2003年7月29日(火)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ

(大 要)


 日本共産党の志位和夫委員長が二十八日、国会議員団総会でおこなったあいさつ(大要)は次のとおりです。

 閉会にあたってごあいさつを申し上げます。

 冒頭、この場をお借りして、宮城県北部地震で被災されたみなさん、避難生活を余儀なくされているみなさんに、心からお見舞いを申し上げたいと思います。党の国会議員団としても、ただちに対策本部を設置しまして、現地調査もおこない、支援をはじめておりますが、政府として、被災されたみなさん、避難されているみなさんに、支援と復旧、そして二次被害の防止などに全力をあげることを強く求めるものであります。

市民道徳と社会的道義で信頼される党へ──いっそうの努力はかりたい

 この国会は、世界と日本の大きな激動のなかでたたかわれました。私は、まず国民の運動としっかり手をたずさえ、そして正義と道理の立場にたってがんばりぬいた議員団のみなさん、それを支えた秘書団のみなさんの奮闘に心から敬意を表し、それをたたえたいと思います。(拍手)

 この間、市民道徳にかかわる問題で、私たちにとってはたいへんにつらい、そして国民のみなさんにたいしてはたいへんに申し訳ない出来事がありました。市民道徳と社会的道義において国民の信頼をえるということは、私たちが政治的な支持と共感をえるうえでも、その土台となるものであって、党中央として今回の出来事からしっかりと教訓を導きだし、いっそうの努力をはかる決意をあらためて申し上げるものであります。

 わが国会議員団に小林美恵子さんを新たに迎えました。私は、心から小林さんを歓迎するとともに、みんなでささえあい、小林さんが、国会という新しい舞台で大活躍をすることを、心から期待したいと思います。(拍手)

イラク戦争──米英の無法な戦争とその追随者に、はやくも歴史の裁きが

 半年余にわたる国会をふりかえって確認できるのは、平和の問題でも、経済の問題でも、日本共産党がかかげる旗こそ、未来ある旗だということであります。そのことが生きた情勢の進展の中で裏づけられつつあるというところが、私は重要な点だと思います。

 世界では、米英によるイラク戦争という大問題が起こりました。小泉政権は、この無法な戦争にただちに支持を与え、きな臭いにおいがたち込めるどさくさまぎれに有事法制を強行し、国民の多数の反対をおしきってイラク派兵法の強行をおこないました。私は、戦後の自民党内閣のなかでも、異常な対米従属という点では、小泉内閣は最悪の内閣だといっても過言ではないと考えるものであります。

 しかし、歴史というものは、なかなかごまかしがきかないものだとつくづく思います。すなわち、米英の無法な戦争と、それに追随した者たちにたいして、はやくも歴史による裁きがくだされつつあるというのが現状ではないでしょうか。

 アメリカの雑誌の『ニューズウィーク』は、イラクで深刻化しつつある紛争状況を指摘して、「イラク政策は崩れた」と論じました。ドイツの雑誌の『シュピーゲル』は、イラク戦争の「大義」が根本から問われているとして、「超大国アメリカがいま、道義的にも政治的にも守勢に回った」──戦争には勝ったけれども、いまや防戦一方だということを、ドイツの雑誌ものべました。

この戦争が“巨大な嘘”のうえにしくまれた疑惑──小泉首相も同罪

 第一に、米英が戦争の最大の「大義」とした大量破壊兵器がいまだに発見されず、米英両国では情報不正操作が大問題となり、この戦争が“巨大な嘘(うそ)”のうえにしくまれた戦争であったという疑惑が、日に日に動かしがたいものになりつつあります。

 “巨大な嘘”に加担したという点では、小泉首相も同罪であります。党首討論でのわが党の追及にたいして、首相は例の「フセイン大統領が見つからなかったからといって、いなかったわけではない」という珍答弁を持ちだしてひんしゅくを買いました。あの時には、苦しまぎれのその場かぎりの答弁だとだれしも思ったものでしたが、その後も同じ質問にたいして、同じ答弁をくりかえしている。しかも、得意満面でくりかえしている。オーストラリアのハワード首相にまで、「私はこういうふうにいって、野党の追及をかわしているんだ」といって自慢したそうであります。つまり、問題のある発言をして、問題だと思っていないというところが、まさに一番の問題であって(笑い)、救いがたいといわなければならないのではないでしょうか。(拍手)

イラクの深刻な紛争状況──無法な戦争と占領がひきおこした矛盾

 第二は、イラクの現実です。米軍の司令官自身が、「全土でゲリラ戦争」といわざるをえないような、深刻な紛争状態がつづいています。これは偶然ではないと、私は思います。

 もともとイラク戦争が無法な戦争であった。その戦争の結果として米英軍が不法な占領軍としていすわりをつづけている。そのこと自体が引きおこしていることであります。そのこと自体がイラクの市民の反発を呼びおこし、いまの紛争状態を引きおこしている。無法な戦争と占領が引きおこした避けがたい矛盾といわなければなりません。その紛争のさなかに自衛隊を派兵することが、どんなに愚かで危険であることかは明りょうであります。

 私は、この矛盾の解決のためには、一刻も早くイラクの復興支援を国連中心という軌道でおこなうようにすること、そして米英軍をできるだけすみやかに撤退させること、このことがいま強くもとめられているということを強調したいと思います。

日本共産党の論陣と行動──すべてが未来に生きる先駆的で歴史的意義

 日本共産党は、この世界の平和秩序をゆるがす大問題に関して、国会論戦でも、野党外交でも、国民運動との共同でも、国連憲章と憲法を守りぬく論陣と行動を、精力的にすすめました。このすべてが未来に生きる先駆的で歴史的な値打ちをもつものであります。ここに確信をもって、ひきつづき奮闘しようではありませんか。

 とりわけ、イラクの派兵法は強行されましたが、現地の状況からいっても、戦争の「大義」の崩壊という点からいっても、簡単に派兵ができるような状況ではありません。ですから、秋から年内にかけて、この派兵の具体化を許さない、自衛隊をイラクに送らせない、このたたかいをぜひ、大きく国民のなかでひきつづき発展させるという決意を固めあいたいと思います。(拍手)

暮らしと経済──この国民の苦しみにどういう態度をとるのかがとわれている

勤労者所得の激しい落ち込み──年金大改悪と庶民大増税を許すな

 暮らしと経済をめぐって痛感するのは、小泉内閣には、国民の生活の苦しみに思いをよせるという姿勢がかけらもないことです。

 リストラ応援の政策による勤労者の所得の落ち込みは、すさまじいものがあります。小泉内閣の二年間──二〇〇〇年と二〇〇二年とを比べまして、勤労者世帯の収入は年収で平均三十二万円も落ち込みました。そこに負担増のおいうちをかけた。国民の反対をおしきって四兆円の負担増を強行しつつあります。さらに重大なのは、来年度以降に、年金の大改悪と消費税をはじめとする庶民大増税という、二つの大きな攻撃のくわだてが準備されていることであります。

 国民生活を破壊して、日本経済を再生することは絶対にできない。この点で、私は、小泉内閣には、日本経済を運営する資格が、もはやまったくないということを、この場でもはっきりとのべておきたいと思うのであります。(拍手)

「サービス残業」一掃の粘り強い追及と、かちとった成果

 日本共産党は、国民の暮らし応援への経済政策の抜本的転換を求める論陣をはってきました。みなさんがた一人ひとりが、そういう論陣のなかで重要な成果をおさめてきました。そのなかで、現実に政治を動かす少なくない成果もあげたことをいくつか確認したいと思うのであります。

 一つは、「サービス残業」一掃のためのくりかえしの追及であります。厚生労働省に二〇〇一年四月に是正を求める「通達」を出させたのにつづいて、今年の五月には、企業に労働時間管理の責任を明確にさせるなど、いっそうふみ込んだ「指針」を出させました。今日のニュースでも、「武富士」が「サービス残業」代を三十五億円支払う(「すごい」の声)ということが報じられました。この企業と関係者を労働基準法違反で書類送検する方針と伝えられています。犯罪行為として裁かれるということです。これは私たちが一貫して追及してきたことが世論を動かしていることの一つであります。

中小企業への借換保証制度、ヤミ金規制法の成立でも

 二つめに、私があげたいのは、中小企業の資金ぐりを助けるための借換保証制度をスタートさせたことです。これは、中小企業経営者のみなさんが中心になって、債務の返済軽減を求める運動が全国で広がりました。そして、全国の自治体で、借換融資制度が実現されていきました。それがとうとう、国の政治にもおよび、この二月から国の制度にさせた。利用額を調べてみましたら、すでに十八万件、二兆八千億円におよぶと聞きました。この不況のなかで、融資という命綱をまもるうえでも、わが議員団が大事な働きをしてきたことを確認したいと思います。(拍手)

 三つめに、ヤミ金規制法です。これも、私たち議員団の提案が実った、たいへん重要な成果として特筆するに値するものだと私は考えます。ヤミ金の被害者救済にとりくむ人々の運動と力をあわせて、実効ある規制法の実現をくりかえしわが党は要求した。それがとうとう、与野党の合意になって、ヤミ金規制法が成立した。これをぜひ実効あるものとして運用し、しっかりとした被害防止のための方策が求められますが、ここでも一歩政治を動かしました。

 国民のさまざまな苦しみに思いをよせ、それを軽減し、それを取り除くために献身することこそ、日本共産党のそもそもの存在意義であるわけですが、国民の運動と協力して、議員団全体のねばり強い奮闘、秘書団の支えによって、こういう一連の成果をあげたことを、おおいに確信にし、おおいに国民のなかにもその成果を広げていきたいと考えるものであります。(拍手)

目先の「もうけ」に熱中では、たちゆかなくなる──財界や政府の一部からも

 さて、ここで注目すべきは、財界や政府の一部からも、大企業が自分の目先の「もうけ」にだけ熱中し、他をかえりみないということでは、二十一世紀の日本の経済も、社会も、ひいては、企業もたちゆかなくなるという危機感が生まれはじめているということであります。

経済同友会の「企業白書」──「企業の社会的責任」をテーマに

 私は二つの文書に注目しました。

 一つは三月に経済同友会が発表した『企業白書』です。「『市場の進化』と社会的責任経営」と題したものですが、「企業の社会的責任」がテーマとなっています。このなかでは、企業は、「経済性」──すなわち「もうけ」だけではなく、「社会性」「人間性」「環境との共生」などへの責任ある行動をとらないと、持続可能な経済社会にならないし、企業としての未来もないという認識がのべられています。私たちから見ますと、もちろん立場の違いはさまざまあるわけですが、経済界がこういう提言をしたことは注目すべきものとして読みました。

内閣府の 「国民生活白書」──若者の雇用問題の責任は大企業に

 もう一つは、五月に内閣府が発表した『国民生活白書』です。これは、「デフレと生活――若年フリーターの現在(いま)」という副題がありまして、若者の雇用問題に政府としてははじめて、分析としては的確なメスを入れたものとして注目して読みました。これまでは、わが党が若者の雇用問題を国会でとりあげますと、政府は「若者側の意識に問題がある」と答弁したものでした。ところが、この『白書』では、「主な原因は企業側にある。とくに大企業の責任が大きい」という分析をしています。大企業が新規採用を抑制して、パート、アルバイト、派遣労働におきかえる、これをやってきていることが問題であって、こんな行動をつづけるならば、日本社会全体の再生産自体も、存続自体もあやうくするという、分析としては正しいことが書いてあるのです。まともな処方せんがないというのが問題ですが、政府からもこういう危機感がでているというのは、注目して読みました。

綱領改定案の内容は、日本社会が必然的にもとめている方策

 両方とも、問題提起や分析は適切でも、処方せんはさだかではありません。しかし、財界や政府の一部からでさえ、こういう危機感、認識がでてくることは、わが党の綱領改定案が主張している「ルールある経済社会」「大企業に社会的責任を果たさせる」、こういう経済の民主的改革の方策が、わが党が勝手にいっていることではなくて、日本社会が必然的に求めている方策であって、まさに未来ある旗だということを証明しているのではないでしょうか。

 いま私たちが討議している綱領改定案には、日本の社会が求めているほんとうに必然的で合理的な内容が、豊かに盛られているということをしっかりつかんで、これを全党の英知で練りあげ、広げていくようにしたいと思います。

総選挙勝利、党大会成功めざして───暑い夏のたたかいの先頭に

 最後に政局ですが、この秋、あるいは年内の解散・総選挙の可能性を色濃くはらみながら事態は推移しています。また、十一月には第二十三回党大会も予定されております。この暑い夏のとりくみがたいへん重要です。

 この政治戦で前進を勝ちとることは容易ではないことですが、われわれのたたかいいかんでは、前進を勝ちとる条件はあります。

 それも、この間の全国の同志の奮闘によって証明されています。とくに七月二十日に投票がおこなわれた京都の向日市議選で、反共攻撃を打ち破って、得票率を伸ばし、八人全員当選、市議会第一党、そして議席占有率33%という峰をしっかり確保したとりくみは、わが党の前進の可能性を物語るとりくみとして、全党を激励しました。

 いつ解散・総選挙となっても前進が勝ちとれるよう、広い有権者を対象にした宣伝と対話をおう盛に広げましょう。いまこそ、この暑い夏、広く国民のなかにうって出ていく先頭にたちましょう。

 そして、同時に、党綱領改定案を討論によって練りあげつつ、この豊かな内容を、国民に広範に広げていく先頭にもたっていきたい。

 そして、「大運動」を必ず成功させ、党勢拡大の新しいあげ潮のなかで選挙と大会を迎える決意を固めあいたいと思います。

 いま全党の活動を、明るく元気に前進をはかる先頭に、わが国会議員団が立つ決意を固めあいまして、閉会にあたってのごあいさつといたします。ともに頑張りましょう。(拍手)