2007年7月17日(火)「しんぶん赤旗」

どの問題でも「たしかな野党」の値打ちが光る

――選挙戦の政治論戦の特徴について

志位委員長の記者会見(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が十六日、岡山市内でおこなった記者会見での発言(大要)を紹介します。


 選挙戦は五日目に入りましたが、全体として政治対決の構図が、「自民・公明対日本共産党」だということが、論戦のなかで浮き彫りになってきました。どの問題でも日本共産党の「たしかな野党」としての値打ちが光っています。それを伝えたところでは、たいへん大きな手ごたえがあり、共感が広がることを感じます。四点についてのべたい。

年金制度

自公――低年金、無年金問題を深刻にし、消費税増税に道

共産党――緊急策、抜本策、消費税に頼らないという三つの提案

 第一は、年金問題です。この問題では、「消えた年金」の解決と、年金制度をどうするかという問題の二つがありますが、両者を区別して、私たちの立場を明らかにしてきました。

 「消えた年金」問題は、党利党略でなく、国民の利益第一で、与野党が協力して解決をはかるべきだという立場からさまざまな提言をおこないました。とくに一億人の国民すべてに年金納付記録を通知すべきだという提案は、政府の方針にも取り入れられました。共産党の提案が、現実政治をリードし、動かしました。ひきつづき解決のために力をつくします。

 年金制度の問題では、大きな対決があります。自民・公明は、三年前の年金大改悪を、いまだに「百年安心」と自画自賛しています。ここには年金制度の最大の問題である低年金、無年金への対応は何もなく、さらにそれを深刻にするものとなっています。また「年金財源」を口実に、消費税増税に道を開こうとしています。これが自民・公明の立場の二つの重大な問題点です。

 日本共産党は、年金制度をどうするかについて、三つの提案をおこなってきました。(1)緊急策として、年金の受給条件を二十五年から十年以上に引き下げること、(2)抜本策としては、最低保障年金制度を導入すること、(3)そして財源としては、消費税に頼らず、歳出のムダの削減と、大企業や大資産家に応分の負担を求めることでまかなう。この三つの提案をしてきましたが、この方向こそ、低年金、無年金という問題の抜本的解決に道をひらき、消費税に頼らない財源策を示したものとして、国民の利益にかなったものです。

 わが党の提案に対し、自民党の中川昭一政調会長が「(受給条件の)二十五年はそれでいいかどうか検討しなければならない」とのべたことは重要です。与党であっても、現行制度の不合理性を認めた発言であり、そういう発言をした以上、改善の方策を示すべきです。

庶民大増税

自公――住民税増税にだんまり、消費税増税を狙う

共産党――住民税、消費税大増税に反対する旗を鮮明に掲げる

 第二は、「ストップ貧困」です。

 私たちは、社会保障充実のための「緊急福祉1兆円プラン」を提案してきました。これは草の根の運動で掲げている要求そのものであり、一兆円という財源規模がたいへん現実的なものだという両面で、大きな共感を広げています。

 同時に、庶民大増税問題が大争点になってきました。

 定率減税の廃止などによる住民税大増税に日本列島で激しい怒りが噴きあがっています。暮らしの打撃への怒りとともに、“二つの公約違反”で増税を押し付けられたことへの怒りが重なっていると思います。

 一つは、二〇〇五年の総選挙で、与党が「サラリーマン増税はやらない」とのべたにもかかわらず、定率減税廃止というサラリーマンをはじめとする庶民直撃の増税をしたことです。もう一つは「年金財源のため」といって増税しながら、年金にまわったのはごく一部で、大部分は大企業・大資産家への減税に流用されたことです。この“二つの公約違反”が怒りの火に油を注いでいます。

 自民・公明は、住民税大増税にはだんまりを決め込み、「税源移譲で税額は変わらない」というごまかしの宣伝をおこなってきましたが、それももう通用しなくなり、論戦不能に陥っているというのが現状です。

 さらに、消費税増税がいよいよ大争点になってきました。きっかけは安倍首相の「上げないとは一言もいっていない」という発言でした。その後の党首討論で私は首相の態度をくりかえしただしましたが、党首討論を通じて、秋の税制改革で与党が消費税増税を選択肢にしていることが浮き彫りになりました。

 中川政調会長は「(消費税を)聖域にしない」とのべ、増税を強くにじませました。「毎日」の候補者アンケートでは、自民党は74%が「消費税値上げ」と回答しています。増税のホンネを隠して、国民の審判を仰ぐことなしに強行することは絶対に許されません。

 日本共産党は、住民税大増税、消費税増税に反対する旗を鮮明に掲げ、安倍・自公政権の大増税への暴走に正面から対決するもっともたしかな立場をもつ政党です。大企業・大資産家へ行き過ぎた減税を見直せという立場に立っているから、庶民大増税に反対する立場も確固としたものになります。この問題には非常に大きな手ごたえがあります。

憲法問題

自公――「海外で戦争する国」づくりに向け大暴走

共産党――改憲の狙いを鋭く追及

 第三は、憲法問題です。自民党が「マニフェスト」で三年後の国会での改憲発議を宣言するなかで、重大な争点となっています。公明党も「加憲」といって歩調をあわせました。憲法改悪への暴走が始まっています。

 日本共産党は、テレビの党首討論で、改憲の狙いが「アメリカと肩を並べて武力行使をする」ことにあるということを、安倍首相に直接ただしてきました。安倍首相はこれを否定できませんでした。「海外で戦争する国づくり」という改憲の目的が、論戦を通じて明瞭(めいりょう)になりました。

 憲法九条を守るたしかな政党――日本共産党がのびることの意味がいよいよ切実になってきました。

政治とカネ

自公――真相解明に背を向け、「ザル法」をつくってごまかす

共産党――先駆的に追及、企業献金・政党助成金を拒否する党ならではの働き

 第四は「政治とカネ」の問題です。くりかえされる閣僚のスキャンダル、それをかばいつづけ、真相解明を拒否する安倍首相の態度は許しがたいもので、国民の批判が集まっています。

 自公が強行した政治資金規正法の改定も結局、疑惑隠しの「ザル改定」であって、この法改定が何の力にもならないことは、赤城徳彦農水相の問題でも明らかになりました。

 日本共産党は、「事務所費」問題を、先駆的に一貫して追及し、それは国政をゆるがす大問題にまで発展し、安倍政権を追いつめてきました。この問題での共産党の働きは抜群です。

 赤城農水相の問題では、疑惑発覚翌日の党首討論会で、私は「領収書を公表せよ」と主張しましたが、それはいま圧倒的な世論になっています。そして、制度いじりへの逃げ込みのごまかしを追及してきたことの正しさも証明されてきています。

 ここでは、企業献金、政党助成金を受け取らない党ならではの値打ちが、発揮されていると考えています。

民主党は、どの問題でも暴走に対抗する旗印が立てられない

 民主党は、どの問題でも自公の間違った政治への大暴走に立ち向かう旗印を立てられないでいます。

 年金制度の問題では、「最低保障年金制度」を主張していますが、これが満額で実施されるのは四十年後であって、現在の低年金や無年金の問題に対する解決の方策は示せません。財源を全額消費税としたことからくる矛盾も噴き出ています。

 増税問題では、庶民大増税がこれだけ問題になっているときに、それに反対する旗印が「マニフェスト」には見えません。大企業と大資産家に対する減税を促進するという立場では、庶民大増税にきっぱり反対できないということが明瞭になっています。

 憲法問題については、自民党が改憲を押し出しているときに、それにふれずに逃げるだけです。「マニフェスト」のなかで、「憲法提言」を基礎に議論すると書いてありますが、「憲法提言」には、国連の決定さえあれば、海外での武力行使をおこなうと書いてあります。九条改定という点で自民党と同じ旗を握っているというのが、この党の現状です。

 「政治とカネ」の問題では、自民党を追及するわけですが、角田義一前参院副議長の問題をはじめ、自らの疑惑解明に誠実といえません。

 いま、あまりに自公の暴走がひどいので、藁(わら)にもすがる思いで民主党に期待を寄せる方もいるかもしれませんが、民主党では暴走をとめられず、政治を変える力になりません。

「欠陥車の大暴走」に立ち向かう「たしかな野党」・日本共産党

 自公政権は、たとえるなら「欠陥車が大暴走」しているような状態です。暮らしをこわし、平和をこわす大暴走に立ち向かうには、たしかな立場、勇気、信念をもった政党が必要です。日本共産党のがんばりどころだということが、いよいよ明瞭になってきました。「ストップ貧困、憲法九条守れ」の旗印を高く掲げ、前進のために最後までがんばりぬきます。