2003年11月20日(木)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ

(大要)


 十九日開会の特別国会を前に開かれた日本共産党議員団総会での志位和夫委員長のあいさつ(大要)は次のとおりです。


 総選挙のたたかい、ほんとうにごくろうさまでした。私は、まずみなさんのご奮闘に心からの敬意を申し上げるものです。そして、東北ブロックのかけがえのない一議席をみごとに引き継いで、新しくわが議員団にくわわった高橋千鶴子さんを、みんなで心から歓迎したいと思います。(拍手)

458万票の期待の重みをかみしめ、党の真価を発揮する奮闘を

 総選挙では、議席の後退という悔しい結果になりました。しかし、そのなかでも、四百五十八万人もの方々が「日本共産党」と書いてくださった期待の重み、そしてこの結果を得るために全国の支持者、後援会員、党員のみなさんが、日夜をわかたず奮闘してくださった労苦の重み、これをしっかりかみしめ、衆参の国会議員団が力をあわせて、新しい国会で、「日本共産党の真価ここにあり」という奮闘をしたいと思います。「この党ならば大きくしなければ」と、国民のみなさんに思っていただけるようながんばりを、力をあわせてやりぬく決意を、まず最初にかためあいたいと思います。(拍手)

 選挙戦の総括については、つぎの中央委員会総会でおこないます。党内外から寄せられているさまざまなご意見を真摯(しんし)にうけとめ、しっかりとした総括をおこなうつもりです。

 私は、ここでは、この政治戦から私たちが共通の確信にすべき点について、二つの点をのべたいと思います。

政党地図の激変のなか、明確な政治戦略をもってたたかいぬいた

 その第一の、最大の問題は、私たちがこの選挙戦を明確な政治戦略と政治論戦の方針を持ってたたかいぬいたということであります。

 この選挙の最大の特徴は、政党地図の激変のなかでたたかわれた選挙だというところにありました。自民党と新民主党が、消費税増税と憲法改定という大問題で、同じ流れに合流し、その同じ枠内で「政権選択」を競うという状況のもとでの選挙となりました。しかも同じ流れの合流ということが、政党地図の変化という形ではっきりと顕在化したのは、解散の直前の時期でありました。

 こうした急激な変化のなかで、わが党は、いったい何がおこっているのか―ことの真相を全力をあげて国民のみなさんにおつたえし、わが党の日本改革の提案を語り、増税と改憲という二つの悪政にストップをするという立場を堂々と語りぬきました。これはひじょうに大きな意義をもつものでした。

 限られた時間のなかで、それを全有権者規模でつたえきるにはいたりませんでしたが、わが党の訴えが届いたところでは、たしかな変化がおこったというのは、たたかったみなさんの共通の実感だと思います。四百五十八万票という得票は、こうしたなかで得たものであって、その一票、一票の重みは大きなものがあると思います。

 そしてまた、ことの真相をつかんでこの選挙をともにたたかった方々から、ほんとうに確信をもってたたかえた、元気にたたかえた、誇りをもってたたかえたということが、選挙後の各地からの報告でも共通して寄せられていることも、ほんとうに心づよいことです。ここにこの選挙戦での私たちのたたかいのたいへん大きな意義があったことを、まず確認できるのではないでしょうか。

さまざまな論者のなかから「二大政党制」への危ぐの声が

 選挙後、まだ一部ですが、さまざまな論者のなかから、いまつくられようとしている「二大政党制」への危ぐが、いろいろな形で明らかにされていることは注目すべきです。

 ある論者は、自民党と民主党の政治的な違いがなくなってきている、この先もっと似てくるかもしれない、いまおこっているのは「二極」ではなく、「一極」になる傾向だと指摘しました。ここでは「二大政党制」といわれているけれども、中身を見てみると実は二つではなくて一つではないか、という危ぐがのべられています。

 またある論者は、経済界が自民党と民主党のどちらも応援していることを指摘しながら、違いが見えない二大政党では困る、政権交代ができないのであればたくさんの党があるほうがよほどいい、そういう発言もおこなっています。

 問題の本質にせまる指摘が、こういう形でいまあらわれはじめている。いますすめられているような「二大政党制」という方向が、はたして国民の利益にかなうものだろうか、多様な民意がしめだされてしまうのではないか―心ある人々が危ぐを強めはじめているということは、注目すべきことです。

保守「二大政党制」づくりか、革新・民主の勢力の結集・成長か

 そういうなかでの今後の日本の政治動向ですが、私は、増税と改憲の道をすすむ保守「二大政党制」づくりを許すのか、それとも、それに対抗する革新・民主の勢力の結集・成長をはかるか―これが今後の日本の政治の対抗軸となってくると思います。

 保守「二大政党制」づくりの動きというのは、財界が前面にのりだした、かなり大掛かりで本格的な動きですから、これをむかえうつ私たちの構えも、それこそ本腰を入れたたたかいが必要です。しかし、保守「二大政党制」づくりの道と、国民の多数との間には、ひじょうに深い矛盾があります。またそれが、今後ひろがらざるをえないというのも、間違いないことです。

 この流れに対抗して、革新・民主の勢力を結集する。そのために果たすべき日本共産党の役割は、これからいよいよ大きくなってきます。その役割と責任を深く自覚して、新しい政治情勢にたちむかおうではありませんか。(拍手)

イラク問題――政府の立場は総破たん、派兵中止を強くもとめる

 第二に、私たちが確信にすべき問題は、この政治戦で訴えた政策と公約の中身です。私たちは、この政治戦で、年金の問題、社会保障の問題、雇用の問題、イラクの問題、さまざまな問題を訴えてきたわけですが、その一つひとつが国民の利益に根ざしたたしかな立脚点をもつものであり、選挙後の国政の展開のなかで、これからいよいよ力を発揮してきます。選挙戦で訴えた公約の一つひとつを実現するために全力をあげることは、党と議員団の国民にたいする最優先の責任であります。

 たとえばイラク問題ですが、この問題をめぐっては、イラク情勢の現実の進展そのものによって、政府の立場の破たんと、わが党の主張の的確さがうきぼりになっています。

 政府が、無法な戦争を支持してきたことの誤りは、戦争の「大義」があらゆる面で完全に崩壊しているもとで、もはや覆い隠しようもありません。政府が、米英軍の不法な占領支配を支持してきたことの誤りは、イラク情勢の深刻な泥沼化という現実そのものによって証明されています。さらにイラク特措法の「戦闘地域にいかない」という建前が、まったくの虚構であったということも、疑問の余地なく明らかになっています。無法な戦争を支持し、不法な占領支配を支持し、それを応援するための自衛隊派兵法をつくるという流れの全体が、総破たんしてしまっているのです。

 私たちが一貫して主張してきたように、米英軍主導の占領支配をやめ、国連中心の枠組みでの復興・人道支援に軌道を切り替える、イラク国民に一刻も早く主権を返還する―この方向にこそイラク情勢を前向きに打開する唯一の活路があり、日本政府はそうした方向の外交努力こそおこなうべきであって、憲法をじゅうりんした自衛隊派兵計画は中止する―このことをこの国会の審議をつうじても強くもとめていくものです。

消費税増税と憲法改悪――いやがおうにも国民的な熱い大争点に

 消費税増税と憲法改悪についていえば、私たちがこれらの大問題をこの選挙戦で提起した先駆的な意味あいは、今後の政治の展開の一歩一歩をつうじて、明らかになってくると思います。

 この選挙についていいますと、自民党も民主党も、消費税と憲法という二つの大問題で、正面からの論争を避ける態度をとりました。しかし、今後を考えますと、いつまでもそういう態度をつづけるわけにはいかなくなるでしょう。この二つの大問題は、いやがおうにも国民的な熱い大争点にならざるをえません。

 たとえば消費税の問題を考えてみますと、来年の参議院選挙で改選される議員の任期は六年間で二〇一〇年までです。この選挙では、小泉首相は「三年間はあげない」といってやりすごそうとしたわけですが、二〇一〇年まで上げないといえるかといった場合には、これはなかなか簡単にはことはすみません。そこでは、私たちが主張してきたように消費税に頼らないで安心できる社会保障を築く道を選ぶか、それとも「社会保障のため」を口実にして消費税大増税の道を選ぶかが、どうしても熱い争点になってこざるを得ないでしょう。

 憲法の問題を考えてみましても、自民党は、二〇〇五年には憲法改定に大きく踏み出すと、改憲に向けた「日程」を「公約」にしてしまったわけです。この問題では、憲法のどこを変えるのかの具体論が問題になってきます。一般的な改憲の是非にとどまらず、九条改憲の是非が問題になってきます。世論調査でも、九条改憲の是非を問えば、国民の多数は九条の改憲に反対だと、九条を守れという立場であることは、動きません。外務省自身がおこなった「安全保障に関する意識調査」でも、「日本の平和が守られているのは何のおかげか」という問いにたいして、「平和憲法」と答えた方が64%と第一位です。「自衛隊の存在」と答えた方は12%と第六位です。国民の多数は、憲法九条を二十一世紀の日本にとって平和の羅針盤だと、大切に考え、誇りに思っている。アジアの諸国民の気持ちも同じです。ですから本格的にこれに手をつけはじめるということになれば、多数の国民の意思と衝突する事態になることはさけられない。ことは重大な激動をはらんだ事態に発展するでしょう。

 今回の選挙結果をみて、「護憲勢力は時代遅れ」だという論評がありますが、日本国民の多数の意思、そしてアジアや世界の流れを見るならば、憲法九条をとりはらおうという主張こそが時代逆行以外の何物でもありません。

 消費税大増税の計画に反対するたたかい、憲法九条を守りぬくたたかいは、日本の命運をかけた息の長い大闘争となる課題です。この二つの大問題で、暮らしを守り、平和を守る国民的多数派を結集するために、草の根でのたたかいでも、国会でのたたかいでも全力をあげようではありませんか。(拍手)

大会成功と参議院選挙勝利にむけて

 一月には第二十三回党大会が開かれます。この大会では歴史的な綱領改定案を練り上げ確定するという大仕事があります。大会にむけて「大運動」を前進させ、強く大きな党づくりのとりくみも、必ず成功させる必要があります。そして、来年七月には参議院選挙ですが、ここで必ず勝利者となるために力をつくそうではありませんか。これらの直面するとりくみで、私たち国会議員団が全党のみなさんと心を一つに奮闘することを誓いあって、ごあいさつといたします。(拍手)