2006年1月9日(月)「しんぶん赤旗」

NHK「日曜討論」

志位委員長の発言(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が八日のNHK「日曜討論」で山本孝解説委員のインタビューに答えた発言(大要)は次の通りです。


■予算案

■国民負担増満載、大企業減税と無駄遣いは温存 

■抜本的な組み替えが必要

 山本 通常国会への対応ですが、どこにポイントをおいて政府・与党と対決していきますか。

 志位 まず予算案の問題です。今度の予算案を見ますと、定率減税を全廃する。そしてお年寄りの医療費の値上げ。ともかく国民の負担増が二兆七千億円と満載されています。一方で、大企業・財界に対する特別の法人税の減税は固定化する。港湾や空港のムダ遣いは温存する。こういう問題がありますから、国民いじめ、大企業や財界を応援する予算案の抜本的組み替えを強く求めていきたいと思います。

 山本 政府の方は歳出をかなり絞り込んで財政再建に向けて大きな一歩を踏み出したんだという評価ですけれど…。

 志位 絞ったものは例えばお年寄り向けの医療費の支出、あるいは義務教育への負担の問題。つまり国民のくらしの分野は絞りに絞ったと。しかし、例えば関空二期工事のような巨大空港、スーパー中枢港湾といわれる大型港湾、こういうところにはお金をじゃんじゃん流しているわけですから、これはやり方を変える必要がありますね。

■構造改革

■国民の命と安全脅かし、格差社会をひどくした 

■暮らし第一の政治への転換を

 山本 それから小泉「構造改革」ですね。これは総理が年頭記者会見でも、不良債権処理をした、景気も回復してきた、「改革」は成果が上がってきているんだと強調していましたが、この点は評価できませんか。

 志位 私は、小泉「構造改革」の有害な問題点がはっきり表れてきたのが去年の一年間だったと思うんですね。

 一つは、国民の命と安全を危険にさらすという問題です。JR西日本の大事故が起きました。それから耐震強度偽装事件が起きました。どちらも「官から民」、「規制緩和」ということで民間任せにしてしまう。そのことがもうけ第一、安全後回しという事態を生んだわけですね。

 もう一つは格差社会と貧困の広がりという事態を生んでいると思います。いま若い方の二人に一人はパート、派遣などの非常にひどい働かせ方をされて、月収十万円という非常な低賃金です。こういう問題がでてきた。

 ですから私は、いま政治のあり方として、財界のもうけを応援するために安全や命をないがしろにしていいのか、格差拡大に追いうちをかけていいのか、これが問われている(と思います)。やはり国民のくらし第一の政治への転換がいま求められていると思います。

■公務員削減

■国民全体にかけられた攻撃

■社会的連帯で反撃を

 山本 政府・与党はどうやら今度の国会を「行政改革」国会にしたいという考えのようですし、そのなかの中心に国家公務員を五年間で5%以上純減するというテーマがあります。この問題は当然反対ですか。

 志位 私たちも公務員の問題で、高級官僚の天下りや巨額の退職金、あるいは国家公務員の四割は防衛庁関係ですから、こういうところにはメスを入れるべきだと考えています。ただ、いま与党が進めようとしている公務員問題の対応は、別のところに狙いがあると私は思うんですよ。

 三ついいたいんですけど、一つはいま削ろうとしているのは、住民サービスの仕事をしている教育、福祉、安全、これに携わっている公務員を削ろうとしている。これはサービスの悪化になる。

 二つめは、公務員の給与を下げるということは、民間労働者の給与を下げることに連動してくるわけですね。官民で賃下げ競争をさせるというところに二つめの狙いがある。

 そして三つめに、公務員を削ってこれだけ痛みを負わせたんだから、今度は国民のみなさんに増税をという、増税への地ならしという狙いがあると思うんですね。

 公務員問題というのは、公務員にかけられた攻撃というだけでなく、国民全体にかけられた攻撃ですから、社会の連帯といいますか、国民的連帯ではね返していく必要があると思っています。

■靖国参拝

■「一つの問題」ではない 

■戦後世界の土台を否定するもの

 山本 外交、とくにアジア外交ですね。総理は年頭記者会見でも靖国神社参拝問題を外交問題にするのが理解できないと話していましたが、いまアジア外交をどうやって事態を打開していけばいいと思われますか。

 志位 これは「理解できない」というところが、本当に首相の資格が問われる問題だと思うんですね。

 やはり最大の問題は、靖国参拝を中心とする歴史問題で、日本(政府)が過去の侵略戦争に対する正当化につながる行為をしているというところにあると思います。

 靖国参拝というのはどういう問題かというと、あそこに遊就館という軍事博物館がありますが、“かつての戦争はアジア解放の正義の戦争だったんだ”という大宣伝をやっているわけですよ。そこに参拝するということは侵略戦争の正当化にお墨付きを与えることになるんだと、だからこれをやめるべきだと私たちはずっといってきました。

 首相は私との国会での討論のなかで、「靖国の考えと、政府の考えは違う」とまでいいました。「違う」なら参拝しないというのが道理のはずですけれども耳を傾けようとしない。

 そして(首相は)“一つの問題で全部壊すのがいけない”とおっしゃるでしょう。しかし、第二次世界大戦で日独伊がやった戦争は間違った侵略戦争だというのは、戦後世界の土台の問題でしょう。それを否定したら、これは“一つの問題”じゃない、まさに世界全体の秩序の否定になるわけで、そういう問題としてきっぱり中止の決断をすることが大事だと思います。

■イラク派兵

■米国いいなり、“出口戦略”なし

■すみやかな撤退をもとめる

 山本 それからイラクの自衛隊の問題ですね。いつ撤収をさせるかという出口戦略が焦点になっているわけですが、この問題はどう取り組んでいきますか。

 志位 私は、十二月に小泉さんと党首会談でずいぶんこの問題を議論しました。私は即時撤退を求めました。とくにいまイラクの情勢悪化の原因になっているのは米軍による武力弾圧路線で、それに加担する形で自衛隊がやることは本当に有害だと。しかも「非戦闘地域に限る」という政府の言い分も通用しなくなったから、すぐ撤退すべきだといいました。

 しかし首相の側からは、耳を傾けないこととともに、“出口戦略”がみえてこないんですよ。いったいどういう条件が整ったら撤収するんだといくら私が問いただしても、ともかく答えがないわけですね。では再々延長の可能性もあるのかと聞いても、可能性を否定しない。陸上自衛隊や航空自衛隊がもっと任務を拡大する可能性があるのかと(聞くと)、これも「検討する」と。イギリス軍やオーストラリア軍が撤収してしまった場合どうするかと聞いても「そのとき考えます」と。つまり“出口戦略”がまったくないですね。

 アメリカがよしというまでは派兵を続けるという、本当に主体性のない対応をとっている。ここを改める必要がある。速やかな撤退を強く求めていきたいと思っています。

■憲法改定

■草の根で広がる「9条の会」

■国民の多数が変えるなと声をあげよう

 山本 国民投票法案の扱いも含めて、憲法「改正」の動きにはどう対応していきますか。

 志位 私たちは、草の根からの国民的な憲法改悪阻止の多数派をつくる仕事にうんと力を入れたいと思っています。

 とくに大江健三郎さんや加藤周一さんたちがつくった「九条の会」ですね。一年半前に発足したわけですけれども、この間に草の根の世論と運動が広がり、職場、地域などでの「九条の会」が四千を超えました。この流れを大きく発展させて、国民の多数が九条を変えるなという声をあげれば、これは変えられないわけですから。このとりくみを前進させたいと思います。

■昨年は前進の足がかりをつかんだ

■今年は本格的前進の年に

 山本 共産党に対する国民の信頼は広がっていますか。

 志位 去年一年間で私たちは前進の足がかりをつかんだと考えています。とくに国政選挙では踏みとどまったこと、地方選挙では前進しています。ですから、今年は本格的前進に転じる年にしたいと思っています。