2004年6月5日(土)「しんぶん赤旗」

法案を強行する大義名分はひとかけらもない

日本共産党緊急両院議員団会議

志位委員長のあいさつ(大要)


 日本共産党の緊急両院議員団会議での志位和夫委員長のあいさつ(大要)は次の通りです。


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緊急両院議員団会議であいさつする志位和夫委員長=4日午後欷国会内

 みなさんご苦労さまです。これから参議院本会議でのたたかいが始まりますが、わが党は最後まで年金大改悪の法案に堂々と反対を貫いて、がんばりぬく決意を、まず固めあいたいと思います。(拍手)

 年金は国民の老後の生活の命綱でもあり、土台ともなっている大切な制度です。その制度の大改悪をすすめるさいに、これほど国民を無視したやり方が連続して強行される―これはまさしく前代未聞のことだと思います。

内容―法案の最大の「売り物」がごまかしだった

 三点ほど申し上げたいんですが、まず第一は法案の内容です。政府は、この法案の正体を、国民に隠しぬき、あざむけるところまであざむいて、ごまかしてやり過ごそうとしました。私たちは参院の論戦の中で、小池晃政策委員長の質問でそのごまかしを暴き、「百年安心」という看板がまったくのにせものだった―「上限を固定する」こともうそ、「50%確保」もうそ―「百年安心」という看板がまったくのにせものだったことを、明らかにしました。これは政府がこの法案の最大の「売り物」にしていた看板を、見事に打ち破る論戦となりました。

 このことを政府が国会で公式に明らかにしたのは参議院の質疑だった。小池質問でつめられて、やっとしぶしぶ明らかにしたというところが、ことの重大な点です。衆議院の質疑の最終段階で、マスコミの質問に答えて「上限」「50%」にかかわる一部の試算が非公式に明らかにされたということがありましたが、政府は国会にはいっさい公式に試算の資料をだしていなかった。国会にはこの法案の要にかかわる重大問題を隠したまま、衆院での強行をはかったのです。

 参院の審議に入り、小池質問への答弁ではじめて真相が公式に明るみに出たわけですが、明らかになった後も、政府は「説明不足は悪かった」というわけでもない、「聞かれたから答えてやった」という、何が悪いんだという開き直りに終始しました。ここには、国民に法案の中身について誠実に説明しようという責任も、姿勢も、まったくない。つごうの悪いものはできるだけ隠しておいて恥じないという許しがたいものです。

 きのうの質疑を聞いていましたら、小泉首相は今度の法案の一番の核心となるしかけとされている「マクロ経済スライド」について質問され、「この仕組みはどういうものですか」と聞かれて、答えられなくなりました。苦し紛れに「年金には物価スライドがあるでしょう」と答えました。まったくわかっていないのです。物価があがっても「物価スライド」が働かなくなる―年金給付は上がらなくする仕掛けが「マクロ経済スライド」なのですから。法案の基本中の基本のところを首相自身が理解もしないで、自分自身が分からないで国民をあざむいていたということになる。この罪はたいへん重いといわなければなりません。(拍手)

未納問題―与党に年金問題を語る政治的資格はない

 第二は、そういう与党が、だいたいこういう年金法案を強行する資格があるのか―政治的資格の問題です。

 国会議員の未納の問題が大問題になりました。わが党はいち早く合理的な基準に基づく調査の結果を発表しました。しかし自民党はいまに至るも、党としての未納議員の調査・公表をやっておりません。これをわが党議員が追及しますと、「自由民主党だから」ということをいうわけですけれども、これは本当にこの党が天下の“無責任党”であることを明らかにしたものにほかなりませんでした。

 この法案を一番熱心に推進した公明党のやり方は、三役が全員未納であったことを隠せるだけ隠していて、衆議院で法案を強行した後になってやっと明らかにした、しかも責任すらとらないという、異常な党略ぶりをあからさまにしたものでした。

 この間、国民の多くが国会議員の年金の未納問題に対して強い怒りを広げました。これは当然のことで、「私たちはつめに火をともす思いでくらして、そのなかから一万三千三百円を払っているのに、国会議員は何をやっているのか」という当然の怒りでした。それにたいして、自民も公明も、まったく党略的にこの問題をあつかい、なんらまともな反省のない態度に終始したまま、法案を強行しようとしている。こうした勢力に年金の問題を語る資格はそもそもないということを、強調しなければなりません。(拍手)

重ねられた国会のルール破りは許せない

 第三に、国会のルール破りの問題であります。こんどの与党の動きには、ルール破りがたくさんあるのですけれども、とくに三つの点は強く指弾されなければなりません。

 第一に、衆参ともに中央公聴会を開かず、国民の声に耳を傾けるというまともな姿勢がいっさいなかったという問題です。

 だいたいこういう重要な法案については中央公聴会を開き、国民のみなさんの声を聞いて、それに基づいてさらに審議をするというのが当たり前の姿です。これまでも公聴会をやるにはやったが、その前に採決日程が決められていたことが大問題になり、委員会にさしもどされたこともあったほど、公聴会というのは重視されていたものでした。重要法案では公聴会をきちんとやることは、基本中の基本なのです。ところがそれを、衆参ともにやらなかった。

 第二は、衆参ともに委員会での採決を、与党が一方的に強行したことです。昨日の「採決」の無法ぶりは、あぜんとするほどのひどいものでしたが、採決日程について、両院とも与野党の合意のないままの強行採決を重ねたということも、絶対に忘れてはならない重大問題であります。

 第三に、参議院についてはわが党の審議権―社民党や西川きよし氏も含めてですけれども、質問権をはく奪した。これは絶対に許しがたいことであります。調べてみましたら、総理出席の質問で審議日程が確認されているもので、野党の質問をああいう形で奪ったというのは今回が初めてだということです。衆参通じて初めての前代未聞の暴挙をやった。

 総理が出席していない質問でそうした暴挙がやられたことは、いくらかあったそうです。そのときも被害者は小池さんなんですね(笑い)。サラリーマン本人の医療費を三割負担に引き上げるときの法案も、小池さんの前で質疑打ち切りがされたということですが、このときはさすがに総理質問ではありませんでした。

 総理質問という国会の質問のなかでも重視して行われるべきもので、与野党で質疑の日程がちゃんと確認されていたものを、無理やり断ち切ったというのは衆参通じて一度もない。初めての暴挙です。このあまりにひどい暴挙は、与党も、議運などで説明できないようでありますが、それほどひどい国会のルール破りです。

この悪法を強行する大義名分はひとかけらもない

 内容、政治的資格、国会のルール破り―この法案を強行する大義名分はひとかけらもありません。今日はだいぶ時間もかかると思いますが、最後の最後まで道理を尽くして国民のみなさんの期待にこたえ、たたかいぬきたいという決意を申し上げ、私ども衆院議員団も、一緒に歩いたり、発言したり、投票したりはできませんが、気持ちは一つということでたたかいぬきたいということを最後に申し上げてごあいさつといたします。(拍手)