2007年4月3日付「しんぶん赤旗」に掲載

都知事選・新宿西口の街頭演説

志位委員長の訴え(要旨)


 日本共産党の志位和夫委員長が二日、東京・JR新宿駅西口でおこなった演説(要旨)は次のとおりです。


マスメディアも認めた吉田さんの魅力と実力

 吉田万三候補への支持が日増しに広がっています。「読売」(三月二十五日付)は「ソフトな表情から舌ぽう鋭く都政の問題点を指摘し、一歩も引かなかった」と伝えました。「毎日」(三月二十九日付夕刊)は、吉田さん作の川柳「税金は 庶民のくらしに ドラえもん」(笑い)を、「最も論点が明快」「有権者の気分の代弁」と講評しました。メディアも魅力と実力を認める吉田さんへの支持を、残る六日間広げに広げ、知事に押し上げようではありませんか。(拍手)

「大義の旗」が選挙戦を大きく動かしている

 選挙戦の特徴は、吉田候補と「革新都政をつくる会」が掲げた「大義の旗」が選挙を大きく動かし、リードしていることにあります。

 石原慎太郎候補はビラで「少しは反省してよね! だけどやっぱり石原さん」などと言い訳です。傲岸不遜(ごうがんふそん)の言いたい放題だった石原知事を、ここまで追いつめたのは、吉田さんと都民のみなさん、共産党の追及の力です。(拍手)

福祉と暮らし――吉田さんの「プラン」に各候補も「福祉」言い出す

 政策論戦での吉田さんのリードも鮮やかです。

 第一に、福祉と暮らしの問題です。吉田さんの「福祉・子育て・くらし充実 緊急4か年プラン」が選挙を大きく動かし、他の候補もにわかに「福祉」をいいだしました。

 石原知事は選挙ビラで「所得格差の是正をはかりつつ、中学3年生までの医療費負担をゼロにします」と宣伝しています。石原知事といえば、格差も、それを是正する必要も認めてこなかった人物。フリーターを「ごくつぶし」といい、「何がぜいたくかといえば、まず福祉」と福祉切り捨てを自慢してきたではありませんか。その人が、こうした公約をいわざるをえなくなった――吉田さんの主張が、知事になる前から都政を動かしています。(「そうだ」の声、拍手)

 一方で石原知事は、「(福祉予算は)最大の規模だ」などと言い訳を始めました。

 しかし、福祉については、予算を組んでも使い残しが多いのが石原都政の特徴です。決算の数字で見れば、福祉保健費(二〇〇五年度)は、知事就任時より四百五十億円も減ったのは動かせない事実です。寝たきりのお年寄りへの福祉手当は廃止、老人医療費助成も廃止、シルバーパスは全面有料化と福祉を削りに削ってきた事実は、百万言の言い訳をもってしてもごまかせません。「にわか福祉」の石原候補に都民の暮らしは託せません。

 宮城県で石原知事と同じ福祉切り捨てをやりながら、「本籍地は福祉」という浅野史郎候補にもまかせられません。足立区長の当時、乳幼児医療費無料化を小学校就学前まで拡充して評判をよんだ実績をもつ吉田候補で、都政に「福祉の心」をとりもどそうではありませんか。(拍手)

巨大開発への暴走を止められるのは吉田さんだけ

 第二に、税金のムダ遣いの問題です。石原候補は、選挙戦の最大の目玉に「オリンピック」を据える作戦でした。それが選挙になると、巨大開発や築地市場の移転が大問題になり、「最優先課題といったことはない」とだいぶ弱気になっています。

 浅野候補は、当初は「立ち止まって考えます」と主張していましたが、「オリンピックは中止します」と公約を変えました。ここでも吉田候補の「オリンピックを口実にした巨大開発のムダ遣いはやめよ」という主張が選挙を動かしているではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 もちろん石原知事は、オリンピックをあきらめたわけではありません。すでに三つの環状線整備や一千億円のため込みを今年度予算に盛り込み、オリンピックを口実にした総額八兆五千億円もの巨大開発の道にのりだしています。この無謀な道を止めるかどうかが一番の問題です。

 浅野候補は、宮城県知事時代に大型開発のムダ遣いで借金を倍にした“実績”をもつ人。「借金ではなく住宅ローンと同じだ」(笑い)と居直っています。「船のこない港」のための借金を、「住宅ローンと同じだ」といってのける反省のない人に、ムダ遣いは止められません。(拍手)

 吉田さんは足立区長時代、ホテル建設というムダ遣いをストップさせた実績をもちます。吉田さんで、巨大開発への暴走をとめ、「暮らし第一」の都政への転換をかちとろうではありませんか。(拍手)

九条守れの声を東京から世界へ発信しよう

 第三に、憲法と平和の問題ではどうか。

 吉田さんが「憲法を都政の基本にすえる」といいつづけていることの重みがいっそう切実になっています。

 安倍首相は、選挙と同時並行の国会で、憲法九条を変えるための改憲手続き法案を、何が何でも強行せよと号令をかけています。

 そして、事態をより深刻にしているのは、首相が「従軍慰安婦」問題について、「慰安婦の強制連行を裏付ける証拠はなかった」と発言し、下村官房副長官にいたっては、「従軍慰安婦というものはいなかった」とまでのべたことです。

 米ワシントン・ポスト紙は社説で、「安倍首相のごまかし――北朝鮮による日本人拉致犠牲者には熱心だが、日本自身の戦争犯罪には目をつむる」と書きました。首相は、拉致問題の解決のうえでも、歴史をゆがめる発言はやめるべきです。国会の場で「謝罪」を表明した以上、誤った発言を撤回し、下村副長官は罷免すべきです。(「そうだ」の声、拍手)

 戦争に反省のない勢力が、憲法を変えて軍事で海外に打って出る。こんなに恐ろしいことはないではありませんか。候補者のなかで憲法九条を守ると堂々と主張しているのは吉田さんだけです。憲法九条を守れの声を、吉田さんに集中し、首都・東京から世界に向けて平和のメッセージを発信しようではありませんか。(大きな拍手)

石原氏と浅野氏に「対決」の中身なし

 マスメディアなどは「石原・浅野対決」などといいますが、どの問題でも対決の中身はありません。石原知事を応援する自民党も、浅野候補を応援する民主党も、都議会では公明党とともに「オール与党」仲間だからです。

 そのせいか、はじめは応援の仕方もこそこそしていましたが、ここにきて、石原氏も浅野氏も、公然と自民党、民主党に応援を求めました。しかし、それが新しい大変な矛盾を引き起こしています。

 浅野候補は「『日の丸・君が代』については強制的な対応をあらためます」とのべています。しかし、「日の丸・君が代」を子どもたちと教師に強制し、従わない教師を処分せよと要求してきたのは都議会の自民党とともに民主党ではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 浅野候補は「オリンピックは中止します」といいますが、「英知をあつめて成功を」と賛成討論までして推進しているのが、自民党・公明党とともに民主党ではないですか。

 さらに、浅野候補は、「情報公開をおこないます」といっていますが、共産党都議団が繰り返し政務調査費の領収書の公開を提案しても、ことごとく否決・先送りし、全国情報公開度ランキングで、政調費では、東京を全都道府県で唯一、「零点」という最低の評価にしてしまったのも、自民党・公明党とともに民主党ではないですか。(拍手)

 浅野候補のこれらの公約が本気のものであるなら、民主党に支援をお願いするのではなく、支援をお断りするのが筋ではないでしょうか。(「その通り」の声、大きな拍手)

 選挙の対決の真の構図は、二つに分かれた「オール与党」陣営と、都議会で唯一の野党を貫く日本共産党と無党派の方々が共同して推薦する吉田さんとの一騎打ちの対決です。福祉と暮らし、ムダ遣い一掃、憲法と平和の願いを一つに合流させ、吉田万三さんを知事に押し上げようではありませんか。(大きな拍手、歓声)