2006年2月2日(木)「しんぶん赤旗」

「小泉改革」の“偽装”と“粉飾”はっきり

CS放送 志位委員長が語る


 日本共産党の志位和夫委員長は一月三十一日放送のCS番組・朝日ニュースター「各党はいま」に出演し、米国産牛肉輸入問題、麻生外相の「天皇の靖国神社参拝」発言問題などについて語りました。聞き手は、朝日新聞の佐藤和雄企画報道部次長。


■BSE問題――小泉内閣全体の責任

 ――米国産牛肉輸入問題で中川農水相の答弁が混乱、「政府統一見解」で決着させようとしているが。

 志位 「政府統一見解」は、まったくごまかしの議論です。輸入再開を前に調査するという閣議決定は、「考え方」を示したもので「方針」ではないなどという詭弁(きべん)的な使い分けは、とうてい通用するものではありません。

 この問題の一番の根本は、輸入再開は、アメリカが二つの条件―(1)危険部位除去、(2)月齢二十カ月以下―を順守することを前提に行われたものでしたが、これが現実には守られていなかった。守られる保証も担保もなかった。アメリカにはこれを守るルールも体制もない。日本政府も、まともな検査をする姿勢がない。もともと二つの条件が空手形だったわけです。

 私たちは、全頭検査、全月齢の危険部位除去という日本と同様の安全基準が確保されるまで、輸入再開はすべきではないと主張しています。

 ――中川農水相の責任については。

 志位 (農水相の)資格がありません。辞任、罷免を求めます。閣議決定にも反することをやっていたわけですから。同時に、「政府統一見解」で農水相をかばったわけですから、小泉内閣全体の責任がいよいよ深刻に問われてきます。

■「改革」というが癒着と談合の体質温存

 ――防衛施設庁の「官製談合」もありました。「行革」という旗印を掲げながら、一枚皮をめくると官と業の癒着がずぶずぶ続いています。

 志位 小泉「改革」そのものが“偽装”であり、“粉飾”だったことが、この問題も含めた一連の問題ではっきりしました。「談合や癒着を排する」といいながら、道路公団に続いて、防衛施設庁も、トップクラスのところで深刻な談合がおこる。この体質にはまったくメスが入っていない。

 「官」と「業」の癒着に加えて、「政」との癒着も、日本経団連あっせんの献金がうんと増えている。「政・官・業」の癒着のトライアングルは、小泉「改革」でなくされるどころか、いっそうひどくなっています。

 小泉内閣は、かなり満身創痍(そうい)のボロボロになってきたという感を強くします。

■靖国問題――外相発言、首相答弁をめぐって

 ――麻生外相が、靖国参拝問題をめぐって、天皇陛下に参拝してもらうのが一番だとのべましたが。

 志位 天皇の靖国神社参拝を事実上求めた、非常に重大な発言です。天皇の靖国参拝は、いわゆる“靖国”派――靖国神社の歴史観、戦争観をまるごと正当化し、広めようという勢力――によって、ずっと唱えられてきました。

 「英霊にこたえる会」が、遊就館(靖国神社の軍事博物館)で上映しているビデオ「君にめぐりあいたい」では、「内閣総理大臣ならびに全閣僚、三権の長、そして天皇陛下がご参拝になられて、英霊の御霊(みたま)は鎮まり全国のご遺族の気持ちは安まる」と呼びかけています。

 総理大臣の参拝を、全閣僚と三権の長が勢ぞろいした行事に発展させ、さらに天皇も加わった一大国家事業にしよう。そのことによって、過去の戦争は「自存自衛」「アジア解放」の正義の戦争だったという、靖国神社の侵略戦争正当化の歴史観、戦争観を、いわば日本の国の公認の国論にしてしまおう。これが“靖国”派の一貫した主張です。麻生外相の発言は、そういう野望をもった“靖国”派の代弁者としての主張であり、重大な意味をもつものです。

 ――ブッシュ米政権内からも靖国参拝をめぐる懸念が最近頻繁に出ていますね。

 志位 私は、先日の代表質問(一月二十四日)で、ブッシュ大統領自身の発言、ハイド米下院外交委員長の書簡など事実をあげて、首相の認識をただしましたが、小泉首相は、「アメリカにもいろんな議論があるが、ブッシュ大統領からやめろとはいわれたことは一度もない。理解してもらっていると考えている」と答弁しました。

 しかし、最近、ある新聞がかなり突っ込んだ「米 『遊就館』を注視」(「毎日」一月三十日付)と題する特集をしました。そこでは、前駐日大使のハワード・ベーカー氏、東アジア外交の担当だったジム・ケリー前国務次官補、元国防総省日本部長のポール・ジアラ氏などが、そろって遊就館を問題にし、「あれはとても受け入れられない」とのべています。首相は、「批判しているのは中国と韓国だけ」という。これ自体が強い批判を呼び起こしているのですが、それにとどまるものではない。ことは対アメリカの問題、対世界の問題に発展しているのです。