2005年4月9日(土)「しんぶん赤旗」

第三回中央委員会総会

志位委員長の幹部会報告


 みなさん、おはようございます。衛星通信をごらんの全国のみなさんにも、心からのあいさつを送ります。私は、幹部会を代表して、第三回中央委員会総会にたいする報告をおこないます。

はじめに――二中総以後の党活動の概括について
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幹部会報告をする志位和夫委員長

 報告の冒頭に、二中総以後の党活動の概括についてのべます。

 昨年八月に開いた第二回中央委員会総会は、参議院選挙のたたかいから教訓をひきだし、「二大政党制づくり」の動きに対抗して、党の新しい前進をどうつくりだすかについて、長期的視野にたった方針を明らかにしました。

 それから半年あまり、この方針にもとづく全党のみなさんの奮闘と努力によって、党に新たな活力がわきおこりつつあります。決定をつかんで足をふみだした党員が、奮闘いかんでは情勢は変えられる、前進がかちとれるという、手ごたえ、展望をつかみつつあることは、たいへん重要であります。

国会活動――明りょうになった「二大政党制づくり」の本質と党議員団の役割

 まず国会でのたたかいをみますと、「二大政党制づくり」の本質が、国政における「オール与党」化であるということが、情勢の進展をつうじて、明りょうになりました。民主党が、「野党と呼ばないで」と自民党政権への批判の立場を放棄し、「政権準備政党」と宣言したことは、この動きの本質を自ら告白するものとなりました。憲法改定でも消費税増税でも、自民・公明と、民主による悪政の競い合いが、いよいよ具体的な姿をとって、目の前で進行しています。この間、問題となった「政治と金」の問題でも、「二大政党」の双方が互いに相手のスキャンダルをとりあげて攻撃することをつうじて、政治腐敗の根源である企業・団体献金容認では同根であるということが、はからずも鮮明になりました。

 こうした「二大政党」の態度との対比で、わが党の国会議員団の奮闘はたいへんに光っていると思います。まず、大増税路線と憲法改悪など「『二大政党』が共同して進める悪政に反対」(二中総決定)する一貫した論陣をはっているのは日本共産党のみであります。また、「構造改革」の名でおこなわれている年金・介護・障害者福祉など社会保障の切り捨て、郵政事業の民営化、「三位一体の改革」と称する地方財政の切り捨てなど、「自公政治の実態を国民の立場で明らかにする」(同決定)うえでも、短い質問時間のなかで本質をつく働きをしてきました。さらに、震災・豪雨災害の被災者支援をはじめ「国民の要求を国政に反映させる」(同決定)ために、草の根のたたかいと共同して現実政治を動かす働きをしてきました。これらは、日本共産党の議席のもつかけがえのない値打ちを浮き彫りにするものとなっています。

野党外交――世界の国々でおこっている変革と党の立場が深く共鳴し合う

 野党外交では、二中総以後、昨年九月の北京での第三回アジア政党国際会議への参加、今年二月のベネズエラ政府とわが党との公式関係の確立などの重要な進展がありました。このとりくみのなかで確認できるのは、地球人口の過半数をしめるアジア・アフリカ・中東・ラテンアメリカで、多様性と複雑さをともないながらも、巨大な社会進歩のうねりがおこっていること、そのなかでわが党の立場が共感をもってむかえられるということであります。

 アジア政党国際会議でも、ベネズエラ政府との会談においても、「国連憲章に規定された平和の国際秩序」、「民主的な国際経済秩序の確立」、「異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存」などが、ともにめざすべき共通の方向として確認されたことは重要であります。

 経済の発展段階でも、歴史や文化でも、大きく異なる諸国でおこっている社会変革の波と、私たちの立場が深く共鳴しあう――これは、わが党の事業が大きな世界的未来をもつことをしめすものとして、心躍る体験となりました。

中間選挙――議席でも得票でも前進への足がかりをつくりだす

 二中総以後の中間地方選挙の結果は、わが党が、政治戦で反転攻勢に転じる足がかりの一歩を築くものとなりました。この間、二百十三の自治体の定例選挙と二十六の補欠選挙がおこなわれ、一部には失敗もありましたが、全体としては前進の流れをつくりだしています。わが党は、議席占有率を7・02%から8・31%に前進させ、約九割の選挙で参院比例票を上回る得票をえました。得票の合計は、参院比例票比で131%となり、自民党が83%、公明党が84%、社民党が87%、民主党が17%と他党が減らすなかで、前進をかちとっています。

 このなかで、北九州市議選など都市部での健闘とともに、市町村合併後の選挙で、全体として議席占有率を前進させ、とりわけ一人区、二人区でも勝利をかちとっていることは、きわめて重要な成果であります。

要求活動と党建設――党勢拡大は突破すべき最大の弱点

 要求活動と党建設――党活動の二つの基本のとりくみで、特筆すべきことの一つは、「国民の苦難と要求のあるところ日本共産党あり」の精神にたった草の根での要求活動が、憲法問題、増税問題、雇用問題、教育問題、社会保障の問題、震災・豪雨災害被災者支援のボランティア活動など、さまざまな分野で新しい力づよさと広がりをもって、前進をはじめたことです。

 いま一つは、新しい党綱領を学ぶ本格的な運動が開始されたことです。都道府県・地区委員会主催の綱領学習会にのべ三万六千人が参加し、六割ちかい支部が綱領学習会をおこなっていますが、綱領学習にふみだした支部・党員の積極的変化は、めざましいものがあります。

 同時に、党勢拡大では、個々には先進的なとりくみがうまれているものの、それを全支部、全党員の運動に広げることに成功しておらず、全党的には前進がかちとれていません。党員拡大では、二中総後、三千五百人をこえる新たな党員をむかえましたが、離党などによる減少もあり、停滞・後退状況にあります。「しんぶん赤旗」読者拡大は、二中総後、十一月は前進しましたが、その他の月は残念ながら後退しました。党勢拡大は、わが党の活動のなかでも、全党がいま力を集中して突破すべき、最大の弱点となっています。

 今年二月一日、長年の念願であった党本部の全面的建て替えが完成しました。この中央委員会総会は、新しい本部ビルでのはじめての中央委員会総会となります。建設募金など建設事業に協力された全国の支持者、「しんぶん赤旗」読者、党員のみなさんに、心からの感謝をもうしあげるものです。この新しい本部ビルを拠点として、日本共産党の新しい前進・躍進をかちとるために奮闘する決意をのべるとともに、多くの国民のみなさんにとっても新しい党本部ビルが交流と対話の場になることを、願うものです。

三中総の四つの主題について

 二中総以後の情勢の進展と、以上のべた党活動の到達点をふまえて、この中央委員会総会では、つぎの四つの主題について、重点的に報告することにします。

 第一に、憲法をめぐるたたかいが重大な新しい段階をむかえるもとで、いかにして憲法改悪反対の国民的多数派を結集するかについてのべます。

 第二に、この間の内外情勢の焦点の問題――「二大政党制づくり」、大増税路線、「日米同盟」の侵略的な大変質とのかかわりで、わが党が果たすべき役割を明らかにしたいと思います。

 第三に、次期党大会の招集の提案とともに、いかにして党勢拡大の運動で大きな前進の波をおこすかの方針について提案します。

 第四に、当面する全国選挙、都議会議員選挙と中間地方選挙にむけた基本方針について報告します。

一、 憲法改悪反対の国民的多数派の結集を

 報告の第一の主題として、憲法改悪反対の国民的多数派の結集をめざすとりくみについてのべます。

(1)憲法をめぐるたたかいの現局面の特徴について

 まず憲法をめぐるたたかいの現局面の特徴についてであります。

改憲策動の新たな段階の危険を直視する

 今日おこっている憲法改悪策動の波は、二〇〇〇年に衆参両院に憲法調査会が設置されたころから、本格的に開始されたものですが、この動きが、これまでの議論と政治的雰囲気づくりの段階から、具体的な改憲案の策定をめざす新たな段階にすすもうとしていることを直視する必要があります。

 自民、民主両党が、競うように改憲案づくりをすすめ、公明党も「加憲」の名で改憲の流れに公然と合流しました。国会の憲法調査会が、ちかく最終報告書を提出しますが、そのなかに調査会の規程に反して、憲法九条改定の方向性が盛り込まれようとしています。憲法改定の手続きをさだめる国民投票法案の国会提出をめざして、自民、民主、公明の三党が、協議を開始することで一致しました。アメリカのアーミテージ前国務副長官が、「憲法九条は日米同盟の邪魔物」と公言するなど、米国からの改憲圧力が一段とエスカレートするとともに、日本経団連が憲法改定の提言を発表するなど公然と改憲の旗ふりを始めました。いま生まれている新たな段階の危険性を正面から直視しなければなりません。

国会内の力関係と国民世論の力関係のかい離と矛盾

 同時に、改憲勢力にとっても、ここから先の道程は平たんではありません。彼らにとって憲法改定の実現までには、こえるべき関門がいくつもあります。自民党、民主党、公明党の党内での意見のとりまとめ、国会での三分の二以上をえての改憲案発議のための国会内の改憲推進政党間での合意形成、さらに国民投票によって過半数の賛成をえること――その一つひとつの関門をこえようとするさいに、悲惨な戦争体験をふまえて憲法を生み出した日本国民の反戦平和の願いとぶつかり、国民との矛盾は広がらざるをえません。

 改憲勢力は、国会内では多数をしめていますが、国会のなかでの力関係と、国民世論における力関係とでは、大きなかい離があります。

条件と可能性をくみつくし、ゆるぎない国民的多数派の結集を

 いま何よりも重要なことは、憲法改悪反対の一点での共同を広げ、ゆるぎない国民的多数派を結集することにあります。ここで強固な多数派結集に成功するならば、改憲勢力が、米国や財界をうしろだてに、どんな策略をめぐらしても、改憲を強行することはできません。

 昨年六月に発足した「九条の会」は、全国各地での講演会を大成功させるとともに、草の根での組織を急速に広げています。この運動のなかで、著名な知識人も、一人ひとりの国民も、みずからの人生をかけ、みずからの体験と言葉で、憲法九条をまもりぬくことの意味を語っていることが、深い感銘と共感を広げています。この動きは、日本国民のなかに、憲法改悪を許さない多数派結集にむけた条件と可能性がおおいに存在することをしめすものとして、きわめて重要であります。

(2)どういう政治的な訴えが大切か

 それでは、憲法改悪反対の国民的多数派の結集のために、どういう政治的訴えが大切か。つぎのような政治的諸点を太く打ち出すことがもとめられていると考えます。

改憲の目的が「海外で戦争をする国」づくりにあることを広く明らかに

 第一は、改憲策動の真の目的が、日本をアメリカいいなりに「海外で戦争をする国」につくりかえることにあることを、広く明らかにしていくことです。

 あらゆる改憲論の焦点は、憲法九条改定におかれていますが、なかでも「戦力保持の禁止」と「交戦権の否定」を規定した九条二項を改変し、自衛軍あるいは自衛隊の保持を明記することが、改憲勢力の共通した主張となっています。この方向で憲法改定がなされればどうなるか。その結果は、自衛隊の現状を憲法で追認することにはとどまらない重大なものとなります。

 戦後、自民党政府は、憲法九条に違反して自衛隊をつくり増強してきましたが、「戦力保持の禁止」という明文の規定が「歯止め」になって、「海外での武力行使はできない」という建前までは崩すことができませんでした。九条二項の改変は、この「歯止め」をとりはらい、「海外で戦争をする国」に日本を変質させることになります。すなわち、九条二項を廃棄することは、「戦争放棄」を規定した九条一項をふくめた九条全体を廃棄することになります。このことを広く明らかにしていくことが、きわめて重要です。

 「自衛隊の現状を憲法に書くだけの改憲なら賛成」と考えている人々もふくめ、日本国民の圧倒的多数は、海外での武力行使のための改憲には反対しています。ここで広く大同団結をかちとることが何よりも肝要です。この立場をつらぬけば、圧倒的な国民的多数派を結集することは可能であります。

米国の単独行動主義の戦争への参戦――世界の大きな流れに逆らう道

 第二は、世界の大局的な流れとのかかわりで、憲法九条改定のもつ意味を明らかにしていくことであります。

 日本を「海外で戦争をする国」につくりかえるというときの「戦争」とは、具体的にいえば、米国の単独行動主義にもとづく先制攻撃の戦争への参戦にほかなりません。こうした戦争にのりだす国になることが、二十一世紀の世界で日本をどういう立場にたたせるか。

 それはイラク戦争をみれば明らかです。米国は、イラクへの侵略戦争につづいて、無差別殺りくなどの戦争犯罪をかさね、みじめな国際的孤立を深めています。「有志連合」と自称してイラクに派兵した三十八カ国のうち、すでに半数以上が撤退ないしその意向を表明しており、無残な崩壊過程がすすんでいます。憲法九条を改定するならば、日本の自衛隊がこうした無法な「有志連合」のなかで、給水や輸送などを受け持つにとどまらず、米軍とともに直接の武力行使をおこなうことになるわけであります。

 改憲勢力は、憲法のなかに「国際貢献」を書き込めということを主張しますが、憲法九条の改定とは、世界平和への貢献どころか、日本を米国とともに無法な戦争にのりだす国に転落させ、日本がアジアと世界にとって重大な軍事的緊張と危険をつくりだす根源の国となることを意味します。それが世界の大きな流れに逆らうものであることは、あまりにも明らかであります。

 いま、米国の単独行動主義の孤立と破たんをもたらしている根本には、新しい世紀に入って広がった、国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざす人類史上空前の波があります。

 戦後、日本国民は、憲法九条がつくられたさい、二度と戦争をする国にはならないという決意とともに、国連憲章が理想として掲げている「戦争のない国際秩序」を築くうえで日本が先駆的役割を発揮しようという決意をこめました。二十一世紀をむかえたいま、この憲法九条の理想に、国際政治の現実が大きく接近してきています。その根底には、平和を願う世界諸国民のたたかいがあります。

 いま世界で、憲法九条にたいして、二十一世紀の人類の進路をてらす先駆的条項として、新鮮な注目が広がっていますが、それは偶然ではなく、世界でおこっている恒久平和への巨大な前進を背景にしたものであります。日本にもとめられている真の国際貢献とは、憲法九条を生かした平和外交で、「戦争のない国際秩序」を築く先頭にたつことにこそあります。

憲法九条改定は、侵略戦争美化の動きと結びついている

 第三に、憲法九条改定の動きが、歴史をゆがめた侵略戦争美化論の横行・台頭と結びついていることであります。

 日本で進行しつつある改憲の動きにたいして、多くのアジア諸国から「かつての日本軍国主義の再来となる」というきびしい憂慮と批判がおこっています。これらの批判の多くが、戦後、日本がドイツとは対照的に、侵略戦争への真剣な反省をおこなっておらず、反対にいま侵略戦争を美化するさまざまな動きが台頭している事実をあげ、こうした歴史をわい曲する流れと憲法改定の動きが連動していることに、強い警戒をよせていることが、共通しています。

 じっさい、いま、憲法九条改定推進で中心的役割を担っている政治家の多くが、政治指導者の靖国神社参拝を肯定し、歴史の事実をわい曲した「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を学校教育に無理やり押しつけるなど、侵略戦争を肯定・美化する動きの先頭にたっていることは、重大です。

 昨日、「日本は正しい戦争をした」と子どもたちに教え込もうとする「歴史教科書」が、四年前につづいて再び検定合格とされ、内外からきびしい批判を呼びおこしていますが、同じ出版社から出された「公民教科書」は、改憲論を強調する記述がめだつものとなっています。九条改憲と侵略戦争美化はまさに一体のものとしてすすめられています。

 “かつての侵略戦争を「正しい戦争だった」とするような勢力、つまり戦争の正邪の区別もつかないような勢力が、武力をもって海外にのりだしたら、アジアにふたたび恐るべき災厄をもたらすことになる”――こうしたアジア諸国民の声は、根拠があるものです。

 憲法前文には、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」すると明記されています。かつての軍国主義の誤りを二度と繰り返さないという決意こそ、憲法九条を生み出した土台にありました。憲法九条は、三百十万人の日本国民とともに、二千万人をこえるアジア諸国民の犠牲者を出した侵略戦争への反省と不可分に結びついて打ち立てられた条文であり、ひとり日本国民の財産であるのみならず、アジア諸国民の共有の財産であることを、私たちはけっして忘れてはなりません。

 憲法九条を放棄することは、侵略戦争への反省を「放棄」することであり、アジアと世界にたいする不戦の誓い――国際公約を破りすてることになります。それは、日本の国際的信頼のはかりしれない失墜となるでしょう。

 アジア諸国民がのぞんでいる日本とは、憲法九条を生かした平和国家としての日本であり、かつての侵略戦争の責任をきっぱり認め、歴史認識を共有し、ともに平和な未来をめざす隣人として心から信頼しあえる日本であることを、強調したいのであります。

人権と民主主義をまもるたたかいと大きく合流して

 第四は、憲法九条をまもり生かすことは、憲法の人権と民主主義の条項をまもり生かすことと、一体のものであるということです。

 「海外で戦争をする国」にするためには、それにふさわしい国内体制――戦争に国民を動員する体制が必要になります。憲法九条改定は、必然的に、人権と民主主義の条項の後退・変質・侵害のくわだてにつながってきます。現に、自民党が策定した改憲試案の要綱には、「国防の責務」や「社会保障負担の責務」など基本的人権と相いれない重大な「責務」を国民に課すとともに、「公益」、「公の秩序」の名で基本的人権の全般を制約する条文も明記されようとしています。その底流には、国民が憲法によって国家権力を規制するという近代の立憲主義を否定する思想が流れています。

 もともと、日本国憲法が徹底した恒久平和主義の条項をもっていることは、国際的水準でみても先駆的で豊かな三十条の条文におよぶ人権条項をもっていることと一体のものです。また、憲法九条があるために、日本国憲法には、人権や統治の条項をはじめ、他のあらゆる条項に、一切の軍事的要素、人権制約的要素がありません。これは、侵略戦争の誤りが、民主主義と人権への野蛮な抑圧と不可分だったという歴史の教訓をふまえたものにほかなりません。

 こうした日本国憲法の特徴にてらしても、平和への国民の熱い思いと、人権と民主主義をまもりぬこうという熱い思いを、しっかりと結びつけて運動を広げることは、広大な国民的多数派を結集していくうえで、たいへん重要であります。

 この問題に関連して、いま大きく広がりつつある教育基本法改定に反対する国民運動と、憲法改悪反対闘争を大きく合流させていくことの重要性も強調しておきたいと思います。教育基本法改定のねらいは、今日、多くの国民が心を痛め、解決を願っている学力の危機の問題、モラルの荒廃の問題など、子どもたちをとりまくさまざまな危機的問題を、教育基本法に“不備”があるかのようにゆがめてえがき、国民主権にたった国民の教育権を否定し、それを国家による「教育権」に置き換えることにおかれています。それは、主権者としての一人ひとりの子どもの「人格の完成」を目的とする教育から、「海外で戦争をする国」にふさわしい人間を育て上げる教育への変質というねらいと結びついたものであります。この動きを、憲法改悪と軌を一にした動きととらえ、たたかいを大きく合流させていくことが、大切であります。

(3)どうやって国民の過半数を結集する運動をつくりだすか

 つぎにどうやって国民の過半数を結集する運動をつくりだすかについてのべます。

 党として、国民の過半数を結集する運動をつくりだすために、二重の役割を発揮して奮闘することを呼びかけたいと思います。

全国津々浦々に草の根から「九条の会」を

 第一は、政治的立場、思想・信条の違いをこえて、憲法改悪反対の一点での国民的共同を広くつくりあげていくための役割であります。

 「九条の会」は、職場・地域・学園、さまざまな分野で、国民の過半数結集をめざして、無数の「会」をつくることを呼びかけています。全国の党組織と党支部が、この呼びかけにこたえ、その一翼をになって、積極的役割を果たすことがもとめられています。

 とりわけ草の根の「会」をどれだけの規模で広げるかは、決定的な意味をもちます。すでに八カ月余りの間に、「九条の会」の呼びかけにこたえて、全国で千をこえる「会」がつくられましたが、これを文字どおり全国津々浦々に広げるために、党として力をつくします。六〇年安保闘争では、全国二千の共闘組織が大きな力を発揮しましたが、この憲法闘争では、今日の情勢にふさわしく、また文字どおり国民の過半数を結集する運動にふさわしく、広い保守の人々、無党派の人々をふくめて、草の根の組織を壮大な規模で発展させるために力をつくしたいと思います。

改憲勢力の「論理」を打ち破る党独自の積極的役割を

 第二は、党の独自の政治的役割を発揮することであります。わが党が、「憲法改悪反対」の一点での共同の発展を何よりも重視し大切にしながら、党綱領に「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的条項の完全実施をめざす」と明記している党として、改憲勢力の「論理」を打ち破り、憲法擁護闘争の大義と展望を明らかにするために、積極的役割を果たすことがもとめられています。

 たとえば、改憲勢力は、憲法九条改定の最大の口実として、「憲法九条と現実にかい離・矛盾がある」ということを主張し、憲法九条が現実にあわない空想的理想論をのべたものであるかのように、蔑視(べっし)することを特徴としています。この議論にたいして、今日の改憲論の真のねらいが、「海外で戦争をする国づくり」にあることを明らかにしながら、同時に、憲法と現実との矛盾を、憲法九条を完全実施する方向で解決することは、けっして空想的理想論でなく、現実に可能だということ――わが党の綱領がのべているように、「安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」――国民合意で、憲法違反の自衛隊の段階的解消をすすめるという方針を広く明らかにしていくことが重要です。このことは、憲法改悪に反対する国民的共同を強め、広げるうえでも、積極的意義をもつものであります。

(4)反戦・平和を命がけでつらぬいてきた日本共産党の真価が問われるたたかい

 この闘争は、二十一世紀の日本の進路を左右し、ひいては世界とアジアの情勢にもかかわる歴史的な闘争であります。

 いますすめられている改憲策動は、大局的には、自民党政治の危機の産物です。米国が単独行動主義と先制攻撃戦略をすすめるもとで、異常な対米従属の道にしがみつこうとすれば、これまでの解釈改憲の枠内では対応することができず、アジアと日本国民からの激しい批判や抵抗があっても、いよいよ明文改憲に手をつけざるをえなくなった。これがいまおこっている改憲策動の本質です。そうやって手をつけざるをえなくなったものの、この動きは世界の大局にてらしても先のない道であり、ゆきづまりにぶつからざるをえない道であります。それだけに、国民がこの策動を打ち破ることは、日本の政治に国民的転換をもたらす大きな転機になりうるものであります。

 この闘争は、日本共産党の歴史と存在意義にかかわるたたかいです。日本共産党は、戦前の暗黒の時代に、あらゆる迫害に屈せず、反戦平和と民主主義のためのたたかいをつらぬき、憲法に平和的・民主的原則を刻みこむうえで、大きな歴史的役割を果たしてきた党です。戦後も、憲法改悪を許さず、平和的・民主的原則の完全実施のために、国民とともにいっかんした奮闘をつづけてきた党であります。

 いま、この党の真価を発揮したたたかいが、これまでにもましてもとめられています。すべての党員のみなさんが、憲法改悪反対のたたかいの歴史的意義を深くつかみ、広く国民と手を携(たずさ)え、たたかいに立ち上がることを心から呼びかけるものです。

二、 内外情勢のいくつかの焦点と、日本共産党の立場

 報告の第二の主題として、二中総以後の内外情勢のいくつかの焦点と、日本共産党の立場についてのべます。

(1)「二大政党制づくり」の本質があきらかになった

 まず、「二大政党制づくり」の動きとのたたかいについてであります。

「脱野党」を宣言した民主党の深刻な矛盾

 この間の情勢の進展で、重要な問題の一つは、「二大政党づくり」の動きの本質を、当事者たちがみずから明らかにしたことであります。

 民主党は、「政権戦略委員会」で、「『政権準備政党』宣言」をまとめ、その冒頭に、「野党とは言わない。『脱野党宣言』――『反自民』の考えから脱却する」と宣言しました。これは、民主党と自民党とは、政策的な「対立軸」をつくらず、政権担当政党である自民党と政策的に共通面があることを強調することで、自らの「政権担当能力」をしめしたいという思惑からのものですが、「二大政党制づくり」の本質が、国政における「オール与党」化にあることを、自ら告白する動きとしてたいへん重要です。

 二中総決定がつっこんで明らかにしたように、もともと「二大政党制づくり」の動きの最大のねらいは、「政権の『受け皿』なるものを用意することによって、国民の関心を、どの党が自民党政治の中身に本気で対決するかにではなく、どの党が自民党に取って代わる『政権交代』勢力になるかに向けることによって、自民党政治への批判が日本共産党支持に結びつくことを阻止しようとすること」にありました。

 しかし、いくら「どの党が『政権交代』勢力になるか」に国民の関心を向けさせることに主眼をおくにしても、自民党政治への批判の「受け皿」になろうという以上は、形だけでも「反自民」的な姿勢、「野党」的な姿勢をとることが必要になります。そこを、自分から「自民党と政策の中身の違いはありません」「反自民ではありません」「野党ではありません」ということを“売りもの”にしてしまっては、自民党政権の批判の「受け皿」にもなりえなくなります。だいたい自民党と政策に違いがないのなら、どうして「政権交代」が必要になるか。これは深刻な矛盾であります。

「悪政推進について協議し、合意形成をはかる」という新たな翼賛政治

 それでは現実の動きはどうなっているか。これをみますと、自民・公明両党と民主党が、国政のあらゆる重要課題で、「悪政を競い合う」とともに、「悪政推進について協議し、合意形成をすすめる」という姿勢が、エスカレートしているのが特徴であります。

 自民党の国対委員長は、「憲法、社会保障、外交・安全保障の問題は、政権交代がおこる前に片付けておかなければならない。これらは政権が変わっても変わらない仕組みにしないといけない」として、国政の基本問題での協議を民主党に呼びかけました。

 民主党の憲法問題の責任者は、「(憲法問題では)政権を担う意思のある政党が協議」して「合意形成を今後すすめていく必要がある」とのべ、これにたいして自民党の憲法問題の責任者が、「これはものすごい発言だ」と絶賛する状況も生まれました。

 消費税増税をめぐってはどうでしょう。この間、「年金・社会保障制度改革に関する両院合同会議」が設置されましたが、この動きは重大であります。この「合同会議」の設置にいたる経過で、わが党は、社会保障財源を口実に消費税増税に道を開く自民・公明・民主の「三党合意」を前提にしないこと、多数決で結論をだし国会に押しつけることをしないことを主張し、それは五党の書記局長・幹事長会談でも合意されました。ところが、その合意に反して、「合同会議」の構成について、日本共産党を正規の幹事とせず、オブザーバーにするという不公正な「運営要綱」が押しつけられました。これは、公明党の担当者が「(共産党に)拒否権を与えることになると困る」という発言をおこなったことがしめすように、「合同会議」がわが党の意見を無視して運営されかねないことを意味するものでした。こうした経過をふまえ、わが党は「合同会議」設置の国会決議にきっぱり反対しました。今後、「合同会議」が、消費税増税の合意形成をはかる舞台となる危険に、強い警戒をはらう必要があります。

 こうして自民・公明両党と、民主党は、憲法改定についても、社会保障財源を口実にした消費税増税の推進についても、「悪政を競い合う」にとどまらず、「協議による悪政の合意形成」を公然とすすめようとしています。

 かつて一九八〇年代以降の時期に、日本共産党を排除した「オール与党」体制がつくられ、国政のあらゆる重要問題が、密室・談合の政党間協議によって決められ、国会に押しつけられるという状況がつくられたことがありましたが、いまこうした翼賛政治が、「二大政党づくり」という新しい舞台装置のもとで、憲法改定と消費税増税という国の命運にかかわる重大問題で再現されようとしています。この動きは、国民との矛盾を激しくせざるをえないでしょう。

まっとうな野党としての日本共産党の役割がこんなにわかりやすいときはない

 こういう政党状況のもとで、まっとうな野党としての役割を果たす政党としての、日本共産党の存在と値打ちは、たいへんに大きなものがあります。

 これまでの政党状況では、いくつかの野党が、ともかくも自民党政権に反対する野党だと自称するもとで、「自民党政治をどう変えるか」という問題とともに、それを担える「ほんとうの野党はどの党か」という問題が、つねに問われてきました。わが党も、「日本共産党こそ真の野党だ」といったこともありますし、「野党らしい野党だ」といったこともありましたけれども、そういう問題が問われてきた。ところが、「野党第一党」のはずの民主党が、「野党ではない」と自ら宣言するもとで、この状況が変わりました。まっとうな野党としての日本共産党の役割が、こんなにわかりやすいときはありません。

 二中総決定では、「二大政党づくり」の動きとのかかわりで党の議席のもつ値打ちを「六つのポイント」で規定しましたが、わが党が、ここで明らかにした役割を、いよいよ国政のあらゆる問題で発揮し、広い国民の心をとらえる新たな条件が生まれています。

 この情勢の展開がはらむ面白さをつかみ、新たな条件を生かして、「二大政党づくり」の動きを打ち破り、日本共産党の新たな前進の波をつくるために奮闘しようではありませんか。

(2)戦後最悪の大増税・負担増路線とのたたかい

大増税・負担増計画の具体的告発を

 小泉内閣が、いまふみだしている大増税・負担増路線は、二〇〇五年度から〇六年度にかけての「七兆円の負担増」にくわえ、それにつづく消費税大増税の計画をふくめると、戦後最悪の大増税・負担増となります。この動きに正面から立ちむかい、国民生活を擁護する大闘争をもってこたえることは、わが党の当面する重大な任務であります。

 このたたかいで、まず重視する必要があるのは、いまくわだてられている大増税・負担増の実態を具体的に告発し、この動きが「少々の負担なら我慢せよ」というごまかしが成り立つ余地のない、深刻な生活破壊をもたらすことを、広く明らかにしていくことです。

 たとえば、わが党は、国会質問で、定率減税が廃止されるとサラリーマン中堅層が22%もの所得税・住民税の負担増になること、高齢者にたいして年金課税が連続的に強化されるとともに、増税が介護保険料や国民健康保険料などの値上げに連動して負担増が「雪だるま式」にふくらむことなどを明らかにしてきましたが、これは大きな反響を呼びました。いますすめられている増税・負担増路線は、庶民のあらゆる層にたいして過酷きわまりない結果をもたらすものですが、その全体像はよく知られていません。具体的に事実を知らせていくことそのものが、大きな驚きと怒りを呼びおこすものとなります。

 そのさい、大増税・負担増路線が、社会保障のあらゆる分野での給付の切り下げと一体のものであることを告発することも重要であります。たとえば介護や医療での自己負担の引き上げは、たんに負担増ということにとどまらず、自己負担を引き上げることによって、国民が生きていくのに必要な介護を抑制する、必要な医療を抑制する、給付を切り下げることを目的としてすすめられているところに、冷酷非情な本質があります。年金につづき、介護、医療で、負担増と給付減を一体にした大改悪が強行されようとしていることをリアルに明らかにし、この攻撃を許さないたたかいを広げることが重要であります。

経済と景気への影響について、まともな認識も見通しもない

 いま一つの重大な問題は、増税勢力が、この道をすすんだ場合に、日本の経済と景気、さらには財政がどういう事態になるかについて、まともな認識と見通しをいっさいもっていないということです。

 今回の大増税路線の戦後かつてない特徴は、家計所得が年間数兆円規模で減少しているもとで大増税にふみだそうとしていることです。わが党は、国会論戦で、この事実を指摘し、「一九九七年の橋本大失政の二の舞いになる」と強く警告し、政府の認識と立場をただしましたが、政府は、「企業利益がのびれば、いずれ家計におよぶ」ということを、根拠なく繰り返すだけでありました。ここには経済運営のかじ取りの能力を失った、自民党政治の危機とゆきづまりが典型的にしめされています。

 こうしたもとで、税制や財政のあり方についての立場の違いをこえ、経済界もふくめて、危ぐの声があがっています。いま増税路線にふみだすことがどんなに無謀(むぼう)かを、経済と景気の現状にてらして明らかにすることをつうじて、この分野でも国民的共同の輪を大きく広げる条件はおおいにあります。

社会保障の財源論――浪費一掃と、「能力に応じた負担」が大原則

 増税勢力が、合理化論の中心にすえているのは、「少子・高齢化社会をむかえて社会保障制度を持続可能にするためにはやむをえない」という主張です。

 これにたいして、社会保障とはそもそも、どういう原則にもとづくものであるべきかという、“そもそも”論がまず重要であります。もともと社会保障とは、憲法二五条が規定する生存権をふまえ、すべての国民に生きていくために必要な給付を保障し、その負担は税でも社会保険料でも負担能力に応じてもとめる――給付は必要に応じて、負担は能力に応じて――これを原則にすべきであります。「社会保障の財源」を口実に、庶民に重くのしかかる逆進性を本性とする消費税増税をすすめることは、社会保障の原則を根本から破壊するものにほかなりません。

 くわえて、庶民には安易に巨額の負担増を押しつけながら、増税勢力が「聖域」にして手をつけようとしない分野が二つあることを明らかにしていくことが大切です。

 一つは、無駄な巨大開発の復活と、巨額の軍事費です。今年度予算で国際空港、中枢巨大港湾、都市高速道路を、「国際競争」のための「重点分野」として大幅増額していることは、その象徴であります。政府は、「公共事業費を減らした」といいますが、その実態は、国民にとって必要な福祉や教育分野の公共事業を減らし、巨大開発型の公共事業は増やしており、この分野でみますと、財務省の資料でも、日本の公共事業が国際的にも異常に高すぎる水準にあるという事態はいっこうに改善されておりません。

 いま一つは、大企業・高額所得者むけの減税措置であります。九七年度から二〇〇四年度までの八年間の増減税をみますと、庶民の家計むけには五・六兆円の増税をかぶせたのに対し、大企業・高額所得者むけには五・三兆円の減税をおこなっています。九七年度の消費税の増税いらいの一連の動きは、結局庶民から税金を吸い上げて、大企業と高額所得者に移転するというものにほかなりませんでした。空前のもうけをあげているこの分野へのゆきすぎた減税措置は、指一本触れずに「聖域」としながら、税収の「空洞化」をうんぬんして、庶民生活のすみずみからさらに税金をとりたてるなど、許せるものではありません。

 私たちは、この二つの分野に抜本的な改革のメスを入れるなら、消費税に頼らなくても安心できる社会保障を築くことは可能であることを明らかにしてきましたが、このことを広く訴えていくことが大切であります。

自公民の増税翼賛体制と正面から対決する日本共産党の役割

 大増税路線に反対し、国民生活を擁護する日本共産党の役割は、文字どおりかけがえのないものです。

 増税をめぐる政党状況をみますと、これまで大増税が国民に押しつけられたさいには、野党はともかくも反対の態度では一致していました。一九八九年の竹下内閣による消費税導入のさいには、すべての野党が反対しました。九七年の橋本内閣による九兆円負担増のさいにも、野党はそろって反対の態度をとりました。ところが今回は、自民・公明両党と民主党によって消費税増税翼賛体制がつくられています。ここには大きな変化があります。

 しかし今回ほど国民生活が不安と痛みに苦しめられているもとでの大増税は、日本の歴史でもありません。ですから、増税路線が実施に移され、その痛みが庶民の暮らしを直撃しはじめるなかで、増税への怒りがどんどん広がっています。最近の世論調査では、消費税増税に72%の国民が反対という結果もしめされています。怒りと怨嗟(えんさ)の声が深くひろがっている――この国民の多数の声を代弁し、ともにたたかうことができる党は、日本共産党だけとなっています。

 ここでも草の根からのたたかいを、おおいにおこそうではありませんか。そのさい、大増税路線そのものに反対するたたかいとともに、重税と社会保障切り捨てにあえぐ国民の生活苦や切実な要求にこたえ、現実の苦難を軽減する運動にとりくむことが重要であることも、強調したいと思います。生活相談や税金相談に多面的にとりくむこと、国保料、介護保険料、保育料、公営・公団住宅家賃などの軽減のために地方自治体でのたたかいにとりくむことを、重視したいと思います。

(3)「日米同盟」の侵略的な大変質に反対するたたかい

 つぎに「日米同盟」の侵略的な大変質に反対するたたかいについて報告します。

地球的規模の米軍再編に呼応した三つの危険な動き

 米国のブッシュ大統領は、二期目再選にあたって、「世界中での自由の拡大」「世界における圧政の根絶」の名のもとに、独行動主義と先制攻撃戦略、米国に都合のよい体制を軍事力で押しつける外交・軍事政策の継続を宣言しました。

 この侵略的な世界戦略のもとで、地球的規模での米軍再編がすすめられています。そのなかでも異常な突出ぶりをしめしているのが、「日米同盟」の強化であります。この間の新「防衛計画の大綱」、「日米安全保障協議会」(2プラス2)などの一連の動きをつうじて、日米軍事同盟の侵略的な大変質への動きが、浮き彫りになりつつあります。それは、つぎのような重大な特徴をもっています。

 第一は、「日米同盟」の世界化というべき動きであります。一九九六年にかわされた「日米安保共同宣言」は、日米軍事同盟を「アジア・太平洋地域」へと拡大することを主眼にしたものでしたが、いますすめられているのは「日米同盟」の文字どおりの地球的規模への拡大にほかなりません。「日米安全保障協議会」の「共同文書」では、日米の「世界における共通の戦略目標」を規定しました。そしてそのなかに、「テロ」「大量破壊兵器」への対抗を掲げました。つまりイラク戦争のような先制攻撃の戦争に、世界のどこででも参戦していく態勢づくりがすすめられようとしているのであります。

 第二は、米軍と自衛隊の一体化の動きであります。米国のファイス国防次官は、米軍と自衛隊が、「ともにドクトリン(基本方針)を発展させ、ともに訓練し、合同作戦をおこなえるようにする」とのべました。そのために在日米軍と自衛隊の基地の共同使用の拡大、演習と運用の一体化の推進がはかられています。自衛隊の本来任務に「国際活動」を位置づけ、「海外派兵隊」への本格的な変質をはかる自衛隊法改悪のたくらみも、この流れのなかに位置づけられたものであります。

 これらの動きにとって、憲法九条の存在は、いよいよ両立しえないものとなっています。日米の支配層のなかで台頭している憲法改悪への強い衝動が、「日米同盟」の侵略的な大変質を根源にして生まれていることを、直視することが重要であります。

 第三は、在日米軍基地の司令部機能、機動性の強化であります。「日米安全保障協議会」の「共同文書」は、「基地負担の軽減」ということを言葉ではいいますが、「在日米軍の抑止力を維持する」と明記しました。現実にすすめられているのは、在日米軍基地を強化・永久化しようという動きであります。

 沖縄県では、普天間基地、那覇軍港の県内たらいまわし路線に固執したうえ、キャンプ・ハンセンに特殊作戦用の都市型訓練施設の建設を強行するという暴挙をすすめています。神奈川県では米軍座間基地への米陸軍第一軍団司令部の移設、横須賀基地への米原子力空母の配備計画など、恐るべき基地強化計画がくわだてられています。山口県・岩国基地の拡大とNLP(夜間離着陸訓練)移設の動きも重大であります。在日米軍基地を、地球的規模での殴りこみの拠点として強化しようという動きは、日米安保条約でも説明のつかない無法なものであります。

 こうした「日米同盟」の侵略的大変質、在日米軍基地の強化の動きは、国民との矛盾を激しくしています。沖縄県・下地島では、自衛隊の基地誘致の動きにたいして、島ぐるみの反対のたたかいがおこり、この策動を打ち破りました。保守の立場の人々もふくめた共同のたたかい、自治体をあげてのたたかいが各地でおこっています。ここでも、異常な対米従属の路線の危機とゆきづまりは明りょうであります。

世界で軍事同盟網が崩れるなかで、強化に熱中する異常さ

 ここで世界に目をむけてみたいと思います。そうしますと、いま軍事同盟強化に熱中することの異常さが、歴然としてきます。戦後、世界にはりめぐらされた軍事同盟網が、今日どうなっているか。旧ソ連を中心とした軍事同盟だったワルシャワ条約機構は解体されました。米国中心の軍事同盟も、多くは解体、機能不全、弱体化におちいっているのが、今日の世界の大きな流れであります。

 東南アジア集団防衛条約(SEATO)は一九七七年に解体しました。中東につくられた中央条約機構(CENTO)は一九七九年に解体しました。アメリカ大陸につくられた米州相互援助条約(リオ条約)は、メキシコが脱退を表明し、ラテンアメリカで自主的な国づくりの大きな変革の流れが広がるなかで、すでに軍事条約として事実上機能していません。オーストラリア・ニュージーランド・米国相互安全保障条約(ANZUS)は、一九八六年いらいニュージーランドの非核政策のために機能していません。

 北大西洋条約機構(NATO)はどうか。NATOは、イラク戦争にさいして、フランス、ドイツ、カナダ、ベルギーなど一連の主要国が反対し、分裂状態におちいりました。最近、シュレーダー独首相は、「NATOは戦略上の協議の場ではもはやない」と指摘し、米欧関係の改革について抜本的見直しを提起し、シラク・仏大統領もこれへの支持を表明するなど、この軍事同盟のあり方について、根本から問い直す動きが生まれています。

 軍事同盟に代わって、世界に広がっているのが、仮想敵をもたない地域的な平和の共同体づくりの動きであります。東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心とした東南アジア友好協力条約(TAC)は、三十三億人を擁する平和の一大潮流に成長しています。欧州(EU)も、「欧州憲法」で、「国連憲章の諸原則の尊重」をうたいました。昨年末には、南米共同体が結成され、自立したラテンアメリカ、紛争の平和解決などを宣言しました。仮想敵をもたない地域的な平和の共同体がつくられ、それが合流して、国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざすという大きな流れを形成している。これが今日の世界であります。

 軍事同盟は前世紀が残した遺物となりつつあります。国連憲章にもとづく平和秩序をめざす、非同盟・中立の流れが、世界の圧倒的な流れとなっています。そのなかで徹底した米国追従をつづけ、いま、軍事同盟強化に熱中している国は、世界を見ても日本しかありません。

日米安保廃棄、基地国家・日本から脱却するたたかいの発展を

 こうした世界の流れの大局にてらしても、綱領路線がその中心にすえている日米軍事同盟解消、独立・中立日本への転換こそ、世界史の大道であることが鮮やかに浮き彫りになってくるではありませんか。

 憲法改悪反対のたたかいと結びつけて、海外派兵と基地強化など「日米同盟」の侵略的変質に反対し、日米安保条約廃棄の世論と運動を広げようではありませんか。

 また、全国各地でおこっている米軍基地増強に反対し、撤去をめざすたたかいの連帯をつよめ、基地国家・日本から脱却するたたかいをおおいに発展させることを呼びかけたいと思うのであります。

三、 「第二十四回党大会をめざす党勢拡大の大運動」を呼びかける

 つぎに報告の第三の主題として、次期党大会の招集、党勢拡大の方針について提起します。

(1)次期党大会を来年一月に招集することを提案

 まず次期党大会の招集について提案します。党規約では、「党大会は、中央委員会によって招集され、二年または三年のあいだに一回ひらく」とされています。この規約にもとづけば、次期党大会は、来年一月から再来年一月までの時期に開くことがもとめられます。

 今後の政治日程を展望しますと、衆議院については、解散・総選挙の時期は流動的であり、いつあっても対応できる備えが必要ですが、二〇〇七年十一月までが任期であり、それまでの時期のどこかで総選挙ということになります。参議院は、次期選挙が二〇〇七年七月であります。また、二〇〇七年四月には、いっせい地方選挙がおこなわれます。小泉首相の自民党総裁としての任期は、二〇〇六年九月までであり、次期総裁をめぐって政局の流動化もありうることです。

 以上の諸点を考慮し、次期党大会――第二十四回党大会を、来年一月に招集することを提案するものです。

 党大会の招集日と議題については、おそくとも三カ月前に全党に知らせることが、規約で義務づけられていますが、それはつぎの中央委員会総会の課題としたいと思います。

 以上が大会招集にかんする提案であります。

(2)「党勢拡大の大運動」の提案とその目標について

 つぎに「党勢拡大の大運動」の提案とその目標についてのべます。

次期党大会――新しい綱領ふまえ、全国選挙勝利めざす大会

 次期党大会は、わが党の活動の発展にとって、重要な意義をもつ大会となります。

 何よりもこの大会は、わが党が新しい綱領をつくって、それにもとづく実践をふまえた、初めての大会となります。すなわち、新しい綱領の真価が実践的に試される最初の大会となります。この間、新しい綱領を学ぶ本格的な運動が開始され、深いところから政治的・理論的活力がわきおこっていますが、この流れを発展・加速させながら、大会にむけての党活動の大きな高揚をつくりだすことが、つよくもとめられます。

 さらにこの大会を、二〇〇七年末までにおこなわれる一連の全国的政治戦――衆院選挙、参院選挙、いっせい地方選挙で、わが党が新たな前進・躍進に転じることをめざして、全党が総決起していく一大跳躍台として成功させなければなりません。

 そこで、来年一月の次期党大会をめざして、党勢拡大に思い切って力を集中して前進をはかる大運動――「第二十四回党大会をめざす党勢拡大の大運動」にとりくむことを呼びかけるものです。

 二中総決定で提起した、強大な党建設をめざす「五つの課題」は、長期にわたって全党がとりくむべき基本方針を提起したものです。この基本方針を堅持して総合的な活動にとりくみながら、党活動の最も遅れた分野になっている党勢拡大の現状を抜本的に打開するために、「党勢拡大の大運動」にとりくむことを、提案するものです。

「党勢拡大の大運動」の目標について

 「党勢拡大の大運動」の目標は、この分野の到達点をリアルにふまえ、党大会までにかならず達成すべき目標として、全党的には、つぎのとおりとすることを提案します。

 イ、党員拡大は、「五〇万の党」という目標をめざし、少なくともその半分以上を達成する。

 ロ、日刊紙読者は、総選挙時比三割増をめざし、少なくともそれに必要な拡大数の半分以上を達成する。

 ハ、日曜版読者は、総選挙時比三割増をめざし、少なくともそれに必要な拡大数の半分以上を達成する。

 これらの目標をやりきれば、全党的に五万人以上の党員拡大、五万人をこえる日刊紙読者の拡大、二十七万人の日曜版読者の拡大となります。その結果、党員は約四十五万人、日刊紙読者は約三十五万人、日曜版読者は約百六十五万人となり、「しんぶん赤旗」の読者数は合計約二百万人となります。紙面の抜本的改革の努力をひきつづきすすめ、それも力にしてとりくみの前進をはかりたいと思います。

 情勢のはらむ党前進の可能性をくみつくし、全党の力をくみつくし、全力をあげて奮闘すれば、これらの目標を達成する条件と可能性はおおいにあります。かならず目標をやりきって大会をむかえるようにしたいと思います。

目標設定にあたっての考え方について

 これらの目標は、つぎの点を考慮して、提案したものであります。

 第一に、「党勢拡大の大運動」は、つぎの全国選挙での勝利にむけて、党勢を大きな安定的前進の軌道にのせることをめざす運動としてとりくむものです。ですから党大会までに「大運動」の目標を達成するとともに、大会後も継続的に党勢拡大運動を前進させ、二〇〇七年に想定される一連の全国選挙を、「五〇万の党員」と、日刊紙読者・日曜版読者の三割増を達成してたたかうようにしたいと思います。

 第二に、五万人の党員と五万人の日刊紙読者の拡大、二十七万人の日曜版読者の拡大という目標は、党勢の一番基幹的な部分を強めるとともに、日曜版をつうじてさらに広い国民との結びつきを強めるという両面を、それぞれ重視したものであります。

 党員拡大は、党のあらゆる活動をささえる根幹の力を強めるとりくみであり、とくに青年・学生分野と職場支部での前進は、わが党の世代的継承にとってきわめて重要な課題です。日刊紙読者は、「しんぶん赤旗」発展の大黒柱であり、その拡大を、党員拡大とともに、党勢の一番基幹的な部分を強める活動として、独自に重視して位置づける必要があります。

 同時に、日曜版を、週刊新聞ならではの庶民的魅力とともに、“日刊紙の週刊版”ということにとどまらない新鮮さと魅力をもった新聞として発展させ、この新聞をつうじてさらに広い国民と結びつく努力が必要であります。

 党員拡大、日刊紙拡大、日曜版拡大は、それぞれが独自の意義をもつものです。それを正確にとらえて、この三つの拡大の全体で前進をかちとる努力をはかりたいと思います。

(3)いまなぜ「大運動」か――その国民的意義

 いまなぜ「大運動」か。この運動は、たんにわが党の前途にとって重要であるだけではありません。わが党が、今日の情勢にふさわしい実力をつけることができるかどうかは、日本の進路と国民の利益にかかわる意義をもつものです。

 つぎの四つの党建設のスローガンを、全党の共通の決意にしてとりくみをすすめることを呼びかけるものです。

憲法改悪を許さない国民的多数派を結集できる党をつくろう

 第一は、憲法改悪を許さない国民的多数派を結集できる党をつくろうということであります。先に詳しく明らかにしたように、憲法改悪を許さないたたかいは、日本の進路、アジアと世界の情勢にかかわるまさに歴史的たたかいとなります。この闘争は、その決着をつけるまでに、一定の期間を必要とするでしょう。このたたかいで、改憲を許さない国民的多数派を結集するうえで、党の実力はまだまだ足りないといわなければなりません。

 勝利をかちとるためには、全国どこでも、草の根で国民の過半数を結集する力量をもった党を築きあげることが必要であります。憲法をまもり生かす運動のよりどころとして、なくてはならない先駆的役割を果たしている「しんぶん赤旗」をおおいに広げることが、強くもとめられています。憲法改悪を許さないために今こそ党を強く大きくしよう――これをみんなの合言葉にして、この「大運動」にのぞもうではありませんか。

「二大政党制づくり」の動きを打ち破り、国政選挙で勝てる党をつくろう

 第二は、「二大政党づくり」の動きを打ち破り、国政選挙で勝てる党をつくろうということです。この半年間の情勢の展開のなかで、「二大政党づくり」の動きの正体が明らかになり、国民との矛盾もひろがりつつあります。同時に、この動きは、これまでの「受け皿」づくりの動きとくらべても、財界が主導し、うしろだてになったものであるだけに、はるかに根強い力をもった動きであることは、私たちが、さきの総選挙と参院選で体験したことでありました。

 また、民主党という党の運命がどうなるにせよ、自民党に代わって「政権」につく勢力を前面に押しだして、自民党政治への批判の流れが日本共産党の支持に結びつくことを食い止める政治戦略を、日本の支配勢力が長期にわたる基本戦略としていることも、あらためて銘記すべきことであります。

 どんな情勢の劇的展開があっても、つぎの国政選挙で勝てる党をつくり、「二大政党づくり」の動きを打ち破って、日本の政治に新しい前進的局面を開くためには、いま強大な党づくりに力を集中し、知恵と情熱をかたむけてとりくむことが不可欠であります。

地域・職場・学園で、国民と結びつき、要求にこたえてたたかう党をつくろう

 第三は、地域・職場・学園で、国民と結びつき、要求にこたえてたたかう党をつくろうということであります。二中総決定で、「支部と党員がまわりの人々と日常的に広く深く結びつく」ことそれ自体のもつ重要性に光をあてたことは、新鮮に受け止められ、党活動の豊かさと幅を広げる契機となっています。また、「国民の苦難と要求あるところ日本共産党あり」の原点にたった活動は、震災・豪雨災害にさいしても、国民生活をまもるたたかいでも、多面的にとりくまれています。

 ぜひ、それぞれの党支部と党機関が、みずからの責任を負っているところで、広範な国民と結びつき、苦難と要求にこたえた活動をすすめるうえで、どういう党が必要かをみんなで討論し、自覚的な目標と計画をたてて、運動にとりくもうではありませんか。

新しい綱領を実現するために、将来にわたって安定的に発展する党をつくろう

 第四は、新しい綱領を実現するために、将来にわたって安定的に発展する党をつくろうということであります。二中総決定では、「わが党の世代的継承を着実にかちとる」という見地から、青年・学生の分野の活動と、職場支部の活動の抜本的強化を呼びかけました。新しい綱領の実現――「二十一世紀の早い時期に民主連合政府の樹立」という目標を展望すれば、これらの課題にいま全党が総力をかたむけてとりくむことが、痛切にもとめられています。そのことを「大運動」のなかでもしっかりと位置づけ、開拓者の精神で前途を切り開こうではありませんか。

(4)「大運動」をどうやって成功させるか

 つぎに「大運動」をどうやって成功させるかについてのべます。

いかに全支部、全党員が参加する自覚的運動にしていくかが最大のカギ

 この運動を成功させる最大のカギとなるのは、いかに全支部、全党員が参加する自覚的運動にしていくかにあります。単純ですが、ここに真理があります。同時にこれは、やりがいのある大事業でもあります。

 昨年の大会後、党員拡大で成果をあげた支部は二割弱です。昨年の参議院選挙にむけた「大運動」で読者拡大の成果をあげた支部は毎月五割程度であり、二中総後のとりくみでは毎月三割程度にとどまっています。

 党勢拡大運動が、少数の支部と党員によって担われている現状を打開して、文字どおり全国二万四千のすべての支部、四十万人の全党員が参加する運動にしていくことに、力をつくしたいと思います。そうした文字どおりの全党運動にするならば、「大運動」の目標は、けっして過大な目標ではありません。九カ月の期間のなかで、一つの支部で、平均するならば、数名の党員と日刊紙読者、十名以上の日曜版読者を増やせば、達成できるものであります。

 それでは全支部、全党員参加の自覚的運動にしていくうえで、どういう点が大事になってくるでしょうか。つぎの諸点に留意して、「大運動」のとりくみをすすめたいと思います。

要求にこたえ、たたかいに打って出ることと一体に

 一つは、国民の要求にこたえ、たたかいに打って出ることと一体に、「大運動」の推進をはかることであります。要求活動と党建設は、党活動の二つの基本のとりくみです。憲法改悪反対、大増税路線反対の国民的闘争、地域・職場・学園の切実な要求実現の多面的なたたかいにとりくみ、国民との新鮮な結びつきを広げつつ、「大運動」の前進をはかることが大切であります。

 すべての支部が、「大運動」の意義を語りあい、「政策と計画」をもち、国民の要求にこたえるたたかいの計画をたてるとともに、党勢拡大の自覚的目標をたてて、その独自の追求をはかる、「支部が主役」の運動にしていきたいと思います。

新しい綱領を学び、党を語りながら、「大運動」にとりくむ

 二つ目は、新しい綱領を学び、党を語りながら、「大運動」にとりくむということであります。新しい綱領の学習を開始したところでは、見ちがえるような積極的な変化がおこっています。綱領学習をつうじて、多くの党員が、日本の情勢の特質を根底からとらえ、世界の構造的変化と大局をつかみ、未来社会のもつ本来の豊かな内容をつかみ、日本共産党員として生きる誇りと喜びをつちかっています。

 第二十三回党大会では、「綱領を、文字どおり全党が深く身につけることを、この大会期の一大事業として位置づけてとりくむ」ことを決めました。綱領を読了した党員が全体のまだ約三割という到達を直視して、次期党大会までに、文字どおり新しい綱領を、全党員のものにするために力をつくそうではありませんか。綱領を学び、党を語る運動を、さらに豊かに発展させながら、文字どおり「新しい綱領で党をつくる」という意気込みで、「大運動」を成功させたいと思います。

温かい人間的連帯にあふれた党づくりにとりくみ、支えあって運動の推進を

 三つ目は、温かい人間的連帯にあふれた党づくりにとりくみ、支えあって「大運動」を成功させるということであります。「党生活確立の三原則」――日刊紙を読む、会議に出る、党費を納める――を、全党に定着させることを重視しながら、「大運動」にとりくみたいと思います。

 党がさまざまな困難をのりこえて団結し、前進する力の源泉となるのは、政治的・理論的確信とともに、温かい人間的連帯であります。この連帯の場となるのが支部会議であり、全国の党員や党組織が連帯する媒体が「しんぶん赤旗」日刊紙であり、党費を納めることは自覚的に党を財政面でも支えあうということです。

 自民党政治の危機が深まり、「勝ち組・負け組」という言葉に象徴されるように、社会にすさんだ弱肉強食の風潮が持ちこまれているだけに、わが党が温かい人間的連帯に結ばれた魅力ある人間集団として前進することが、強くもとめられています。

すべての党支部が、若い世代との「交流と共同」のとりくみを発展させる

 四つ目に、すべての支部が、若い世代との「交流と共同」のとりくみをすすめるということを重視したいと思います。各地で発展している「交流と共同」――党機関と党支部が、青年支部や民青班と交流・懇談し、共同して若い世代に働きかける活動を発展させつつ、青年党員と民青同盟を大きく増やすとりくみを、おおいに発展させましょう。そのなかで、条件に応じて、青年支部・青年班をつくり、民青班・地区委員会の再建を追求することも重要です。少なくない党機関が学生支部の前進のための独自の努力を開始していることは重要であり、これを中断することなく計画的・系統的に発展させることがもとめられます。

 そのさい、失業と不安定雇用、異常に高い学費など、若い世代の苦しみに心をよせ、その改善のためにともに力をつくす活動、未来を担う世代ならではの知的・理論的敏感さにこたえるとりくみなど、若い世代の要求にこたえる多面的な活動をすすめることが大切です。

 さらに、現代の若者たちが、その成育過程においても、職場や大学においても、異常な競争主義、序列主義、格差拡大と差別の重圧のなかで、心をうちあけて語り合える仲間をもてない悩みをかかえているもとで、温かい人間関係をつくりだす連帯と共同の仲間づくりの活動は、たいへん重要な意味をもってきます。

 以上が「第二十四回党大会をめざす党勢拡大の大運動」の提案であります。すべての党支部と党機関が、ぜひこの提起を正面から受け止めていただき、いまこの「大運動」にとりくむ国民的意義、「大運動」の目標について、真剣な議論をおこない、ただちに足をふみだし、党大会にむけて党勢拡大の前進と高揚をつくりだすことを、強く訴えるものであります。

四、 国政選挙、東京都議選と中間選挙での前進をめざして

 報告の最後に、選挙戦についての当面の方針についてのべます。

(1)きたるべき全国選挙――候補者をきめ、系統的な日常活動を

 まずきたるべき全国選挙についてであります。

 きたるべき国政選挙での新たな前進をめざす方針については、二中総決定と、昨年十一月の全国都道府県委員長会議の方針で、明らかにされています。

 衆参ともに比例代表での得票を増やし、議席を増やすことを、活動の中軸にすえ、候補者を先頭に日常的に有権者と深く結びつき、日本共産党への支持を拡大していくことが、その基本であります。この基本方針をふまえて、候補者をきめ、広い有権者のなかで意欲的なとりくみにふみだしている経験が、全国各地で生まれています。

 総選挙、参議院選挙、いっせい地方選挙ともに、候補者を早期に決定し、日常活動にふみだすことを、とくに強調しておきたいと思います。

 また、国政補欠選挙を重視して位置づけ、論戦をつうじて党の値打ちをきわだたせるたたかいを展開することも重要であります。

(2)中間地方選挙――この間の教訓を生かし、ひきつづき前進を

 つぎに中間地方選挙についてのべます。

 この間の中間地方選挙の結果は、わが党が、住民要求にこたえた正確な論戦を展開し、勝利のために力をつくせば、前進をかちとる新しい条件が広がっていることをしめすものであります。勝利をかちとった選挙で共通しているつぎのような教訓におおいに学んで、今後に生かしたいと思います。

 一つは、政党選択の構図をくっきりと浮かびあがらせる論戦をおこなっていることです。国政での「二大政党」が及ぼしている害悪の批判と一体に、多くの地方自治体で住民いじめの「オール与党」体制がつくられていることを告発し、「オール与党対日本共産党」の対決構図を浮き彫りにしていることです。

 二つ目は、いまの自治体でおこっている矛盾を深くとらえて、それを打開する方向を対置していることであります。多くの自治体で、住民福祉切り捨ての「営利企業」化と、「都市再生」を看板にした新たな無駄づかいへの財源集中による「開発会社」化が進行し、「逆立ち」政治の害悪がいよいよ深刻になっています。それにくわえて、「三位一体改革」の名での地方財政切り捨て攻撃が、矛盾に追いうちをかけています。このもとで、住民の切実な要求を掲げて、こうした流れと正面から対決し、「住民が主人公」の政治をめざす日本共産党の値打ちを明らかにしています。

 三つ目は、市町村合併後の選挙で、正確な論戦によって、広い、新たな支持をかちとっていることです。合併に賛成・反対の垣根をこえて、合併にともなって生じてくる問題にたいして、住民と地域の利益をまもるために奮闘する党の立場、議員・候補者の役割を押しだすことによって、日本共産党への期待が大きく広がる状況があります。わが党は、市町村合併の押しつけには反対しますが、個々の合併問題への対応は、「地域住民の利益をまもる」「地域住民の意志を尊重して決める」という、原則的かつ柔軟な態度をつらぬいてきました。そのことが、合併後の選挙でも住民の共感を広げる対応を可能にしています。

 また合併後の選挙は、「開拓の選挙」という見地で、中央と県・地区委員会が現地に入って、現地の支部や、議員・候補者のみなさんと一緒になって、論戦と活動を探求し、方針を具体化し、発展させていった活動姿勢も、重要であります。

 四つ目に、住民の利益をまもる地道な日常活動と党建設が、定数一や二の選挙区での勝利の土台になっているということであります。定数一で勝利した上越市旧吉川町では、二十六年間連続して「町政レポート」を発行することを軸にした日常活動によって、住民の厚い信頼をえて勝利をかちとっています。同じく定数一で勝利をかちとった長崎市旧香焼町、旧伊王島町では、党員人口比3%以上、数軒に一軒の読者という厚い党組織・後援会を築いてきたことが、勝利の大きな土台となりました。

 多くの党組織が、中間地方選挙のたたかいとその結果をつうじて、「二大政党づくり」の動きは打ち破れるという展望をつかみつつあることは、重要です。これらの教訓を生かして、今後の一つひとつの中間選挙の勝利を確実にかちとっていくことが強くもとめられています。

(3)都議会議員選挙での勝利・前進のために

 最後に都議会議員選挙での勝利・前進にむけたとりくみについてのべます。

 七月に迫った東京都議会議員選挙で、現有十五議席の確保と、さらなる前進をかちとることは、今年の重大な政治任務であります。

 首都・東京での政治戦の動向は、都民の暮らしの今後はもとより、国政の動向にも大きな影響をおよぼします。東京都党組織の奮闘とともに、全党の力を結集して、この政治戦で勝利・前進することをめざし、全力をつくしたいと思います。

 都議選で、何よりも問われるのは、住民の暮らしをまもる自治体の役割にたいする、各党の姿勢であります。かつて、住民福祉の先駆的実績を全国に発信してきた東京都政が、いまでは全国でも異常な「逆立ち」政治の震源地となっています。無駄な大型公共事業を大幅に増やしながら、四年間で福祉関係費が一割も削減され、中小企業対策費は三割も削減されるという異常事態がおこっています。一人ひとりの子どもや教師などへの「日の丸」・「君が代」の強制が、憲法で保障された内心の自由を乱暴に蹂躙(じゅうりん)した異常きわまりないやり方で、おこなわれています。そして、この悪政が、日本共産党以外の自民党、公明党、民主党、生活者ネットの「オール与党」体制で推進されていることが重大であります。このもとで、福祉・教育など都民生活、そして民主主義のかけがえのない守り手としての日本共産党都議団の役割は、きわだっています。

 自民党、民主党などは、「二大政党の選択」をこの政治戦に押しつける激しいキャンペーンをおこなっています。これにたいして、国政での「二大政党づくり」の動きの告発と、都政における「オール与党」の告発を結びつけておこないながら、日本共産党都議団の値打ちを押し出していく論戦が重要であります。

 都議選勝利のために、全国の党員のみなさんが、後援会員や支持者のみなさんの協力もえて、東京のお知り合いに党と党候補者への支持を訴える活動を本格的に強化することを、呼びかけたいと思います。

 ぜひ、この政治戦で勝利をかちとるために、おおいに力をあわせようではありませんか。

 以上をもって幹部会報告を終わります。