2005年7月12日(火)「しんぶん赤旗」

NHK「日曜討論」での志位委員長の発言(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長は十日、NHK番組「日曜討論」に出演し、山本孝解説委員のインタビューに答えました。その大要は次の通りです。

郵政民営化について

 山本 衆院本会議での(郵政民営化法案の)採決後の志位さんの記者会見では「きん差での可決は国民の怒りが非常に大きいことを示している」という話でしたが、国民の批判の中心はどこにあると考えていますか。

■五票差可決――根本に国民の不安と批判の広がりが

 志位 審議をすればするほど、この法律の問題点が明らかになってきましたが、一番の問題は、国民へのサービスが大きく後退することへの不安と批判だと思います。

 小泉首相は「民間にできることは民間で」といいますが、民間にできないサービスをきちんと保障してきたのが、郵貯であり、簡保なわけです。

 身近なところに、どこでも金融窓口がある。休日でも時間外でも(ATMの)手数料をとらない。口座維持の手数料もとらない。つまり、庶民の生活資金を安心して預けられる。これは、民間の金融機関が手を引いている分野をしっかり守っている(事業です)。

 これが崩されるのではないか、あるいは三百四十兆円という郵貯・簡保の資金が、内外の金融資本の食い物にされるのではないかという不安が、審議をすればするほど広がって、これは国民にとって“百害あって一利なし”ということが明らかになったということが、ああいう結果(衆院本会議で郵政民営化法案が五票のきん差で可決されたこと)の根底にあると思います。

 山本 その審議について「なぜ民営化が必要か」という、いわゆるそもそも論の繰り返しばかりが目立つという批判がありますけれども、野党として、十分論議ができたのか、政府を十分追及することができたかどうなのか、それはどう考えていますか。

 志位 私たちは、国民のサービスの低下という問題の一番の中心点を、ずっと明らかにしてきました。

 政府がいう議論も一つひとつ問題点を明らかにしてきました。

 たとえば「公社のままだと先細りになる」と盛んに(政府・与党は)いったわけですが、私たちの国会質問に対し、公社が続いた場合は千四百億円の黒字になる、民営化したら六百億円の赤字になると(政府は答弁しました)。つまり、民営化というのは、郵貯・簡保をつぶしていく方向に作用することを明らかにして、これだったら何のための民営化なのかという、根本を崩す議論もおこない、問題点を明らかにしてきたと思います。

 山本 小泉総理は「否決されたら不信任とみなす」と、解散をにおわせる発言を繰り返しているんですが、この小泉総理の考え方をどう思いますか。

■解散の脅しで審議封殺――議会制民主主義を壊すもの

 志位 私は、解散という手段で国会を脅しつけるというやり方はよくないと思うんです。

 衆院のときにも「通らなかったら解散だ」とちらつかせました。参院にいったら「通らなかったら不信任だ」と、事実上の解散をちらつかせています。

 つまり、解散というカードを使って、自由な審議を封殺する、反対意見を封殺する――小泉首相が自分がやりたい法律を何がなんでも通す、国民が望んでいない民営化を何がなんでも通すために、いわば個利個略のために、議会制民主主義を壊すというやり方で、これはよくないやり方だと思います。

 もちろん、私たちは解散になったら、堂々と受けて立って、小泉政治への全面的な審判、自民党政治の根本的転換を求めておおいにたたかいます。前進を期してがんばりますが、解散で国会を脅しつけるというやり方は、私はよくないと思いますね。

 山本 いまこの時期に解散があっても、受けて立つんですか。

 志位 それはもちろん、解散を選択するのは、向こうですから、そうなったら(山本「やむをえない、ということですか」)やむをえないというより、そうなったら堂々と受けて立って、前進を期すということになります。

 山本 廃案になれば、総辞職が筋だとお考えになっているんですか。

■参院否決となれば、民営化計画を断念するのが筋

 志位 私は、参院で否決されたら、その結果を重く受けとめて、郵政民営化という計画そのものを断念する、やめるというのが、一番の筋だと思いますね。

 参院で否決されたからといって、衆院を解散するというのは、道理が通らないと思います。

テロ問題、イラクへの自衛隊派兵について

 山本 ロンドンでの同時爆発テロの問題ですが、イラクへの自衛隊派遣の問題も含め、日本としてどう対応していけばいいと思いますか。

 志位 テロについていいますと、まず亡くなられた方に心からの哀悼の気持ちを申し上げたい。

 テロをなくす方法はどこにあるか。これは、G8でも、国連あるいは国際法を重視し、人権をしっかり確保しながら、つまり司法と警察の力でテロをなくすべきだという点で一致したことは、非常に大事だと思うんです。

 戦争ではテロはなくならない。ここが非常に大事な点だということを強調したい。

 イラクの問題でいいますと、「主権移譲」からだいたい一年たって現状をみてみますと、情勢の悪化が深刻で、いよいよ悪くなっているわけです。

 調べてみますと、「有志連合」といわれて、派兵した国も、三十八カ国あったのが、すでに二十カ国が撤退ないし撤退の方向になっています。残るは十八カ国です。

 イラクの暫定国民議会は二百七十五人が選ばれたんですが、そのうち百三人の方が「多国籍軍の早期撤退」を求めています。外国軍の駐留が、イラクの情勢全体悪化の根源になっているわけですから、自衛隊の速やかな撤退を強く求めたいと思います。

靖国神社への首相の参拝問題について

 山本 総理の靖国神社への参拝問題に関連して、新たな追悼施設を建設しようではないかという話も一部にありますね。この問題については、共産党は、基本的には賛成なんですか。

 志位 国民の合意で、だれでも安心して追悼できる施設をつくることはありうることだと思うんです。

 ただ、それをできるまでは(首相の)靖国の参拝は仕方がないと条件にするのはよくない。

 山本 靖国神社とは全く別のものだとさっきも武部さんもそういっておりましたけれども、そのあたりはどうなんですか。

 志位 首相の靖国神社への参拝をまず中止するということが大事であって、追悼施設ができるまでは仕方がないというような条件にすることは、よくない。小泉さんは(新たな追悼施設が)できても、(靖国神社に)参拝するという立場です。こうなると(追悼施設をつくっても)本当に意味がないということになります。

 靖国の問題が、どうしてこれだけ問題になるかといいますと、国会でも小泉さんと議論しましたが、一番の問題は、靖国神社が立っている“戦争観”“歴史観”です。これは「かつての(日本の)戦争は正しかった」というもので、その立場に立つ神社に(首相が)参拝するというのは、(かつての侵略)戦争の正当化になります。だから、中止すべきだと私たちは求めています。