2005年2月5日(土)「しんぶん赤旗」
三日の衆院予算委員会で日本共産党の志位和夫委員長のおこなった質問(大要)は次の通りです。
志位和夫委員長 私は、小泉内閣がいますすめようとしている増税路線について質問します。
昨年末、政府の予算案が発表されたときに、メディアがいっせいに「本格増税路線に踏み出した」と報じました。総理はこれまでも「痛みに耐えろ」と社会保障の切り捨てをすすめてきましたが、こんどの政府予算案は、それに加えて、税制でも本格的な庶民増税に踏み出すものになっていることが最大の特徴になっています。
こんどの予算案には、定率減税の「半減」が盛り込まれました。二〇〇五年度と二〇〇六年度の二年間で定率減税の「縮小・廃止」をおこなって、三・三兆円の増税を実施し、続けて二〇〇七年度には消費税の増税を実施にうつす――これは与党税制改定大綱に明記された二段階の増税シナリオですが、政府の予算案はこのシナリオにもとづいて庶民増税の第一歩を踏み出すものとなっています。
こうしたもとで政府・与党の一部や経済界のなかからも、「これでは橋本失政の二の舞いになるのではないか」という声が起こってきています。一九九七年に橋本内閣が九兆円の負担増――消費税の値上げ、特別減税の打ち切り、医療費の値上げ、これが大不況の引きがねを引いた大失政となった。その二の舞いになるのではないかという危ぐの声です。
そこで私は、まず総理の事実認識をただしたいと思います。
これは、この十年間の家計所得(雇用者報酬)の推移を政府の「国民経済計算」からグラフにしたものです(グラフ1)。九三年から九七年までの時期は、年間で数兆円の規模で家計の所得が伸びています。しかし、九兆円負担増をきっかけにして、その後ずっと年間数兆円の規模で家計の所得が減っています。
それでうかがいたい。こういう規模で家計の所得が減り続けているもとで、増税路線に踏み出したということが、戦後かつて一度でもあったでしょうか。戦後初めてのことではないでしょうか。端的にお答えください。
小泉純一郎首相 経済指標等につきましては、のちほど担当大臣から答弁させますが、定率減税にしても三兆三千億円の増税といわれましたが、これは現在の景気情勢を考えて、来年一月から千八百億円の増税なんです。だから景気に配慮してるんです。
三兆三千億円やるかどうかっていうのは、よくことしの秋以降、経済全体、財政全体を見ていかなきゃならない。だから三兆三千億円、今年度増税するんだという誤解はしないでください。
雇用者所得も、たしかに表にあるように、九七年は二百八十兆円。そして二百六十五兆円まで減っているといいますが、九七年の物価上昇率はかなり高かったですよ。いまデフレですから。物価上昇率もマイナスです。たしかに景気が厳しい状況でありますけども、できるだけ景気に配慮しながら、財政状況の健全化というものを考えていかなきゃならない。むずかしい局面にきているということも、ご理解いただければと思います。
志位 私は、来年度三・三兆円の増税を実施すると聞いたわけじゃない。たしかに来年度は定率減税の「半減」で、きいてくるのは千八百五十億円の増税だというのは、私も存じております。しかし、二年間で「廃止する」というのは与党の大方針でしょう。だから、じわじわじわじわ廃止するとしたとしても、あるいは一気に廃止するとしても、三・三兆円の増税路線に踏み出したことは間違いがない。これが一点。
それからもう一点ですが、このグラフについて、これは名目の数字ですが、(デフレだから)実質の数字はどうかということをおっしゃられたんだと思いますが、実質で見ても、実は九七年から二〇〇三年までで七兆円減っております。名目でも、実質でも、雇用者報酬は減っている。
総理の答弁のなかで、結局、こうやって家計の所得がどんどん減っているときに増税路線に踏み出したというのは、これは戦後初めてのことだと、これは否定されなかったわけです。
志位 そこで、初めてのことをやるんですから、これが景気と経済にどういう影響を及ぼすかについて真剣な吟味が必要になってくると思います。つぎにこの議論をすすめたいと思います。
私は、日本経済を本格的な回復の軌道にのせるには、日本経済の六割弱を占めるのは、個人消費、家計消費ですから、この消費が力強く、持続的な回復の軌道にのって、はじめて景気の回復が本物になる、これは総理も同じ認識だと思います。そうですね(首相、首を縦にふる)。首をふってますからそうでしょう。
問題は、その家計消費を持続的な回復の軌道にのせるために、いま何が必要かという問題であります。その点で私は、内閣府が昨年十二月に発表した『日本経済2004 持続的成長の可能性とリスク』というリポートをたいへん興味深く読みました。なかなか情勢分析は正確なことが書いてあります。
ここで繰り返し強調されているのは、「今後、消費が持続的に回復していくためには、所得の回復が鍵である」。これが繰り返しのべられています。
このなかでのべられていることは、“これまでは所得が増えないもとでも、消費は底固く推移してきた。しかしそれは、国民が貯蓄を減らして消費を維持してきたことによるものであって、なかなか長続きするものではない。今後、消費を持続的に回復させていくためには、所得の本体そのものを増やすということがどうしても必要だ、これは鍵だ”。こういうことを『日本経済2004』ははっきり書いています。私はこの“診断”は正確な診断だと思います。
しかし総理がやろうとしていること――その“診断”にたいする“処方せん”は、増税路線に踏み出して家計の所得を奪うというものでしょう。
「所得の回復が鍵」だという“診断”、これは正しい“診断”です。家計の消費の持続的回復のためには「所得の回復が鍵」だと正確な“診断”をしているのに、出している“処方せん”は所得を大幅に奪う増税路線への踏み出し。これは“診断”と“処方せん”が百八十度違っている。風邪と診断しておいて布団をはぐようなものだと思いますが、総理いかがですか。
首相 これは見方がまったく違う。というのは、たしかに家計所得が景気に与える影響は大きいですよ。しかし、歳出の削減も、そして増税もたしかに景気に対してはマイナスの影響を与えます。かといって、国債を増発すればどうかと。これはまた将来の増税です。いまは、これ以上国債を増発するということにたいして極めて抑制的に考えなきゃならない状況であります。だからこそ、国債の発行と歳出の削減と税収動向をどう考えるか。これは極めて微妙な段階にきているんです。そういうなかで、ようやく国債を増発して公共投資を増やさないでも民間主導の回復力をもってきたなと。大事な局面にいるということも、全体の状況から見ていただきたいと思います。
志位 「民間主導の回復力」(と答弁したが)、これはどこに根拠があるんでしょうか。総理の本会議での答弁では、“企業の利益がずいぶん上がってきた、企業の利益が上がってきたから、これはだんだんと家計の所得にも回ってくるだろう”と(のべた)。ここに「回復力」の根拠をあなたはみているのでしょうか。お答えください。
首相 それは現実の姿をみても、企業の業績は改善しています。不良債権処理もすすんでいます。そして失業率も一時の5・5%からつい最近は4・4%台に減ってきました。雇用者数も増加しています。こういう状況をみても、民間は頑張ってるなということがいえるんじゃないでしょうか。
志位 要するに企業が利益を上げているから、家計の所得が増えると、そこに根拠を見いだしておられるわけですね(首相うなずく)。その力があるから多少負担増があっても景気は大丈夫だろうというのが、総理のご答弁だったと思う。
しかし、さきほどの『日本経済2004』を読みますと、そうじゃないということを分析している。こういう分析があるんです。企業の利益と給与の関係についての分析です。この報告書では、「一九八〇年代までは、企業の利益と給与とは高い相関関係をもっていた」と(のべています)。つまり企業がもうかればある程度家計にいった。しかし「九五年以降はむしろ逆相関が強まっている」(としている)。つまり「逆相関」というのは、企業の利益が伸びても家計の所得は減る。そういう相関になっている。これが「強まっている」という分析を、政府の内閣府のリポートで書いている。私はこのリポートを興味深く読みまして、政府の統計で実際にグラフをつくってみました。
こういうグラフになります(グラフ2)。企業利益と家計所得の関係(の推移)であります。青い棒(上)は企業(利益)の方ですが、九七、八年から今日までで、ジグザグはありますけれども二十一兆円から三十六兆円に十五兆円も利益を増やしています。赤い棒(下)は家計ですけれども、逆に、だいたい同じ時期に二百八十兆円から二百六十五兆円に十五兆円も所得を減らしているんですよ。これを「逆相関」というんですね。これは企業の利益というものが、賃金を減らして、家計から吸い上げて、リストラによる増益だっていうことを物語っていると思います。
つまり企業が利益を上げてそのうち家計に及ぶから景気が回復力をもっているんだと、多少負担をかけても大丈夫なんだとおっしゃいますけれども、成り立たないんですね。成り立たないことは国民のみなさんの実感ですよ。企業がもうかったって懐具合は良くならない。みんなの実感ですよ。このグラフでも明りょうですよ。「逆相関」です。そして「逆相関」だというのは、何よりも内閣府のリポート自身に「逆相関」と書いてある。しかも「強まっている」と書いてある。これから所得が増えていく見通しのないところに増税をかけてどうして景気がよくなるか。いかがでしょうか。
首相 表の逆相関でありますけれども、たしかに企業の業績がこれだけ上がっているのに、雇用者の所得が逆であるということは事実なんですが、いままで、日本が景気停滞の理由で、あまりにも雇用者を多く抱えすぎていたのではないかということで、企業はずいぶん苦労してきたわけです。
過剰雇用をどう解消していくか、あるいは債務の面においても過剰ではないかという企業も多かった。金融機関においても、なかなか回収できない債権、これで足をとられて、なかなか成長分野にその資源がまわらない。この状況を脱皮しないと日本は新しい経済再生はない、景気回復はないといわれて、この不良債権処理がまず不可欠だとこれからの経済再生は、ということで政府としてもすすめてきた。企業もがんばってきたんです。いまようやくその過剰労働の面においても、過剰債務の面においても、いわゆる企業にとって足かせの部分が軽くなってきたんですね。これから雇用者所得にもいい影響与えるように、そういう状況になってもらいたいなあ、ということで、いま政府としてはいろんな制度の改善とか、規制改革とか、あるいは税制改革とかしていかなければならない。
たしかにこういう状況でありますが、あんまり雇用者所得を上げると、企業が海外逃げちゃうんです。日本の労働者の賃金が高すぎて、ほかの発展途上国にいけば安い労働賃金で同じような製品がつくれるということでどんどん逃げていった。これじゃ困る。ところがここが日本のすぐれたところで、いいもの、労働力の質が高いとわかってきた。いいものは日本でしかつくれないものがあるということで最近戻ってきているんですよ。
新しい時代の変化に企業がたくみに耐えうるように改革してきているんです。そういう点が、いま雇用の改善にも表れているんです。だんだん雇用の改善から雇用所得の上昇に向けるように努力していかなければならないということは、私は十分理解しているつもりでございます。
志位 雇用の改善、失業率が下がったといわれますけれども、失業率が多少下がっても正社員の数はどんどん減っていますよ。正社員を減らして、パート、アルバイト、派遣労働に置き換えている。ですから賃金の総額が減っている。厚生労働省が最近出した昨年一年間の賃金の統計(毎月勤労統計調査)を見ても0・7%、賃金総額が減っているんですよ。
私は、企業が利益上がったら家計にまわる、これは成り立たないんじゃないか、これは「逆相関」だということを(政府の)リポート自身が認めているじゃないかということをいったのに対して、総理はぜんぜん答弁してないですよ。ですから、所得が伸びる見通しもないのに負担増だけをかけたら、これは橋本失政の二の舞いになる恐れがあることは、明りょうです。いかがでしょうか。
竹中平蔵経済財政政策担当相 志位委員のご指摘は、基本的には最近、付加価値のなかで労働者の取り分が減っているではないかと。資本の取り分が増えているけども労働者の取り分が減っているではないかと、そのことにつきているのだと思います。
しかし、もしそうであるならば、九三年か九四年からのグラフをお示しになられましたが、それ以前まで含めて、その分配の割合がどうなっているかということをごらんいただきたい。日本の労働の賃金の取り分というのはだいたい三分の二で長い間ずっと一定してきました。それが九〇年代あがってですね、四分の三ぐらいまでいきます。十年近くの間で十ポイントも労働分配率が上がった国というのは先進国ではないと思います。
それだけ、日本の経済に大きなショックを受けた時に、九〇年代、まあ労働者の取り分をできるだけ減らさないで結果的に企業が利益を減らして疲弊したというプロセスがあった。しかし、このままでは国全体が沈むだろうということで、いま少しずつ構造改革をして、不良債権も減らして、それでいま正常化のプロセスにあると思っております。
労働分配率は一時上がって、それがいま半分ぐらいのとこまで落としておりますけれども、ようやく過剰感が消えてきて、その結果、これもさきほど志位委員がお示しになりました雇用者報酬でございますが、これ二〇〇三年までしか書いておりません、二年前の数字でございますが、私たちの見通し、実績見込み等々では、この(平成)十六年度(二〇〇四年度)からこれが上昇に向かう。そして十七年度もそれが上昇に向かうだろう。これは名目でもプラスになるであろう、従って実際もっとプラスになるわけでございますが、そういう見通しのなかで経済をしっかりとさらに運営していきたいというふうに思っているところでございます。
志位 竹中大臣、虚偽の答弁をされては困ります。雇用者報酬が今年度から上昇に向かうというあなたの根拠、(直近の)雇用者報酬の数字でおそらくいったんだと思うんだけれど、これは去年の四―六月期にちょっとプラスになっただけの話でしょう。そのあとの七―九月期はマイナスなんですよ。さきほどいった厚生労働省の二〇〇四年全体の数字もマイナスなんです。あなたは、これから所得が上がってくる、上がってくるというが、何の根拠もなくいっているんですよ。
さきほど、あなた自身が所轄している内閣府のリポートを使って、企業の利益が上がったって所得は上がらないじゃないかと、「逆相関」じゃないかと、こう言ったことに対して、だれもまともな答えがない。
もう一ついいましょう。日本銀行が(今年の)「調査季報」一月号で興味深い分析をやっております。「雇用所得情勢にみる日本経済の現状」。調査統計局がやっております。これを見ますと、「企業収益に比べて、雇用者所得の動きは弱く、労働分配率は大幅に低下している」。こういっております。
そしてこれは、「企業の根強い人件費抑制姿勢」にもとづくものだ(と分析している)。つまりリストラですよ。あなたがたが主導してやっているリストラですよ。これにもとづくものだといって、これは「構造的なもので、今後も続く」と(のべている)。「企業の人件費抑制姿勢は当面根強く残る」。今後もリストラが続いて所得は伸びないという見通し立てている。将来的に景気が回復して所得が回復する場合でも、いつそうなるのか、どういう規模でなるのか、「不確実性があって、予測つかない」(とも分析している)。これが日銀の判定なんです。
志位 私は、きょうこの議論しておりまして、ちょうどこの場で、一九九七年に橋本総理とやった九兆円負担増の時の議論を思い出すんですね。
あのときは(家計の)所得は伸びてはいたんです。しかし、私は、この所得の伸びは弱いから九兆円も負担かけたら必ず景気の底がぬけると、こういいました。当時、橋本さんは、“いやいや、所得の伸びはなかなか力強いから負担増を吸収して大丈夫だ”、こういったが結果は大失政になりました。
今日の議論も、私は、今の状況は企業から家計にまわるような状況じゃない、家計の所得はどんどん減りつづけている、そのときに増税路線に踏み出して大丈夫なのか、これをいったのに対して、大丈夫だという根拠は、何一つしめせないじゃないですか。私はこれでは大失政の繰り返しになるということを強く警告しなければなりません。
志位 もう一つ聞きたい。
当面の負担増というのは、定率減税の「縮減・廃止」だけではありません。高齢者には年金課税の強化、若者にはフリーター課税の強化、中小企業には消費税の徴税の強化、あらゆる分野で庶民増税が計画されております。さらに年金の保険料、介護保険の保険料、雇用保険料の値上げ、社会保障のあらゆる分野で負担増であります。合計しますと二年間で七兆円の国民負担が新たに加わってくることになります。
総理にうかがいたいのは、庶民の生活実態はどうなるかという認識であります。
たとえば政府・与党は、お年寄りの住民税の非課税措置を廃止するとしています。三年間で廃止するというが、これによって全国で百万人、東京だけで二十万人のお年寄りが住民税が非課税から課税になります。非課税から課税になりますと、税金だけじゃありませんよ、国民健康保険料、介護保険料が、連動して値上げになるんです。負担増が雪だるま式にふくらんでいくことになります。
(グラフ3を示す)試算してみたのですが、国保とか介護の保険料は自治体によって違いますから、東京・大田区の場合で、年金百八十万円の一人ぐらしのお年寄りの負担増がどうなるかです。現在は非課税ですから、税はかかっておりませんが、保険料は(国保と介護と)二つあわせて、五万九千円。それが増税後、税がかかると、連動して国保料もあがる、介護保険料もあがる、全部連動して雪だるま式にあがるんです。そうしますといま五万九千円の負担が、十二万四千八百円の税と保険料の負担になる。倍以上になるんですよ。
こういう事態になることを、総理は“負担増の影響は小さい、大したことない”ということをおっしゃるけれども、たとえば高齢者の負担増ひとつをとっても雪だるま式にふくらんでいくということについて、十分認識しているのか。総理の認識をうかがいたい。
首相 答弁の前に、竹中大臣の答弁を誤りといったのだから、ちょっと答弁する機会与えてあげないと不公平じゃないですか。
竹中 私の答弁が虚偽だというご表現だったと思いますが、私、さきほど労働分配率の話等々、もう一度申し上げます。日本の労働分配率は、ずっと高くなってきたんです。これを何とか修正せざるをえない、つらいけれども修正せざるをえないというプロセスに入って、それがいまようやく半分かそこらぐらいまで進んできたという段階でございます。
そういうなかで雇用者の報酬が増えるかどうかでございますが、私たちは経済見通し、経済実績見込み等々で、雇用者報酬をきちっと出しておりまして、そのなかで、これまだ労働分配率が上昇して、修正はまだ半分くらいしかきてませんから、まだ。こういう調整を時間をかけていかなければいけない。その意味では、これはそんなに経済の回復は容易ではございません。しかし、容易ではないけれど、ようやくそのきざしが出始めたということで、この動きを大事にしていこうと。この長期的な動きを見ていただきたい。
志位 私が虚偽だといったのは、雇用者報酬がプラスになるといったことがまったく何の根拠もないということです。あなたがいったのは四―六の(雇用者報酬の)数字で、そのあとはマイナスになってるじゃないかと。あたかもどんどんどんどん伸びていくようなことをいうのはおやめなさいと、いうことをいったんですよ。そのことについて何にも答えていない。
そして、労働分配率がまだ下げ止まりになってないんだったら、もっと所得だって落ちることになるじゃありませんか。語るに落ちる答弁ですよ。もういいです。総理が答えてください。こんな答弁で時間をつぶしちゃだめです。
竹中 雇用者報酬については、いま志位委員は四半期でどうだということを申し上げましたが、私たちは経済見通し等々のなかで、(平成)十六年度の実績見込みを出しております。反論がございますんでしたら、共産党としても政府見通しに匹敵するような経済見通しを出していただければよろしいのではないかと思います。
負担増の話でございますけれども、これは一方で、この負担の話をある程度きちんとしていかないと将来の負担がまた重くなるぞということで、期待所得が下がるわけです。それが経済に、きわめて悪い影響を及ぼすわけです。
志位 総理の答弁をお願いします。
首相 それは、税の負担だけでいいますけどね、予算というのはね、歳出があるんですよ。いまの来年度の予算におきましても、いちばん使っている予算は、地方にいく金を除いて政策費は、社会保障ですよ。年金も医療も介護も生活保護も含めて、いちばん税金をその部分に使っているんです。だから、その負担の部分だけあげて福祉やってないという批判は当たらない。
志位 私が聞いたのは、お年寄りの負担増が雪だるま式にふくれあがっていく、これは非常に深刻な問題ですよ。さきほどの十三万円もの負担というのは一カ月分の年金に匹敵するものです。こういう問題について知っているのかと聞いたんです。そういう問題について、本当に真剣に誠実に答える姿勢がなく、そういう冷酷な姿勢のまま国民すみずみにまで負担増を押しつけるというようなことをやったら、これは絶対に景気がよくなる道理がない。「橋本失政」の二の舞いになると私は思います。
志位 総理が歳出のことを考えてくれといったので、じゃあ聞きましょう。
来年度の予算案を報じたメディアが、もう一つ強調したことがある。それは「大型事業は聖域化」ということです。つまり庶民に増税を押しつけながら、大型開発事業は復活し、無駄遣いを拡大しているじゃないかという問題です。
一つあげましょう。総額一兆円を超す巨大事業である関西空港二期工事に、新たに三百億円も予算を今度の予算案は計上している。事実ですね。埋め立てはほぼ終了して、滑走路や空港ビルの「うわ物」をつくる、新たな段階に入るための予算であります。
関空というのは、いま一本の滑走路でも年間十六万回の発着能力を持っている。ところが実績は十万回です。いま一本でも余っている。需要の見通しもない。そのうえ二本目の滑走路建設というのは、無駄そのものだというのが世論の圧倒的多数の声であります。
そこでうかがいたい。総理の答弁のなかで非常に印象的だったので読み上げてみたい。これは二〇〇二年の七月十日の予算委員会の答弁です。
こうおっしゃっておられます。「小泉内閣の方針は増税ではなく歳出削減で、無駄な税金の使い方を徹底的に直すということであります。……増税よりも歳出削減が先だと、無駄な税金の使い道、これを徹底的にやるのが先だという方針でのぞんでまいります」。こう公約されたわけですね。
しかし関空二期がどうして必要な事業ですか。無駄そのものだというのは離発着の回数一つとったって明りょうであります。「増税よりも無駄遣いを徹底的に見直すことが先決」という、あなたのこの公約にてらすならば、新たな無駄遣いに乗り出しながら庶民に増税など、とうてい許せる道理はないと思います。
首相 後ほど北側大臣に答弁していただきますけど、その公約どおりにやっているんですよ、私は。公共事業は四年連続マイナスじゃないですか。関空のこといってますけどね、公共事業費は前年度に比べて3・6%削減したんですよ。増やしたのは社会保障関係費と科学技術振興分野の予算だけ。
そして、このまま負担を軽減して国債を発行しようといったならば、これは国債増発だって将来の増税ですから、できるだけ抑えていかなきゃならない。そういうメリハリをつけて予算をつくっているんです。
そのようなご指摘も、共産党としてのご主張としてはわかりますけども、全体として見ていただければ、厳しい財政状況のなか、これだけ公共事業をやれやれっていうなかで、四年連続マイナス予算を組んで、そのマイナスのなかで必要な事業を組んでいるんですから、そのへんも理解していただかなきゃ。
北側一雄国土交通相 関西空港の需要見込みでございますが、二〇〇七年度の二本目の滑走路を必要とする時点では十三万回程度。また二〇〇八年度には十三・五万回程度の総発着回数を想定をしておる、見込んでいるところでございます。この見通しは達成できると考えておりまして、決して無駄ではないということをご理解をお願いしたいと思います。
志位 まず、小泉首相の公共事業の問題についてのご発言ですけれども、「全体を減らした」とおっしゃいました。たしかに3%分減らしているんでしょう。しかし減らしたら無駄な事業をやっていいというふうにはならないですよ。
それから、減らした減らしたというけれども、これを見てください(グラフ4)。財政制度等審議会に財務省が出した国際比較の数字ですよ。減らした減らしたというけれども、学校、病院、福祉施設、そういうものを除いた、いわゆる日本で公共事業といわれているものの水準は、アメリカ、ドイツ、フランスの三倍ですよ。イギリスの十倍ですよ。こういう水準にある。額でいえば十数兆円も多いということを認識すべきであります。
それから北側さん。さきほどいわれました。しかし関空二期が無駄だというのは、北側大臣と谷垣(財務)大臣の十二月十八日の合意文書、ここにはっきりと自分でいっていると思います。
なぜならば、ここには「関空は二〇〇七年度には十三万回程度、二〇〇八年度には十三・五万回程度の需要の確保のために、集客利用促進、就航促進に向けた、さらなる努力を行う」と書いてます。「努力を行う」ですよ。つまり「需要の予測」じゃない。「需要があるから空港をつくる」というならわかりますよ。しかしこの文書に書いてあるのはそうじゃない。「空港をつくったから需要をつくる」というんですよ。お客を集め、航空機を集め、需要をつくる。これこそ無駄遣いですよ。
私は、一方でこういう無駄遣いを押しつけながら、国民に巨額の負担増や増税を押しつける。これは絶対に認めるわけにはいかない。いまからでも、七兆円の負担増、さらにはそれに続く消費税増税の計画はきっぱり見直して、中止すべきだということを最後にいって、質問にいたします。