2004年10月15日(金)「しんぶん赤旗」

志位委員長の代表質問

衆院本会議


 日本共産党の志位和夫委員長が十四日の衆院本会議でおこなった代表質問(大要)は次のとおりです。


 日本共産党を代表して、小泉首相に質問します。

 質問に先立って、私は、この間の連続した豪雨・台風災害で被災されたみなさんに、心からのお見舞いを申し上げます。そして政府が、被災された方々の生活基盤の再建のために、制度改善を含めた万全の対策を講じることを、強く求めるものであります。

首相の政治姿勢の根本を問う――政治と金、イラク問題について

 まず、首相の政治姿勢の根本にかかわって二つの問題についてうかがいます。

政治と金――企業・団体献金の全面禁止に踏み込むべきだ

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代表質問にたつ志位和夫委員長=14日、衆院本会議

 一つは政治と金の問題です。日本歯科医師連盟から一億円ものヤミ献金をうけとりながら、「記憶にない。責任はない」という、あまりに庶民の感覚とかけはなれた橋本元首相の言動に、国民の怒りが集中しました。ヤミ献金問題の真相を徹底的に糾明するために、関係者の証人喚問を強く求めるものであります。

 同時に私が強調したいのは、小泉首相にとってことは他人事ではない、自民党総裁としての政治姿勢が問われる「自民党組織ぐるみ」の疑惑であるということであります。

 年間五億円前後にのぼる日歯連から国民政治協会への献金の大半が、受取先の議員名を指定したものであり、自民党本部を経由して各議員に流れる「迂回(うかい)献金」だったという疑惑が広く指摘されています。「迂回献金」は、政治家個人への献金を禁止した政治資金規正法に反する脱法行為であり、資金のわいろ性を隠すためのきわめて悪質な手口であります。

 首相にうかがいますが、「迂回献金」が脱法・悪質なものだという認識が、そもそもありますか。この腐敗構造を根絶するうえでも、政治家個人にたいする献金禁止にとどまらず、政党にたいする献金もふくめて、企業・団体献金の全面禁止に踏み込むべきではありませんか。

 政党へのものであれ、個人へのものであれ、企業・団体献金が、政治を金で買うわいろであることには変わりはありません。政党の政治資金を企業献金から個人献金に切り替えていくということは、首相の諮問機関の選挙制度審議会も発足いらいくりかえし答申してきたことであります。だいたい、政党助成金という国民の税金を三百億円も山分けしたうえ、企業・団体献金を未来永劫(えいごう)つづけ、拡大するなど、とうてい国民が納得するものではありません。答弁を求めます。

イラク――国民をうそであざむき戦争支持、自衛隊派兵を強行した責任を問う

 いま一つはイラクの大量破壊兵器の問題です。

 六日、米調査団は、「昨年三月の開戦当時、フセイン政権はいかなる大量破壊兵器も保有せず、開発計画もなかった」とする最終報告を発表しました。これはブッシュ政権によるイラク戦争の口実が完全に破たんしたことを意味するものです。同時に、米国の言い分をうのみにし、イラクが「大量破壊兵器を保有している」と断定し、それを戦争支持の最大の理由とした小泉首相の政治責任が、きびしく問われております。

 ところが首相と政府は、この米報告書にたいして、「米国の立場と日本の立場は違う」などとのべ、相変わらず、「かつてイラクが大量破壊兵器を保有し、使用したことは事実だ」、「イラクが国連の査察を拒否したことが問題だ」とくりかえし、日本政府の判断は正しかったとする立場に固執しております。

 それでは聞きたい。「かつて保有し、使用した」というのはいつのことなのか。米報告書では「イラクの大量破壊兵器開発能力は湾岸戦争直後の一九九一年に基本的に破壊されていた」とのべています。首相はそれ以後の時期に、イラクが大量破壊兵器を「保有し、使用した」とでもいうのでしょうか。はっきりお答え願いたい。

 また、「イラクが国連の査察を拒否した」というのは、いったいいつのことなのか。イラクが査察を拒否したのは一九九八年十二月の話です。イラクはいったんは拒否していた査察を二〇〇二年九月に受け入れ、十一月には国連安保理の決定にもとづいて査察が再開していたのであります。

 首相にうかがいたい。査察再開以後の時期に、イラクが再び査察を拒否した事実があるとでもいうのですか。そう主張するならば、国連安保理のいかなる決定によってそれが認定されているのかを明示していただきたい。再開された査察を力ずくで断ち切ったのが米英軍による無法な戦争だったではありませんか。

 つまり、問われている問題は、九〇年代の話ではないのです。昨年三月のイラク開戦時に首相が戦争を支持する最大の理由として、「大量破壊兵器の保有」を断定したことが、虚偽であったのではないかということなのです。

 さらに首相が、この問題を私が党首討論でただしたことにたいして、「フセインも見つからないが存在していなかったとはいえない」との詭弁(きべん)をろうし、「大量破壊兵器はいずれ見つかる」と言いつくろって自衛隊派兵を強行した。この「いずれ見つかる」という言いつくろいが、虚偽であったのではないかということが問われているのであります。

 侵略戦争支持と自衛隊派兵という国の命運を左右する重大な問題で、その場その場で無責任な言動をくりかえし、二度までも国民をうそであざむいた。その政治責任が問われているのです。首相、この期におよんで、あなたにはそのことへの自覚と反省がないのですか。はっきりとした答弁を求めたいと思います。

国民の暮らしにかかわって緊急に問われている問題について

 つぎに国民の暮らしにかかわって、緊急に問われている問題について質問いたします。

改悪年金法――実施を中止し、白紙からの見直しを

 まず年金問題です。

 政府は、十月からのサラリーマンの保険料値上げを皮切りに、負担増と給付減のプログラムを実施に移しています。しかしこの間も、出生率、年金納付率、厚生年金の赤字など、改悪年金法の根拠とされた数字がどれも虚構だったことがつぎつぎと発覚しています。これは、この法律が国民に約束した給付と負担の水準すら、すでに机上の空論になってしまっていることを意味するものではありませんか。首相にうかがいたい。すでに法律の前提が崩れてしまっているという認識をもっていないのですか。

 すでに破たんが避けられないことが明白であるにもかかわらず、負担増と給付減だけは予定どおり押しつける。こんなことは国民のだれも納得できないことであります。改悪年金法の実施はいまからでも中止し、法律を白紙にもどし、安心できる年金制度へのやり直しをすべきではありませんか。首相の答弁を求めます。

介護保険――「見直し」というなら介護サービスが利用できない現実をただせ

 つぎに介護保険の問題です。

 政府は、来年度、導入から五年目の抜本的な制度見直しをおこなうとしています。いまの介護保険制度の最大の構造的欠陥はどこにあるか。それは、保険料と利用料が高すぎて、必要な介護サービスが受けられないことにあります。

 在宅サービスの利用限度額にたいする利用率は平均でわずか四割程度です。低所得者の利用率はその平均のさらに半分です。内閣府の調査でも、「一割自己負担のために、介護保険導入によって低所得者の介護サービスが減少した可能性がある」と指摘しているほど、所得の少ない人にとって使いづらい制度になっているのであります。

 ところが、厚生労働省の「見直し意見」を読みますと、この最大の構造的欠陥を検討した形跡すらうかがえません。サービスが増え過ぎた、それを減らすためにいかに負担を増やすかという話ばかりであります。年金を削られたうえ、介護でも追い打ちでは、高齢者は生きていくことはできません。

 所得にかかわりなく、必要なサービス――国が必要だと認定したサービスは、受けられるようにする。そのために、保険料・利用料の減免制度を、多くの自治体でやっているように、国の制度としてもつくる――首相、「見直し」というのだったら、ここに正面からとりくむべきではありませんか。

「郵政民営化」――大銀行のもうけのために国民サービスを切り捨てるもの

 つぎに「郵政民営化」について質問します。

 首相がいくら「これが改革の本丸だ」と叫ぼうと、どの世論調査をみても「郵政民営化」に期待する国民はごく少数であります。それもそのはずです。この構想そのものが、銀行業界の利益から出発したものであり、利用者である国民の利益から出発したものではないからであります。

 「民営化で身近な郵便局がなくなってしまうのではないか」――国民の「民営化」にたいするいちばん大きな不安はここにあります。政府の基本方針では、郵貯、簡保は全国均一サービスを義務づけないとしており、これは採算のあわない地域から郵貯、簡保が撤退すると宣言したのと同じであります。そうなれば、郵便局の経営はなりたたなくなり、全国の郵便局網はずたずたにされ、郵便の全国均一サービスもその基盤を失うことになるではありませんか。首相は、この不安にどうこたえるのですか。

 さらに、政府の基本方針では、民営化後の郵貯、簡保の業務内容を、「民間金融機関と同様」にするとしていますが、いま銀行業界がすすめているのはなにか。少額の預金からも手数料をとりたてる。支店を閉鎖して機械におきかえる。庶民サービスの切り捨てであります。それをすすめるうえで国営の郵政事業が邪魔で邪魔でしかたがない。だから銀行業界のもうけのために、「民営化」で国民サービスを切り捨てる――これがことの真相ではありませんか。

 改革というのならば、郵貯、簡保の資金をつかった無駄な公共事業をやめること、郵政事業に巣くう利権と腐敗の構造を根本から断ち切ることこそ必要であります。答弁を求めます。

在日米軍の「再編」――海兵隊と空母打撃群の縮小・撤去を要求せよ

 最後に、在日米軍の「再編」問題について質問します。

 「再編」のなかで浮かび上がっている計画の一つに、神奈川県の米軍座間基地に、米国ワシントン州から米陸軍第一軍団司令部を移転させ、その司令官に在日米軍の四軍――陸海空軍・海兵隊全体を統括させるという構想があります。

 ところが、米陸軍第一軍団とは、アジア・太平洋全域とインド洋、アフリカ東岸までを活動範囲としている部隊であります。首相は、その司令部を日本におくことが、在日米軍の活動範囲を「極東」とさだめた日米安保条約第六条にてらして、許されると考えているのでしょうか。首相の基本認識をうかがいたいのであります。

 アメリカが世界的規模で米軍の「再編」をおこなうというのならば、日本政府は、在日米軍の主力が、沖縄と岩国の海兵隊と、横須賀を本拠にする空母打撃群という海外遠征――「殴り込み」専門の部隊であるという、世界でも類例のない異常な状態から脱却することこそ、真剣に考えるべきであります。

 首相は、「沖縄の負担軽減」を口実に、在沖縄の米軍基地の本土移転をすすめる、そのために本土の自治体に受け入れを迫っていくことを表明していますが、これは海兵隊基地の拡張そのものではありませんか。

 世界のどこに海兵隊基地の拡張を求めている政府がありますか。海兵隊と空母打撃群の抜本的な縮小・撤去を、正面から求めるべきではありませんか。私はそのことこそ、戦後長きにわたって基地の重圧に苦しみ、普天間基地の無条件の閉鎖と撤去を強く求めている沖縄県民の声に、真にこたえる道だと考えるものであります。

 いまこそ基地のない平和な日本への一歩を踏み出すべきときです。そのことを強く主張し、質問を終わります。


志位委員長への小泉首相の答弁

(要旨)

 十四日の日本共産党の志位和夫委員長の代表質問に対する小泉純一郎首相の答弁(要旨)は次の通りです。

 (迂回=うかい=献金について)

 政治団体間の資金の移動については、政治活動の自由を尊重する観点から量的制限はなく、政治資金規正法上それぞれの政治団体の収支報告書の公開を通じて、本来透明性が確保されるべきものと承知している。

 指摘の政治資金規正法を脱法するようないわゆる迂回献金は、あってはならないものと考える。

 (企業・団体献金)

 私は必ずしも企業・団体献金が悪とは思っていない。基本的には政治資金を広く薄く公正に得るとともに、その透明性を確保する明確なルールをつくりあげる必要があると考える。

 (イラクが大量破壊兵器を保有し、使用したのはいつか)

 一九九四年二月の国連人権委員会での報告や、二〇〇三年三月の国連監視検証査察委員会の報告によれば、イラクはイラン・イラク戦争中の一九八三年から一九八八年の間、大量の化学兵器を使用した。八八年三月にはイラク北部にあるクルド人の町、ハラブジャで化学兵器を使って住民約三千二百人から五千人を殺害したとされている。

 (九〇年以降のイラクによる大量破壊兵器の保有、使用について)

 国連イラク特別委員会は、イラクが保有していた一部の大量破壊兵器が一九九二年以降に同委員会の監視のもとで廃棄されたと報告している。二〇〇三年三月、国連監視検証査察委員会は、イラクが依然として大量破壊兵器を保有しているという疑惑を具体例を挙げつつ安保理に報告している。

 なお一九九一年以降、イラクが大量破壊兵器を使用したことは承知していない。

 (イラクがいつ国連の査察を拒否したか)

 イラクは一九九八年一月、国連イラク特別委員会の査察を拒否した。その後、査察は再開されたが同年十月末、再び同委員会に対する全面的な協力停止を決定した。

 九九年に国連監視検証査察委員会が設置されたものの、査察再開の合意は容易には得られず、二〇〇二年十一月まで査察活動は中断したままだった。また二〇〇二年十一月に安保理決議一四四一が採択され、イラクへの査察が再開されたあとも、当時のブリクス国連監視検証査察委員会委員長は、イラクから十分な協力が得られなかったとの趣旨を安保理に対する報告でのべている。

 (対イラク武力行使に対する支持、自衛隊のイラク派遣について)

 わが国が対イラク武力行使を支持したのは、イラクが累次の国連安保理決議に違反しつづけたこと、また平和的解決の機会を生かそうとせず、国際社会の真摯(しんし)な努力にこたえようとしなかったとの認識に基づくものだ。

 自衛隊のイラク派遣は、国際社会の責任ある一員として国際社会の平和と安定に寄与するため、わが国にふさわしい支援を行っていくべきとの観点から行っているものだ。いずれも私の判断は適切であったと考える。

 (改悪年金法を白紙に戻すことについて)

 改正年金法は、長期的な給付と負担の均衡を確保するという課題に取り組んだもので、その内容を国民に対し、引き続き説明し、着実な施行に努めている。

 前提となる数字が虚構との指摘だが、法案提出時点で判明している社会経済状況をできる限り織り込み設定したものだ。

 平成十五(二〇〇三)年度の国民年金納付率、厚生年金赤字については、おおむね予測通りとなっており、平成十五(二〇〇三)年度の出生率は、年金財政再計算の前提を下回っているが、長期的な趨勢(すうせい)から大きく外れるものではない。

 (介護保険について)

 老後の安心を支える仕組みとして成果をあげている。低所得者に対しては、所得に応じた保険料設定や利用者負担の軽減などを図っている。

 (郵政民営化で郵便網の基盤を失わないか)

 閣議決定した基本方針においては、郵便貯金会社および郵便保険会社には、ユニバーサル(全国均一)サービスを義務付けることは盛り込んでいないが、両事業の窓口業務は住民のアクセス確保が努力義務となる窓口ネットワーク会社に委託することとしており、また窓口の配置は過疎地の拠点維持に配慮している。

 (国民サービスの切り捨てではないか)

 郵政民営化は、郵貯・簡保を含む郵政公社の四機能の潜在力を発揮させ、市場における経営の自由度の拡大を通じて、良質で多様なサービスが安い料金で提供されるようにし、国民の利便性を最大限向上させるものだ。

 (郵貯・簡保の資金を使った無駄な公共事業を止めることが必要ではないか)

 郵政民営化は、資金の流れの入り口の改革であるが、政府保証が付されている郵貯・簡保が家計の全金融資産の四分の一を占め、その大部分を公的部分に還流させている。このような公的な資金の流れを民間に流れるようにするのがこの改革の意義であり、官から民への資金の流れを実現するために不可欠である。

 (在日米軍の再編と日米安保条約について)

 在日米軍の兵力構成の見直しに関する日米間の協議においては、具体的な見直しのアイデアについて議論はされているが、これらのアイデアは、いまだ正式な提案やそれに対する対案という位置付けではない。また、アメリカ側との関係もあるので議論の内容を申し上げることはできない。

 (在日米軍の縮小および基地撤去について)

 米軍の前方展開を確保し、その抑止力を通じ、日本の安全と独立を確保することが必要だ。政府としては、在日米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄等地元の過重な負担の軽減を図る観点から、在日米軍の兵力構成見直しの協議を進めていきたい。