「兵庫民報」2007年2月号外に掲載

兵庫から日本共産党躍進の大波を

2・18演説会での志位委員長の演説(大要)


 兵庫県のみなさん、こんにちは。ご紹介いただきました志位和夫でございます。今日は、こんなに広い会場いっぱいに、たくさんのみなさんが私どもの演説会にお運びくださいまして本当にありがとうございました。

 いっせい地方選挙、参議院選挙が目前に迫ってきましたが、兵庫県から、日本共産党の躍進の大きな波を起こしていただきたいと、今日はお願いに上がりました。最後までよろしくお願いいたします。(拍手)

国政をめぐる争点──国会質問から

 まず、国政の問題ですが、私は、先日、国会で、代表質問と、予算委員会の総括質疑にたちまして、いまの国の政治の中心的な争点について、つっこんで、政府の立場をただしました。

貧困と格差のひろがりは子どもたちにまで

 まず暮らしの問題ですが、私たちがいま、一番力をいれているのは、国民の中で広がっている、貧困と格差を打開する問題です。私は、質問で、三つの角度からこの問題をただしました。

 第一は、貧困と格差の実態を、安倍首相はどう認識しているのかという問題です。いま国民の中に広がっている貧困というのは、一部の方の問題ではありません。国民だれもが、ちょっとしたきっかけで、“板子の一枚下は地獄”という言葉もありますが、貧困に落ち込む危険、不安を抱えながら、暮らしていらっしゃる。国民のあらゆる層、あらゆる世代を捉えて、貧困がいまこの日本でひろがっています。お年寄りの中での貧困も深刻ですし、若いみなさんの中での貧困も深刻ですが、私がこの前、予算委員会でとりあげたのは、子どもたちの中で、貧困が広がっているという問題です。修学旅行にもいけない、給食代もなかなかはらえない。文房具代もなかなかだせない。そういう所得の低いご家庭で暮している子どもたちが、増えている。この問題を取り上げました。

 今日は、私が国会でつかったパネルを何枚か、持ってまいりまして、見ていただきたいんですが、まずこれをご覧下さい。これは、OECDという先進国があつまっている経済協力開発機構という機構があるんですが、これが去年四月に、日本に対する報告書を出したんです。そのOECDの資料からつくった、グラフです。これは働いている母子家庭・一人親家庭で、貧困ライン以下のご家庭で暮している子どもの割合です。これみますと、一番左が日本ですが、赤い棒ですね、ダントツ高い57・9%の子どもが貧困な家庭のもとで暮している。サミットの諸国がありますけれども、アメリカ40・3%。カナダが27・7%。イギリスが20・6%。ドイツが15・3%。イタリアが13・4%。フランス9・6%。こういうところと比べますと、日本が六割近いというのは、まったく異常な事態というのが、一目瞭然になってまいります。

 この前、NHKで「ワーキングプア」─働く貧困層の特集のテレビ番組をやりました。これは連続的に放映されましたが、二度目の放映の中で、とりわけ私の胸に刺さったのは母子家庭のお母さんの状況でした。二人の小学生の子どもを育てながら働いている母子家庭のお母さんの話ですが、昼と夜二つのパートを掛け持ちして働いている。昼のパートだけでは、時給が650円程度しかありません。ですから手取りが、7万円にしかならず、結局夜も働かなければならない、仕事の掛け持ちになりました。母子家庭の多くは、“ダブルワーク”というのがほとんどです。ですから、夜の仕事が終わって家に帰るのは真夜中の二時、睡眠時間は四時間という生活が映し出されていました。そのなかでお母さんが、「あと十年がんばれば、自分の身体がぼろぼろになっても、子どもたちは巣立つ」と、言った言葉が、私の胸に刺さりました。

 私は、代表質問と、予算委員会の2回の質疑で、この具体的な事実を安倍首相に示して聞きました。「シングルマザーが、わが身を犠牲にしなければ、身も心をぼろぼろにならなければ、子どもが育てられない、そんな社会がまともな社会と言えますか」。私は、本会議と予算委員会で2度聞きましたけれども、首相からはまともな答えは、かえってきません、そう聞かれたら“志位さんの言うとおりです。日本はまともな社会とはいえません。いまこそ政治の出番です”と言って支援をおこなうのが、まっとうな総理大臣ではないでしょうか。(拍手)

 ところが首相に聞いても、「まともな社会とは言えない」とは、言わないんですね。そればかりか、私が作った、このパネルにけちをつけ始めまして(笑い)、OECDの報告書は「根拠が不明」でありますなどと、言いました。私は、質問の中でも、そんな言い分とおりませんよと反論しましたけれども、根拠は日本政府のデータなんです。OECDというのは加盟各国の政府にデータを求めて、それをもとに、このグラフ作っているのです。ですから「根拠が不明」といったら、日本政府が不明になって、そんなことも知らない不明を恥じるべきだと、私は、言いたいと思います。(拍手)

 私が、質疑で感じたのは、誰が見ても、母子家庭の6割が貧困というのは異常でしょう。これを「まともな社会ではない」とは言えない。国際機関から指摘されても、母子家庭の切実な実態を突きつけられても、日本で広がっている事実すら認めようとしない。これがいまの政府です。

 現実を見ようとしなければ、どんな対策もムダですよね。「再チャレンジ」と言ったって、現実が見えていない人に、そして見ようとしない人に、どんなきれいごとを言われたって、これはむなしいばかりだと、総理大臣失格だと、私は言いたいと思います。(拍手)

国の予算のあり方──税金と社会保障で貧困を減らすことこそ

 第二の問題は、そういうなかで、国の予算のあり方が、これでいいのだろうかという問題を私はただしました。貧困と格差が広がりましたら、税金と、社会保障によって、所得の再配分を行う、つまり、お金持ちの方から、所得の少ない方に、お金を移して、格差を是正する、これが、予算の役割のはずですね。それでは日本の予算は、貧困を減らす方向で、仕事をしているのか、これがつぎの問題になります。

 私がOECDの報告書を読んで、驚いた数字がもう一つあります。それをこの二枚目のパネルにして、国会に出しました。これは、税金と社会保障による、所得の再配分で、子どもの貧困率が、上がるか下がるかのグラフなんです。この青い棒が、サミット諸国ですが、みんな貧困が下がってますでしょ。アメリカも、4・9%さがってます。カナダも7・5%、ドイツは9・0%、イギリスは12・9、フランスは20・4%、みんな税金と社会保障で、貧困を下げてます。これはあたりまえですね。

 ところが一番左見てください。日本だけ、上の方に突き出ているでしょう。日本は、税と社会保障によって、貧困が、少なくなる方向に行かない、逆に貧困が増えている。OECDの報告書はこんな国は、先進国で日本しかないと、厳しく指摘しています。1・4%増えてます。子どもの数になおしたら30万人以上ですよ。30万人以上の子どもが、税金と社会保障のおかげで、貧困ライン以下につきおとされている。これほど日本はひどい事態になっている。いかに、所得の少ない人にとって、税金と社会保険料が、負担が重く、給付が薄いかを示していると思います。

 私は、このパネルを出しまして、安倍さんに、“総理どうですか、これは逆立ちしてますね、異常な予算だと思いませんか”と、聞きました。安倍首相は答えられなくなりました。そして、あのとんでもない暴言をしました柳沢さんという厚生労働大臣が(笑い)、代わりに答弁にたって、こういいました。「志位さんが出したパネル、仮にそうだとしても、そのあと少し改善したんです」というんです。よくもこういうあつかましい答弁をするなと、やっぱりやめていただくしかないと(拍手)、私はそう思いました。だってみなさん、そのあと改善どころか、この数字は2000年の数字ですけど、たとえば、母子家庭に対する児童扶養手当をけずってきた。来年にはまたそれを半減しようとしているじゃないか。私がそう言いましたら、柳沢大臣が何と言ったか。「半分は保障します」というんです。「半分は保障する」というのは、半分削るってことじゃありませんか(笑いと拍手)。こういうことを言うわけですね。

 予算が逆立ちしている。これは子どもだけの問題ではありません。来年度予算を見ると、たとえば、定率減税を廃止して、住民税、所得税を増税する。さらに生活保護の老齢加算を廃止したうえに、母子加算も廃止する。そうやって庶民に対しては、生活を痛めつけるひどい、負担増を強いながら、史上空前のおおもうけを上げている財界・大企業に対しては、法人税をもっと減らす。大企業・大金持ち減税をやって1・7兆円もの大判振る舞いをやる。予算が、所得の高い人から低い人にお金を移すというんじゃなくて、低い人から高い人に、吸い上げる逆の役割を果たしている。これが日本の予算の大問題であって、日本共産党はこの逆立ちただせということを、強く主張しております。(大きな拍手)

人間らしい労働へ最低賃金の抜本的引き上げを

 第三は、人間らしい労働のルールを作れという問題です。貧困と格差の広がりの根本には、労働の現場が、あまりにも、人間らしく働けるルールがなく、モノのように使い捨てにされている。パートやアルバイトや派遣や請負、不安定な働かせ方をさせられている方が、若い方や、女性の2分の1、労働者全体の3分の1まで広がりました。

 そのなかで私たちは、今度の国会で、一つの新しい問題提起をいたしました。それは、最低賃金を抜本的に引き上げて、全国一律の制度にすべきだという提案であります。いまの日本の最低賃金というのは、47都道府県別に決まっていて、平均しますと時給でわずか673円です。673円というのは、仮に年間3000時間、一日12時間、過労死ラインを上回るような働き方をしたとしても、年収は200万円にしかなりません。つまり、過労死を選ぶのか、貧困を選ぶのか、どっちか選べというのが、いまの日本の最低賃金ですから、こんな現状をそのまましておいていいはずが、けっしてありません。(拍手)

 もう一枚、3枚目のパネルですが、これは、労働者の平均的所得に対する最低賃金の比率のパネルなんです。赤い棒が日本で32%。いちばん低いでしょう。だいたいヨーロッパでは、フランス、オランダなどは5割を超えてますし、イギリスやカナダも4割台です。そして、いまヨーロッパではどの国も平均的所得の5割をこえる最低賃金をめざし、さらに6割にしようと、こういうことをやってきているのです。いちばんひどいのはアメリカですが、アメリカも最近、この緑の部分ですが、大幅な最低賃金の引き上げを決めまして、4割台に入っていきますから、32%なんていうのは日本だけです。

 私は、安倍首相に提起いたしました。国際標準では、その国の平均的な所得の、半分以下が貧困ラインになります。ならば最低賃金はどこを目標にすべきでしょうか。半分を目標にすべきですね。つまり最低賃金で働いても、貧困にならないというのを目標にすべきだ、5割を目標にすべきだというのが、あたりまえの考え方ではないでしょうか。(拍手)

 日本も、最低賃金を、今は平均的所得の32%ですが、少なくとも、5割を目標にする。時給にしたら千円です。千円でもまだまだ少ないですけど、それを目標にして、抜本的な引き上げをはかるべきだというのが、日本共産党の提案であります。(拍手)

 安倍総理の答えは、“せっかくの提案ですが、こういうことをやると、中小企業の経営を圧迫するので、非現実的でございます”と拒否する答弁をしました。私は、安倍さんに中小企業のことを言って欲しくないです。中小企業にどんなことをしてきましたか。中小企業を圧迫するっていうんだったら、単価の買いたたきなど、下請けいじめの横暴を放置してきた政治の責任は一体どこにあるのか。タクシーの規制緩和をやって、中小のタクシー会社を経営難に追い込み、いまタクシー労働者の賃金は、最低賃金以下になってしまっているような県もあるくらい、ひどい状況です。こういう規制緩和で、中小企業いじめをすすめた責任はどこにあるのか。さらに大型店を野放しにして、地元商店街を荒廃させてきた、その責任はどこにあるのか。私は、中小企業いじめをやめさせる、このことと一体に、最低賃金の抜本引き上げをやる。同時並行でやれば、立派に、この仕事できるじゃないですかと、その場で言いました。(拍手)

 さすがに、これに対しては、首相も困って“私も同時並行でやりたい”。こういうこと言うんで、だったら千円にしますか、こう聞いたら「それでは中小企業がつぶれる」、またそこにもどっちゃうんですね。やっぱり同時並行でやり、中小企業の振興もやる、労働者の賃金も千円以上はどんな人にも保障する。そうやれば、地域の経済も草の根からあったまるじゃありませんか。中小企業のご商売も、よくなるじゃありませんか。日本経済だってよくなる。そういう道をとるべきだと、私は強く訴えたいのであります。(大きな拍手)

 この貧困と格差の問題は、日本共産党は、全国どこでも、ただ主張するだけではございません。こまったときの命綱として、がんばっております。全国どこでも、草の根の取り組みで暮らしを守る、同時に、「逆立ち」した予算をただせ、人間らしい労働ルールを作れ、という、国政の大本のところで、この問題を打開するための正義の旗じるしを掲げている。この日本共産党をどうか伸ばして、くらしの明日に希望がもてる日本をつくろうではありませんか。よろしくお願いいたします。(大きな拍手)

憲法と平和──憲法9条はアジア諸国民の共有財産

 国政の問題では、憲法と平和の問題も大きな争点です。

 安倍首相は、いまの憲法9条は“21世紀の時代の大きな変化に合わなくなった”“時代遅れになった”と言って、憲法改定をすすめて、アメリカとともに海外で戦争をする国をつくる、ここにさらにもう一歩踏み込もうとしています。

 私は国会で聞きました。“21世紀の時代の大きな流れに合わなくなった”のは、憲法9条か、それともあなた方の自民党か。

 世界の流れを見ればはっきりしますね。イラクを見れば一番はっきりします。アメリカが国連憲章をやぶって進めた無法な侵略戦争と占領支配が、無残に大破綻です。アメリカ国内でも非難轟々です。みなさん、イラクの事態というのは、どんな超大国でも軍事力では世界が動かせなくなった、ということを示しているのではないでしょうか(拍手)。もめ事がおこったら、国連憲章にもとづく平和的・外交的解決をはかることが当たり前の時代になったということを、示していると思います。すなわち、軍事の時代から、外交の時代に、21世紀は大きく変わっているんです。平和外交の時代に変わっているのです。

 その大きな流れにてらしてみたら、21世紀の先駆けをなすのが、日本国憲法9条ではありませんか。この時代の流れについていけなくなった、絶滅寸前の恐竜のような存在が(笑い)、自民党政治ではありませんか。(拍手)

 私は、昨年9月にはじめて韓国を訪問する機会がありました。そこで、さまざまな方々と交流しました。共通して出された質問は、「日本の右傾化は大丈夫ですか」「平和憲法は大丈夫ですか」という質問でした。私は、そういう質問にたいして、「たしかに日本では危険な状況があります。でも、大江健三郎さんはじめ、著名人が呼びかけた『9条の会』が全国6千をこえて広がっている。日本の中に平和と良心の声がうんと広がっていることも、ぜひ見てください」。こういうことを韓国の友人に話しました。「ぜひがんばってほしい」という反応が返ってきました。延世大学で若い学生のみなさんを前に、講演と質疑を行いました。質疑はぶっつけ本番でやりました。そうしましたら、学生さんから、こういう感想が寄せられました。

 「お話を聞き、多くの部分で日本共産党の活動は、韓国の声にそっくりでした。私は、憲法9条をもっている日本がうらやましい。特別講義で日本共産党の党首が、平和憲法は必ず守りますときっぱりおっしゃった時、のどが渇いた鹿が井戸に出会ったように、体のなかに感激がおこりました。世界平和を追求する一人の人間として、日本の平和憲法守護運動に賛同したい」。たいへんうれしい感想です(大きな拍手)。これは多くのアジアの声だと思います。憲法9条をわがことのように心配している。考えてみればアジアの方々の2000万人という犠牲、日本国民の310万人という犠牲のうえにつくったものですから、これは日本だけのものではありません。日本国民の宝というだけではない。アジアの諸国民の共有財産です。これを守るのは、私たち日本国民のアジアの人たちへの責任だと心得て、私たちはがんばりぬきたい。その決意をあらたにしているところであります。(拍手)

自民と民主どちらが「よりまし」とは言えない

  ──共産党がのびるかどうかが最大の焦点

 暮らしの問題、憲法の問題の二つを話しましたが、いま、「自民か、民主か、2大政党のどっちを選ぶのか」と、さかんにやっていますね。しかし、いまの二つの問題、どちらも自民も民主もあんまり違わないですね。

 憲法の問題について言えば、9条を変えて海外で戦争する国をつくる、これは同じです。この前の国会で、自衛隊の海外派兵の任務を自衛隊法の「本来任務」のなかに書き込んで、防衛庁を「防衛省」に格上げする法案に、民主党は自公といっしょになって賛成しました。いまの国会では、改憲手続き法案をいっしょになって通そうという動きになっています。

 格差問題のほうはどうでしょう。今度の国会で民主党は、「格差是正国会だ」とさかんに言っています。私は率直に言って、「よくそういうことが言えるな」「自分たちのやってきたことに、少しは胸に手をあてて、思い返してほしいな」と言いたいんです。

 たとえば、派遣労働がどんどんひろがった、99年の法改悪のさい、特別の業務から、一般の業務に拡大するときに賛成した、民主党もいっしょになって賛成したのを、忘れちゃったのでしょうか。

 児童扶養手当の削減に賛成したのも民主党でした。「介護難民」をつくりだしている介護保険法の改悪に自公といっしょに賛成したのもこの党です。国保証を取り上げる無慈悲な国保法改悪に賛成したのもこの党でした。大型店を野放しにする大店法廃止に賛成したのもこの党です。大企業にもっと減税しろ、消費税をあげろ、と声高に叫んでいたのも忘れてしまったのでしょうか。

 これらのすべてに、貧困と格差の拡大を、自民党と公明党と共同ですすめてきたのが、民主党だったじゃないですか。私はこの事実は言わなければならないと、思います。(大きな拍手)

 ですからみなさん、私は言いたい。自民か民主か、どちらかが「よりまし」とは言えないんです。たしかな野党─日本共産党がいまこそ必要です(拍手)。この党がのびるかどうかが、今度の選挙の最大の焦点であって、どうか共産党をのばして、日本の政治をよくしようではないか。このことを心から訴えたいと思います。(大きな拍手)

地方政治─自公民「オール与党」か日本共産党かが争点

 さて、地方政治のほうにすすみたいと思います。

 地方政治にいきますと、自民と民主の違いは、いよいよなくなります。これはまったくないんですね。兵庫の県議会でも、神戸の市議会でも、日本共産党以外の政党─自民、公明、民主、すべて与党でしょ。つまり、知事や市長が出す予算案や条例案や議案に、なんでも賛成で、フリーパスで通しちゃう。賛成マシーンになっているでしょう。ですから、いっせい地方選挙の争点は、簡単明瞭でありまして、「自公民『オール与党』を選ぶのか、唯一の野党、日本共産党をのばすのか」これがずばり争点だということを、まず言いたいと思います。(拍手)

 それではみなさん、自公民「オール与党」の自治体の特徴は、どこにあるのか。

オール与党には「福祉の心」がない──国の「雪だるま負担増」に自治体が追い打ち

 第一は、この勢力には、「福祉の心」がない、ということを言わなければなりません。

 たとえば、庶民大増税に追いうちをかけることを自治体がやっています。昨年の6月に定率減税を半減する、お年寄りの増税をやる、住民税と所得税の大増税で、そのうえ連動して国保料や介護保険料も値上げされるという、私たち「雪だるま負担増」と言ったけれど、これが全国を襲いました。「住民税が数倍から10倍になった」。─怒りの声が沸騰しました。今年は定率減税を廃止することによって、二度目の「雪だるま負担増」が全国を襲おうとしています。

 そのときに、「オール与党」の自治体、県政・市政はなにをやっているのか。県は「県民緑税」と称して県民一人当たり800円の新たな税金を取り立てることをはじめました。これは人頭税ですよね。一人あたり800円。緑税とか言っていますが、環境保護のための税金だったら、まず財界に払ってもらうのが筋ではありませんか(拍手)。そのうえ、神戸市は、介護保険料を独自に35%値上げする。さらに所得の低いお年寄りにたいして、これまであった市民税の減額措置、2分の1の減額措置を廃止してしまいました。

 そうしますと、国の「雪だるま負担増」に加えて、自治体の“トリプルパンチ”なんです。「県民緑税」、介護保険料の値上げ、市民税の増税、これをやっている。年金月額20万円のお年寄りの負担を計算してみましたら、2004年には、9万1000円だったものが、来年2008年には、36万4000円です。年金の2カ月分を持っていくという負担増の押し付けは、ひどいやりかたです。

 みなさん、自治体とは、「住民福祉」の機関です。ですから国が悪い政治をやったら、悪い政治から住民の福祉と暮らしを守って当たり前です。ところが、国が「雪だるまの負担増」を押し付けてきたら、“トリプルパンチ”で、もっと痛めつけるというのは、もはやまともな自治体とは言えない。私は厳しい審判を今度の選挙でくだそうではないかということを、呼びかけたいと思うのであります。(大きな拍手)

やってはならない国保証とりあげ

 それから、国保証のとりあげという問題があります。国保料が高すぎて払えない、そういう方がたから、保険証をとりあげて、資格証明書に置き換える。これは全国でもやっていますが、兵庫県では2001年の1300世帯から、9300世帯(06年)まで資格証明書は増えました。

 資格証明書というのは、お医者さんの窓口に行って、10割全額払わなければならない。私は、これは本当にまちがった政治だと思います。なぜならば、国保料を滞納している方というのは、ほとんどが払いたくても払えない方でしょう。そういう方から保険証をとりあげて、病院に行くときは全額負担せよ。これはみなさん、命を捨てろというのにひとしいのではないですか。私はこんなことは、絶対にやっちゃならない禁じ手だということを言いたいと思います。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 これは、国の号令ではじまったものです。先ほど言ったように、自民党・公明党・民主党がいっしょになって、法律を変えて、国保法を改悪して取り上げを義務付けた。ここからはじまったものですけれども、いくら国が号令をかけたとしても、自治体の姿勢が問われますね。全国をまわりますと、国保証のとりあげ、これだけはやっちゃいけないと、やってない自治体も少なくありません。ところが兵庫県では、議事録を調べますと、「オール与党」がよってたかって、「まだ取り上げは生ぬるい」と尻をたたいているんですね。これは自民党の県議ですが、2001年の議事録でこう言っています。「滞納世帯13万のうち、国保証をとりあげたのは1301世帯。わずか1%しかない」もっととりあげろと議会でせまって、取り上げがふくらんでいくわけです。みなさん、国の手先になって「オール与党」議会が尻をたたく、尻をたたかれて県政・市政が国保証をとりあげる、行政は“取立て屋”ではありませんよ(「ひどい」の声)。取り上げをやめ、高すぎる国保料を下げなさい、この願いをどうか日本共産党に託していただきたい。よろしくお願いいたします。(拍手)

生保世帯の夏冬の見舞金まで削る

 それから暮らしの問題で、どうしても言いたいことがあります。生活保護の問題です。いま国では、生活保護の老齢加算──お年寄り世帯での加算分を廃止してしまいました。さらに。母子加算──母子家庭の加算分もなくそうとしている。

 そのときに神戸市はなにをやっているのか、これまで生活保護世帯にでていた見舞金──一人世帯の場合、夏に6300円、冬に7600円が出ていました。これを廃止してしまいました。市が言った廃止の理由はこうです。「生活保護が改善されたためだ」。国で打ち切っているときに、その現実を見ないで、「改善された」と言って、市が追い討ちをかける。これはひどい理屈です。こうも言いました。「被保護世帯が増加しているため、支給額が増加している」。だから削るというのです。つまり財政が大変だからという理由ですが、生活保護というのは、憲法25条の「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」、ここから来ている制度です。だから予算が云々と言うことは理屈にならないのです。

 かつて、生活保護の抜本的改善を求めた朝日訴訟というのがありました。1960年に、東京地裁で、すばらしい判決が出たことがあります。そこでは、生活保護にかかわって、憲法25条の真髄をこう述べています。「憲法25条にいう、健康で文化的な生活とは国民の権利であり、それは予算の有無によって決められるのではなく、むしろ予算を指導支配しなければならない」。つまり、貧しい人たちの生活を救う、そのためにまず優先的にお金を使いなさい、残ったお金で他のことをやればいい、これが憲法の考え方なんですよ(拍手)というのが、この東京地裁判決の考え方であります。こうした憲法を暮らしに生かした政治こそ、いま強く求められています。

 みなさん、「オール与党」にないのはお金ではありません。彼らは莫大な予算を毎年組んでいる。ないのは心なんです。「福祉の心」を持っていない。日本共産党を伸ばして、自治体に自治体らしい「福祉の心」を取り戻そうではありませんか。(大きな拍手)

開港一年であらわれた神戸空港の三つの症状

 自治体の第二の問題は、こうやって暮らしを切り捨てておいて、大企業を呼び込み、巨額の補助金をばらまく、こちらの方には野放図に税金をそそぎ込むという問題です。

 県・市一体になって進めた神戸空港。開港一年ですが、みなさんが懸念されてきた問題が次々と現実になりました。三つの症状がはっきり現れてきました。

 第一の症状は、空港経営が成り立たない。利用客は、飛行機の搭乗率がついに60%を割り込み、1月には52・7%まで落ちました。航空機の採算ラインというのは搭乗率で60%、この前後になります。一つの路線が、60%を一ポイント割り込むごとに、年間1000万円が赤字になってしまいます。これが52%まで落ちてるわけですから、全体として大赤字なんですね。ですからわずか一年で、すでに4便が廃止・休止になりました。私は今日、神戸に来るんで、せっかくの神戸空港を利用してみようかと、飛行機便を見たんですけど、ちょうどいい便がないんですよ(笑い)。市は、結局こうなってくると“空港建設に税金は使わない”と言ったけど、最近“空港の運営に使わないとは言っていない”。つまり赤字の穴埋めをやることはありうるという。こんなことを絶対許してはなりません。(拍手)

 第二の症状は、借金返済のめどが立たない。空港島建設の借金は2000億円。これをどうやって返すのか。市と県が造成した空港の北側の土地77ヘクタールを民間に売却して、これを返すという計画でした。ところが77ヘクタールのうち売れたのは、0・3ヘクタール(笑い)、たった一社だけです。レンタカーの会社です。まったく売れない。「空港を作れば企業が呼び込める」と言って空港を作ったんですね。しかしそれはまったく絵に描いた餅だった。これは、関空でも同じことがおこっています。りんくうタウンが大破綻です。神戸空港でも、大破綻が始まっています。

 そして三つ目の症状はムダがムダをよぶという症状です。こうなったら、神戸空港と関空をむすぶ海上アクセスを使えば何とかなるんじゃないかと、赤字のために5年間休業していた船便を、「神戸─関空ベイ・シャトル」として、昨年7月に再開しました。関空と神戸空港を船で結んでどうして神戸空港の客が増えるのか、逆に関空へ行ってしまうんじゃないかと思うんですが(爆笑)。ともかく船で結んで何とかしようとしましたが、この船が定員120人に平均15人しか乗らない(笑い)。わずか半年で2億1千万円の赤字です。

 そうしたら、船では足らないと、神戸空港と関空を結ぶ大阪湾海底トンネルを事業費7000億円かけて、県と市で作ろうじゃないかという話、気の遠くなるような話が、マジメに語られている。

 みなさんこういう事態を作った自公民「オール与党」の責任は、深いんじゃないでしょうか(大きな拍手)。みなさんが二度にわたり、神戸空港の是非は住民投票でという運動を起こされたでしょ。最初は35万の直接請求署名を集め、住民投票条例案を通しなさいと、議会に提出したけれど、自公民「オール与党」がよってたかって否決した。二度目は31万人の市民が参加した市民投票でNOの審判を下したのに、この結果を無視した。市民、県民のみなさんの声を無視して、こんな大穴を明けてしまった「オール与党」には、今度の選挙できびしい審判を下さなければなりません。(拍手)

 この期に及んで反省を知らないのが彼らです。さっきトンネルを掘れという話がありました。民主党のある県議が、最近の議会でこう言っているのを聞いて驚きました。さっき海上アクセスを始めたという話をしましたが、こう言っているんです。「海上アクセスのみでは、気象条件があり、欠航されることがあります」(笑い)。そこで、「両空港を海底トンネルで結ぶという雄大な構想があります」。愚かな構想を「雄大な構想」といい、「早期に具体化すべきだ」と迫っているのです。

 こういう無反省な勢力には審判を下し、税金の支出を最小限にする見直しをさせようではありませんか。(拍手)

松下電器1社に175億円の補助金

 もう一つこちらに来て、驚いたことがあります。莫大な大企業誘致補助金です。いま全国で大企業の工場をよんでこようという誘致補助金のばらまき競争をやっています。一社あたり上限が10億、30億だ、50億だと引き上げる。この前行ってきた神奈川では、1社あたり限度額を80億まで引き上げた。これが全国最高です。ところが、この兵庫県は、さらにその上をいく究極の大盤振る舞いで限度額がないんです(「へぇ〜」の声、どよめき)。限度額なしで補助金をあげましょう。大企業が会社を作ってくれたらいくらでも補助をあげましょう。これは、全国で兵庫県だけであります。

 松下電器1社に総額175億円の補助金を入れるという。あのプラズマパネル製造の3つの工場が対象です。空前の利益をあげている巨大企業1社に175億円。これは、異常と言うよりほかありません。

 さらに許し難いのは、莫大な補助金を受けた松下工場での雇用のあり方です。つくった工場の新規採用は、正社員はたったの6人、派遣職員が236人。それでも新規採用があったとして、県は、一人あたり60万円から120万円、総額2億4000万円を、工場建設補助金とは別にまた支給した。ところが、ここから先の話がまたひどい。236人の派遣社員は、1年後には、直接雇用の義務のない請負に切り替えられた。典型的な偽装請負であります(「ひどすぎる」の声、どよめき)。つまり松下は、派遣と称して2億4千万円の補助金をかすめ取り、補助金をもらったら請負を装って無法な働かせ方をする。みなさん、だまし取った補助金は返してもらおうではありませんか(大きな拍手)。

 派遣業者の「コラボレート」のほうは、ついに業務停止に追い込まれました。しかし受け入れ企業の松下の方はのうのうとこれだけの補助金もらっている。この責任は追及されるべきです。このような無法な大企業への巨額の補助金も蛇口をきゅっとしめる力を持っているのは共産党しかありませんから、どうか共産党をのばしていただきたい。よろしくお願いします(大きな拍手)。

日本共産党議員団のかけがえのない役割

 みなさんこういうなかで、共産党議員団──さきほど並んだ候補者のみなさんを含めての働きはすばらしいものがあります。

 まず第一に、何と言っても県民の声と議会を結ぶ唯一の架け橋としての役割です。

〈こどもの医療費無料化、少人数学級を実現〉

 兵庫県では、「こども署名」が、4万5千筆以上もとり組まれるなど、県民の大きな運動が二つの大きな成果に実を結びました。(拍手)

 一つは、こどもの医療費助成が小学校3年生まで広がったことであります。自公民「オール与党」は9回にわたる請願をすべて反対、妨害に妨害をかさねましたけど、とうとう県民の運動が、行政を動かした、大事な成果と言えるのではないでしょうか。(拍手)

 少人数学級も2004年から実現し、いま小学校3年生まですすんでいますね。そして、小学校4年生までの実施を知事に約束させました。これも「オール与党」がさんざん妨害しました。知事が、県民の運動に押されて「公約」に入れかかったとき、「これは共産党の要求だからはずしとけ」と、こういうことまでやって妨害を続けたけれど、ついに抵抗を押し切った。ここでも「こども署名」やみなさんの運動が、県政を立派に動かしてきた(大きな拍手)。この架け橋になってきたのが日本共産党の地方議員団だということをご報告したいと思います。(拍手)

〈ムダづかいをただす先駆的役割〉

 二つ目に、無駄遣いをやめさせる最大の力になった。神戸空港問題での一貫した奮闘ぶりはくり返しませんが、八鹿ダム100億円、余野川ダム500億円、こういう無駄なダムを中止させました。

 県民アンケートをやりますと、議員に望むことの一番は、ムダ使いをやめさせてほしい。71%ですが、この声に一手にこたえて仕事をやっているのが、共産党議員団です。二つのダムだけでも600億円の借金が減ったわけですから、知事は共産党議員団に感謝状の一枚も出して当たり前ではないでしょうか。(拍手)

〈「解同」の不正ただす先駆的で歴史的な業績〉

 三つ目に私は、とくに強調したい問題があるんです。兵庫の日本共産党と地方議員団は「解同」の利権あさりの不公正な同和行政を終結させるうえで、全国的にも先駆的な役割を果たしてきた、この値打ちがいま、輝いているということです。

 いよいよいま、「解同」の利権と不正に司法のメスが入り、「解同」タブーはいよいよ崩れつつあります。私は、この前、隣の大阪に行きましたが、大阪ではもう大問題になっている。みなさんもご承知だと思います、飛鳥会事件とか、芦原病院事件とか、「解同」の不正と腐敗が次々と明るみに出て、お縄になってますね。飛鳥会事件などは、ほんとうにひどいものです。「解同」の幹部が横領した金で、自分の棺桶を買ってたというんですね。500万円出して棺桶を買っていた。自分のりっぱな棺桶を買うという心理は、ほとんどはかりがたいものがありますが、そんなことやって、お縄になって、いよいよもう「解同」の利権あさりはおしまいというところまで追い込まれつつある。

 兵庫県の党と議員団は、私は、この全国の流れつくるうえで、まさに勇気を持ったたたかいで先駆的な役割を果たされてきたと思います。以前は兵庫県政も「解同」べったりだったわけですが、転機になったのは1974年の八鹿高校事件でした。あの事件で不屈に闘い、そのあと養父町、八鹿町、朝来町、南光町、次々と民主町政が誕生しました。

 「解同」との癒着を続けていては、民主自治体は県内にひろがり、県政もとられてしまう。これは大変だということで、いよいよ「オール与党」側も対応を変えざるを得なくなりました。南光町長をつとめてこられた山田兼三さんによりますと、当時の知事がこういったそうです。「これからは『解同』との関係を、一線を画さないといけない。共産党は身体を張って『解同』と闘った。あの姿を見習わないといけない」こう会議でのべたそうです。(拍手)

 みなさん、みなさんのたたかいが兵庫から「解同」の横暴や利権あさりを一掃し、いま、不公正な同和行政は全国的に完全終結に追い込まれつつある。これは兵庫の党と地方議員団の不滅の歴史的な業績だということを強調したいのであります。(大きな拍手)

韓国、パキスタン、ベトナム訪問──日本共産党の歴史の重み

 私は、この間、韓国、パキスタン、ベトナムと、3つの国を訪問してまいりました。この3つの訪問、それぞれ国は様々ですが、どこでも感じたのは日本共産党の85年の歴史をもつ重みであります。

 韓国に訪問したさいには、日本共産党は植民地支配に命がけで反対を貫いた政党だということが友好と連帯の絆になりました。私は、ソウルに着いてすぐに、西大門(ソデムン)刑務所跡歴史館を訪問しました。ソデムン刑務所というのはかつて日本の帝国主義が、朝鮮を植民地化し、愛国者たちを投獄し、拷問し、処刑した場所であります。その跡が生々しく残っております。そして私は、そこで追悼の献花をしたわけですが、メディアに、なぜソデムンに来られたんですかと聞かれ、こう答えました。

 「私たち日本共産党は1922年に党をつくって、最初の時期から植民地支配に反対し、朝鮮の独立の闘争に連帯して闘ってきた歴史をもつ党です。私たちはその歴史を誇りに思っています。そういう党を代表して、愛国の闘いで独立の闘いで倒れた朝鮮の愛国者たちに心からの敬意と追悼を捧げるためにこちらにまいりました。そして21世紀の日本と韓国の本当の友好を願ってこちらにうかがいました」。私はそれを言いながら、韓国に来てそういうことをきちんと言える日本共産党の一員であることに大きな誇りを覚えました。(拍手)

 このニュースは韓国のテレビでゴールデンタイムに各テレビ局がずいぶん長いこと流しました。韓国では有名になりました。次の日にはもうみんな知っているんです。次の日に、私は、国会を訪問しました。イム・チェジョン国会議長と会談しましたら、冒頭に「ソデムンに訪問してくださったことに韓国国民を代表して感謝します」と言われました。私はそれに胸がいっぱいになりましたが、70数年前に私たちの先輩が本当に命がけで掲げ続けた党の旗が、いま、日韓の友好に生きているということに本当に大きな感動を覚えたものでありました。(拍手)

 つぎに行ったパキスタンは、旧ソ連のアフガニスタン戦争に反対を貫いた、旧ソ連の横暴に反対を貫いた自主独立の共産党、これが信頼の絆になりました。パキスタンの隣はアフガニスタンです。かつてソ連がアフガニスタン侵略をやった、その時にひどい被害を受けました。難民と麻薬と銃が流れ込み、パキスタンは大被害を受けました。その横暴に反対を貫いた共産党が日本にある。こういうことで交流が始まりました。

 私が、この前パキスタンに招待されていきますと、上院議長のスムロさんという方と会談になりました。私が、日本共産党の自己紹介をしようとしましたら、相手方から、スラスラとこういう言葉が出てくるんです。

 「私は、日本共産党について研究しました。1922年に党を創立して以来、戦前の困難な時期、戦後の党内部分裂などをくぐり抜け、二つの大きな共産党の干渉にもかかわらず、自主独立を維持してきました。チェコ、アフガニスタン侵略に反対し、自分の頭で考え、自分の路線を定めてきた政党だということ知っています。私はあなたの党に最大の敬意をもっております」。こうなりますと、自己紹介の必要がなくなってしまいます(拍手)。自主独立でがんばったというのは、同じように大国のいろんな圧力の中で国づくりをやっているパキスタンとも響きあうんですね。(大きな拍手)

 今年の一月、私は、ベトナムを訪問しました。ベトナムの訪問では、なんといってもアメリカによるベトナム侵略戦争に反対し、戦った連帯の歴史をベトナムのみなさんは、みんな覚えていてくださいます。マイン書記長と会談した際にも、ズン首相と会談した際にも、まず真っ先に出てくるのは、かつての抗米救国戦争への連帯への感謝の言葉でした。そのことをベトナムのみなさんが覚えていてくれている。

 私は、ハノイ大学で300人の若い学生さんを前に講演と質疑をやりました。そこでも若いみなさんもみんなその歴史への信頼をよせてくれます。

 私は若いみなさんの前で、「私はいま52歳ですが、私たちの世代の日本共産党員にとってはベトナムは青春なんです」と、私たちの青春時代に反戦の連帯闘争を闘った思い出を、みんなもってますということを言いました。

 もうちょっと違う思い出かもしれないけど。私自身、よく集会に出て「自由ベトナム行進曲」を歌ったものだと言いました。この曲、ベトナムでは、実は若い方もみんな知ってるんです。これを知らない人はいません。若い人から「知っているんだったら、ここで歌ってください」ということになりまして、私が一節歌いましたら、盛大な手拍子が起こりました。この歴史が連帯の絆になりました。(拍手)

 私は、ハノイのあと、ホーチミン市を訪れました。ホーチミン市の郊外にクチという地域があります。広大な地域に南ベトナム解放民族戦線がトンネルを掘った。手掘りで250キロものトンネルを掘って、米軍と闘った。米軍は枯れ葉剤をまきました。緑豊かなクチの地を死の地に変えようとしました。しかしクチの人々は屈しませんでした。トンネルを掘って、地下にもぐって闘った。このトンネルには何でもあるんですね。医療所もあれば、食堂もあれば、寝室もあれば、司令部もある。なんでもある。私は、ここで闘ってきた元兵士の方に聞きました。

 「水をどうしたんですか」「水はトンネルの中に深い井戸を掘ってそこから汲み上げました」「食糧は」「農民がもってきてくれました」「武器はどうしたんですか」「アメリカ軍から奪いました」。この方は、「アメリカ軍が来ないと困りました」(笑い)と言っておりましたけど、それでもこのクチの闘い、1万8千人の兵士の内、1万2千人が犠牲になったということも聞きました。私はその話を聞いて、「ベトナム人民の英雄的な闘いに心からの敬意を表したい」と、案内してくれた兵士の方にいいましたら、こういう言葉が返ってきました。「同志たちも同じ立場だったら同じように闘ったでしょう」これは、私たち日本共産党に対するベトナムの同志たちの最大級の信頼の言葉ではないでしょうか。(大きな拍手)

 日本共産党の85年の歴史というのは、ひとことで言って苦難の歴史だと思います。共産党にはいいときもあれば悪いときもある。しかしいいときだって楽々と前進するときなんて絶対にありません。共産党は政治を大本から変えようという党ですから、いつも激しい攻撃にさらされ、それを跳ね返しながらがんばっている。これが85年の歴史です。しかし、大義にたった闘いというのは必ず未来に生きる。このことを、私は、韓国、パキスタン、ベトナムの旅で痛感して帰ってまいりました。(大きな拍手)

 どうかみなさん、この党の歴史、路線に確信をもって、いっせい地方選挙と参議院選挙、二つの選挙戦で連続勝利を勝ち取って、党の歴史に新しい躍進のページを刻もうじゃありませんか(拍手)。ご静聴ありがとうございました。ともに頑張りましょう。(大きな拍手)