2003年10月12日(日)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長は十日深夜から十一日未明にかけて放映されたTBSテレビ系「NEWS23スペシャル 討論!6党首生出演」に出席し、各党の党首と討論しました。各党の出席者は、自民・小泉純一郎総裁、公明・神崎武法代表、保守新・熊谷弘代表、民主・菅直人代表、社民・土井たか子党首。司会はジャーナリストの筑紫哲也氏。
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冒頭、各党党首が総選挙に臨む姿勢について一分間発言。志位氏は「国民が主人公」と書いたパネルを示し、次のようにのべました。 |
志位委員長 私たちは、「国民が主人公」を目指す二つの改革を訴えてたたかいぬきたい。
第一は、財界が主役から、国民の暮らしが主役の経済改革です。とくに税金の使い方を変えて、予算の主役に社会保障をすえ、年金・医療・介護で、安心できる制度を築きたい。長時間労働やサービス残業をただして、安定した雇用を増やしたい。
第二は、アメリカいいなりから、独立・平和の日本への改革です。とくに、イラクへの派兵は、いまからでも中止する。そして、二十一世紀は、日米安保条約をなくして、対等・平等の日米関係を築く。そういう改革に取り組みたいと思います。
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郵政事業の「民営化」問題をめぐり、小泉首相は「民営化するとはっきり明記した」、菅代表は「(自民党は)言葉だけの民営化だ。中身がない」などと発言。志位氏が発言し、小泉首相とのやりとりになりました。 |
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志位 この問題は、国民はどういうふうに望んでいるのか。世論調査で見ても、六割は「国営のままでいい」と答えているんですよ。
小泉首相 いや、そうでもない。よりよい民営化をつくる。一年かけて。
志位 国民の要望から出発した問題ではないんです。銀行の要望から出発した問題なんです。銀行が、国営の郵政事業があると「民業を圧迫する」、だからこれが邪魔だと。(首相「いや、これは特殊法人が関係してくる」)だから、これを民営化してくれと。銀行の要求にしたがっているだけです。
首相 それは共産党の見方です。
志位 たとえば、民営化されたら、庶民のとらの子の貯金が危なくなる。あるいは、全国一律の郵便サービスが危なくなる。良いことは、国民にとってないんですよ。やはり、主人公である国民の意向をきちんとふまえた議論が必要です。
首相 だから「国民的議論を踏まえ」と言っているじゃないですか。これがどうして悪いのか。玉虫色なのか。
志位 ですから、民営化が当たり前だと思っているのは、本当に少数の人たちだと。銀行の代弁者だと私ははっきり言いたい。
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小泉「構造改革」に対する態度について、「構造改革は必要だ。方向性は間違っていない」(公明・神崎代表)、「構造改革はしっかりやらなければいけない」(民主・菅代表)などの発言が各党から相次ぎました。 志位氏は次のようにのべました。 |
志位 私は、小泉さんがやっている「構造改革」は、経済で一番大事にしなければならない国民の家計、暮らしを無視したものだと思います。
私は、本当にやらなければならない改革というのは、一つは、社会保障と暮らしを予算の主役にすえる、税金の使い方を変える改革だと思います。
(衆院)代表質問でも言ったのですが、日本では、国と地方あわせて、税金を納めたうち、社会保障に使われているのは29%、欧米はだいたい四十数%です。欧米はだいたい半分は社会保障に使っている。これが主役なんです。
日本もそういう改革をやれば、医療でも年金でも介護でも、これをまかなう財源は出てくる。まずムダを削って、社会保障を予算の主役にすえる。こういう改革こそ必要だ。
もう一つは、大企業のリストラ応援の政治でいいのか。いま、どんどん正規社員を減らし、パートやアルバイトに置きかえる。しかし、長時間労働、サービス残業はひどい。ここを是正して雇用を増やす。これが必要になっています。
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国民の生活、雇用をめぐる不安、将来への不安に関連し、志位氏が、消費税率引き上げの問題について、小泉首相の姿勢をただし、激しい議論を展開しました。 |
志位 | これでは増税のフリーハンドを与える |
小泉 | それは束縛しない 消費税を上げざるをえない状況になることは、わかっている |
志位 今日(十日)、「小泉改革宣言」(自民党政権公約)をお決めになったそうで、私も全部拝見させていただきました。そのなかで、消費税の問題についてのべられています。小泉さんは「消費税は三年間上げないんだ。上げない、上げない」と繰り返してきました。
ところが、この自民党の公約には「上げない」ということは、一言も書いていない。何と書いてあるかというと、「将来の消費税率引き上げについても国民的論議を行い、結論を得る」と書いてあるわけです。つまり、これはもう、事実上の増税宣言ですよ。「結論を得る」となっているんですから。これはどうですか。あなたが言っていた「上げない」ということとまったく矛盾する事態じゃないですか。
首相 全然矛盾していないんです。三年間は上げない。しかし、消費税の議論を、私は束縛するものではない。
志位 ただ、(公約では)「議論をする」と言っているだけじゃないですよ。「結論を得る」と。(首相「もちろん」)この「結論」のなかには、税率引き上げも選択肢として入るでしょう。
首相 それは、どうするかというのはあとあと…。三年通してやります。
志位 「結論を得る」というのは、この四年間の公約として入っているんですよ。
首相 いや、そこはもう、あまりにも断定しすぎるんじゃないですか。
志位 断定しているのは、あなたの党の公約なんです。
首相 「結論を得る」のが公約なんです。消費税上げるかどうかというのは、私の三年間は「上げない」ということを明言している。
志位 いや、「結論」のなかに、「消費税を上げる」という選択肢が入っているでしょう。
首相 それは私は束縛しません。
志位 これでは事実上、増税のフリーハンドを与えるものになりますよ。
首相 それは束縛しません。
志位 「結論を得る」のなかに、消費税の増税やらないというふうに言えますか。
首相 三年間は上げません。
志位 いや、そうじゃなくて、「結論」ですよ。「消費税率引き上げについても(国民的)論議を行い、結論を得る」と書いてある。(首相「当然じゃないですか」)この結論のなかには、当然増税という選択肢は入っている。誰が読んでも、そういうものです。(首相「私は三年間上げないといっているんですから」)
少なくとも、これは、フリーハンドで好き勝手に、増税ができるような公約です。
消費税増税問題での志位氏と小泉首相のやりとりを受けて、司会の筑紫氏がこの問題について、小泉首相に質問。次のようなやりとりがありました。 |
司会 小泉総理にもう一回、確かめたいんですが、自分の在任中には上げない?
首相 上げません。
司会 しかし、いずれは引き上げは不可避だとお考えになっているのか。あるいは、政府内でそういう議論はすべきだと考えているのか。
首相 議論は大いにしてもらいたい。しかし、三年過ぎた後、将来を展望すれば、消費税、上げざるをえない状況になるというのは、私は分かっています。
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年金制度についての討論で、民主党の菅代表は、マニフェスト(政権公約)を説明するなかで、「将来は、基礎年金部分は、最終的にはすべて消費税をあてていく。二階建ての部分は、所得比例の掛け金でいく」と表明。公明党の神崎代表も「基礎年金の国庫負担分を三分の一から二分の一に二〇〇八年まで引き上げるため、所得税の定率減税の見直しと年金課税の見直しによって、二兆七千億円を手当てする」と増税を当然視しました。 志位氏は次のようにのべました。 |
志位 私は、当面三つの改革が必要だと提案しています。
一つは、基礎年金への国庫負担の率を、法律通り、来年度から二分の一に引き上げる。その財源は、これは歳出の削減で、公共事業費や、あるいは道路特定財源の一般財源化、軍事費にもメスを入れる。これで、まかなうことができます。
第二は、年金の安定した支え手を増やす。雇用と所得の安定です。
第三は、百七十五兆円の(年金)積立金を計画的に活用する。当座はこれでやる。
ただ将来は、新しい負担を誰が担うか、という問題が出てきます。
私たちは、将来は「最低保障年金制度」を、国庫と事業主の負担で創設するということを提案しています。
これをいいますと、小泉さんは、「(大企業の)国際競争力が落ちるじゃないか」とおっしゃるかもしれないけれど、日本の大企業の税と社会保険料の負担というのは、だいたい、欧州(諸国)から比べて、八割から五割ですよ。ですから、大企業に応分の負担を求める、これは当たり前のことで、そういうことも含めて、将来の安定をきちんと確保する。こういう設計図をしっかり、いま政治が責任をもって示すことが、安心につながると思います。
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また、小泉内閣が計画しているイラクへの自衛隊派兵問題について、志位氏は、次のようにのべました。 |
志位 このイラク特措法というのは、七月に強行されたわけですけれども、それから三カ月たちまして、私は二つの重大な変化が起こっていると思います。
一つは、イラクの情勢の泥沼化です。あの後、国連の事務所が爆破されて、治安状態がずっと悪くなる。私は、(衆院)予算委員会で小泉さんとだいぶ議論しましたけれども、国連の事務所の最近の発表では、わずか二週間余で、三百四十九件も武力事件が起こる。(イラク)全土で起こる。自衛隊が「戦闘地域に行かない」といいますけれども、全土、戦場ですよ。
もう一つは、国際社会で、あの戦争が無法だったということが、いま、強く指弾されているんです。これも(国会で)とりあげましたが、(国連の)アナン事務総長自身が、これは「国連憲章への根本的な挑戦」だと、国連総会でおのべになった。そこまでいま、厳しい批判がされている。
ですから、いま自衛隊を出す、米英軍の支援に出すということになりますと、日本もまた、その泥沼のなかに、一緒に身を沈めることになる。とり返しのつかないことになると思います。
やはり、この問題は、米英軍主導から国連中心に軌道を移し変えて、そして日本は、その枠内で、非軍事の方法で、復興や人道支援に協力する。これが一番の道です。自衛隊派兵は絶対やるべきではない。このことを強く言っておきたいと思います。
志位氏の発言に対し、小泉首相は「いま米軍が手を引いたら、もっとイラクの混乱がひどくなる」「イラクの統治評議会の代表のチャラビさんは、国連総会で『フセイン政権が崩壊したことによって、いかに自分たちは、米英軍に感謝しているか、忘れない』(と言っている)」と発言。志位氏は「そのチャラビさんが『新たな軍隊はいらない』と言っているのを、ご存じでしょうか」と反論しました。 |
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治安の回復、少年犯罪の多発の問題にかかわって、志位氏は次のようにのべました。 |
志位 私たちは、少年犯罪が多発する問題(の解決)に、どう接近するかという問題で、今度の公約に大きな柱を出しています。
やはり、いまの政治のもとで、社会の道義の面でも、大変な危機が起こっている。それが、子どもたちの心をむしばんでいる。こういう問題があるのではないか。
この問題を考えるさいに、これは、立場の違いをこえて、社会全体が取り組むべき問題を、大いに話し合ってみる必要があると思います。
たとえば一つ、日本は、世界のなかでも、子どもが守られていない国です。たとえば、性や暴力の情報から、守られていない。あるいは、児童ポルノの面でも、国連から批判を受ける。やはり、子どもをしっかり守る社会にしなければいけない。
あるいは、いろいろな少年犯罪の専門家にうかがいますと、自己肯定感情といいますか、自分が尊い人間なんだと、こういう感情が、非常に日本の子どもたちのなかで少なくなっている。自分を尊いと思えませんと、他人も大事にできなくなる。そこから、いろんな問題が起こってくる。
こういう問題を解決しようと思いますと、やはり、子どもが自由に意見をのべて、その意見が尊重されて、そして社会に参加する。そのことによって、本当に自分が尊い人間なんだと思えるような取り組みを、これは、垣根をこえて、ぜひ、社会全体で取り組むべきだということを、いま提案しています。
志位氏の提案にたいし、保守新の熊谷代表が「志位さん、いいところ突いていると思った。一つだけ、抜けている。教育現場の情報公開をすべきだ」と発言。志位氏は「教育のゆがみという点では、日本は国連から、『こんなに競争主義が激しくて、子どもが傷ついている教育はない。競争主義を直しなさい』と言われている。このゆがみをただすことが大事です」とのべました。 |