2004年1月26日付「しんぶん赤旗」大阪版に掲載

〔HP限定〕

開発最優先で借金地獄の府政を続けるのか
梅田さんで「府政が主人公」の府政にかえるか

――これが大阪府知事選の最大の争点

志位和夫委員長の訴え(大要) 大阪駅梅田阪神前(2004年1月24日)


 「明るい民主府政をつくる会」が二十四日、大阪駅梅田阪神前で開いた街頭演説で、日本共産党の志位和夫委員長が行った演説の大要は次の通りです。

 この選挙は三人の有力候補の争いですが、政治の流れを見ますと二つの流れの選挙だと思います。開発最優先で大阪を借金地獄に突き落とした「オール与党」と関西財界に牛耳られたこれまでの府政をつづけるのか、それとも「府民が主人公」の府政を梅田章二さんでとりもどすのか。これこそ選挙で問われている争点ではないでしょうか。(拍手)

 梅田さんは、大阪生まれ、大阪育ちで、府民のくらしと権利を守る弁護士として二十一年間働いてこられた方です。弁護士になって最初に手がけた裁判が西淀川の公害訴訟だと聞きました。この裁判は道路を管理する国と道路公団が大気汚染などの損害賠償責任を負うということを大阪地裁に認めさせた画期的な成果をおさめ、和解の勝訴となるわけです。こういうたたかいの先頭に立ってきた正義の弁護士が梅田さんであります。

 梅が咲けば春になります。梅田さんの勝利で大阪に春を呼ぶ希望ある革新・民主の府政をとりもどそうではありませんか。(拍手)

イラク派兵への政治家としての態度が問われている 知事候補できっぱり反対は梅田さんだけ

この選挙は、どのような情勢のもとでたたかわれるのか。イラクへの自衛隊派兵に多くの国民が心を痛めています。いまなお戦争状態にある他国に、自衛隊を派兵するというのは戦後初めてのことです。日本の命運を左右するこの問題にどういう態度をとるかは、国政はもとより地方政治に携わる政治家も避けて通れない大問題であります。

 私は、一昨日の衆院本会議の代表質問で、この問題の根本がどこにあるかということを追及いたしました。イラクには米英軍による占領支配がつづいています。占領がつづいているというのは、どういうことでしょうか。戦争状態がつづいているということなのです。政府は「戦闘地域と非戦闘地域がある」などといろいろなごまかしをいっていますが、イラク全体が戦争状態なのです。

 それではこれはどういう戦争でしょうか。戦争の最大の「大義」とされた大量破壊兵器は見つからないではありませんか。米軍の捜索チームは、見つからないままあきらめて引き揚げてしまいました。フセイン大統領は見つかったけれど、大量破壊兵器は見つからない。結局、「大義」などどこにもありません。国連の承認も得ないままの先制攻撃の戦争、国連憲章違反の侵略戦争――これがこの戦争なのです。

 いまのイラクの現状というのは、侵略戦争がつづいているというのが、ことの真相であります。ですから、そこに自衛隊を出すというのは、まさに無法な侵略戦争の加担となります。絶対に許すわけにはいかないではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 もう一つ、憲法との関係はどうでしょう。派兵された自衛隊は占領軍の一員となります。そのことは占領当局から日本政府にあてられた書簡でも、「自衛隊に占領軍の一員としての地位を保障します」と書いてあることです。実際に派兵された自衛隊がやる仕事も、政府が宣伝しているように「人道支援」というものだけじゃない。掃討作戦をやっている、軍事作戦をやっている米軍への輸送とか補給などの支援活動もやるわけです。つまり、派兵された自衛隊は、法律上も、やる仕事の実態でも、占領軍の一翼を担う。そういう状況に置かれるわけであります。

 しかし、これまでの政府の見解でも、占領や占領行政への参加は憲法で禁止された武力の行使になる、交戦権にあたるとして、許されない。これが政府の見解だったんです。これは当たり前のことです。さきほどもいったとおり、占領というのは戦争状態が続いていることです。その一翼を担うというのは、日本が戦争の一方の当事者になるということです。これが憲法九条違反でなくして何というのか。(拍手)

 ですから、いますすめられているイラク派兵の本質というのは、無法な侵略戦争と不法な占領支配に憲法を破壊して加担する――これが自衛隊派兵の本質です。

 ではみなさん、今度の知事選挙で、三人の有力候補は、どういう態度をとっているでしょうか。現職候補は、昨年の十二月に小泉内閣が自衛隊派兵の「基本計画」を決めた際に、こういいました。「小泉首相は国民への説明責任を最大限果たしている」。何も説明していないあの首相を、よくやっているとほめているのが現職知事です。

 もう一人、前の参議院議員の候補は何といっているでしょう。「(この問題については)少しあいまいにさせていただきたい」。これはひどい態度ですが、私が調べてみましたら、昨年三月にはじまったイラク戦争の直前の二月に、全国会議員にアンケート調査がやられていたのです。そのアンケートの中で、「国連の決議なしに米軍がイラクを攻撃した場合にあなたはそれを支持しますか」というのがあるのです。この質問に対して、前参議院議員は、「そういう場合でも戦争を支持する」と答えているんです。世界中が、戦争を起こさないでくれ、そういっている最中に、国連決議がなくても戦争をやって結構と、こういってはばからなかった。全国会議員でそういう人が何人いるかなと思って、調べてみましたら、自民党も含めてたったの八人です。その中に入っているような人に、どうして、憲法を守ることを基本にすべき知事の仕事をまかせることができるでしょうか。(拍手)

 そのなかで、梅田さんがイラク派兵を「きっぱり反対」「断固反対」――こうおっしゃったのは、本当に心強いことだと感じました。梅田さんが勝利したら、どういうことになるでしょう。大阪から、無法な派兵を進める勢力に対する最も手厳しい痛打を与えることになることは明りょうだと思います。(拍手)

 どうかみなさん、憲法を守ろうという一票、イラクへの自衛隊派兵を許すなという願いを、梅田さんに託してください。よろしくお願いいたします。(拍手)

大阪府政は財政破たんという深刻な病気にかかっている 原因と対策を示しているのは梅田さんだけ

 さて、府政の問題ですが、私は、大阪府政は、たいへん深刻な病気にかかっていると思います。一言でいいまして、借金地獄と呼ばれる財政破たんです。借金の総額は、なんと四兆七千億円。この莫大(ばくだい)な借金で大阪府の財政は、全国最悪になってしまっています。府民のみなさんが納めてらっしゃる税金の46%が借金の返済で消えてしまう。ここまで借金財政がひどくなってしまった都道府県というのは、全国にもほかにありません。

 しかし、どんな病気でも、原因を究明すれば、それを治す道が開かれます。この財政破たんの原因は、いったい何か。九〇年代の初めに、関西財界――関西経済連合会と通産省が一体になって、「ベイエリア開発計画」というのを始めました。この計画で、大阪のいたるところで巨大公共事業のばらまきが始まりました。泉佐野コスモポリス、りんくうタウンなど、「必要性がなくてもいい」「採算の見通しがなくてもいい」「ともかくゼネコンをもうけさせればいい」――そういう開発仕事に血道をあげたあげく、多くの事業は破たんしました。残ったのは巨額の借金です。府の借金を見ますと、一九九〇年度には一兆三千億円。一九九九年度には三兆八千億円。そして太田府政のもとで二〇〇三年度には四兆七千億円。この十三年間で借金が三・六倍にふくれあがった。まさにうなぎのぼりです。府を借金地獄につきおとした最大の原因が大型公共事業にあることは、いまでは府民の常識になっているのではないでしょうか。(拍手)

 それでは、三人の候補者は、この問題についてどういう態度をとっているでしょうか。関西経済同友会が公開質問状を出して、その第一問目に、全国ワースト一の財政状況になった原因と、どう立て直すかの方策≠ノついて質問しています。それぞれの候補はどう答えたでしょうか。

 まず、現職候補の答えはこうです。「大きな要因は三つ。景気の低迷、産業構造の転換の遅れ、地方税財政制度の矛盾です」。自分が通産省の近畿通産局にいたときも、そして大阪知事になってからも、一生懸命すすめてきた無駄な大型公共事業にこそ、借金財政の原因があるという認識がまったくないんですね。ですから同じ公開質問状の回答書のなかで、この現職候補は、こう答えています。「関空や都市再生環状道路など…重点的に推進します」「公共事業費の都市への思い切った重点配分を国に強く求め、積極的に整備を進めていきます」。みなさん、借金地獄の原因となった開発最優先の道をわき目もふらずつっ走ろう。何の反省もなく、何の自覚もなく、借金地獄にまい進しようというのが、現職知事ですが、この人には大阪府政をあずかる資格は、ないのではないでしょうか。(拍手)

 それではもう一人、前参議院議員はどうでしょう。この人は「読売」で行われた知事選の座談会で、借金財政の問題についてこう言っているのです。梅田さんが、「もっと福祉を重視する必要がある」と発言したのに対して、前参議院議員の人はこういってる。「福祉重視だと、借金体質はいつまでも変わらない。赤字体質に歯止めをかけるには四十人学級が五十人になっても仕方がない」。借金財政の原因は、「福祉重視」にある、対策は、福祉の切り捨てと五十人学級。さきほど、梅田章二さんが三十人学級の実現をはかるとおっしゃっていましたけれども、三十人学級をめざす知事さんにするのか、五十人学級になっても仕方ないということを言い放って、胸の痛まない人を選ぶのか、答えははっきりしているではありませんか。(拍手)

 梅田章二さんは、この公開質問状への回答書で、こうもきっぱりとおっしゃられています。「ムダな公共事業に税金をつぎ込んできたことが、大きな要因」だ。「無駄な大型開発を中止・見直しをする」「予算の使いかたをきりかえ、…府民にとって必要な仕事をやりながら財政を再建」する。みなさん、借金地獄という深刻な病気の原因と、その打開策について、事実をふまえ、府民の立場に立った回答を示している候補者は、梅田章二さんしかいない。借金地獄から、大阪を救い出せるのは、梅田さんをおいて、ほかにはおりません。どうかよろしくお願いいたします。(拍手)

いま府政の進路きりかえないと大変な事態に

 私は、大阪の府政を見ておりまして、ここで進路をきりかえないと、二つのたいへんな事態がひきおこされるということをみなさんに訴えないわけにはいきません。

 その第一は、巨大開発にもっと税金がつぎ込まれるということです。たとえば、関空二期工事。これは、総事業費が一兆四千億円の巨大開発です。しかしこれを推進する「根拠」はもう完全に崩れてしまった。これをすすめてきた国や府は、「滑走路一本では、飛行機の離着陸が年間十六万回しかできない。ところが、二〇〇七年度には十六万回をこえてしまう。一本では足らなくなるから二本目をつくる」という説明をしてきました。ところが、実際に使われている状態を見ますと、一九九七年度から二〇〇一年度で、離着陸は十二万回程度に低迷しています。そして、二〇〇二年度を見ますと十万回台に落ち込んでしまっています。「二〇〇七年度に十六万回こえてしまう」という「根拠」はまったくなくなりました。

 それなのに今の知事は、「何がなんでも二〇〇七年度に供用開始に全力をつくす」といっている。いま、半分ぐらいまでつくられているんですが、いまからでも私は見直しは必要だと思います。全部上ものまでつくってしまったら、いよいよ傷口が広がります。いまからでも見直して、府民のみなさんの負担を最小限におさえる思い切った転換が、必要ではないでしょうか。(拍手)

 それから私が、こちらにうかがってもう一つ驚いたのは、りんくうタウンの問題です。あの関空の対岸に位置し、府が六千億円投じて巨大整備をおこなって、最初の計画は、高層ビルが林立する国際的な物流拠点にするという計画でした。ところが、分譲がすすまない。そこで遊園地にしたり、とりあえずはいろいろな使い方をやってきたわけでありますけれども、とうとう行き詰まって、いま府がやろうとしているのは、税金を使ってその穴埋めをしようという最悪のしりぬぐいです。りんくうタウンなどの開発の失敗の穴埋めに二千三百億円ものみなさんの税金をつぎ込もうとしている。みなさんこれではりんくうタウンならぬ、「金くうタウン」。まさに税金をのみ込むだけのものになってしまっている。巨大開発へのこれ以上の税金の注ぎ込みはきっぱりごめんという審判を下していこうではありませんか。(拍手)

 第二に、借金財政を口実に、府民いじめの政治がさらにひどくなるという問題です。太田知事が、知事就任で真っ先にやったのは、高校授業料を三割も値上げして、全国一高いレベルにしたことでした。つぎにやったのは府立高校のエアコン使用料を徴収して、それを滞納すると退学処分にすることもありうるという血も涙もない政治です。

 ところが現職知事は、このことに対して恥じるどころか、朝日新聞でこう言った「(削ることを)教育の分野では思いきってやった。これからは福祉の分野だ」。教育を削ったから次は福祉だといってはばからない。福祉の分野でやろうとしているのは、四つの福祉医療制度の切り捨てです。お年寄りの医療費の助成制度――だいぶ横山前知事のもとでずたずたにされたけど、それでも六十五歳から六十九歳までのお年寄りの住民税非課税の世帯には、助成制度が残っているわけですが、これも制度そのものを廃止してしまおうというのです。そして、乳幼児医療費の助成制度、母子家庭の医療費の助成制度、障害者のみなさんの医療費の助成制度、この助成制度に対して、一つの医療機関で月千円程度の自己負担を導入して有料化する。四つとも有料にしてしまおう。これがいまやろうとしている「教育の次は福祉」という話なんです。

 私は四十七都道府県を調べてみました。いまいったお年寄り、乳幼児、母子家庭、障害者、四つともすべて有料の制度になっているのは、五つの県しかありません。残りの四十二は、ともかくこの問題について独自の助成制度を持っている。すべて有料になっているのはたった五つです。

 みなさん、黒田革新府政の時代に、全国に先駆けて福祉の制度をうち立てた大阪が、全国最低の福祉の府政になってしまう。こんなことを許すわけには絶対にいかないではありませんか。(拍手)

 ここで府政の進路を切り替えないといけない。巨大開発のむだ遣いと、くらし切り捨てにストップをかけ、府民の命とくらしを守る自治体らしい自治体を、梅田章二さんを先頭に取り戻そうではございませんか。(拍手)

「オール与党」、関西財界が牛耳る府政を大もとからかえ、大阪に春をよぶ勝利を

 最後にみなさん、私が訴えたいのは、どうして大阪ではこんなむちゃくちゃな府政がまかり通っているのかという問題です。それは日本共産党以外がすべて与党――自民も民主も公明も社民も「オール与党」、この翼賛体制に支えられて、みなさんのくらしを痛めつける政治をすすめている。「オール与党」政治こそ、諸悪の根源だということを、私は訴えたいと思うのであります。(拍手)

 たとえば、関空二期工事が、府民のみなさんの「税金のむだ遣いやめろ」と世論が高まる中で、政府の中でも「二〇〇七年の供用開始は延期すべきじゃないか」という議論がされたことがあります。その時に、「いやいや延期はまかりならん」とストップをかけたのが「オール与党」勢力です。自民、公明、民主は、府議会で「絶対に二〇〇七年には供用開始すべきだ」という決議を無理やり採決しました。

 そしてその中でも、いちばん関空二期工事に熱中しているのが公明党なんです。公明党の幹事長は、関空の二期工事の延期論が出たときに、東京にでかけていった太田知事と一緒になって、財務省にねじこんで、国土交通省にねじこんで、「予定通りやれ」と圧力をかけた。それほど執着してきた。

 もう一つ、どうして「オール与党」勢力は、こんなにも開発仕事に熱中するのか。それはこの開発仕事でもうけてきた関西財界と一心同体の関係にあるからです。関空二期工事の受注企業から、自民党、公明党など二十六人の国会議員と、大阪の自民党、民主党など十二人の地方議員に献金が渡っているという事実が明らかになりました。関西財界は巨大開発で府民のみなさんの税金を食い物にし、「オール与党」はその財界から献金をもらって甘い汁を吸う。「オール与党」、関西財界、公明党・創価学会――こういう勢力が牛耳る府民不在の府政を、おおもとから変える選挙にしていこうではありませんか。(拍手)

 府政を変えたいという広い府民のみなさんの願いと日本共産党の共同で、梅田章二さんを知事に押し上げようではありませんか。(拍手)

 一九七一年に黒田革新府政をうち立てた素晴らしい歴史を、大阪のみなさんは持ってらっしゃいます。あのときのスローガンは、「公害知事よさようなら。憲法知事さんこんにちは」でしたね。あの勝利というのは、まさにあのときに公害訴訟が大問題になっていたように、開発政治、大企業の中心の政治にたいする大阪府民の勝利でありました。そして憲法を何よりも大切にし、憲法をくらしに生かそうという大阪府民のみなさんの勝利でありました。

 みなさん、あの勝利を勝ち取った選挙で、もう一つ大事なスローガンを、大阪府民のみなさんはつくりました。「大阪が変われば日本が変わる」。

 「公害知事よさようなら。憲法知事さんこんにちは」。これを二十一世紀になおせばですね、「開発知事よさようなら。憲法をくらしに生かす梅田知事の誕生を」――こういうことになるのではないでしょうか。(拍手)

 そして「大阪が変われば日本は変わる」、これは二十一世紀も変わらぬ真理であります。みなさん、再びこの大阪に素晴らしい春を呼ぶ勝利を、次の次の日曜日にはごいっしょに勝ち取ろうじゃありませんか(拍手)。梅田知事誕生に力をお貸しいただきますことを最後に訴えまして、私の訴えとさせていただきます。寒い中、ご清聴ありがとうございました。(大きな拍手)