2006年6月18日(日)「しんぶん赤旗」

日米軍事同盟の侵略的変質はどこまできたか

全国革新懇25周年

志位委員長の記念講演(詳報)


 日本共産党の志位和夫委員長は十七日、全国革新懇結成二十五周年・第二十六回総会で「日米軍事同盟の侵略的変質はどこまできたか」と題して記念講演をしました。

結成25周年――革新懇運動の正しさは歴史によって証明された

 志位氏は「二十五年前にこの運動をおこしたことが、どんなに先駆的な意味を持っていたか」として、(1)革新懇運動そのものの目をみはる発展(2)革新懇運動が誕生した直接の契機となった「社公合意」路線がたどった道――の二点から詳しく述べました。

 運動の発展として、全国で七百四十九の草の根組織がつくられ、この十年間でその数が倍増したことや、多くの文化人、知識人との対話と共同の広がりを述べました。

 一九八〇年に社会党と公明党が、共産党排除、安保・自衛隊肯定の政権合意を結んだ「社公合意」路線では、公明党も社会党も結局、自民党と連立という事態に立ち至りました。志位氏が「ここに『社公合意』路線がいかに未来のないものだったかが示されています。革新懇運動の正しさは、四半世紀の歴史によって証明されました」と述べると、会場から拍手が送られました。

国民要求とともに「三つの共同目標」をかかげて

 志位氏は、革新懇運動の魅力、発展の原動力として、(1)草の根から国民のあらゆる要求を掲げ、実現をめざして共同を広げる(2)そういう運動と結びつけて、国政を変える「三つの共同目標」(別項)を掲げ、国民多数の合意をかちとる――の「二つの仕事」を、つねに統一的に追求してきたことをあげました。

 とくに「三つの共同目標」のなかでも、「日米安保条約をなくし、非核・非同盟・中立の平和な日本をめざします」という目標は、いわばかなめをなす目標であり、二十一世紀の日本の進路をめぐる最大の対決点でもあると強調。「日米軍事同盟の侵略的変質はどこまできたか」を主題に話をすすめました。

日米軍事同盟の侵略的変質――その三つの段階

 志位氏は、安保条約が改定されてから今日までの四十六年間を概観したとき、日米軍事同盟の体制が、三つの段階にわたって侵略的変質をたどってきたと指摘しました。

「日米共同作戦」の本格的具体化の開始

 第一の侵略的変質は、七八年の旧ガイドライン(日米軍事協力の指針)策定による「日米共同作戦」の本格的具体化の開始です。

 旧ガイドラインでは、安保条約にも規定のない「武力攻撃がなされるおそれのある場合」にも、日米共同作戦をおこなうことを規定。安保条約には「極東の平和のため」という名目で在日米軍に基地を貸すことしか書いていないのに、「極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合」に日米両国が軍事的に協力することを明記し、安保条約のとりきめを二重にのりこえる実質改定に踏み出しました。

 こうした中で、日米共同演習は年間三十日間(七八年度)から、年間のべ三百三十一日間(二〇〇四年度)へと常態化。「日米同盟」という言葉も外交文書の中で初めて登場し、日本の「防衛区域」は領土、領海、領空としていた従来の立場から大きく拡大され、西太平洋の「防衛分担」にまで踏み出しました(一九八一年、鈴木・レーガン共同声明)。

 志位氏は、全国革新懇が誕生したのが、第一の侵略的変質の最中だったことをあげ、「この時期に『安保条約解消』の旗印を高く掲げて誕生したことの歴史的意義はきわめて大きい」と強調しました。

日米軍事共同の枠組みが「アジア太平洋」全体へ

 第二の侵略的変質は、「日米安保共同宣言」(九六年)、新ガイドライン(九七年)、周辺事態法(九九年)などにあらわれた動きです。

 ここでは、日米軍事共同の枠組みが、一気に「アジア太平洋」の全体へと広がりました。日本共産党は、周辺事態法をアメリカの海外での先制攻撃の戦争に自動的に参戦する法律――戦争法とよんで大反対闘争を展開しました。

 それでも周辺事態法は、安保条約をかろうじて根拠にしていました。

「世界の中の日米同盟」へ

 第三の侵略的変質は、テロ特措法に基づく海上自衛隊艦隊のインド洋派遣(二〇〇一年)、イラク特措法に基づくイラクへの自衛隊派兵(〇三年)から、今日の「米軍再編」につらなる波です。

 テロ特措法もイラク特措法も、法律の中には安保条約という言葉は全くなくなりました。小泉首相が根拠にしたのは「日米同盟」の四文字でした。どんな軍事同盟も条約上の義務と権利でつくられているのに、「日米同盟」というだけで、地球の果てまで米軍につきしたがうというものです。

 六月下旬に予定している日米首脳会談では、共同声明で「世界のなかの日米同盟」を明確に位置づけて打ち出すと報じられています。

 志位氏は、安保条約では、日本への武力攻撃の場合にだけ限定されていた「日米共同作戦」が、いまや全世界へと拡大したとして「アメリカの戦争に世界のどこであれ無条件に協力する――ここまで米国への従属は無法で異常なものに膨れ上がったのです」と告発しました。

「日米同盟の新たな段階」――その三つの要素

 志位氏は「世界のなかの日米同盟」路線の具体的な内容として、次の三つの要素を詳しく述べました。

 第一の要素は、日米が「世界における共通の戦略目標」を持ち、世界のどこでも先制攻撃の戦争がおこなわれたら、日米が軍事共同をおこなうということです。

 第二の要素は、日米の「共通の戦略目標」を実現するために、米軍と自衛隊が軍事的に一体化し、海外での共同作戦を可能にする態勢をつくりあげることです。

 第三の要素は、沖縄での海兵隊の新基地建設をはじめ、在日米軍基地を、米国の先制攻撃の戦争の最前線の基地として飛躍的に強化することです。

「長い戦争」をともに戦う――この世界戦略への従属は危険きわまりない

 そのうえで志位氏は「日米軍事同盟の第三の侵略的変質が、アメリカのどういう世界戦略のもとですすめられているか」と問題提起。〇六年の冒頭から米政府が相次いで公表した外交軍事戦略の重要文書(大統領一般教書演説、「四年ごとの国防計画見直し」=QDR、二〇〇六年国家安全保障戦略)のすべてで強調されていることが二つあることを力説しました。

 一つは、米国が「長い戦争」(ザ・ロング・ウオー)のさなかにあるという世界認識です。

 もう一つは、同盟国をこの戦争に引き入れるということです。

 米国は、イラク侵略戦争で手ひどい失敗と打撃を受けましたが、その覇権主義、帝国主義の世界戦略を変えようとしません。それどころか、「長い戦争」を戦うには、米国一国の力では足らず、この戦争を一体になって戦う同盟国が必要だ――。こういう路線を打ち出したのです。

 志位氏は、この流れのなかで日米同盟の侵略的強化の第三の波がすすめられていることを示し、「恒久平和の憲法をもつ国が、『長い戦争』=『恒久戦争』をすすめようとする国とともに地球規模での戦争にのめり込む――こんなことは許されるものではありません」と批判しました。

日米軍事同盟と日本国民との矛盾、国民のたたかいの広がり

 第三の侵略的変質の波のもとで、日米軍事同盟体制と国民の矛盾は、限界まで激しくなり、これまでにない広範な人々が現状の打開を求めて、立ちあがりつつあります。

 志位氏は「ここに今日の情勢の激動的な特徴があります」として、(1)憲法改定と教育基本法改定に反対するたたかい(2)米軍再編に反対するたたかい(3)日本経済へのアメリカの介入に反対するたたかい――の三分野での広がりを詳しく述べました。

 日米同盟の侵略的変質と結びついた憲法改定の動きに対しては、草の根でつくられた「九条の会」が全国で五千を超えました。憲法改定と一体となった教育基本法改定のくわだてとのたたかいでも、労働組合の立場を超えた共同が各地で広がっています。

 米軍再編に反対する自治体ぐるみのたたかいは、一部に曲折もありながらも、力強い前進があります。沖縄では、県民の七割以上が新基地建設に反対の声をあげ、岩国基地を抱える岩国市、キャンプ座間を抱える座間・相模原両市などでは保守を含めた大同団結がつくられています。

 志位氏は、こうしたたたかいで革新懇運動が大きな役割を果たしたことにも触れながら、国民多数の結集をはかるたたかいの発展のための尽力を心から訴えました。

直面する熱いたたかいを発展させながら、安保廃棄の多数派をつくる努力を

 そのうえで志位氏は、直面する熱い問題で要求にもとづくたたかいを前進させながら、「日米軍事同盟の侵略的変質はどこまできたか」を大いに語り、この根源にある仕組み――安保条約の廃棄を求める国民の多数派をつくりあげる努力の重要性を強調。「この仕事をすすめるうえで、政党では日本共産党、統一戦線運動では全国革新懇の果たす役割はたいへん大きい」と訴えました。

 安保条約をなくせば、どういう日本が開けるかの展望を詳しく語り、「この国政革新の中心課題で、全国革新懇が大きな役割を果たすことを心から願っています」と呼びかけ、大きな拍手を受けました。


全国革新懇の「三つの共同目標」

 (1)日本の経済を国民本位に転換し、暮らしが豊かになる日本をめざします。

 (2)日本国憲法を生かし、自由と人権、民主主義が発展する日本をめざします。

 (3)日米安保条約をなくし、非核・非同盟・中立の平和な日本をめざします。