2005年8月29日(月)「しんぶん赤旗」

NHK日曜討論

志位委員長の発言(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長は二十八日放送のNHK日曜討論「衆院選公示まで2日 各党は何を訴えるか」に出席し、各党の代表と討論しました。他の出席者は、自民・武部勤幹事長、民主・岡田克也代表、公明・冬柴鉄三幹事長、社民・福島瑞穂党首、国民・綿貫民輔代表、日本・田中康夫代表。司会はNHKの山本孝解説委員。

■「小泉改革」に対決、「二大政党」の増税・改憲から、くらしと平和まもる

 この選挙でなにを訴えるかが各党に問われ、武部氏は「郵政民営化で国民投票を訴える」、岡田氏は「年金の改革、子育てを重視」、冬柴氏は「郵政民営化が最大。少子社会、無駄ゼロを訴える」と発言。志位氏は次のように答えました。

 志位 私たちは、いま日本の政治に「たしかな野党が必要です」、「野党としてこういう仕事をする」ということをお訴えしています。

 一つは、小泉「改革」に真っ向から対決して、くらしを守るということを訴えています。

 「改革を止めるな」と首相は言うんですけれども、「改革」の名でやられてきたことというのを振り返ってみますと、医療、介護、年金、命を削るような社会保障の切り捨てが続けられました。それから、安定した雇用と賃金が破壊されてきた。庶民にはもう耐えがたい「痛み」の連続だった。

 しかし、大企業、財界は、バブルのときを上回る空前のもうけをあげている。

 結局、小泉「改革」でやられたことというのは、庶民から吸い上げて、財界をもうけさせる。これが正体だったと思うんです。

 郵政民営化も、この流れのなかで出てきているもので、こういう政治に真っ向から対決してくらしを守る。

 それからもう一点は、自民、民主の「二大政党」が、一緒になって進めている庶民大増税と憲法改定、これに真っ向から立ちはだかって、平和とくらしを守るということを、大きく訴えていきたいと思うんですね。

 とくに憲法の問題は、九条を変えて、日本を戦争をする国にする。これは絶対にしちゃいけないと、平和を守る選挙にしていきたいと思います。

■国民に「痛み」、財界はおおもうけの小泉内閣の4年間

  「小泉改革」の評価について、岡田氏は「改革がまったく進まない」と批判。冬柴氏は、不良債権処理、失業率、株価をあげて「努力をすれば報われるような政治をしたのが小泉改革だ」とのべました。

 志位 まず「不良債権の処理」についていいますと、たしかに大銀行の帳簿はきれいになったかもしれません。しかし、年間四千人を超える中小・零細企業の経営者の方々が自殺に追い込まれているんですよ。六年連続なんです。「不良債権処理」の掛け声で、貸し渋り、貸しはがし(が起きている)。

 それからいわゆる「不良債権」といわれる資金繰りに困っていらっしゃる中小業者のみなさんを、債権回収会社に売り飛ばすと。そういうなかで、過酷な取りたてになっている。こういう事実を全然考えていない。

 それから、失業率のことを言われたけれども、いまこの四年間で進んだことというのは、いわゆる正社員が三百万人減っているんです。パート、派遣、二百三十万人増えている。人をモノのように使い捨てにする。こういう弱肉強食の働き方になっている。

 それから、株のことを言われましたね。たしかに、財界と大企業は空前のもうけですよ。バブルの時期以上のもうけです。しかし、庶民の家計は苦しい。

 この四年間で、象徴的な数字があるんですね。家計の所得は十八兆円減っているんです。一世帯あたり四十万円。ところが、企業のほうは十二兆円増えている。やっぱり、これが一番の問題です。

 武部氏は、「経済はよくなっている。中小企業と地方はこれからの問題になる」とのべました。

■郵貯の資金「民へ」は根拠なし 民営化は日米の大銀行の要求

 郵政民営化に関連して、岡田氏は「(サービスの縮小は)やむをえない」と発言。民営化により郵便貯金、簡易保険の資金が民間に流れるという問題が議論になりました。

 志位 いま、「民営化すれば民間に流れる」とおっしゃったけれど、これは根拠がないですね。

 たとえば、この四年間で大銀行はどういうふうに貸し出しをしているか。七十兆円、民間への貸し出しを減らしているんですよ。結局、四十兆円国債を買い増しした。

 ですから、経営形態を民営化したからといって、民間にお金が流れると(いうのは)、何の根拠もありません。

 私たちは、これ(郵政民営化)の一番の問題は、国民サービスの切り捨てになると。これは、大銀行がとっている行動をみれば、一番よくわかる。もうけにならないところから、店舗をどんどん撤退しています。四千も六年間で店舗を減らしてしまった。高い手数料を払わなければ、口座を置けなくなってしまう。こんなこと、国民のだれも望んでいませんよ。

 結局、この動きというのは、日本とアメリカの大手銀行筋からの要求です。結局、郵貯、簡保が自分たちより良いサービスで頑張っていると、商売の邪魔になる。これをつぶしてしまって、高い手数料を取り立てようと、あるいはリスクを押しつけようと、ここに一番の問題がある。絶対に反対です。

 冬柴氏は「国民の不安をあおる発言だ。外国のためではない」などとのべました。

■民営化でやっていけるのか――国会の議論で決着ずみ

 岡田氏は、「将来的には民営化」という方針で党内をまとめるか問われ「二年以内に結論を出す」とのべました。冬柴氏は、「金融部門は民間の銀行、保険会社でやっていける」とのべました。

 志位 民営化してやっていけるのだろうかというのは、国会の論議ではっきり結論がついているんです。

 政府が試算して二〇一六年の完全民営化の段階で、公社のままだったら千三百億円の黒字、民営化になると六百億円の赤字になると、預金保険料などいろいろ払うものが増えて結局赤字になると、竹中さんは答弁しているんですね。

 結局、民営化で赤字に突き落として、郵貯、簡保つぶし、庶民の大事な預け先をなくす。そして、大銀行や保険会社が食い物にしていこうと。高い手数料を取り立てたり、投資信託などのリスクの多い金融商品を買わせて、そしてそれを吸い上げていこうと、それが一番の問題だと思います。

■年金土台からたてなおす――消費税増税でなく、むだ一掃と大企業に相応の負担を

 年金制度をどうするかが議論になり、武部氏は共済年金と厚生年金の一元化を主張。岡田氏は、年金財源として消費税を3%引き上げることを明言しました。志位氏は年金一元化について問われて、つぎのようにのべました。

 志位 一元化は、国民年金と厚生年金を、いまの制度を前提にすると、業者の方に非常に重い負担を強いるか、サラリーマンの給付が下がるかという問題になってくるんです。

 私たちは、いまの年金の問題を、どこが問題かを原点に戻ってみますと、土台部分の国民年金ががたがたなことなのです。あまりにも、国民年金の額が少ない。平均四万六千円で、とても生きていけない。それと一千万人の方が年金の保険料がなかなか払えない。この空洞化が深刻なわけですね。

 ですから私たちは、最低保障年金をつくり、月額五万円からスタートし、すべての人に保障する。その上で掛け金に応じた給付を上乗せする(と提案しています)。

 財源は、消費税(引き上げ)は絶対やるべきじゃない。無駄な公共事業、軍事費、この浪費にメスを入れることとあわせて、やはり大企業に―いま大もうけをあげているわけですから―もうけ相応の負担を求める。それから、巨額な年金の積立金を取り崩す、計画的に取り崩す。こういうことでまかなっていくべきで、所得の低い方に重くのしかかる消費税を財源に充てるのは、絶対に反対です。

■少子化――働くルール確立、安心して子を産み育てられる社会を

 年金制度をめぐり、国民年金未納者の問題が議論になりました。

 志位 やはり、年金に対する信頼がない。とくに掛け金を払ってもいったいどれだけの支給があるのか、この見通しがない。(与党が)この前通した改悪年金法も、結局、際限なく負担を増やし、給付は減っていく。上限があります、下限がありますということでしたけど、上限もない、下限もない、際限なく増え、減っていくという、このしかけでは、国民のみなさんがまず信頼できる制度になっていないと思います。

 国民年金の層からいいますと、年金保険料額そのものが高くなってきている、高くて払えないという問題、この両方があると思います。

 一言いいたいのは、年金のことを考える際に、少子化の問題、年金の支え手のことです。年金を支えられるような社会の構造をつくらなくてはだめです。

 最近出た『厚生労働白書』で非常に印象深かったのは、四十七都道府県で、長時間労働の地域ほど少子化が進んでいる。正規雇用が少なく、非正規雇用が多い地域ほど少子化が進んでいる。ですから、働く権利、正規社員をふやし、均等待遇のルールをしっかりやって、若い人たちが安心して子どもを産み育てられる社会をつくらなければ、年金は支えられなくなります。

■自民、民主の二党党首討論――民主主義のあり方からおかしい

 民主党が自民党にたいして二党間の党首討論を申し入れたことについて、岡田氏は「政権選択の選挙だ。たくさんの党で議論したらぼける」と発言、武部氏は「他の党に失礼だ」とのべました。

 志位 (二党の党首討論には)異論がありますね。これは、それぞれの党が、それぞれの主張を持っているわけですから、それぞれの主張をたたかわせるという公平な討論会をやるべきであって、二党だけでやるというのは、じゃあ他の党はいらないのかと、国会にいらないのかと、共産党や社民党はいらないのかと。

 こんな話は、やはり民主主義の考え方からみて、受け入れられませんね。

■「たしかな野党」訴え、熱い手ごたえ

 最後に各党の選挙の目標が問われ、志位氏はつぎのようにのべました。

 志位 私たちは、十一のすべての比例ブロックで議席を確保し、増やすということを目標に頑張っています。かなり熱い手ごたえが返ってきています。「たしかな野党」日本共産党、この前進に日本の未来がかかっているということを訴えて、ぜひ前進、勝利したいと思います。