ネオコン」(新保守主義)の実態については、どういうふうに分析されているのですか。
志位 そういうグループがあって、かなりブッシュ政権の中枢を支配している。ブッシュ大統領の頭の中もかなり支配しているという現状があるのは事実でしょう。
 この人たちの考えというのは、先制攻撃論、そしてアメリカの価値観を絶対として世界中に押し広げるという異常な独善主義。それから、国連を無視して単独で行動するという横暴。これが共通していますね。
 いわば、彼らは世界のルールブックを書き換えようとしているのだと思います。すなわち、国連憲章中心の平和のルールブックから、アメリカの力と恐怖が支配する「秩序」に、世界のルールブックを書き換えようという動きだと思います。
 これは絶対に許してはならないという声をあげるべきです。世界の平和のルールを取り戻し、守るということが必要です。これは、世界の諸国民と政府に課せられた大事な仕事だと思っています。
 これは経済の面でのグローバリゼーションとの関係というのは、共産党はどう分析しているんですか。
志位 資本主義の世界ですから、さまざまな資本の流れ、人や物の流れ、情報の流れがグローバル化するということは、これは避けがたい傾向であると(考えています)。
 問題はその中身であって、アメリカ型の巨大資本の利潤追求だけが最優先される、そういう「グローバル化」ではなくて、諸国民の経済主権、平等、公正、地球環境、こういうものが重視される、本当の意味での世界化ということが必要だということを(私たちは)対置しているわけです。
 アメリカ型の政治システムと経済システムが唯一絶対のシステムだといって、世界中に軍事力でこれを押しつけようというのが、いまいわれた「ネオコン」といわれるグループに共通する、非常に危険な衝動です。

現代の「十字軍」となる危険――異なる文明間の対話と共存こそ

志位 とくに私が危ぐするのは、アラブ世界、イスラム世界と衝突したときに、これがどういうことになるかということなのです。彼らはアラブ、イスラムの独自の発展の論理を認めないわけですよ。私は「ネオコン」のある代表者がいっている言葉を聞いてなるほどと思ったんですが、「イスラム世界というのは民主主義の外にあるんだ」と。「これ自体を正さなきゃならないんだ」ということを公然といいますね。つまり現代の十字軍ですよ。
 これを本当にイスラム世界との間でやった場合には、新しい宗教間のたたかい、異なる文明間の共存ではなくてたたかいが起こる。そういう動乱にあの地域を引き込む。それを非常に強い危ぐとして感じますね。
 やはり異なる文明間の平和共存と対話がいま大事なんですよ。ともかく、自分の文明こそ唯一絶対というのが一番悪いのです。

「復興」にあたって、とるべき原則は何か

 イラクですが、アメリカはもう早くも復興に向けて動き出していまして、日本の一部でも対米協力最優先ということで、アメリカの国防総省の一機関である復興人道支援室(ORHA)に人的貢献をすべきだという議論も起きているのですが、どうごらんになりますか。
志位 私は復興ということがこれから当然、問題になってくるわけですが、それに臨むにあたっては二つの原則が大事だと思っています。
 一つは、無法な戦争を追認したり容認したりすることを前提とすべきではない。この戦争はともかくやってしまったんだからしようがないと、それを容認したうえで、さて、それでは復興をやりましょうかという議論ではよくない。やはり、戦争の無法性にたいしてきびしく批判する、認めないという立場を国際社会がとるということが、復興の前提として大事だと思っています。
 もう一つは、やはり復興ということを考えた場合、イラクの国の進路を決める権利を持っているのはイラクの国民だけですから、それが保障される必要があるわけです。
 いまORHAということをいわれました。米軍は、そういう機構をつくって、それをテコにしてまず直接統治をやるわけですね。直接統治をやって、(米中央軍の)フランクス司令官が選んだ人を暫定統治機構のメンバーにして招集して、会議をやろうとしているでしょう。まさにアメリカが勝手に選んだ人たちが、政権なるものを形づくっていくという話になりますと、これはもうイラクの国民の意向をまったく無視したものとなる。まさにアメリカの無法な戦争を前提にした占領のもとで、アメリカの意思を押しつけるということになりますから、これは無法に無法を重ねるやり方であって、こういうやり方を取るべきでない。
 イラクの国民がみずから国を決めていくという民族自決権を保障するうえでは、国連が主体になる必要がどうしてもあります。国連が主体となって、国際社会の共同の意思で復興にとりくむことがどうしても必要になってくると思います。

無法な戦争のうえにつくられた軍事占領機関への参加など論外

 その場合の日本の協力のあり方ですが、もちろんORHAへの協力はなかなか難しいと思いますが…。
志位 これはアメリカが勝手にやった無法な戦争のうえにつくった占領機構に日本が参加するということですから、まさに無法な戦争に自分が参加するということになるわけです。しかも占領機構に参加するというのは「交戦権」の行使にあたるわけです。ですから日本国憲法のうえでも許されない。国際法のうえでも、日本国憲法のうえでも許されない。ですからORHAへの参加はまったく論外のことだと思います。
 日本政府としていまやるべきことは何かといえば、まだ戦闘は続いているわけですから、戦争をやめなさいと(求めることです)。そのうえに、いまいった二つの原則で復興にとりくむべきだと、国際社会で主張するというのが筋でしょうね。

国連憲章の平和のルールを守ろうという声――未来に生きる

 今回の問題で、アメリカ・イギリス対フランス・ドイツ・ロシア、この関係が非常に亀裂が深まったわけですが、この関係というのは今後どういうふうになっていくか。
志位 これはかなり深い対立があると思います。アメリカのブッシュ政権がやろうとしているのは、事実上の国連の否定です。一国主義、単独で行動するという動きであるわけです。
 欧州であがっている声はやはり国連を重視する、あるいは多国間の交渉による解決を重視するという流れですから、ここには大きな溝が存在する。外交の駆け引きがありますから、彼らの間にもいろいろな交渉もあると思うけれど、とっている路線に大きな溝が存在するということです。
 欧州の側にある流れというのは、私は平和のルールを守るうえでは健全な方向の流れだということがいえると思います。
 それから、もっと目を広げてみますと、今度の戦争が起こった直後に、アラブ連盟が一致して「侵略軍の撤退」ということを要求したわけです。それから非同盟諸国会議の前議長国、現議長国、次期議長国が共同声明を出して、そこでも「侵略軍の撤退を」といったわけです。
 これらアラブ世界の動き、あるいはイスラム世界の動き、非同盟の動き――これは経済の力はまだ弱いですけれども、国の数では圧倒的、人口でも圧倒的な人々がこの戦争に反対の声をあげているというのは、未来に生きて働くということをいいたいですね。
 そうすると日本がそこへ割って入って、仲裁をするのもなかなか容易ではないという気がしますけれど…。
志位 日本政治のいまのスタンスからいうと、仲裁どころじゃなくて、それこそアメリカ追従で、お先棒を担いでいるだけということになるわけです。日本は今度の対応によって、世界での外交的な信頼を大きく損なったと思います。
 とくにアラブ、イスラム世界との関係を決定的に悪くした。この罪は重いと思います。

小泉内閣の2年間と、今後の課題について

「構造改革」――その失政はあまりにも明らかになった

 小泉さんはこの二十六日に政権から丸二年ということですけれど、外交問題、経済の問題を含めて、この二年間をどういうふうに総括されていますか。
志位 「経済構造改革」という点でいいますと、指標がすべてを物語っています。「不良債権の早期処理」というのが最大の優先課題とされたのですけど、これは「処理」が進むどころか拡大再生産という事態が続いているわけですね。
 つまり、銀行のバランスシートから無理やり生きた企業を落とすということをやった場合、逆に景気悪化につながって、(不良債権が)さらに増えるという悪循環に入っているのが、すっかり明らかになっていると思います。
 それから(衆院)予算委員会でも取り上げたんですけれど、いわゆる経営困難の赤字の企業だけじゃなくて、黒字経営でいまの不景気のなかでは業績を上げている企業まで、金利の引き上げとか貸しはがしが起こっているわけです。もう中小企業全体を壊すような方向で作用していますね。
 それから、もう一つの看板だったのが、「財政構造改革」ですけど、これは結局、一番のムダ遣いの本体の巨大開発ということでいいますと、国の公共事業費の額面ではちょっと減ったように見えるけれど、事業量では減っていないことに加えて、全国を歩いてみますと、例えば関空ニ期工事、中部国際空港、神戸空港、苫小牧東部開発。みんな続行ですよ。
 ムダな巨大開発にはメスが入っていない。一方で医療費は上がる、あるいは年金は下がる。それから増税が始まるという、国民には負担増の押し付けということになりまして、こっちの方からも景気を悪化させるという事態が進んでいるわけですね。
 両方で景気悪化の下り坂を、さらにアクセルを踏むような失政をやっているということです。いま経済の問題が戦争の陰に隠れているようだけれど、日本経済で起こっている事態は実に深刻だと思いますね。これはやはり、路線の切り替えがどうしても必要です。

経済でも、外交でも、その矛盾が噴き出すことは避けられない

 今後はどう推移していくとごらんになっていますか。小泉政権、経済の問題を含めて。
志位 やはりくらしという点から考えますと、いまの路線では大きな破局に突き当たるということは避けがたいですね。それは政権全体を揺さぶる、そして自民党政治そのものを揺さぶることになっていくと思います。
 それから、世界の動きでも対米追従という問題が今度の問題で、あからさまに出ました。いまはアメリカが軍事力でともかく抑えて、矛盾をおしつぶしているようにみえるけれど、こういう抑え方をした場合のアラブ世界、イスラム世界との間で起こるあつれき、矛盾、これはもう少し長いターム(期間)で見た場合は本当に深刻になると思います。
 日本の外交の対米追随性の害悪が噴き出してくるということが避けがたいと思います。両面で私は、矛盾の噴出が避けがたいと思います。

国民負担増政策の中止、有事法制を廃案に

 統一選が終わると六月十八日までの後半国会ですが、共産党の後半国会に向かうポイントはいかがでしょうか。
志位 私たちはたとえば、医療費値上げをはじめ国民負担増の強行がこの間やられたんですが、やはり医師会の方々もおっしゃっているけれど、「負担増を元に戻せ」ということを求めます。経済の問題はくらしを守るという論陣を張っていきたい。
 それからもう一つ、有事法制を強行するという動きがあります。これは何としても食い止めたいですね。これは、アメリカの戦争に日本が参戦するというものですけど、そのアメリカの戦争なるものがイラク型の先制攻撃の戦争だということがあれだけはっきりしたわけですから。これはますます法案の危険性が明りょうになったと思っています。
 分かりました。きょうはどうもありがとうございました。
志位 どうもありがとうございました。(了)