2006年3月14日付「しんぶん赤旗」南関東版に掲載

福祉と暮らし、平和の願いを松川さんに

横浜市長選 志位和夫委員長の訴え


 十二日告示された横浜市長選挙(二十六日投票)は、松川康夫候補(64)=無所属新、日本共産党推薦=と現職の中田宏候補(41)=無所属、自民、民主、公明支持、ネット支援=との事実上の一騎打ちとなりました。同日、松川候補の応援に駆けつけた日本共産党の志位和夫委員長の訴え(要旨)を紹介します。

「中田改革」―破たんした「小泉改革」の横浜版

 四年前の市長選で、市議会の日本共産党以外の「オール与党」は前市長を推していました。

 中田さんは「私は無党派です」と言って、前市長に対して「惰性で決めた組織相乗り候補はけしからん」などと散々批判しました。ところが、二期目は平然と相乗り候補となる。市民への裏切りではないでしょうか。(「その通り」の声)

 国の政治をみると、小泉「改革」がずいぶんぼろぼろになってきましたね。(「なってきたねー」の声)

 耐震偽装事件は、建築確認という仕事を、「官から民へ」といって民間にまる投げした規制緩和路線がもたらしました。

 ライブドア事件の根っこには「貯蓄をやめて株の投資やれ」という金融の規制緩和があります。

 格差社会と貧困も広がっています。根っこには、労働の規制緩和があります。人間らしい労働の条件を壊して、派遣労働などを拡大し、正社員は減らす。財界や大企業の横暴を野放しにする規制緩和をやってきた。これが根っこにあります。

 私は、こういうときこそ、地方自治体の出番だと思うんです。住民の福祉と暮らしを守る、とくに弱い立場の方々の暮らしに手を差しのべて、社会的な格差をただす。これが、地方自治体の役目だと思います。

 ところが、中田市長は、「改革」と称して小泉「改革」に輪をかけた、弱肉強食の冷酷無情な政治をやってきました。

 まさに、「中田改革」は、破たんした「小泉改革」の横浜版です。

冷酷な福祉切り捨てストップ、横浜の福祉をとりもどそう

 私は今度の市長選で三つの大問題が問われていると思います。

 第一は、福祉を根こそぎ壊してきた冷酷な政治にストップをかけ、松川さんで横浜の福祉を取り戻そうじゃないかということです。

 中田市政になって、福祉、医療、子育て、暮らしのあらゆる分野で、横浜市の独自施策が次々と廃止・縮小されています。主なものだけ見ても、百施策、百億円も福祉のお金が削られました。

 バスや市営地下鉄などを無料で乗車できる「敬老パス」はすべてのお年寄りに届けられていましたが、今三人に二人にまで縮まってしまいました。

 介護援助手当は、多くの方が介護保険の高すぎる利用料を払う命綱にしていました。これを取り上げて、約一万二千五百人いた受給者が、現在百十六人まで、99%以上から取り上げてしまいました。

 みなさん、切り捨てられたのは、お金だけではありません。

 二つの制度には、お年寄りに元気で長生きしてほしいとの市民の思い、介護で大変な家庭はみんなで支えあうという「福祉の心」が込められていました。この「福祉の心」を投げ捨てた中田市長の責任は、きわめて重いと言いたいのです。(大きな拍手、「そうだ」の声)

 昨年四月、保育料の値上げが強行され、市民税非課税の家庭からも新たに保育料を徴収するというまったく血も涙もない値上げがやられました。

 保育料の負担増だけではありません。中田市政は、三年間で十二の公立保育園を民営化する計画を進め、すでに八つを民営化しました。

 『週刊東洋経済』という経済誌が昨年十二月号で「保育園が危ない 実験台に乗せられた練馬・横浜の子どもたち」という記事を載せました。

 この記事によると、ある民営化された保育園では、民営化の初日に子どもがけがにあう事故が起きた。ロッカーが倒れて子どもが鼻の骨を折ってしまった。ところが、保護者の緊急連絡先を保育園が把握してなかった。さらに、別の民営化された保育園では、民営化された初日に給食が一品減らされていた。保育園から帰ってきた子どもが「おなかが減った、減った」と言うのでわかったそうです。

 今度の市長選は、地方自治体の基本が問われています。お年寄りにたいする、福祉の心を投げ捨て、子どもを「実験台」にするような民営化を平気でやり、心が痛まない。こんな市政は変えなきゃなりません。(「そうだ」の声)

 お年寄りも子どもも、安心して未来に夢や希望をもって暮らせる横浜市を、松川さんの手でつくってもらおうじゃありませんか。(大きな拍手)

自治体の仕事を放棄した「市政改造」の「三つの原則」

 なぜこういう「中田改革」がまかり通るのでしょうか。中田市長が予算編成のたびに出している方針書をみると、「市政改造」のいわば「三つの原則」が公然とのべられています。

 第一の「原則」は「国、県基準に上乗せしている事業は見直す」。つまり、国や県以上の仕事はやらないということです。

 第二の「原則」は「他都市の水準と比較し、サービス提供水準が高くなっている事業は見直す」。他都市よりも良いことはやらないということです。

 しかしみなさん、国や他都市がやっていなくても、その地域の住民の暮らしにとってどうしても必要な事業だったら、独自にも仕事をやってこそ自治体と言えるんじゃないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)

 そして、第三の「原則」は「提供する全てのサービスについて、コストに応じた適正な負担という観点から見直す」。平たくいうと、介護の重い方、障害の重い方には、当然たくさんのコストがかかるので、たくさんの負担をしていただきましょうという「原則」です。

 本当の福祉の原則とは何か。それは、負担は負担能力に応じ、給付は必要に応じて行うことです。(拍手)

 中田市長の「三つの原則」には、「福祉の心」がまったくありません。本当に、人間が人間として尊重される市政を、松川新市長の手でつくっていこうではありませんか。(大きな拍手)

巨大開発つづけ、日産に大盤ぶるまい―この「逆立ち」ただそう

 第二の争点は、福祉を削る一方で、前市長と「オール与党」が推進してきた巨大開発には指一本ふれずに推進してきたという問題です。

 四年間で、「みなとみらい21地区」「本牧・南本牧の巨大ふ頭」「高速道路関連」の三つの事業だけで二千億円以上をつぎ込みました。

 さらに、日産自動車の本社が、「みなとみらい21地区」に移転してくる前に、市長は「企業立地促進条例」を議会に持ち出し、「オール与党」の賛成で成立させました。

 この条例は、日産には巨額の助成金と減税を行う、移転先の土地を造成費用の半額近くで売却する、さらに、横浜駅東口から日産本社をつなぐぺデストリアン・デッキ(歩行者専用陸橋)までつくる。こうして合計で百四億円もの大盤ぶるまいを、大もうけをしている日産にしようとしているのです。(「ひどい」の声)

 百四億円といったら、どんな額でしょう。保育園の民営化で「節約」したという予算は約二億七千万円。敬老パス有料化で減らされた予算は約十億三千万円。介護手当の事実上の廃止で約八億五千万円の削減。三つあわせても二十億円です。その五倍ものお金を、日産に提供しようとしているのです。

 松川新市長で税金の使い方の「逆立」ちをあらためさせようではありませんか。(大きな拍手)

基地強化反対、憲法九条守る平和の願いを松川さんに

 第三の争点は、基地のない横浜・神奈川、憲法九条をまもる平和市政を松川さんとともに打ちたてようということです。

 原子力空母の横須賀への配備は横浜市民の安全にとっても大問題です。配備が予定される原子力空母が積んでる原子炉は美浜原発1号炉と同じ出力をもっています。船の上に積まれている原子炉は普通の原子炉よりはるかに危ないと言われています。しかも、軍事機密のベールに包まれて国民の監視の目がまったくおよびません。

 大事故が起きたら横浜にも東京にも死の灰が降ってくる、こういう事態を許していいのかという大問題です。

 ところが、中田市長は、原子力空母の乗組員のための米軍住宅を池子に建設することについて「反対しても建つものは建つ」といって受け入れた。原子力空母配備についても「口をはさむつもりはない」と言っています。

 みなさん、これが横浜市民の命と安全に責任をもつ市長の言う言葉でしょうか。こんな情けない姿勢をとっている市長は全国でもまれです。

 松川さんは、断固反対だと主張されています。

 全国一大きな政令市、三百五十八万人の代表である市長の発言はとても重い。

 みなさん、基地のない平和な神奈川、横浜、憲法九条を守れという平和への思い、こぞって松川康夫さんへとお寄せください。(大きな拍手、声援)