2007年6月2日(土)「しんぶん赤旗」

強行乱発 安倍政権異常国会

「ダメージ」と衆院議長

志位委員長 「深刻な政治危機」


 一日未明の衆院本会議で、年金業務に対する国の責任を放棄する社会保険庁解体・民営化法案と「消えた年金」の「時効特例法案」を強行可決したのもつかの間、政府・与党は安倍晋三首相の指示で国家公務員法改悪案でも強行採決の寸前までいきました。一週間に三度の強行採決を狙った安倍・自公政権の暴走は「この事態は国会にダメージを与える」(河野洋平衆院議長)との懸念があがるほどの異常事態です。日本共産党の志位和夫委員長は、一日未明の記者会見で「非常に深刻な政治危機を逆に安倍内閣にもたらしつつある」と指摘しました。(高柳幸雄)


 強行採決の源には、国会審議をないがしろにする安倍首相の「指示」連発があります。

 五千万件をこえる年金記録が「宙に浮いた」問題では、内閣支持率急落の情報を受けた五月二十七日に、自民党の中川秀直幹事長に電話。次期国会に提出するとしていた「特例法案」の今国会成立を指示しました。

 この結果、「特例法案」は衆院厚生労働委員会でわずか四時間の質疑で有無をいわさず採決に持ち込み、社保庁解体法案と一体で強行可決したのです。

 国家公務員法改悪案ではどうか。「公務員改革」を参院選での目玉にしたい安倍首相は五月三十一日、突然、「できる限り今国会で成立させるよう努力してほしい」と与党に指示。この命を受けた塩崎恭久官房長官は「(国会日程が)厳しいのはわかっているが、やってほしい」と参院自民党幹部をねじ伏せました。

 国家公務員法改悪案は、与党が一日未明、同日午前に委員会採決する方針を決定し、一方的に押しつけてきました。「安倍首相の強い意向」をタテにした暴走は衆院議長もあやぶむほどの事態になったのです。

国の責任を放棄

 「消えた年金」は、基礎年金番号を導入する際、年金ごとに違う番号で管理されていた記録を統合する過程で対応できない記録があったために起きた問題です。その後政府は十年間も放置。加入者の責任ではなく、国の責任であることは明らかでした。

 ところが安倍首相は当初、「いたずらに不安をあおってはいけない」というだけ。加入者が領収書などで立証せよとの姿勢でした。

 「特例法案」を出したものの、根本的解決のめども手当ても示さないまま、解決に責任を負っている社保庁を解体し、国の責任を放棄しようとしているのです。

 国家公務員法改悪案も、新たに設置する「人材バンク」で天下りを公然と自由化するものです。安倍首相は、一日の質疑で「新人材バンク」が天下りのための情報収集やあっせんをすることは当たり前だと開き直る始末です。

「指導力発揮」?

 なぜ、これほどまでに首相は前のめりになるのか。それは、内閣支持率の急落、「政治とカネ」の問題で一貫してかばってきた松岡利勝農水相(当時)の自殺によって待ったなしの窮地に陥っているからです。それを「数の暴力」で突破しようとしているのです。

 中川幹事長は「指導力を発揮することで安心感と信頼感が広がる。V字形の支持率回復もあり得る」と語りますが、安倍首相のはきちがえた「指導力」で、国民の政治不信は増大するだけ。その政治危機は深刻です。