2007年7月12日(木)「しんぶん赤旗」

自公政権への真の対決者くっきり

7党党首討論会


 日本共産党の志位和夫委員長は、十一日の「七党党首討論会」(日本記者クラブ主催)で、年金、貧困、増税、憲法など、参院選で問われる重大問題を取り上げました。討論を通じて浮かび上がったものは――。


定率減税廃止

志位氏 年金口実の増税批判

首相 「原資は一部」認める

 志位氏は「消えた年金」問題で、「一億人の国民すべてに年金納付記録を通知することをはじめ、建設的な提案をしてきた」と紹介。「国の責任で、一人の被害者も残さずに解決するまで、力をつくしたい」と表明しました。

 志位氏は一問一答で、年金問題と庶民増税との関係を追及。六月から住民税の大増税が家計を襲ったことをあげ、「問題は、政府・与党が定率減税廃止の理由を国民にどう説明していたかだ」として安倍晋三首相をただしました。

 志位 二〇〇三年十二月に自民、公明が決めた「税制改正大綱」をみると定率減税廃止とお年寄りへの年金課税の強化によって「基礎年金の国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げるための安定した税財源を確保する」と述べている。

 首相 定率減税は一部は基礎年金を上げていくものの原資にする。残りは、累積債務を減らしていく原資にする。(基礎年金にあてたのは)三千億円か、数千億だと思う。

 志位 政府の答弁では五千百億円にすぎない。定率減税と年金課税強化で二兆八千億円の増収があったにもかかわらず、基礎年金につみあげたのはその二割弱にすぎない。年金財源のためといって増税をかけておきながら、大企業などのための減税にばらまかれたのではないか。これは国民を欺くやり方だ。

 志位氏の追及に、首相はまともに答えることができませんでした。

消費税

志位氏 この選挙で審判仰げ

首相 税率アップ否定せず

 消費税をめぐり、志位氏は、首相が「消費税を上げないとは一言も言ってない」などと発言していることをとりあげ、「わが党は、消費税を上げることに、もとより絶対反対だが、(政府・与党が)秋の税改正で消費税を上げる可能性があるならば、事前にこの参院選で国民に審判を仰ぐべきだ」と主張。あいまいにしたまま選挙をやり過ごそうという安倍首相のやり方を批判しました。

 志位 選挙が終わった後の秋に増税を決めてしまい、既成事実の追認を迫るやり方は、税金のあり方を国民が決めるという、国民主権にもとる。

 首相 歳出の削減を行い、3%の後半の経済の名目成長を達成していけば、消費税を上げなくても(基礎的財政収支の黒字化の目標に)到達できる可能性がある。しかし、経済は生き物であって、そこに到達できないケースもある。

 志位氏は首相の発言が「上げる可能性もあるということだ」と指摘。そのうえで、消費税は一九八九年に導入されたときにも、九七年に増税されたときにも、事前に国民の審判を仰いでいない税金であるとのべ、「(消費税は)公約違反の税金だ。これを三度繰り返すことになるのは絶対に許されない。増税計画がそういう可能性があるんだったら、堂々とここで(審判を)仰ぐべきだ」と強調しました。

貧困

志位氏 解決への具体策提案

首相 格差などに目向けず

 七党首のうち、貧困問題を正面から取り上げたのは志位氏だけでした。志位氏は「ネットカフェ難民、医療難民、介護難民など、経済大国であるこの日本で貧困が深刻になっているのは大問題だ」と提起。住民税・消費税の増税中止、医療・介護・子育て・障害者福祉の分野での「緊急福祉1兆円プラン」の実現、最低賃金を全国どこでも時給千円以上に引き上げること、人間らしく働けるルールをつくることなど、解決のための具体的な提案を示しました。

 一方、安倍首相は「私が総理に就任して六十万人雇用をつくった。三十五万人のフリーターが定職に就いた。経済は力強く成長している」と述べ、貧困や格差などは問題にならないかのような態度に終始しました。

 社民党の福島瑞穂党首が「パート・派遣などの非正規雇用が増え、五人に一人が年収二百万円以下だ」と雇用問題に言及しましたが、対応策は「製造業については派遣を禁止する」という限定的なもの。社民党が一九九九年に、派遣労働を原則自由化する法案に賛成したことへの反省や弁明はありませんでした。

憲法

志位氏 9条守る共同へ決意

首相 改憲へ国会内2/3狙う

 志位氏は、自民党が政権公約冒頭で二〇一〇年の「改憲発議」を掲げていることをあげ、「憲法九条を投げ捨て『海外で戦争をする国』につくりかえることは許してはならない。党をつくって八十五年、反戦平和を貫いた日本共産党が伸びることが、憲法九条を守り抜く一番たしかな力になることを訴えたい」とのべました。

 これに対し、安倍首相は、改憲を政治スケジュールに乗せるためにリーダーシップを発揮してきたとして、「これから先は、結果を残すためには多数派の形成に全力を尽くすのは当然、三分の二をとらなければいけない」と発言。憲法改悪で民主党などと国会内で三分の二の勢力を形成することを重視する姿勢を強調しました。

 また、改憲手続き法との関係で「全文一度に(改憲する)という形になっておらず、逐条的にいかざるをえない。その中でどれを優先していくかは、まさにこれから政治的合意を形成していく」とのべました。

 民主党の小沢一郎代表は「国民生活が向上するなら憲法改正すればいい」「護憲とか改憲とかいう形式的対立はよくない」などとのべ、改憲姿勢をあらわにしました。

 志位氏は「改憲する側がどういう仕掛けをつくろうとも、国民の多数が『ノー』と言えば改憲はできない」と指摘。「国民の中で、九条を守り抜くという一点で多数派をつくっていく。そのために共産党がおおいに今度の選挙で前進したい」と語りました。

「政治とカネ」

ザル法明白に

 「一国の総理大臣が光熱水費月八百円とか弁明しなければならないのは嘆かわしい状況だ。こういう具合に使ったといえばすむ話だ。どうして説明できないのか」

 十一日の党首討論会第二部の冒頭、赤城徳彦農水相の政治団体が実家を主な事務所の所在地として多額の経費を計上していた問題で、日本記者クラブの企画委員が質問しました。

 安倍首相は、「今までの事務所経費問題は、金額の多寡によったのだろうと思う」とのべ、またもや光熱水費月八百円の説明を繰り返し、赤城農水相をかばいました。

 これには質問者も「自主的に(領収書を)示して『安心してください』といえばすむ話じゃないですか」といらだちを隠せない様子。八日のテレビの党首討論で「領収書を出せ」と迫ったのは日本共産党の志位委員長でした。質問者も同様の感想をもったのでしょう。

 別の質問者から、与党が改定した政治資金規正法が不十分だったということかと問われた安倍首相は、自民党の内規を長々と説明。「そんなにいいアイデアなら法律に書けばいいじゃないですか」とザル法ぶりを指摘されました。

 安倍政権ができてわずか九カ月。事務所経費の問題で佐田行革担当相が辞任、故・松岡前農水相に続き赤城農水相も同様の疑惑を抱えています。

 民主党の小沢代表も資金管理団体が巨額の不動産を取得していただけに何もいえません。

 「政治とカネ」でも日本共産党対自民、民主は明らかです。