2007年6月25日(月)「しんぶん赤旗」

日曜討論 党首に聞く

志位委員長の発言 (大要)


 日本共産党の志位和夫委員長は、二十四日放映のNHK「日曜討論 党首に聞く」に出演し、司会の影山日出夫・NHK解説委員の質問に答えました。


数の暴走

強行採決が14回、首相主導で議会制民主主義を壊す

 影山 与党が会期延長に踏み切ったわけですが、ここまでの国会で、やはり与党の数の力というものを感じますか。

 志位 数の暴走ということが、本当にひどい国会になっていると思います。私は、今度の国会で、与野党の合意がないまま強行採決された回数がいったい何回かと数えてみましたら、十四回もやられています。補正予算から始まって本予算、改憲手続き法、イラク派兵法の延長、教育三法などなどです。十四回というのは過去にないひどさです。しかもこれが、安倍首相の“トップダウン”で、つまり行政府の長が立法府の暴走を指示すると、議会制民主主義の破壊を指揮しているという事態ですから、これはこういうやり方にも厳しい審判が必要だと思います。

安倍政権

国民の暮らしには無関心、危険な改憲に熱中

 影山 その安倍政権をどうみるかですが、内閣支持率が急落しています。これはやはり政権が目指しているものと、国民の間のギャップが広がっている、そういうふうにごらんになっているんでしょうか。

 志位 そうですね。「消えた年金」の問題があれだけ問題になって(いるのに)、しかし国民の不安を解消する抜本的方策がでてこない。あるいは住民税の大増税が日本列島を襲っています。これは定率減税を廃止したために起こったものですが、こういう事態、国民の暮らしに関心がない。一方で、憲法を変えて「海外で戦争する国」にするんだというのが「マニフェスト」(公約)のトップですね。この危険な方向についても危惧(きぐ)を強める。国民が願っていることは無関心、そして願っていないことに熱中するという、このギャップがいま大きな支持率の低下を招いていると思います。

参院選

年金、貧困と格差、憲法を焦点に、「たしかな野党」の立場を訴える

 影山 参院選にどう臨むかなんですが、共産党としてはなにを一番訴えていく、そういう選挙になりますか。

 志位 まず「消えた年金」の問題、これはきちんと解決をしなければならない。これは国民に責任ありません。すべて国の責任ですから、私たちは「一人も被害者を残さない」、そして「一刻も早く」と、二つの原則できちんと解決する、これが大事な問題ですね。

 同時に、政治的な大きな争点としては、貧困と格差の問題です。これはいま医療から排除される「医療難民」、保険証を取り上げられてしまう、病院から追い出される。それから介護から排除される、たとえば車いすや電動ベッドを取り上げられてしまう「介護難民」。あるいは若い方々で、「ネットカフェ難民」といわれる、アパートを借りるお金もないという事態が広がっています。この貧困の問題を打開していく。

 そしてもう一つは、憲法の問題ですね。これはとくに、安倍内閣は「海外で戦争する国」をつくるというために、九条を投げ捨てるということに加えて、過去の戦争を反省していない―「靖国」派と私たちは呼んでいるんですが、たとえば「従軍慰安婦」の問題について「強制連行はなかった」と(いう)。こういう反省してない人たちが、憲法を変えて海外に打って出ることは本当に危険ですから、九条守れということも大きな争点です。

 影山 共産党にとっては同時に党勢回復というのも大きな課題だと思うんですけれど、とかく「二大政党」の中に埋没しがちですよね。共産党の存在意味、存在理由、これはどう訴えていきますか。

 志位 「二大政党」ということがよく言われますが、いま言った憲法の問題でも、自民党の方は憲法改定を「マニフェスト」のトップに持ってくるんだけど、民主党のほうは憲法の問題について「マニフェスト」に一言もないんですね。つまり対抗の旗が立てられない。先ほど言った、住民税の大増税、これもいま大問題になっています。その次には消費税の増税まで与党はやろうとしている。それに対しても反対の旗が立てられない。ですからそういうときに、暴走を食い止める一番「たしかな力」、本当の「たしかな野党」は共産党だと、ここを押し出していきたいと思います。

憲法問題

9条こそ最大の戦争の歯止め、国民多数派をつくるために力つくす

 影山 憲法問題、これ大変重要な問題だとおっしゃっていましたけど、たとえば「海外で戦争をする国」にしない、そのための歯止めを盛り込むための憲法改正というふうな発想の転換というのはありえませんか。

 志位 その最大の歯止めが九条なんですよ。戦後、日本の国が、ただ一人の外国人も軍が殺していない。ただ一人の戦死者も出していない。憲法を踏みにじって自衛隊という軍隊をつくったけれど、その軍隊を縛っている、海外派兵を縛っている、最大の縛りが九条なんです。ですから九条を変えて、これ(憲法)に「自衛軍」を書き込んでしまう、あるいは海外での活動を書き込んでしまった途端に、これは歯止めがなくなるというのが最大の問題だと思います。

 影山 実際には国民投票法が成立して、国会に憲法審査会も設置されます。こういうものに共産党はどう臨んでいくんですか。

 志位 もちろん国会につくられた機構には、私たちは参加して堂々と意見を述べます。ただ一番の勝負どころは、国民のなかで改憲反対の多数派をつくることだと思っています。この間さまざまな世論調査で「九条守れ」という声がだんだん増えて、過半数になってきております。「九条の会」というのがつくられて、全国数千の草の根の「会」がつくられ、私たちも参加していますが、これが世論を変えつつあるというのが現状だと思うので、やはり相手がどんなしかけをつくっても国民のなかで多数派をつくれば、憲法は変えられませんから、このために力を尽くしたい。

 ただ国会のなかでのたたかいも大事ですから、私たち共産党が憲法の問題でいちばんたしかな党ということで、一議席でも二議席でも今度(の選挙で)、議席を伸ばすことが、これを食い止める力になると大いに訴えていきたいと思います。

「消えた年金」

まず政府が1億人の国民にただちに納付記録の通知を

 影山 年金問題については、一人残らず不安を一掃したいとおっしゃいましたけど、端的にはどういう手段が求められているんでしょうか。

 志位 これは、私ども五つの緊急対策というものを出しまして、たとえばそのなかには、五千万件の「宙に浮いた」年金記録を一つ残らず元の人に戻すとか、それから、ご本人の申請や申し立て、これを重視して解決するとか、いくつか盛り込んでいますが、真っ先にやるべきは、政府が、現在把握している保険料の納入記録があるはずなんですよ。コンピューターの中に入っているわけですね。ですからそれを、すべての加入者・受給者、つまり一億人の国民に国がすべて送付する、通知する(ことです)。

 いま社会保険庁に行きますと、どこでも長蛇の列で、電話かけてもつながりませんね。これは「不安がある人は聞きに来い」というのではなくて、国が通知する。そして、通知が来て、その結果、それを見て、ちゃんとつながっているという人は安心しますよね。おかしいと思ったら、ただちに是正の提起ができますから、これは「宙に浮いた」年金(記録)の解決の上でもいちばん力になりますし、これはすぐにやるべきだ。いますぐに。

 影山 国の方からやるべきだと。

 志位 国の方からやるべきだと。だから、聞きに来いというんじゃなくて、すぐに(送付を)やるべきだ。先ほど総理が、来年の夏以降にだんだん通知が行くというふうにおっしゃってましたけど、早い方で来年の夏、あるいは秋、場合によっては十年もかかっちゃうんですね。それまでずっと、国が不安を放置しているというのはおかしいわけで、まず、できることとして、ただちに(年金納付記録を)通知する。「一億人のレター作戦」を、国としてやる。

 それと同時並行で、さまざまな突き合わせをやって、「宙に浮いた」年金記録、あるいは「消えた年金」記録の解決をきちんとやっていく。同時並行でやっていくべきだと。

 影山 やっぱりいちばんの問題は社会保険庁のずさんな体質にあると思うんですけど、共産党は社会保険庁の解体に反対されていますね。今のままでいいという考えなのですか。

 志位 これはそんなことはありません。社会保険庁は、たとえば、年金保険料をいろいろなほかのものに流用している。無駄遣いがある。あるいは天下り天国になっている、あるいは管理能力、運営能力があまりにもずさんだ。これはきちんと解決を図らなければなりません。

 ただ、いま政府がやろうとしているのは、これを国の機構ではなくして、分割して民営化する。民間に売り飛ばすという話なんですね。ところがいま、「消えた年金」一つとっても、国が責任を持って解決しなければならないわけですよ。そのときに、国の機関である社会保険庁を民間に売り飛ばしてしまったら、責任が宙に浮いちゃいますね。ですから、こういう点はまちがっているし、それから私は、年金というのは、もともと二十年、三十年という単位で国民の資産を預かって運用するわけですから、やっぱり国が責任を持つべきで、どの外国でもそうしてますよ。これを民間に任せるというのはまちがっていると。私はそう思っています。

貧困打開

「庶民に増税、大企業に減税」という「逆立ち」をただす

 影山 貧困の問題にも取り組むとおっしゃってますけど、貧困をなくすために、まずどこから手をつけますか。

 志位 税の問題が大きいですね。先ほどもいったように、いま六月に、住民税の大増税が家計を襲っています。まずお年寄りのところに通知が来て、(昨年の)二倍から四倍だと。明日は、サラリーマンの方の給料日が多いと思いますが、サラリーマンの方は二倍です。もうあまりにも急激な上がり方です。だいたい一・七兆円の増税ですが、庶民の方には増税を押し付けておいて、大企業と資産家の方は同じ一・七兆円の減税なんです。これは逆立ちしているじゃないかと。

 しかも選挙が終わったら消費税の増税まで考えるということになってくると、これは貧困と格差に拍車をかけることになりますから、私たちは、「庶民に増税、大企業に減税」というやり方をあらためる。庶民大増税はいまからでも中止する。増税した分は「戻し税」で戻す。消費税の増税はとんでもないと。税金は取るべきところから、つまり大もうけしている大企業や資産家から応分の負担を取るべきだと訴えていきたいと思います。

 影山 ただ景気回復をリードしている大企業に増税して腰をおってしまったら、これは元も子もないとは思いませんか。

 志位 いま景気回復とおっしゃいますけど、たしかに大企業はバブルの時の一・八倍、膨大な利益をあげています。しかし働く方はどうかといったら、“ワーキングプア”といわれる実態が広がって、所得がどんどん落ち込んでいる。正規労働がへって、派遣・パート・アルバイト、これに置き換えられていますね。ですから働く方の、いわば犠牲の上に一部の大企業が繁栄しているという状況なんですよ。ですからもうけすぎているんですね。もうけすぎているのに、税金を下げすぎているというのがいまの問題ですから、もうけ相応の負担を求めるというのは、かえって日本経済を、今度は草の根から温めて、まともな方向に向かわせるためにも有益だと思います。

 影山 最後に与野党逆転の見通し、共産党の目標はどうですか。

 志位 日本共産党は、今度の選挙で比例代表選挙、大いにこれを軸にたたかって、日本共産党と書いていただく方を増やしに増やして、六百五十万票以上の得票を得て、五議席を必ず確保したいと思います。それから四十七都道府県すべてに公認・推薦候補をたてておりますが、すべてで勝利をめざします。とくに現職区の東京、それから回復区の神奈川、埼玉、愛知、京都、大阪、兵庫で必ず勝ちたいと思います。

 影山 どうもありがとうございます。